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048 特別な事
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「よし。こんなもんかな」
私は持ってきた荷物をまとめて部屋をぐるっと見回した。
ベッドの上、よし。綺麗に片付けた。
ドレッサーの前、よし。忘れ物なし。
1つ奥にある部屋に移る。ここはバスルーム。
うん。綺麗に洗った!
「よし!」
私は両腕を腰に当てて大きく仰け反った。
大丈夫。綺麗に片付けた!
「ナツミ、何やってんだ?」
バスルームで仁王立ちになる私に、ザックがドアから顔だけを出して、不思議そうな顔をする。
「え? ちゃんと片付ける事が出来たか確認したところだよ」
「へぇ」
それは『ジルの店』での癖なのでは? つまり職業病ではないのか? と、ザックは思わずにはいられなかった。しかし、何だかきちんとしているのがナツミらしくて思わず笑ってしまった。
「何で笑うかな」
「いいや。きっとアルマも助かるだろうなって思ってさ」
「そんな。アルマさんはもう一度掃除をすると思うけど……」
バスルームのドアを通って、ザックの脇をすり抜け部屋に戻る。
水泳教室も終わりを迎えた。部屋でシャワーを浴び身支度を調えたら、あとは帰るだけだ。
大きな前進を見せた水泳教室だったと思う。
まぁ、酔っ払ってノアに絡んだのは頂けないけれども、前向きになったノアの顔を見たらそれはそれで丸く収まって良かったと思う。
……今後お酒には注意しないと。ファルの町の住人はお酒に強いのかな? 良く考えたらお昼からワインをがぶがぶ飲んでいる様な。
その割には、ザック、ノア、シンは普通だよね酔っ払っている様子はない。
私は気をつけないと何処で失敗するか分からないし。
そうして、明日からまた忙しない日常がはじまる。
そこへ部屋のドアを2回ノックする音が聞こえた。
「ナツミ~。もう準備出来たぁ?」
良く通る声はミラの声だった。
もしかして私の用意を待っていたのかな。悪い事をしたかも、私はザックと視線を合わせた。ザックはニヤッと笑って両手を上に上げる仕草をした。特に返事をしても良いみたいだ。
「うん。準備出来たよ。ごめんね、遅くなって~」
「違う違う! 遅くないから。そうじゃなくて、ここを開けてくれる?」
ドアの向こうで籠もった様な声が聞こえる。
「入ってきて大丈夫だよ~」
私は部屋の真ん中で声をあげるが、何故かドアの向こうは静まりかえってしまう。
「ほ、本当に開けて大丈夫かしら」
「ナツミが言うんだから大丈夫なんじゃないの?」
「そ、そうよね」
どうやらミラだけではなくマリンもいる様で、何故かドアの前で2人共入って来る事を躊躇している。
私は首を傾げて大きく歩くと、勢いよく部屋のドアを開けた。
「どうしたの? だいじょ」
大丈夫。と、そこまで言いかけたのに何故かドアの前にいたミラとマリンが飛び上がる。
「きゃぁっ! ゴメンナサイ。別に邪魔をしに来たわけじゃないのっ!」
「見てないからっ! 大丈夫」
ミラもマリンもドアからくるっと背を向けて肩を上げて縮こまっていた。
「な、何? 何を見てないの?」
私は訳が分からず、ドアノブに手をかけたまま目を丸めてしまう。
私の声にマリンが恐る恐る振り返る。それから海の底に似たブルーの瞳を大きく見開いて頬をパッとピンク色に染め、大きく安堵の溜め息をついた。
「あっ、大丈夫だった」
少し間の抜けたマリンの声にミラも振り返り、私を見て大きく溜め息をついた。
「もう、マリンったら。何でナツミがザックとキスしてると思い込んでるのよ!」
ミラが溜め息をついてから、隣のマリンの背中をパチンと叩いた。
「だって。昨日の夕方訪れた時、ザックも全然気が付いてくれなくて。凄いキスシーンだったから、今日もそうだったらどうしようと思って……」
マリンがモジモジしながらミラに言い返していた。
昨日の夕食の準備が出来たとノアとマリンが呼びに来たのに、私とザックが濃厚なキスをしていたから……どうやら、マリンは同じ状態になっていると思い込んでいたらしい。
それを気遣ってミラも部屋のドアを開けるのを遠慮していたのだ。
私は顔が赤くなったのが分かった。首の辺りまで赤くなっている様な気がする。
「だ、大丈夫! 今はキスはしてないからっ!」
手を振って否定をするが、言ったセリフが間抜けすぎて部屋の中でザックが吹き出した。
「ブハッ。『今は』って!」
「あっ。違う。そうじゃなくて!」
くっ。この言い方では『これからするつもり』とか『前はしていた』とか、そんな感じになってしまう。
私は頭から湯気を出しそうな程赤くなり、その場で固まってしまう。
「わ、分かったわ。今はしていないのなら大丈夫ね」
そこで、何故かマリンがフォローしてくれたが、あまりフォローになっていない。
「う、うん。大丈夫」
もう、恥ずかしい!
