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クリスの受難
59 セイレーン
しおりを挟むクリスはカーソンの顔をじっと見つめながら、妄想を爆発させる。
(……カーソンって、かっこいいな。
まだ子供っぽい顔付きだけど、好みの顔だな。
ティナの時は美少女だったけど、カーソンは美少年って感じね。
嫌われさえしなければ……こいつ貰えるんだ。
あの……すんごいおちんちんも一緒にかぁ。
絶対嫌われないようにしなくっちゃ!
他の女にこいつの事……盗られたくないな。
頑張れ、あたし!
ティナを愛してるって事はさ、カーソンも愛してるって事だもんね。
こいつにもあたしのおっぱい、吸わせてあげたいな。
でも……あのおちんちんどうしよう?
どうにかして……挿入れる?
ってか……挿入る?
先に何か挿入れて、練習しとく?
あ、そしたら……処女じゃ無くなるじゃん。
そりゃ駄目だわ。いや、でも……アレを最初に?
むぅー……ちょっと怖いな。
いやでも……怖いって逃げまくってたらさ、誰かに先越されちゃうよ?
それでもいいの?
やだな。こいつの初めては……あたしの初めてでもあって欲しいな。
いつやるかはさ、あたしの気持ち次第なんだよ?
何だったら今でも……いやいや! それは流石に無理!
かといって先送りしてたら……うーん……。
谷に帰ったら……みんなに狙われちゃうんだよ?
あ、じゃあ……もうあたしが貰ったって事にしちゃえばいいのかな。
って、駄目じゃん。何の解決にもなんないわ。
近衛引退しなきゃなんないし、結局あいつの初めては誰かに盗られちゃう。
えー、どうしよう?
やっぱ今貰っとくしかないかのなぁ……。
いやでも、怖い……あんなの……無理。
意外と臆病者だったのね、あたしって。
うーっ……むぅーっ……。
とりあえず、キスしとこっかな?
カーソン……愛してるよ?)
クリスはカーソンへキスしようと、そっと唇を近付ける。
突然、カーソンは目を開けた。
カーソンと目が合ったクリスは、目をぱちくりとさせて固まる。
目を開けたら目の前にクリスが居たカーソンは、何をしようとしていたのかクリスに聞く。
「? クリス、どした?」
「あ……いや……何でもないよ」
「何で、俺の目の前に居た?」
「いや……別にきっ、キスしようとしてたワケじゃないよ?」
「キスしようとしてたのか?」
「ちっ、違うってばっ! 何でもないっ!」
「……俺、クリスとキスしたいって言ったら、してくれるか?」
「うっ……いや……駄目っ!」
「俺、クリスとキスしたい」
「だーめっ! 女の子の唇欲しがるなんて、あんたにゃまだまだ早すぎよっ!」
「そっか……駄目か」
カーソンはクリスがキスをしたがっていると察し、自分からお願いをしてみたが断られた。
自分の勘違いだったと知ったカーソンはシュンとする。
クリスはカーソンが落ち込んだ姿を見て、早速やらかしてしまったと後悔する。
何とか取り繕おうとし、しおらしい声でモジモジしながらカーソンに聞く。
「ねっ、ねえカーソン?」
「ん?」
「ほっぺなら、キスしてもいいよ?」
「うん。キス欲しい」
「しょうがないなぁ……チュッ」
「ありがとう、クリス」
「……ふふっ。どういたしましてっ!」
「クリス、優しいな」
「ねぇ? ずっと、ずぅーっと……あたしの事、好きでいてくれる?」
「うん。俺、ずっとクリスの事、好きでいる」
「ありがとっ!」
「クリス、俺の事嫌いになったら言って。俺、頑張って直すから」
「嫌いになんてなんないよ?」
「俺、知らないうちに嫌われるのやだ。誰からも嫌われたくない」
「あんた嫌いな奴なんてさ、誰も居ないと思うよ?」
「ううん。俺、化け物。変な事すれば嫌われる。嫌われるのやだ」
「化け物なんかじゃないってば。すっごく優しい男の子だよ?」
「俺……自分が怖い。他の人と違う自分……怖い」
「大丈夫だよ? 他の人が何て言おうと、あたしはあんたの味方よ?」
「クリス。化け物の俺、好きでいてくれる?」
「ずっと好きでいたげるよ! あんたに危害加えようとする奴なんてさ、あたしがぶっとばしてやるよっ!」
「クリス、大好き!」
「ありがとっ!」
