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004 新たな空の下
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「あれ?」
間抜けに呟いて二艘の船に乗っている人達を見上げる。
船にはそれぞれに人が二名乗っており、合計四名の人間が目を白黒させていた。
「あ、あの~君は……?」
海の風景が違う事が気になるが、まずは人命救助だ。この女性を助けなければ。
一番近くの船に乗っていた青年に女性を手渡す。
「意識がありません。早く岸まで!」
「え? あっ! はっ、はい!」
青年は驚いた顔をしたが、すぐにぐったりした白いワンピースの女性を水面から抱え上げ、船に手早く乗せてくれた。船は女性を乗せたら一杯となってしまった様だ。他に乗っていた男性が女性を介護している。
「早く乗って! 流されて溺れるぞ!」
明らかに定員オーバーになりそうなのに、青年は私も引きあげようとする。思わずそれにカチンときてしまった。
「定員オーバーなんじゃないの? 乗ってる場合じゃないよ! 早く彼女を岸まで連れて行くのが先! 息がない様だし危険だよ! 私は──」
見ると岸はすぐそこだ。この距離なら泳いでいける。
船の上の青年は私に怒鳴られた事で息を呑んでいた。
「私は泳いで行くから。大丈夫!」
「ええ? 泳ぐって──」
彼が何か言うのを聞く前に私は海に少し潜ると、水の壁を蹴って岸に向かって泳ぎ出す。
海に沈んでいた時間がどれぐらいか分からないけれど、大丈夫! 私の体は問題なく動く。
「す、凄いもうあんなところに」
船の上で手を差し出していた青年は、目を丸くした。
「シン、俺達も戻ろう! マリンさん息してないよ本当に危険だ! アイツが何なのかはとにかく後回しだ!」
船に乗っていた一人が泣きそうな声で叫んだ。
船で手を出していた青年をシンと呼ばれ、白ワンピースの女性の事をマリンと呼んだ。
「わ、分かった!」
シンは慌てて舵を取り、夏見の真横に船を着け岸に向かった。その間数十秒にも満たない。
(泳ぐのが凄く速い。おかしいな子供だよな? でも何て綺麗な泳ぎ方なんだ……)
シンは夏見の泳ぐ速度と美しい泳ぎ方に目を奪われていた。
この国で子供がこんなに速く泳ぐなんて見た事がない。海に面している町だが、泳ぐ事を覚える事が出来るのは軍人ぐらいだ。しかもこんなに美しく綺麗に泳ぐなんて凄い事だ。シンは驚きを隠せないままオールを漕ぎ続ける。
やがて岸にたどり着く。岸には人が集まっているのが見える。この騒ぎを聞きつけたのかもしれない。
しかし、あの金魚のような水着を着た女性達や日に焼けた男性達が、芋漕ぎ状態だったビーチがガラガラになっている。
どういう事なの? 夏見はゆっくりと浅瀬から立ち上がり、隣に止まった木船を見ながら砂浜に上がる。
そこでたった今、砂浜にたどり着いた背の高いプラチナブロンドの男性が、慌てた様子で駆け付けてきた。彼は黒っぽい外套を身に付けていた。
この暑い真夏に外套って? どういう事。
彼の開口一番は唸るような声だった。
「お前は誰だ! マリンに何をした! お前が──」
何をしたって?