とにかくこれで押し切る事に決めた。
「と、とにかく。コホン! ザック、あのね。ナツミと一緒にしたい事があるから、席を外してもらってもいい?」
ミラが咳払いをしながら、小ぶりの部の袋をあげて見せた。
「俺が席を外すのか?」
ザックは涙を拭いながら、ドアの方に歩いてきた。
「そう。ザックも嬉しい事だから! ね? 少しだけナツミとマリンと私の3人にさせて欲しいのよ」
ミラが上目遣いでザックにワザとねだる様な言い方をした。
「さぁて。何を企んでいるんだか。まぁ、かまわないぜ」
「ザック。ありがとう」
ミラはザックの前で両手を叩いて嬉しそうに笑った。
ザックはそんなミラの頭をポコンと軽く叩き、今度はマリンの頭もポコンと連続で叩いた。
それは、ザックの癖だった。
他の人にしているのを見ると何だか、複雑な気持ちに……モヤモヤしてしまう。
そして、ザックは私の方に振り向いた。
私は同じ様に頭をポコンと叩いてくれると思って思わず待ち構えた。
「ナツミ、あと30分程したら別荘を出るからな。下のウッドデッキで待ってる」
ザックはそう言うと、上に引きあげる様に大きな左手で私の後頭部をすくい上げた。
分かったよ──返事をしようと口を開いたが、ザックの顔が上から降ってくる様に落ちて来た。そして、私の唇にピッタリと合わさる様にザックのそれが重なった。
驚いて大きく目を見開くが、視界に入るのはザックの笑っている濃いグリーンの瞳だった。
ザックは私の口内を大きく舐めあげる。吐息が漏れそうになるがそれすらも吸いあげる。最後は上顎を舐めて唇を吸いあげ、音を立てて去っていった。
突然の行為に、目の前のミラとマリンも小さく「え」と言ったまま固まっている。
「じゃぁな」
ザックは軽くウインクすると、最後に私の頬を引っぱる様に触って去っていった。
その間私はひと言も声をあげられなかったのは言うまでもない。
私達3人は皆俯いたまま無言で部屋に入りドアを閉めた。
「何だったの? あれは。何か凄かったけど」
そこで、ようやくミラが私に振り向いて興奮気味に両手をバタバタさせて詰め寄ってきた。
私は火照る顔を両手で押さえる。
私も頭をポコンと叩かれるというか、撫でられるもんだと思っていたのに。
「ファルの町の男性はその……凄いんだね、あんな堂々とキスするなんて」
私は昨日に引き続き、堂々とキスシーンを披露した自分に恥ずかしくて、穴があったら入りたくて仕方なかった。
だけれど私の言葉にマリンが驚いて声をあげる。
「そんな事はないわ。頬にキスや唇に軽いキスはよくある様に思うけど。あんなに、熱烈なキスを目前で見るのは初めてっていうか、その、えっと、また見ちゃった……」
昨日から立て続けに人のキスシーンを見せられているのもあり、最初は説明じみていたのに突然尻すぼみになるマリンだった。
そして、白い肌が見る見るピンク色に染まっていく。
「ご、ごめんその、変なとこばっかりお目見えさせてしまって」
ノアとマリンの見目麗しいカップルならともかく、ザックは良いとしても私が相手じゃぁね……嫌なものを見た気分だろう。
「そ、そんな事ないわ。私こそゴメンナサイ」
マリンが慌てて否定する。
マリンが本当に言いたかったのは、ナツミがとても可愛く見えたと言う事なのだが、当然恥ずかしくて言い出せない。
そこへミラが鼻息荒く声をあげる。
「変な事ないわよ! 何か貴重な場面に出会えてこちらこそラッキーって言うか。ザックって軽い感じのキスばっかりしてるイメージがあるから。その、あんな、凄く濃厚なの目の前で披露してくれるなんて意外って言うか」
かなり興奮気味でまくし立てる。
「軽いキスばっかり?」
私は首を傾げてしまう。
確かにザックはキスが多めの様な気がするけれども。
