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068 慰めて欲しい その1
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「ザック、シャワーは浴びないの?」
私がシャワールームから顔を覗かせてベッドサイドの椅子に座るザックに問いかける。
「あ? ああ……浴びるけど、ナツミが先に入って良いぞ」
片手にグラスを持ち琥珀色の液体を飲み干した。名前は分からないがどうもウイスキーの様な香りに似たお酒だった。
おかしい……
あんなにいつもシャワーを一緒に浴びたいって言っていたのに飛びついてこないなんて。私は首を傾げてザックを見つめた。
ザックも、何か問題でも? と言わんばかりに首を傾げている。
椅子に座っていても長い足を投げ出す様に広げている。厨房のお手伝いで相当疲れたのかな。
「……一緒に浴びなくても良いの?」
思わず私が声をかけるとザックが驚いた様に顔を上げた。グラスをベッドサイドのテーブルに置くと振り向いた私の方を見てから一瞬ためらいそれから少し俯いて溜め息をついた。
「浴びたいけど……」
「浴びたいけど?」
「浴びるだけじゃ済まなくなるぞ。それに、今ナツミを抱いたら滅茶苦茶にしてしまうかもしれない」
「えぇ?」
私は驚いて声を上げる。大抵いつもヘトヘトになるまで抱かれていると思うけれど、それ以上ってどんな?!
しかし、ザックが申告するぐらいだからもしかして何かあったのかな。
私は体半分だけ出していたが驚いてザックの元に駆け寄り、ザックの長い足の間に入って、彼の目の前に立つ。
私が駆け寄った事でザックが驚き私の顔を見上げる。それから、少しだけ苦しそうに瞳を歪ませると低い声で呟く。
「こら。言ってる側から俺に不用意に近づくと乱暴にするかもしれないぜ。だから」
ザックは私を近づけない様にしているのか言葉が刺々しい。
もしかすると、ザックはトニが私のところに訪れたところを見て、何か気持ちが落ち着かないのかもしれない。
勘の良いザックの事だ。トニの気持ちがどれだけ自分へ向いていたのか認識した事だろう。
私は急に不安になってザックの言葉に被せる様に話しかける。
「ま、まさか! トニのところへ行きたくなったとか」
私はザックと同じ視線になるためにその場でしゃがみ込む。金髪の向こうでザックの目が丸くなる。
「え。トニ?」
「そんな……昼間の私のやり取りを改めて見て、トニが愛しく見えてしまって」
「ち、違う違う違う。どうしてそういう話になるんだ」
ザックは慌てて首を振って否定する。
「だってザックが少し落ち込んでいる様に見えるし」
私は膝立ちになりザックの両太股に手を置いてしたからザックを覗き込む。
「落ち込んで……」
ザックは二の句が継げなくなる。
俺はナツミがさらりと言い当てた「落ち込んでいる」という表現に驚いてしまう。確かにトニとナツミのやり取り、そしてマリンとの過去の事がノアに知られていた事が分かり少し気持ちが沈んでいるが、そんなに分かりやすかっただろうか。
よく観察しているナツミにドキリとしてしまう。嘘つきで上手に隠してきた人生なのに、どうもナツミの前だと力が抜けてしまう様だ。
「だって、あれほどシャワーに入る事を要求していたのに、拒否するなんて!」
ナツミは俺の顔に近づけて太股に添えていた手に力を入れる。
「えぇ~そこ!?」
誘わないのが不自然と来るか。俺そんなにがっついて誘っていたかな。
……誘っていたな。しつこいぐらい。
「だって、お昼覗き見していた事を聞いてから何だか様子が変だよ?」
ナツミは首を傾げて心配そうに大きな黒い瞳を揺らした。
吸い込まれそうな黒い瞳。見つめているだけで飽きないと思っているなんて、こんなに心配してくれるナツミの手前不謹慎で言えない。
「ハハ。そうか? 心配のしすぎだ」
俺はナツミの黒い髪の毛を右手で撫でて頬を撫でる。吸いつく様な肌触りは健在だ。
触れるだけでこの感触……まずい。だって、今日は色々な事がありすぎて落ち込むと言うよりナツミがより愛しくなった。
そして、反面ドロリとした黒い感情までもが自分の中に巣くって、ナツミの全てを自分で塗り潰してしまいたい。
