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006 赤髪の女
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私は全く覚のない部屋で呆然とするしかなかった。
外から雑踏の声が聞こえる。
「今日は籠で安くしているから、このトマトおすすめだよ」
「ちょっとおまけしておいたからね。またよろしくね」
「今日はウチの店で食べてっておくれよ! もちろん可愛い子もいるからさー」
会話の内容から察するに、何か売っているお店や飲食店が近いようだ。
優しく撫でる潮風が入ってきた時、部屋のドアが「キィ」と木製独特の音を立てて開いた。
私は息を飲んだ。
そこには燃える様な真っ赤な髪の毛を腰のあたりまで伸ばした、浅黒い肌の女性が立っていた。随分と日本人離れしている彫りが深い外国人の顔立ちだ。
真っ赤な口紅で切れ長の目。目元のパープルのアイシャドウが印象的だ。服は紫色をベースにした布の面積が何とも少ない服装だ。
アレだ。似た様な服を見た事がある。ベリーダンスを踊る時の衣装だ。ブラジャーの部分は胸を強調する様な装飾、もちろんブラジャー内にはむっちりと胸が詰まっており、ボン! という音がしそうだ。お腹と腰は細くくびれ、へそには赤い宝石がついた金色のピアスが見える。
足は足首まで薄い布が幾重も折り重なったズボンを穿いている。サイドに大きなスリットが入っているのでズボンなのかスカートなのか正直分かりかねるところだ。
靴は金色のビーチサンダルの様に親指部分に引っかかりがある靴だが、細かい石が装飾されており、七センチはあるハイヒールになっている。
最後に目が留まったのは、右の肩から胸元にかけて薔薇の花の様なタトゥーだった。
凄い……漫画や映画から飛び出てきた様なナイスバディ。
彼女は一体何なのか。
私は唐突な人物に、目は大きく見開き、開いた口が塞がらなかった。
彼女はベッドから起き上がった私を見つけると少し驚き、そしてニッコリと笑いかけた。
「あっ! 目が覚めたのね! 気分はどう?」
語尾が少し掠れるハスキーな声だった。
「ダ……ダイジョウブ……デス……」
何故か言葉が片言になる。
「どれどれ~」
カツカツと金色のヒールを響かせ近づき、真っ赤なネイルが施された両手を伸ばす。
爪が長い! 私の両頬を包み込んで、腰を90度に曲げると真っ赤な髪の毛をサラリとこぼしながら、長い睫の顔を近づけた。
ムスクの香りがする。いい匂い。
「あ、あの……うっ!」
突然彼女の親指が目の下を引っ張って、まるであっかんべーをする様な両目にする。唐突の出来事に話しはじめた口を閉じるしかない。少し目が痛いが我慢だ。
「うーん貧血とかは特にないみたいね。丸一日眠っていたからどうにかなったのかと思ったわ」
彼女はベッドの端に腰をかけながら、笑いかける。
「えっ一日!?」
思わずオウム返しをしてしまった。
泳いで、潜って、人を助けて、心臓マッサージを施しての人工呼吸。確かに大変だったけれどもそんなに眠り続ける程の疲労だっただろうか?
思わず自分の両腕を抱きしめて体をさすってみる。しかし何処も問題なさそうだ。柔らかいシャツの生地が心地よいだけだ。
赤髪の女性は左腕をあげて私の短い髪の毛を撫でながら右から左から私を観察する様に見つめた。
な、何だろう……凄く品定めされている様なこの視線は。ビクつきながら上目遣いで見つめると、指で私の髪の毛をクルクルと巻きはじめた。短い髪の毛が細くて長い指に絡まってはほどけてを繰り返す。
「ねぇ私はジルって言うの。あなたの名前を教えて? 黒髪に黒い瞳なんて本当に珍しいわね。確か東に住んでいる民族は黒髪で黒い瞳だって聞いた事があるけれども……初めて見るわ」
東? 東の方の民族って……ここは本当に何処なのだろう?
やはり目の前の女性は日本人ではなさそうだ。
だとしても大無海岸から海外にワープするはずもない。
私はまだ夢の中にいるのだろうか? 夢なら覚める時が何時か来るのか。
「名前……は、夏見です。山田夏見」
「ヤマダナツミ? 随分長い名前なのね」
「いえ、そうじゃなくて……えーと、名前だけならナツミです」
「ナツミ?」
「はい。ナツミです」
名を伝えると赤髪の女性ジルさんは、優しく微笑んでから小さく咳払いをした。
「ナツミ、あなたのお陰で私の店の大切な看板娘を失わずに済んだわ。本当にありがとう!」
最初は改まっていたが、最後の方はテンションが高くなり、言い終わるやいなや突然ギュッと抱きしめられた。
柔らかく弾力のあるおっぱいが私の顔にギュッと押し付けられる。
くっ、苦しい!
