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094 長い夜 その2
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ドサリと音を立ててベッドに体を沈められる。
ザックが私の両肩を押さえて、鼻息も荒くキスを繰り返す。角度を変えてザックの舌が口内を撫でていく。去ろうとする舌を追いかけるのがすっかり癖になってしまった。
唇を合わせないキス。お互いの舌が絡まる音が聞こえる。時々ザックが溢れてくるだ液を吸い上げキスをする。
上顎を舐められるとゾクゾクして、下腹辺りがキュッとなる。両膝を擦り合わせて曲げていると、シャツが擦れる音が聞こえた。
ザックが私の下半身から引き抜く様にシャツを脱がしていた。
キスに夢中で全く気がつかなかった。シャツのボタンどころか、袖を通していた腕もあっという間に抜かれていた。
ショーツは先ほど眠っていた時に先に脱がされていたので、私は今体には何も纏っていない。相変わらずのザックの素早さに笑ってしまう。
「何で笑ってんだよ」
私がクスクス笑った事で、ふと我に返ったザックが溜め息交じりに不満を言う。体をぶつける様なキスが止まり、ザックが私の足の間に自分の体を入れる。
麻素材のズボンの前はきつく張っている。ズボンを脱がずに私の足の付け根にそれを擦りつける。
「だって……んっ」
足の付け根に擦りつけた熱い怒張を感じる。そんな少しの刺激に、私の体は震える。
私の照れた顔を覗き込んだザックは溜め息をついた。
それから、私の首筋を舌でなぞり柔らかく舌で挟み込む様なキスをする。
くすぐったくて首を縮めようとするが、私の背中に強く腕を回したザックから逃れる事は出来ない。
「気がついたら裸になってるんだもん。ショーツなんて寝てる時に脱がされてるし」
「最初から穿いていなかったんじゃないか」
「そんな訳ない」
「穿いてなかったと思うけどなぁ」
「もう。嘘つき」
「嘘つきか?」
「うん」
耳の側で、顔の側で。ショーツを穿いていた穿いていないの会話を続けながら笑う。
最後には「嘘つき」と軽く不満を言ってみる。
どうでもいい話なのに。何だかくすぐったくてうれしい。
「ナツミもさぁ、たまに嘘つきだよな」
ザックがそう言いながら唇を、舌を使って私の体をゆっくりと下っていく。
「えぇ……そんな事ない」
私は突然の嘘つき呼ばわりにザックの金髪を指ですきながら、与えられる小さな快感に身を震わせる。
ザックはゆっくりと下った、胸の上で主張する小さな尖りを咥えて、優しく吸い上げ舌で舐める。
チュッと可愛い音を立て離れる。次に小さな膨らみを持ち上げると今度は頬張る様に咥えた。
「あっ、だ、駄目」
胸への愛撫はすぐに腰の辺りがムズムズしてくる。もう片方の胸も同じように掬い上げ親指と人さし指で尖りをつままれる。今度は痛くない程度にダイヤルを回す様な仕草で甘い快感を与えてくれる。
「駄目だってば。そこは、その……」
「ここか? 何で駄目なんだ」
チュッと音を立ててザックは口に含んだ尖りを離してくれた。
私の胸元で見上げる様にして話しかけるザック。普段私が見上げるばかりなのに、ザックの顔が意外に幼く見えた。
見慣れないザックの可愛い顔を見つめながら金髪を指ですく。
実は駄目ではない。
その様子にザックが、口の端を上げて笑う。再び乳房を口に含んでしまう。たっぷりのだ液と一緒に舌で先の尖りを弾かれる。
「あっ、んっ、ああっ」
私は堪らず腰を揺らしてしまう。
胸はきつく吸い上げられると痛いと感じるから苦手──だと思っていたけれど、実はそうではない。ささやかな私の胸は、実は感じやすくて乳首はすぐに尖りザックからの愛撫を待っている。
しかも少しでも触れられると、どんどんお腹や体全体に広がる様な甘い痺れに変わる。その痺れは突き抜ける様な感じではなく、体内に蓄積されていくのが分かる。
この甘い気持ちよさが恥ずかしくて、逃れられなくなるのが怖くて。私は──
「その、おっぱいは少し痛いかなって。んっ」
小さな嘘をついてしまう。
「……ふぅん」
視線を逸らし手の甲を囓って快感を逃そうとする私にザックが返事をする。
垂れ気味の瞳がスッと細くなって口の端を上げた。それから、下半身をピタリと合わせたまま私の顔の横に片手をつき体を反る様にして持ち上げた。
胸の愛撫からザックが離れてしまってホッと溜め息をついたが、急に快感から放り出されて寂しくもなった。
以前にも同じ様な事あったなぁ。お風呂場で二回目のエッチをした時だったかな。
私はボンヤリとザックを眺める。すると、ザックはサイドテーブルの引き出しを開けて青いガラスの小瓶を取り出す。
ザックの掌の中に収まる大きさの瓶。ランプの光を受けて、中に液体が入っているのが見える。
「それは?」
ボンヤリしながら尋ねると、ザックが小瓶をサイドテーブルの上に置く。差し込んである瓶の蓋を取り、瓶を持ち上げて香りを吸った。
「甘い匂い。これはな「素直になる薬」なんだと」
「え」
「先日ネロに渡された薬さ。何でも倉庫裏の俺達二人を観察して思いついたんだと」
「そ、倉庫裏」
私はサッと頬を赤らめて青くする。ネロさんに外でのエッチを観察されていた事を思い出したからだ。
覗かれていた事自体、恥ずかしすぎるのに、ネロさんに観察された上で薬を作られる私達って何?