女が抱きたくて仕方ないと言う生理的なものとは違う。嫉妬と愛しさとが混ざり合うと感情の制御がきかない。こういう衝動は今までにないから、俺は俺自身が怖い。
感情とは厄介だと溜め息をもう一度ついてしまう。
ザックは軽く笑ったが最後に溜め息をついた。やはり何かあるのかな。
もしかして──
「仕事で凄く嫌な事があった?」
「え」
「そうじゃなければ、軍人の仕事も終わった後に『ジルの店』を手伝う事になって、疲れが溜まりすぎているとか」
「は?」
「愚痴が凄く溜まっているなら、まず話を聞くよ?」
「話って……」
「あ、でも軍人だから大切な事は話せないよね? 更に『ジルの店』の文句だったらどう受け止めたら良いの私は。どうしよう?」
一人自問自答したあげく困った着地点となってしまい何故かザックに聞き返してしまった。何を言っているの。そうではなくてザックの話を聞くのが先なのに。
最後は黙っていたザックは口を閉じてプルプル震えていたが、最後辛抱ならずに盛大に吹き出し笑いはじめた。
「ブハッ! アハハハ」
左手で両目を覆い隠して右手を椅子の後ろにだらりと下げると、天を向いて大きく笑う。
「何で笑うの、心配しているのに」
いつも余裕のあるザックだから余程の事があったのだろうと思って心配しているのに。
笑われるとは心外だが、何だかいつもの調子を取り戻した様だ。
「ハハッ。あー、もう。ナツミは本当にクルクル考えているんだな。笑うわ。話を聞くなんてナツミぐらいだろ」
ひとしきり笑うとザックは膝立ちになっている私の両脇に手を差し込んで立たせる。
下から見上げるザックの顔は少し幼い様に見えたそれから私の腰の後ろに腕を回して、日焼けしたほっぺたを私のお腹につける。それからやはり肩を揺らして笑っていた。
ザックの金髪を撫でる。とても柔らかくて細い毛だ。耳の後ろや襟足は少しくせ毛の様だった。
「もしかして、今日はあの夕日が見える部屋で一人になりたい日だった?」
何か考え事がしたい時、ザックはウツさんのお店の上にある部屋でゆっくりすると言っていたけれども。根掘り葉掘り聞くのは逆効果だったかも。
私の声にザックは微笑みながら首を左右に振って否定した。
「そんな事ないさ。一人よりナツミの側にいたい」
「それなら良いけど……じゃぁ、話をしたくなったらいつでも言ってね」
ザックは顔を上げて今度は顎を私のお腹にピタリとつける。垂れ気味の瞳がスッと細くなる。そして意地悪そうに右側の口角を上げた。
「落ち込んでいる男の慰め方は様々だけど、話を聞いてやると言うのは『ファルの宿屋通り』ではナツミぐらいだろ?」
「な、慰め」
そ、そうだった。ここはそういった事も出来るお店だった。私は顔を赤くしてザックの前髪をオールバックにする様に撫でつけて照れ隠しをする。
「こぉら、俺の前髪で遊ぶなよ」
「あっ」
そう言ってザックは急に立ちあがる。私はふらついて後ろに後ずさるがギュッと抱きしめられて、今度は私がザックを見上げる番になった。
ゆっくりとザックは顔を近づけておでこに、目尻にキスをする。
「なぁ、知ってるか? 落ち込んでいる男を慰めるのはシャワーを一緒に浴びるのが一番なんだ。どう?」
ザックのゴツゴツした指が頬を撫でて、お腹に響く様な低い声で囁く。
「……だから最初に誘ったのに」
私は笑いながらザックの首に飛びつく。ふわりとベルガモットの香りがした。
シャワーはザックの頭より少し高いところに位置している。銀色のシャワー口部分は蓮の花のが散った後の様に見える。生ぬるいお湯を浴びながら、私はザックの太い首に背伸びをして抱きついていた。ザックは私の背中とお尻を握る様に抱きしめていた。お湯で滑って二人の間に隙間が出来ない様に抱きしめる。
ザックはお湯を被ってから直ぐに私を抱きしめると噛みつく様なキスをしてきた。唇ごと食べられて、最後下唇を優しく噛んで離れる。
痛い事はないけれども、言葉で表現する様に食べられてしまいそうな錯覚に陥りおかしな事にゾクゾクする。
角度を変えて深く舌を絡める口を大きく開けてお湯が少し流れてくるのもお構いなしに吸いあげる。だ液なのかお湯なのか分からないけれども溜め息の間に漏れる声ですら吸いあげられてしまう。苦しいけれど嫌じゃない。いつも瞳を開けるとザックと視線が合って優しく意地悪そうに笑ったりしているのに今日は違っていた。ザックは瞳を閉じたままで彫りの深い瞳にお湯が流れていった。お湯で濡れた金色の睫毛はとても長い。