「か、看板娘って?!」
藻掻きながら問いかける。
看板娘というのは、助けたプラチナブロンドの女性──マリンの事だろうか。そういえば、彼女はその後問題ないのだろうか。
ジルさんはベッドから立ち上がると、両腕を組み少しのけぞりながら言った。
「あなたの助けた子は踊り子であり、歌い手なのよ」
「お、踊り子っ? 歌い手!?」
「そう。この港町一番の宿屋兼酒場である『ジルの店』。つまり、私の経営する店の一番人気の踊り子でもあり歌い手よ」
そう言ってジルさんは両腕を、ようこそ! と言わんばかりに広げて見せた。
「ええ?! 『ぐぅ~』」
あり得ない事実を知らされたと同時に、私のお腹が負けじと劣らず大きな音を立てたのだった。
外から雑踏の声が聞こえる。
「今日は籠で安くしているから、このトマトおすすめだよ」
「ちょっとおまけしておいたからね。またよろしくね」
「今日はウチの店で食べてっておくれよ! もちろん可愛い子もいるからさー」
会話の内容から察するに、何か売っているお店や飲食店が近いようだ。
優しく撫でる潮風が入ってきた時、部屋のドアが「キィ」と木製独特の音を立てて開いた。
私は息を飲んだ。
そこには燃える様な真っ赤な髪の毛を腰のあたりまで伸ばした、浅黒い肌の女性が立っていた。随分と日本人離れしている彫りが深い外国人の顔立ちだ。
真っ赤な口紅で切れ長の目。目元のパープルのアイシャドウが印象的だ。服は紫色をベースにした布の面積が何とも少ない服装だ。
アレだ。似た様な服を見た事がある。ベリーダンスを踊る時の衣装だ。ブラジャーの部分は胸を強調する様な装飾、もちろんブラジャー内にはむっちりと胸が詰まっており、ボン! という音がしそうだ。お腹と腰は細くくびれ、へそには赤い宝石がついた金色のピアスが見える。
足は足首まで薄い布が幾重も折り重なったズボンを穿いている。サイドに大きなスリットが入っているのでズボンなのかスカートなのか正直分かりかねるところだ。
靴は金色のビーチサンダルの様に親指部分に引っかかりがある靴だが、細かい石が装飾されており、七センチはあるハイヒールになっている。
最後に目が留まったのは、右の肩から胸元にかけて薔薇の花の様なタトゥーだった。
凄い……漫画や映画から飛び出てきた様なナイスバディ。
彼女は一体何なのか。
私は唐突な人物に、目は大きく見開き、開いた口が塞がらなかった。
彼女はベッドから起き上がった私を見つけると少し驚き、そしてニッコリと笑いかけた。
「あっ! 目が覚めたのね! 気分はどう?」
語尾が少し掠れるハスキーな声だった。
「ダ……ダイジョウブ……デス……」
何故か言葉が片言になる。
「どれどれ~」
カツカツと金色のヒールを響かせ近づき、真っ赤なネイルが施された両手を伸ばす。
爪が長い! 私の両頬を包み込んで、腰を90度に曲げると真っ赤な髪の毛をサラリとこぼしながら、長い睫の顔を近づけた。
ムスクの香りがする。いい匂い。
「あ、あの……うっ!」
突然彼女の親指が目の下を引っ張って、まるであっかんべーをする様な両目にする。唐突の出来事に話しはじめた口を閉じるしかない。少し目が痛いが我慢だ。
「うーん貧血とかは特にないみたいね。丸一日眠っていたからどうにかなったのかと思ったわ」
彼女はベッドの端に腰をかけながら、笑いかける。
「えっ一日!?」
思わずオウム返しをしてしまった。
泳いで、潜って、人を助けて、心臓マッサージを施しての人工呼吸。確かに大変だったけれどもそんなに眠り続ける程の疲労だっただろうか?
思わず自分の両腕を抱きしめて体をさすってみる。しかし何処も問題なさそうだ。柔らかいシャツの生地が心地よいだけだ。
赤髪の女性は左腕をあげて私の短い髪の毛を撫でながら右から左から私を観察する様に見つめた。
な、何だろう……凄く品定めされている様なこの視線は。ビクつきながら上目遣いで見つめると、指で私の髪の毛をクルクルと巻きはじめた。短い髪の毛が細くて長い指に絡まってはほどけてを繰り返す。
「ねぇ私はジルって言うの。あなたの名前を教えて? 黒髪に黒い瞳なんて本当に珍しいわね。確か東に住んでいる民族は黒髪で黒い瞳だって聞いた事があるけれども……初めて見るわ」
東? 東の方の民族って……ここは本当に何処なのだろう?
やはり目の前の女性は日本人ではなさそうだ。
だとしても大無海岸から海外にワープするはずもない。
私はまだ夢の中にいるのだろうか? 夢なら覚める時が何時か来るのか。
「名前……は、夏見です。山田夏見」
「ヤマダナツミ? 随分長い名前なのね」
「いえ、そうじゃなくて……えーと、名前だけならナツミです」
「ナツミ?」
「はい。ナツミです」
名を伝えると赤髪の女性ジルさんは、優しく微笑んでから小さく咳払いをした。
「ナツミ、あなたのお陰で私の店の大切な看板娘を失わずに済んだわ。本当にありがとう!」
最初は改まっていたが、最後の方はテンションが高くなり、言い終わるやいなや突然ギュッと抱きしめられた。
柔らかく弾力のあるおっぱいが私の顔にギュッと押し付けられる。
くっ、苦しい!
「か、看板娘って?!」
藻掻きながら問いかける。
看板娘というのは、助けたプラチナブロンドの女性──マリンの事だろうか。そういえば、彼女はその後問題ないのだろうか。
ジルさんはベッドから立ち上がると、両腕を組み少しのけぞりながら言った。
「あなたの助けた子は踊り子であり、歌い手なのよ」
「お、踊り子っ? 歌い手!?」
「そう。この港町一番の宿屋兼酒場である『ジルの店』。つまり、私の経営する店の一番人気の踊り子でもあり歌い手よ」
そう言ってジルさんは両腕を、ようこそ! と言わんばかりに広げて見せた。
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