クリスはカーソンからまだ嫌われていないと実感しながら、ぎゅっと抱きしめる。
同時に、まるでカーソンの母親にでもなったような感情が込み上がってくる。
この子は自分の力を恐れている、とっても心の優しい男の子。
でも、凄く心の繊細な男の子。
心が傷付きやすくて、壊れやすい男の子。
自分はこの子の心を守ってあげたい。
クリスはカーソンをぎゅっと抱きしめながら、今ならこの子の為に母乳すら出せるんじゃないかと錯覚する程、内に秘めた母性が爆発した。
クリスはカーソンから離れ、シルフからの捜索結果を聞く。
「それで、出口見付かった?」
「ううん、見付かんない」
「……そっか」
「でも、シルフ呼ばれたって言ってる」
「? 呼ばれたって……誰に?」
「自分より強い精霊に呼ばれたって」
「強い精霊って?」
「シルフ怖がってる。早く連れて来いって、怒られたって」
「精霊って話せるの?」
「うん。あんまり話さないけど、大事な事だけ話す」
「へー。あたし精霊と契約してないから、知らなかったよ」
「制約ってのがあるらしい。必要ない事は言えないみたいだ」
「じゃあさ、必要だから言ってきたんだよね?」
「うん。早く行ってご主人様、って騒いでる」
「その、強い精霊ってのが呼んでるのね?」
「早く行かないとまた怒られるって、凄く怖がってる」
「シルフが可哀想だね。行こっか?」
「うん。シルフ、そこ連れてってくれ」
「強い精霊って……どんな精霊なんだろね?」
「ん? ああ、いいぞ」
「? どしたの?」
「実体化して案内するから、もっとオド使っていいかってシルフに聞かれた」
「ふーん……」
カーソンはシルフからのお願いに承諾し、オドの使用を許可した。
カーソンは右手を上げ、胸の高さで掌を上に向ける。
カーソンの掌に、小さな女の子の姿をした精霊シルフが現れる。
シルフはカーソンの掌の上でちょこんと正座しながら、身体よりも更に小さな羽をヒラヒラと動かす。
クリスは実体化したシルフを初めて見て、目を細めながら話す。
「可愛いっ。あなたがシルフ?」
「精霊シルフです、クリスたん」
「あたしの事知ってるの?」
「ご主人様の大切な人」
「大切な人って……照れちゃうな」
「シルフ、何でクリスが俺の大切な人だって分かるんだ?」
「ご主人様、いつもクリスたんの事見てる。アタチ分かるの」
「自分の事、アタチって呼ぶんだ? いやーんっ、可愛いっ!」
「シルフ凄い。クリス俺の大切な人って、当たってる」
「いいなぁ。こんな可愛い精霊となら、あたしも契約してみたいなぁ」
クリスはシルフをとても可愛いと思い、自分も精霊と契約してみたいと羨ましがった。
シルフはカーソンに向かって両手をきゅっと組み、半べそになりながら懇願する。
「お願いご主人様。アタチ助けて」
「あ、そうだった。その強い精霊って、どこに居るんだ?」
「あっち」
「ん、分かった」
「ここ、そっち」
「この道か?」
「そこ、あっち」
「分かった」
シルフはカーソンの掌の上でちょこんと正座し、指差しながら2人を案内する。
カーソンとクリスはシルフに案内されるまま、目的地へと向かって歩いた。
シルフはくるっと振り向き、カーソンに再び両手をきゅっと組んで懇願する。
「ご主人様。ここ、あっち。アタチ、もう隠れていい?」
「ん? どした?」
「ネエサマに実体化したの知られると、アタチ怒られるの」
「ネエサマ?」
「ネエサマ、風の上級精霊。アタチ、風の下級精霊。アタチより強いの」
「へー。強い精霊って、風の上級精霊だったのか」
「アタチ、ネエサマ怖い。隠れていい?」
「うん、いいぞ」
「ありがとう、ご主人様」
シルフはカーソンにぺこりと頭を下げ、ふっと姿を消した。
シルフの案内で2人が辿り着いた先には、男と思われる死体が横たわっていた。
カーソンとクリスは死体の前に屈み込み、死体を観察しながら話す。
「シルフ呼んでたの、この死体か?」
「ここにはこの死体しか無いから、そうなんじゃない?」
「……あ。この死体から精霊の力、感じる」
「あたしは何も感じないわ……当たり前だけど」
「でも、どうしてこの死体から感じるんだ?」
(……やっと来たわね。待ってたわよ?)