ずっと見ていたけれど……結構苦しくなってきた。嫌じゃないけれど息を出来なかったら立っていられなくなる。
私は合わさった口と口の間に隙間を作って息を吸おうと思った。上手に息が吸えたらいいけれどずっと上を向いているのと、ザックが頬を押し付けて鼻を押さえたり、お湯が入ってきたりでうまく息が継げない。なのにザックはその隙間すらキスの角度を瞬時に変えて埋めてくる。
思わず私は足の力が抜けてズルリと膝をつきそうになった。ようやくザックのキスから解放されて溜め息をついたが、ザックは直ぐに私を引きあげると立たせて壁に両手をつけさせる。つるりとした素材の壁に手をついて溜め息をついた。
シャワーの部屋に服を脱いで入る前まではおどけていたはずなのに、全然手加減がない。無言のままにひたすらキスが続いた。
今度は後ろから責められるのかもしれない。少しザックの顔を見ようと首を後ろの動かす。すると、ザックが私の頬に軽くキスをしてから、ベロリと首筋を舐めあげた。
「ヒッ!!」
色気のない声を上げてしまうが仕方がない。だってその後ザックは首の後ろを甘く噛みついたのだ。それから吸いあげて、また噛みついてを繰り返す。痕がが残るとかそんなの気にしていられない。
肌が粟立って縮こまると同時に腰をザックに突き出す。ザックの怒張の部分に丁度お尻が当たって、私は思わず腰を引こうとしたがザックが両手で私の腰を掴みたぐり寄せる。
くる!
もしかしてこのままザックは私の中に沈み込むつもりかも。そう思って衝撃に耐えようとしたけれど、そうではなかった。私の足のつけ根と両足の間に出来た隙間に熱くて太い張出た己を滑り込ませる。
ザックの分身は長くて太い。私の足の間からエラが張った様な先端が顔を出している。
「はっ……」
ザックが息をゆっくり吐きながらユルユルと腰を前後に動かす。
私自身でそこがたっぷり濡れており、更にお湯と混ざり合って滑りがよくなっていた。
ザックの怒張が股の間でぷっくりと膨れた花芯を掠めて私は腰を揺らしてしまう。
「んっ」
私は下唇を噛んで声を抑える。肩がプルプル震えているのが分かったのかザックが上半身を倒して私の背中に逞しい胸を合わせる。体重をかけられて倒れそうになるところに腰を掴んでいた両腕で私の小さな胸を後ろからすくい上げて体を倒れない様に起こす。
ザックの荒い息が耳元で聞こえる。私の体で興奮してくれているのかと思うと凄く嬉しい。後ろから胸の尖りを弄られ続ける。
「あっ……そこ」
駄目じゃないから、否定できない。私の小さな胸がザックの大きな手で形を変えて頂点だけを弄られる。堪らなくて腰をザックの動きに合わせて揺らしてしまう。
お腹の奥が熱くなって更に蜜が溢れてきているのは分かっている。ザックの怒張が私の花芯を掠める度にこの熱い塊の角度を変えてくれないかと思ってしまう。
早く私の中に。来て……
そう呟こうとした時にザックが腰をガツガツと早く動かした。そのせいで花芯が押されて私はあっという間に昇り詰めてしまう。
「んっ、イクっ」
突如の事で腰が揺れ足の力が抜けそうになってしまう。それをザックが持ち上げる。
ザックが突如動かしていた腰を止めると、熱い息を吐きながら呻いた。
「ああ。イイっ……はっ」
その瞬間ザックは私の胸をギュッと掴むと耐える様にブルブルと震えた。
下を向いてみると、私の股から突き出た先端の部分が先ほど見た時より大きく膨らんでいる様に思う。トロッと白い体液が少しだけ太股に伝っていた。
「あ、あれ? 少ない」
私の小さな呟きを聞き逃さなかったザックが荒い息を堪えながら吹き出していた。
「ハハ。少ないって、ハァ。ちょっと出た……寸前で止めようとしたのに。ナツミが突然イクからその反動で」
ザックが息を整えながら腰を突き出していた私を真っすぐ立たせた。
お互い肩で息をしながら会話をする。
「だって……ちょっと出たって?」
昇り詰めるのがあっという間だったのは散々胸を弄るから。しかしどうしてザックは昇り詰める瞬間に自分の意志で止めたの?