そう、軽いキスからはじまって必ず最後は濃厚になる様な気がする。
「うん。ザックって、女の子たちがほら離さない割に特別な女を作らないでしょ? それもあるのか誰にでも平等に接するの。目の前であんまり不公平な事はしないのよね。あっ、ベッドの上では分からないけど。ザックと関係のあった女の子の話を聞くと、ザックは凄くキスが上手いらしくて。やっぱりキスの上手い男性はエッチも上手なんだなぁって……はっ」
そこまで言ってミラは慌てて口を押さえた。
「ふーん。そうなんだぁ。へぇ……」
私はミラの話を聞いて少し面白くなくなった。
しかし、照れの連続だったので、ひとまず頭が冷えた感じで冷静さを取り戻す事が出来た。
「とにかく、相手はあのザックだし、仕方ないって事よ。あたしが言いたかったのは、そんな中でナツミは1人キスは濃厚なのもらうし、特別だって事なの!」
ミラはつい調子に乗りすぎたと冷や汗をかいた。
何だかフォローされてしまって申し訳ない。
「ふふ。分かってるから。ミラそんなに慌てないでよ」
私はソファに座りながら、ミラに笑いかけた。そして皆にソファに座る様に促した。
「はぁ、心臓に悪いったら。と、とにかく、あたしとマリンが来たのは一緒にお化粧をしようと思って来たの。ほら、30分しかないんだから、はじめるよ」
「え?」
そう言ってミラは目の前に持ってきた袋の中身を広げた。
袋の中身は、お化粧道具一式だった。
私は持ってきた荷物をまとめて部屋をぐるっと見回した。
ベッドの上、よし。綺麗に片付けた。
ドレッサーの前、よし。忘れ物なし。
1つ奥にある部屋に移る。ここはバスルーム。
うん。綺麗に洗った!
「よし!」
私は両腕を腰に当てて大きく仰け反った。
大丈夫。綺麗に片付けた!
「ナツミ、何やってんだ?」
バスルームで仁王立ちになる私に、ザックがドアから顔だけを出して、不思議そうな顔をする。
「え? ちゃんと片付ける事が出来たか確認したところだよ」
「へぇ」
それは『ジルの店』での癖なのでは? つまり職業病ではないのか? と、ザックは思わずにはいられなかった。しかし、何だかきちんとしているのがナツミらしくて思わず笑ってしまった。
「何で笑うかな」
「いいや。きっとアルマも助かるだろうなって思ってさ」
「そんな。アルマさんはもう一度掃除をすると思うけど……」
バスルームのドアを通って、ザックの脇をすり抜け部屋に戻る。
水泳教室も終わりを迎えた。部屋でシャワーを浴び身支度を調えたら、あとは帰るだけだ。
大きな前進を見せた水泳教室だったと思う。
まぁ、酔っ払ってノアに絡んだのは頂けないけれども、前向きになったノアの顔を見たらそれはそれで丸く収まって良かったと思う。
……今後お酒には注意しないと。ファルの町の住人はお酒に強いのかな? 良く考えたらお昼からワインをがぶがぶ飲んでいる様な。
その割には、ザック、ノア、シンは普通だよね酔っ払っている様子はない。
私は気をつけないと何処で失敗するか分からないし。
そうして、明日からまた忙しない日常がはじまる。
そこへ部屋のドアを2回ノックする音が聞こえた。
「ナツミ~。もう準備出来たぁ?」
良く通る声はミラの声だった。
もしかして私の用意を待っていたのかな。悪い事をしたかも、私はザックと視線を合わせた。ザックはニヤッと笑って両手を上に上げる仕草をした。特に返事をしても良いみたいだ。
「うん。準備出来たよ。ごめんね、遅くなって~」
「違う違う! 遅くないから。そうじゃなくて、ここを開けてくれる?」
ドアの向こうで籠もった様な声が聞こえる。
「入ってきて大丈夫だよ~」
私は部屋の真ん中で声をあげるが、何故かドアの向こうは静まりかえってしまう。
「ほ、本当に開けて大丈夫かしら」
「ナツミが言うんだから大丈夫なんじゃないの?」
