転生オトメ恋世界

二章

45 第一王子と乙女様

　エーデルトラウト様はご自身の過去を淡々とお話くださいました。

　ご家族を奪われ辛かった事でしょう、、、大切な方を救えず苦しかった事でしょう。なにせ私はその想像をするだけで涙が溢れてしまいそうになるのですから。

「ーーーーーすみません。暗い話をしてしまい」
「いえ、貴方様の事を知れて良かったです」
「寛大な御心に感謝いたします。長い間引き留めてしまい申し訳ありませんでした。それでは」
「あのーーーーー！」

　暗い過去を語り申し訳なさそうにしながらも、それでも笑顔で去ろうとするエーデルトラウト様。ですがそれが強がりである事は聞くまでもありません。
　私はそんな彼を放っておけずに声を掛けました。

「誇ってください！どのような結果であろうと、貴方様は孤独より母君を救い出したのです！大切な方を救うために尽力した貴方様は正しくあり、誰よりも優しいのです！ですからーーーーー」

　
　肌寒さを感じる夕暮れの中、人の温もりは心地良いものでした。

　、、、、、、ッ？！

　唐突にエーデルトラウト様が私を力強く抱きしめました。それは彼の熱が私に伝わってくるほどに。

「エ、エーデルトラウト様！！？」

　驚きのあまり思考が停止し掛け、無意識に彼を引き離そうと身体に触れました。その際、彼が僅かに震えている事に私は気付いたのでした。

　泣いているのでしょうか、、、

　そして身体を震わせて泣き出してしまいそうな声を堪え、彼はこう呟くのです。

「ありがとう」と。

　それだけ言い残すとエーデルトラウト様は振り返る事もなく、王城へと続く道を真っ直ぐと進むのでした。



　心臓がいつもより早く鼓動しています。きっとエーデルトラウト様の咄嗟の行動に驚いたのでしょうね。

　、、、、、、。

　ですが、、、もしそうでないとするのならこの感情はーーーーーーーーー

「ちょろいですよ、私、、、」