不思議に思いながら、ようやくザックと向かい合う。
ザックはシャワーから出るお湯を止めると、立っていても大きく反り返る自分の分身に私の手を導いて握らせた。
「あっ……」
太くて固い赤黒いグロテスクな塊がピクリと動いた。ザックにされるがまま握りしめ、更に体を抱きよせられる。
ザックを振り返るとにやりと意地悪そうに笑っていた。
「朝言った事覚えてるか?」
「朝……」
確かザックは──
今晩は寸止めはなしな?
お腹に響く声で言っていたけれども。
「でも、自分で寸止め?」
私は首を傾げて呟いた。そんな鈍い私に、ザックは軽く笑う。
「直ぐに出すのは勿体ないからな、せっかくの機会だし」
握りしめた私の手を更に自分で握りしめると顔をグッと近づけて耳元で囁く。
体はお湯で濡れているし辺りも湯気で曇っている中、最も湿った声をザックが上げる。
「昨日の続きをしようぜ。──俺のをさ、舐めてくれよ」
その言葉にゆっくりと振り返って私はザックと視線を合わせた。
挑発的なグリーンの瞳が嬉しそうに笑っている。その笑い方が凄く黒いものに見えたのは気のせいかな……
怖い様な、挑む様なザックの視線に釘付けになる。
私はザックの要求にうっとりしながら頷いた。
私がシャワールームから顔を覗かせてベッドサイドの椅子に座るザックに問いかける。
「あ? ああ……浴びるけど、ナツミが先に入って良いぞ」
片手にグラスを持ち琥珀色の液体を飲み干した。名前は分からないがどうもウイスキーの様な香りに似たお酒だった。
おかしい……
あんなにいつもシャワーを一緒に浴びたいって言っていたのに飛びついてこないなんて。私は首を傾げてザックを見つめた。
ザックも、何か問題でも? と言わんばかりに首を傾げている。
椅子に座っていても長い足を投げ出す様に広げている。厨房のお手伝いで相当疲れたのかな。
「……一緒に浴びなくても良いの?」
思わず私が声をかけるとザックが驚いた様に顔を上げた。グラスをベッドサイドのテーブルに置くと振り向いた私の方を見てから一瞬ためらいそれから少し俯いて溜め息をついた。
「浴びたいけど……」
「浴びたいけど?」
「浴びるだけじゃ済まなくなるぞ。それに、今ナツミを抱いたら滅茶苦茶にしてしまうかもしれない」
「えぇ?」
私は驚いて声を上げる。大抵いつもヘトヘトになるまで抱かれていると思うけれど、それ以上ってどんな?!