「そ、そうよね」
どうやらミラだけではなくマリンもいる様で、何故かドアの前で2人共入って来る事を躊躇している。
私は首を傾げて大きく歩くと、勢いよく部屋のドアを開けた。
「どうしたの? だいじょ」
大丈夫。と、そこまで言いかけたのに何故かドアの前にいたミラとマリンが飛び上がる。
「きゃぁっ! ゴメンナサイ。別に邪魔をしに来たわけじゃないのっ!」
「見てないからっ! 大丈夫」
ミラもマリンもドアからくるっと背を向けて肩を上げて縮こまっていた。
「な、何? 何を見てないの?」
私は訳が分からず、ドアノブに手をかけたまま目を丸めてしまう。
私の声にマリンが恐る恐る振り返る。それから海の底に似たブルーの瞳を大きく見開いて頬をパッとピンク色に染め、大きく安堵の溜め息をついた。
「あっ、大丈夫だった」
少し間の抜けたマリンの声にミラも振り返り、私を見て大きく溜め息をついた。
「もう、マリンったら。何でナツミがザックとキスしてると思い込んでるのよ!」
ミラが溜め息をついてから、隣のマリンの背中をパチンと叩いた。
「だって。昨日の夕方訪れた時、ザックも全然気が付いてくれなくて。凄いキスシーンだったから、今日もそうだったらどうしようと思って……」
マリンがモジモジしながらミラに言い返していた。
昨日の夕食の準備が出来たとノアとマリンが呼びに来たのに、私とザックが濃厚なキスをしていたから……どうやら、マリンは同じ状態になっていると思い込んでいたらしい。
それを気遣ってミラも部屋のドアを開けるのを遠慮していたのだ。
私は顔が赤くなったのが分かった。首の辺りまで赤くなっている様な気がする。
「だ、大丈夫! 今はキスはしてないからっ!」
手を振って否定をするが、言ったセリフが間抜けすぎて部屋の中でザックが吹き出した。
「ブハッ。『今は』って!」
「あっ。違う。そうじゃなくて!」
くっ。この言い方では『これからするつもり』とか『前はしていた』とか、そんな感じになってしまう。
私は頭から湯気を出しそうな程赤くなり、その場で固まってしまう。
「わ、分かったわ。今はしていないのなら大丈夫ね」
そこで、何故かマリンがフォローしてくれたが、あまりフォローになっていない。
「う、うん。大丈夫」
もう、恥ずかしい!
とにかくこれで押し切る事に決めた。
「と、とにかく。コホン! ザック、あのね。ナツミと一緒にしたい事があるから、席を外してもらってもいい?」
ミラが咳払いをしながら、小ぶりの部の袋をあげて見せた。
「俺が席を外すのか?」
ザックは涙を拭いながら、ドアの方に歩いてきた。
「そう。ザックも嬉しい事だから! ね? 少しだけナツミとマリンと私の3人にさせて欲しいのよ」
ミラが上目遣いでザックにワザとねだる様な言い方をした。
「さぁて。何を企んでいるんだか。まぁ、かまわないぜ」
「ザック。ありがとう」
ミラはザックの前で両手を叩いて嬉しそうに笑った。
ザックはそんなミラの頭をポコンと軽く叩き、今度はマリンの頭もポコンと連続で叩いた。
それは、ザックの癖だった。
他の人にしているのを見ると何だか、複雑な気持ちに……モヤモヤしてしまう。
そして、ザックは私の方に振り向いた。
私は同じ様に頭をポコンと叩いてくれると思って思わず待ち構えた。
「ナツミ、あと30分程したら別荘を出るからな。下のウッドデッキで待ってる」
ザックはそう言うと、上に引きあげる様に大きな左手で私の後頭部をすくい上げた。
分かったよ──返事をしようと口を開いたが、ザックの顔が上から降ってくる様に落ちて来た。そして、私の唇にピッタリと合わさる様にザックのそれが重なった。
驚いて大きく目を見開くが、視界に入るのはザックの笑っている濃いグリーンの瞳だった。