「わっ! 話しかけてきた!」
(あなたは、アタシの声が聞こえるのね?)
「うん、聞こえるぞ」
(へぇ、やるじゃない? とりあえず合格よ?)
「合格? 何にだ?」
(アタシと意思の疎通が出来る事によ)
「俺、合格か?」
(シルフ使役出来るくらいだから期待してたけど、器としてはまずまずね)
「シルフ、お前の事怖がってたぞ?」
(そりゃそうよ。下級が上級に逆らえるワケ無いじゃない)
「シルフの事、いじめないでくれるか?」
(いじめないわよ。同じ属性の精霊だもん)
「そっか、ありがとう」
カーソンは死体の中に居る、風の上級精霊と会話した。
風の上級精霊は自らの名を名乗り、カーソンに話しかける。
(アタシの名はセイレーン。あなたは男のようね?)
「うん。さっきまで女だったけど、今は男だ」
(魔力で女になってたの? イザベラかローラの仕業? それともルドルフ?)
「あれっ? セイレーンはイザベラとローラ、知ってるのか?」
(まあね。で、あなたは何て名前なの?)
「俺、カーソン」
(カー……ソン?)
「うん、カーソン」
(ちょっと……アタシによく顔見せてくれる?)
「うん」
(……偶然かしら? アタシの知ってる人に、顔も名前も似てるわ)
「そうなのか?」
(もしかして……また現世に?)
「?」
セイレーンと名乗った風の上級精霊は、カーソンの名前と顔に見覚えがあると言う。
カーソンは初対面なハズのセイレーンが、自分を知っているようなそぶりに疑問を持った。
風の上級精霊セイレーンは、カーソンに契約を持ちかける。
(ねえカーソン、アタシと契約しない? ここの出口教えてあげるわよ?)
「本当か!? 契約する! どうすればいい?」
(アタシの力が弱くなって、もう自力じゃこの身体から出て来れないの。あなたの触媒が必要だわ)
「しょくばい…って何だ?」
(あなたの身体の一部よ?)
「えっ……指とか必要なのか?」
(そこまで立派な触媒じゃなくてもいいわよ?)
「うーん……じゃあ、髪の毛でもいいか?」
(もちろんよ。それで充分)
「じゃあ、ちょっと待ってろ」
(アタシの前に差し出してくれると助かるわ)
「うん、分かった」
カーソンはセイレーンから契約する為に、髪の毛が欲しいと要求された。
カーソンは横に居るクリスに話しかける。
「クリス、その剣貸してくれ」
「? 何で?」
「ちょっとその剣、使いたい。借りてもいいか?」
「うん、いいよ。ところであんた、さっきから独り言話してるけど大丈夫?」
「うん。今、精霊と話してるんだ」
「風の上級精霊?」
「うん。セイレーンって言う名前らしいぞ」
「へー、セイレーンかぁ。あ、はいはい…剣ね?」
「ありがとう」
カーソンはクリスから剣を受け取る。
カーソンは左手で自分の長い髪の毛をうなじの部分で纏める。
そして、右手に持った剣でおもむろにバッサリと切った。
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