しかし、ザックが申告するぐらいだからもしかして何かあったのかな。
私は体半分だけ出していたが驚いてザックの元に駆け寄り、ザックの長い足の間に入って、彼の目の前に立つ。
私が駆け寄った事でザックが驚き私の顔を見上げる。それから、少しだけ苦しそうに瞳を歪ませると低い声で呟く。
「こら。言ってる側から俺に不用意に近づくと乱暴にするかもしれないぜ。だから」
ザックは私を近づけない様にしているのか言葉が刺々しい。
もしかすると、ザックはトニが私のところに訪れたところを見て、何か気持ちが落ち着かないのかもしれない。
勘の良いザックの事だ。トニの気持ちがどれだけ自分へ向いていたのか認識した事だろう。
私は急に不安になってザックの言葉に被せる様に話しかける。
「ま、まさか! トニのところへ行きたくなったとか」
私はザックと同じ視線になるためにその場でしゃがみ込む。金髪の向こうでザックの目が丸くなる。
「え。トニ?」
「そんな……昼間の私のやり取りを改めて見て、トニが愛しく見えてしまって」
「ち、違う違う違う。どうしてそういう話になるんだ」
ザックは慌てて首を振って否定する。
「だってザックが少し落ち込んでいる様に見えるし」
私は膝立ちになりザックの両太股に手を置いてしたからザックを覗き込む。
「落ち込んで……」
ザックは二の句が継げなくなる。
俺はナツミがさらりと言い当てた「落ち込んでいる」という表現に驚いてしまう。確かにトニとナツミのやり取り、そしてマリンとの過去の事がノアに知られていた事が分かり少し気持ちが沈んでいるが、そんなに分かりやすかっただろうか。
よく観察しているナツミにドキリとしてしまう。嘘つきで上手に隠してきた人生なのに、どうもナツミの前だと力が抜けてしまう様だ。
「だって、あれほどシャワーに入る事を要求していたのに、拒否するなんて!」
ナツミは俺の顔に近づけて太股に添えていた手に力を入れる。
「えぇ~そこ!?」
誘わないのが不自然と来るか。俺そんなにがっついて誘っていたかな。
……誘っていたな。しつこいぐらい。
「だって、お昼覗き見していた事を聞いてから何だか様子が変だよ?」
ナツミは首を傾げて心配そうに大きな黒い瞳を揺らした。
吸い込まれそうな黒い瞳。見つめているだけで飽きないと思っているなんて、こんなに心配してくれるナツミの手前不謹慎で言えない。
「ハハ。そうか? 心配のしすぎだ」
俺はナツミの黒い髪の毛を右手で撫でて頬を撫でる。吸いつく様な肌触りは健在だ。
触れるだけでこの感触……まずい。だって、今日は色々な事がありすぎて落ち込むと言うよりナツミがより愛しくなった。
そして、反面ドロリとした黒い感情までもが自分の中に巣くって、ナツミの全てを自分で塗り潰してしまいたい。
女が抱きたくて仕方ないと言う生理的なものとは違う。嫉妬と愛しさとが混ざり合うと感情の制御がきかない。こういう衝動は今までにないから、俺は俺自身が怖い。
感情とは厄介だと溜め息をもう一度ついてしまう。
ザックは軽く笑ったが最後に溜め息をついた。やはり何かあるのかな。
もしかして──
「仕事で凄く嫌な事があった?」
「え」
「そうじゃなければ、軍人の仕事も終わった後に『ジルの店』を手伝う事になって、疲れが溜まりすぎているとか」
「は?」
「愚痴が凄く溜まっているなら、まず話を聞くよ?」
「話って……」
「あ、でも軍人だから大切な事は話せないよね? 更に『ジルの店』の文句だったらどう受け止めたら良いの私は。どうしよう?」
一人自問自答したあげく困った着地点となってしまい何故かザックに聞き返してしまった。何を言っているの。そうではなくてザックの話を聞くのが先なのに。
最後は黙っていたザックは口を閉じてプルプル震えていたが、最後辛抱ならずに盛大に吹き出し笑いはじめた。
「ブハッ! アハハハ」
左手で両目を覆い隠して右手を椅子の後ろにだらりと下げると、天を向いて大きく笑う。
「何で笑うの、心配しているのに」
いつも余裕のあるザックだから余程の事があったのだろうと思って心配しているのに。
笑われるとは心外だが、何だかいつもの調子を取り戻した様だ。
「ハハッ。あー、もう。ナツミは本当にクルクル考えているんだな。笑うわ。話を聞くなんてナツミぐらいだろ」
ひとしきり笑うとザックは膝立ちになっている私の両脇に手を差し込んで立たせる。