私は気が高ぶっているせいもあるが、思わず大声を上げた。
「溺れていたのを助けただけだよ!」
唸る彼は私の唾が飛ぶ大声に蹴倒されながらも喚く。
「な、何だと?!」
「ほらそこ、どいて。それ借りるよ! 何なのよこのくそ暑いのにこんなの着て! 彼女をここに!」
「お、おお……?! おお!」
私はプラチナブロンドの男の黒い外套を剥ぎ取ると、彼はクルクルとコマの様に二回転して目を丸くしていた。
更に金髪の日焼けした長身の男性も砂浜に息を切らせて駆け寄り、プラチナブロンドの男性の肩を叩いた。
「ノア落ち着け! まずはマリンの状態を確認しよう」
「ザックも来たのか。ああ分かっている」
二人の低い声が私の上で聞こえる。黒外套の男は最後声が震えていた。心配なのだろう。
そうだ女性を助けないと。黒い外套を敷き溺れていた女性──マリンという名前だろう、マリンをその上に横たえた。張り付いたプラチナブロンドが腕や頬に絡んでいた。
胸に耳を当てるが心音が聞こえない。口元で息を確認しても感じる事が出来ない。
これはまずい。マリンの体を仰向け、気道を確保しながら、テキパキと心臓マッサージの準備に取りかかる。
「彼女が沈んでから何分ぐらい経ってる?」
マリンの様子を確認しながら、運んでくれた船に引きあげた男性に尋ねた。
「は、はぁ、たしか、五、六分ぐらいだったような気がしますが……」
「五分……」
私は心臓マッサージをはじめる。周りの皆は為す術もなく見守っている。
マリンという女性の口に息を吹き込んで、何度も数を数えながら心臓をマッサージする。
人命救助は四分がボーダーラインと言われている。人工呼吸で蘇生できるかどうか。もしかしたら手遅れかもしれない。
お願い助かって!
そうより強く願った時だった。マリンの胸の上に当てている私の手が金色に輝き掌が熱を帯びた。
何なのこの感覚?
それと同時に、彼女の体の体温が上がり心臓の音が大きく聞こえた。
瞬間、マリンが大量の海水を吐き出し息を吹き返したのだ。
「ゲホッ! ゴホッ! ゴホッ。わ、私……?」
ああ、良かった! 助ける事が出来た!
マリンが意識を取り戻した時、黒い外套の持ち主であるプラチナブロンドの男が彼女の体を抱きしめた。
「マリン!」
「あっ、ノア……私、生きてる?」
「ああ、もちろんだ。生きている!」
二人はきつく抱きしめ合っていた。
私も力が抜けてへたり込んだ。
助かった。助ける事が出来た。
嬉しさと今までの海の底に引きずられた疲れからか、ガクンと力が抜ける。
また海の底に戻ったみたいに遠くに声が聞こえた。
音が聞こえなくなる。意識が──
「おい、お前は一体何者って、おい? しっかりしろっ」
金髪の男性が私の肩を揺さぶった様だけれども、力が抜けるのにあらがう事が出来ず、意識を手放してしまった。
間抜けに呟いて二艘の船に乗っている人達を見上げる。
船にはそれぞれに人が二名乗っており、合計四名の人間が目を白黒させていた。
「あ、あの~君は……?」
海の風景が違う事が気になるが、まずは人命救助だ。この女性を助けなければ。
一番近くの船に乗っていた青年に女性を手渡す。
「意識がありません。早く岸まで!」
「え? あっ! はっ、はい!」
青年は驚いた顔をしたが、すぐにぐったりした白いワンピースの女性を水面から抱え上げ、船に手早く乗せてくれた。船は女性を乗せたら一杯となってしまった様だ。他に乗っていた男性が女性を介護している。
「早く乗って! 流されて溺れるぞ!」
明らかに定員オーバーになりそうなのに、青年は私も引きあげようとする。思わずそれにカチンときてしまった。
「定員オーバーなんじゃないの? 乗ってる場合じゃないよ! 早く彼女を岸まで連れて行くのが先! 息がない様だし危険だよ! 私は──」
見ると岸はすぐそこだ。この距離なら泳いでいける。
船の上の青年は私に怒鳴られた事で息を呑んでいた。
「私は泳いで行くから。大丈夫!」
「ええ? 泳ぐって──」
彼が何か言うのを聞く前に私は海に少し潜ると、水の壁を蹴って岸に向かって泳ぎ出す。
海に沈んでいた時間がどれぐらいか分からないけれど、大丈夫! 私の体は問題なく動く。
「す、凄いもうあんなところに」
船の上で手を差し出していた青年は、目を丸くした。
「シン、俺達も戻ろう! マリンさん息してないよ本当に危険だ! アイツが何なのかはとにかく後回しだ!」
船に乗っていた一人が泣きそうな声で叫んだ。
船で手を出していた青年をシンと呼ばれ、白ワンピースの女性の事をマリンと呼んだ。
「わ、分かった!」
シンは慌てて舵を取り、夏見の真横に船を着け岸に向かった。その間数十秒にも満たない。
(泳ぐのが凄く速い。おかしいな子供だよな? でも何て綺麗な泳ぎ方なんだ……)
シンは夏見の泳ぐ速度と美しい泳ぎ方に目を奪われていた。
この国で子供がこんなに速く泳ぐなんて見た事がない。海に面している町だが、泳ぐ事を覚える事が出来るのは軍人ぐらいだ。しかもこんなに美しく綺麗に泳ぐなんて凄い事だ。シンは驚きを隠せないままオールを漕ぎ続ける。
やがて岸にたどり着く。岸には人が集まっているのが見える。この騒ぎを聞きつけたのかもしれない。
しかし、あの金魚のような水着を着た女性達や日に焼けた男性達が、芋漕ぎ状態だったビーチがガラガラになっている。
どういう事なの? 夏見はゆっくりと浅瀬から立ち上がり、隣に止まった木船を見ながら砂浜に上がる。
そこでたった今、砂浜にたどり着いた背の高いプラチナブロンドの男性が、慌てた様子で駆け付けてきた。彼は黒っぽい外套を身に付けていた。
この暑い真夏に外套って? どういう事。
彼の開口一番は唸るような声だった。
「お前は誰だ! マリンに何をした! お前が──」
何をしたって?