ザックは私の口内を大きく舐めあげる。吐息が漏れそうになるがそれすらも吸いあげる。最後は上顎を舐めて唇を吸いあげ、音を立てて去っていった。
突然の行為に、目の前のミラとマリンも小さく「え」と言ったまま固まっている。
「じゃぁな」
ザックは軽くウインクすると、最後に私の頬を引っぱる様に触って去っていった。
その間私はひと言も声をあげられなかったのは言うまでもない。
私達3人は皆俯いたまま無言で部屋に入りドアを閉めた。
「何だったの? あれは。何か凄かったけど」
そこで、ようやくミラが私に振り向いて興奮気味に両手をバタバタさせて詰め寄ってきた。
私は火照る顔を両手で押さえる。
私も頭をポコンと叩かれるというか、撫でられるもんだと思っていたのに。
「ファルの町の男性はその……凄いんだね、あんな堂々とキスするなんて」
私は昨日に引き続き、堂々とキスシーンを披露した自分に恥ずかしくて、穴があったら入りたくて仕方なかった。
だけれど私の言葉にマリンが驚いて声をあげる。
「そんな事はないわ。頬にキスや唇に軽いキスはよくある様に思うけど。あんなに、熱烈なキスを目前で見るのは初めてっていうか、その、えっと、また見ちゃった……」
昨日から立て続けに人のキスシーンを見せられているのもあり、最初は説明じみていたのに突然尻すぼみになるマリンだった。
そして、白い肌が見る見るピンク色に染まっていく。
「ご、ごめんその、変なとこばっかりお目見えさせてしまって」
ノアとマリンの見目麗しいカップルならともかく、ザックは良いとしても私が相手じゃぁね……嫌なものを見た気分だろう。
「そ、そんな事ないわ。私こそゴメンナサイ」
マリンが慌てて否定する。
マリンが本当に言いたかったのは、ナツミがとても可愛く見えたと言う事なのだが、当然恥ずかしくて言い出せない。
そこへミラが鼻息荒く声をあげる。
「変な事ないわよ! 何か貴重な場面に出会えてこちらこそラッキーって言うか。ザックって軽い感じのキスばっかりしてるイメージがあるから。その、あんな、凄く濃厚なの目の前で披露してくれるなんて意外って言うか」
かなり興奮気味でまくし立てる。
「軽いキスばっかり?」
私は首を傾げてしまう。
確かにザックはキスが多めの様な気がするけれども。
そう、軽いキスからはじまって必ず最後は濃厚になる様な気がする。
「うん。ザックって、女の子たちがほら離さない割に特別な女を作らないでしょ? それもあるのか誰にでも平等に接するの。目の前であんまり不公平な事はしないのよね。あっ、ベッドの上では分からないけど。ザックと関係のあった女の子の話を聞くと、ザックは凄くキスが上手いらしくて。やっぱりキスの上手い男性はエッチも上手なんだなぁって……はっ」
そこまで言ってミラは慌てて口を押さえた。
「ふーん。そうなんだぁ。へぇ……」
私はミラの話を聞いて少し面白くなくなった。
しかし、照れの連続だったので、ひとまず頭が冷えた感じで冷静さを取り戻す事が出来た。
「とにかく、相手はあのザックだし、仕方ないって事よ。あたしが言いたかったのは、そんな中でナツミは1人キスは濃厚なのもらうし、特別だって事なの!」
ミラはつい調子に乗りすぎたと冷や汗をかいた。
何だかフォローされてしまって申し訳ない。
「ふふ。分かってるから。ミラそんなに慌てないでよ」
私はソファに座りながら、ミラに笑いかけた。そして皆にソファに座る様に促した。
「はぁ、心臓に悪いったら。と、とにかく、あたしとマリンが来たのは一緒にお化粧をしようと思って来たの。ほら、30分しかないんだから、はじめるよ」
「え?」
そう言ってミラは目の前に持ってきた袋の中身を広げた。
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