下から見上げるザックの顔は少し幼い様に見えたそれから私の腰の後ろに腕を回して、日焼けしたほっぺたを私のお腹につける。それからやはり肩を揺らして笑っていた。
ザックの金髪を撫でる。とても柔らかくて細い毛だ。耳の後ろや襟足は少しくせ毛の様だった。
「もしかして、今日はあの夕日が見える部屋で一人になりたい日だった?」
何か考え事がしたい時、ザックはウツさんのお店の上にある部屋でゆっくりすると言っていたけれども。根掘り葉掘り聞くのは逆効果だったかも。
私の声にザックは微笑みながら首を左右に振って否定した。
「そんな事ないさ。一人よりナツミの側にいたい」
「それなら良いけど……じゃぁ、話をしたくなったらいつでも言ってね」
ザックは顔を上げて今度は顎を私のお腹にピタリとつける。垂れ気味の瞳がスッと細くなる。そして意地悪そうに右側の口角を上げた。
「落ち込んでいる男の慰め方は様々だけど、話を聞いてやると言うのは『ファルの宿屋通り』ではナツミぐらいだろ?」
「な、慰め」
そ、そうだった。ここはそういった事も出来るお店だった。私は顔を赤くしてザックの前髪をオールバックにする様に撫でつけて照れ隠しをする。
「こぉら、俺の前髪で遊ぶなよ」
「あっ」
そう言ってザックは急に立ちあがる。私はふらついて後ろに後ずさるがギュッと抱きしめられて、今度は私がザックを見上げる番になった。
ゆっくりとザックは顔を近づけておでこに、目尻にキスをする。
「なぁ、知ってるか? 落ち込んでいる男を慰めるのはシャワーを一緒に浴びるのが一番なんだ。どう?」
ザックのゴツゴツした指が頬を撫でて、お腹に響く様な低い声で囁く。
「……だから最初に誘ったのに」
私は笑いながらザックの首に飛びつく。ふわりとベルガモットの香りがした。
シャワーはザックの頭より少し高いところに位置している。銀色のシャワー口部分は蓮の花のが散った後の様に見える。生ぬるいお湯を浴びながら、私はザックの太い首に背伸びをして抱きついていた。ザックは私の背中とお尻を握る様に抱きしめていた。お湯で滑って二人の間に隙間が出来ない様に抱きしめる。
ザックはお湯を被ってから直ぐに私を抱きしめると噛みつく様なキスをしてきた。唇ごと食べられて、最後下唇を優しく噛んで離れる。
痛い事はないけれども、言葉で表現する様に食べられてしまいそうな錯覚に陥りおかしな事にゾクゾクする。
角度を変えて深く舌を絡める口を大きく開けてお湯が少し流れてくるのもお構いなしに吸いあげる。だ液なのかお湯なのか分からないけれども溜め息の間に漏れる声ですら吸いあげられてしまう。苦しいけれど嫌じゃない。いつも瞳を開けるとザックと視線が合って優しく意地悪そうに笑ったりしているのに今日は違っていた。ザックは瞳を閉じたままで彫りの深い瞳にお湯が流れていった。お湯で濡れた金色の睫毛はとても長い。
ずっと見ていたけれど……結構苦しくなってきた。嫌じゃないけれど息を出来なかったら立っていられなくなる。
私は合わさった口と口の間に隙間を作って息を吸おうと思った。上手に息が吸えたらいいけれどずっと上を向いているのと、ザックが頬を押し付けて鼻を押さえたり、お湯が入ってきたりでうまく息が継げない。なのにザックはその隙間すらキスの角度を瞬時に変えて埋めてくる。
思わず私は足の力が抜けてズルリと膝をつきそうになった。ようやくザックのキスから解放されて溜め息をついたが、ザックは直ぐに私を引きあげると立たせて壁に両手をつけさせる。つるりとした素材の壁に手をついて溜め息をついた。
シャワーの部屋に服を脱いで入る前まではおどけていたはずなのに、全然手加減がない。無言のままにひたすらキスが続いた。
今度は後ろから責められるのかもしれない。少しザックの顔を見ようと首を後ろの動かす。すると、ザックが私の頬に軽くキスをしてから、ベロリと首筋を舐めあげた。
「ヒッ!!」
色気のない声を上げてしまうが仕方がない。だってその後ザックは首の後ろを甘く噛みついたのだ。それから吸いあげて、また噛みついてを繰り返す。痕がが残るとかそんなの気にしていられない。
肌が粟立って縮こまると同時に腰をザックに突き出す。ザックの怒張の部分に丁度お尻が当たって、私は思わず腰を引こうとしたがザックが両手で私の腰を掴みたぐり寄せる。
くる!