私は気が高ぶっているせいもあるが、思わず大声を上げた。
「溺れていたのを助けただけだよ!」
唸る彼は私の唾が飛ぶ大声に蹴倒されながらも喚く。
「な、何だと?!」
「ほらそこ、どいて。それ借りるよ! 何なのよこのくそ暑いのにこんなの着て! 彼女をここに!」
「お、おお……?! おお!」
私はプラチナブロンドの男の黒い外套を剥ぎ取ると、彼はクルクルとコマの様に二回転して目を丸くしていた。
更に金髪の日焼けした長身の男性も砂浜に息を切らせて駆け寄り、プラチナブロンドの男性の肩を叩いた。
「ノア落ち着け! まずはマリンの状態を確認しよう」
「ザックも来たのか。ああ分かっている」
二人の低い声が私の上で聞こえる。黒外套の男は最後声が震えていた。心配なのだろう。
そうだ女性を助けないと。黒い外套を敷き溺れていた女性──マリンという名前だろう、マリンをその上に横たえた。張り付いたプラチナブロンドが腕や頬に絡んでいた。
胸に耳を当てるが心音が聞こえない。口元で息を確認しても感じる事が出来ない。
これはまずい。マリンの体を仰向け、気道を確保しながら、テキパキと心臓マッサージの準備に取りかかる。
「彼女が沈んでから何分ぐらい経ってる?」
マリンの様子を確認しながら、運んでくれた船に引きあげた男性に尋ねた。
「は、はぁ、たしか、五、六分ぐらいだったような気がしますが……」
「五分……」
私は心臓マッサージをはじめる。周りの皆は為す術もなく見守っている。
マリンという女性の口に息を吹き込んで、何度も数を数えながら心臓をマッサージする。
人命救助は四分がボーダーラインと言われている。人工呼吸で蘇生できるかどうか。もしかしたら手遅れかもしれない。
お願い助かって!
そうより強く願った時だった。マリンの胸の上に当てている私の手が金色に輝き掌が熱を帯びた。
何なのこの感覚?
それと同時に、彼女の体の体温が上がり心臓の音が大きく聞こえた。
瞬間、マリンが大量の海水を吐き出し息を吹き返したのだ。
「ゲホッ! ゴホッ! ゴホッ。わ、私……?」
ああ、良かった! 助ける事が出来た!
マリンが意識を取り戻した時、黒い外套の持ち主であるプラチナブロンドの男が彼女の体を抱きしめた。
「マリン!」
「あっ、ノア……私、生きてる?」
「ああ、もちろんだ。生きている!」
二人はきつく抱きしめ合っていた。
私も力が抜けてへたり込んだ。
助かった。助ける事が出来た。
嬉しさと今までの海の底に引きずられた疲れからか、ガクンと力が抜ける。
また海の底に戻ったみたいに遠くに声が聞こえた。
音が聞こえなくなる。意識が──
「おい、お前は一体何者って、おい? しっかりしろっ」
金髪の男性が私の肩を揺さぶった様だけれども、力が抜けるのにあらがう事が出来ず、意識を手放してしまった。
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