もしかしてこのままザックは私の中に沈み込むつもりかも。そう思って衝撃に耐えようとしたけれど、そうではなかった。私の足のつけ根と両足の間に出来た隙間に熱くて太い張出た己を滑り込ませる。
ザックの分身は長くて太い。私の足の間からエラが張った様な先端が顔を出している。
「はっ……」
ザックが息をゆっくり吐きながらユルユルと腰を前後に動かす。
私自身でそこがたっぷり濡れており、更にお湯と混ざり合って滑りがよくなっていた。
ザックの怒張が股の間でぷっくりと膨れた花芯を掠めて私は腰を揺らしてしまう。
「んっ」
私は下唇を噛んで声を抑える。肩がプルプル震えているのが分かったのかザックが上半身を倒して私の背中に逞しい胸を合わせる。体重をかけられて倒れそうになるところに腰を掴んでいた両腕で私の小さな胸を後ろからすくい上げて体を倒れない様に起こす。
ザックの荒い息が耳元で聞こえる。私の体で興奮してくれているのかと思うと凄く嬉しい。後ろから胸の尖りを弄られ続ける。
「あっ……そこ」
駄目じゃないから、否定できない。私の小さな胸がザックの大きな手で形を変えて頂点だけを弄られる。堪らなくて腰をザックの動きに合わせて揺らしてしまう。
お腹の奥が熱くなって更に蜜が溢れてきているのは分かっている。ザックの怒張が私の花芯を掠める度にこの熱い塊の角度を変えてくれないかと思ってしまう。
早く私の中に。来て……
そう呟こうとした時にザックが腰をガツガツと早く動かした。そのせいで花芯が押されて私はあっという間に昇り詰めてしまう。
「んっ、イクっ」
突如の事で腰が揺れ足の力が抜けそうになってしまう。それをザックが持ち上げる。
ザックが突如動かしていた腰を止めると、熱い息を吐きながら呻いた。
「ああ。イイっ……はっ」
その瞬間ザックは私の胸をギュッと掴むと耐える様にブルブルと震えた。
下を向いてみると、私の股から突き出た先端の部分が先ほど見た時より大きく膨らんでいる様に思う。トロッと白い体液が少しだけ太股に伝っていた。
「あ、あれ? 少ない」
私の小さな呟きを聞き逃さなかったザックが荒い息を堪えながら吹き出していた。
「ハハ。少ないって、ハァ。ちょっと出た……寸前で止めようとしたのに。ナツミが突然イクからその反動で」
ザックが息を整えながら腰を突き出していた私を真っすぐ立たせた。
お互い肩で息をしながら会話をする。
「だって……ちょっと出たって?」
昇り詰めるのがあっという間だったのは散々胸を弄るから。しかしどうしてザックは昇り詰める瞬間に自分の意志で止めたの?
不思議に思いながら、ようやくザックと向かい合う。
ザックはシャワーから出るお湯を止めると、立っていても大きく反り返る自分の分身に私の手を導いて握らせた。
「あっ……」
太くて固い赤黒いグロテスクな塊がピクリと動いた。ザックにされるがまま握りしめ、更に体を抱きよせられる。
ザックを振り返るとにやりと意地悪そうに笑っていた。
「朝言った事覚えてるか?」
「朝……」
確かザックは──
今晩は寸止めはなしな?
お腹に響く声で言っていたけれども。
「でも、自分で寸止め?」
私は首を傾げて呟いた。そんな鈍い私に、ザックは軽く笑う。
「直ぐに出すのは勿体ないからな、せっかくの機会だし」
握りしめた私の手を更に自分で握りしめると顔をグッと近づけて耳元で囁く。
体はお湯で濡れているし辺りも湯気で曇っている中、最も湿った声をザックが上げる。
「昨日の続きをしようぜ。──俺のをさ、舐めてくれよ」
その言葉にゆっくりと振り返って私はザックと視線を合わせた。
挑発的なグリーンの瞳が嬉しそうに笑っている。その笑い方が凄く黒いものに見えたのは気のせいかな……
怖い様な、挑む様なザックの視線に釘付けになる。
私はザックの要求にうっとりしながら頷いた。
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