「そんなものいらないと思ったが、早速役に立ちそうだ」
ザックがそう言うと私の顎をつかんだ。ザックの顔が間近に迫り、小瓶を傾けられる。
「えっ。役に立つって何? ネロさんが作った薬なんて大丈夫なの? それに、素直になるってどういう事なの?」
私は矢継ぎ早にザックに問いかける。
以前祭りで裏町に行った時、立ち寄ったウツさんの店について思い出した。外見はアクセサリーを売っているのに、訪れた男性に媚薬を売っていた。
もしかして、それは媚薬なのでは?!
私は慌てて目を見開く。確かザックは媚薬は嫌いだと言っていたはずなのに。
「い、嫌だよ。怖いよ、ザック。そんな媚薬なんて!」
私は顎をつかまれた手を必死に握りしめて、離してもらう様に藻掻く。迫ってくるザックの顔と傾けられた小瓶を交互に見つめて止めてと訴える。
だが、ザックに上に乗られているのでビクともしない。
「これは「素直になる薬」だ。俺は媚薬だなんてひと言も言ってない。もちろんネロだってそんな事言っていなかった」
「そんな「素直になる薬」って一体何よ。それに、ネロさんの薬なんて信用できないっ」
「ナツミなぁ、ネロはファルの軍の中で最上級の魔法使い、医療魔法の使い手だぞ」
「だけど変態なんだよ」
間髪入れず失礼な本音を返す。
「変態だけど、腕は一流だぜ」
「一流の変態なんて信用できないっ」
「一流の変態じゃない、変態だが一流だって……あれ? 俺は何を言っているんだ?」
ザックが「腕」という言葉を飛ばしたものだから、訳が分からなくなり眉を寄せた。
そんな事より!
傾いている小瓶の口からとろみのある青い液体が見えた。駄目だ、垂れてくる!
私は堪らず固く目を閉じて、何が何でも液体を飲むまいと口を固く閉じた。
真っ暗になった視界でザックが呟く。
「それになナツミ、この薬は俺が飲む事を薦められたものだ」
「え」
ザックの台詞に驚いて私は目を大きく見開いた。ザックが目を開けた私に軽く笑って溜め息をついた。
「ひねくれているのは俺なんだってさ」
軽く困った様に笑ったザックがいた。
「そ、そうなんだ……」
「でも、今のナツミを見ていたらさ。同じ様な気がするんだ俺と」
ザックが優しく笑って私の顎をつかんでいた手を緩めた。
……ほんとは痛いのではなくて気持ちがいいってバレている。
それもそのはず。私の体を優しくかわいがるのはザックなのだから。
百戦錬磨の彼の前で反応すればどんな状況か丸わかりなはずだ。
私はゴクンと唾を飲み込んだ。
「なぁ。素直になって抱き合ってみないか? 俺の本音も、ナツミの本音も。さらけ出したら、俺達もっと……さ」
最後の言葉は照れくさいのかごにょごにょ濁したザックだった。
私は傾けられた小瓶をジッと見つめながら体の力を抜いた。
「もし、本当に素直になってさ。ザックのエッチが気持ちよくなかったら」
そんなはずはないのに何故か意地悪な言葉が口に出てしまう。
「それは悲惨だな」
ザックが笑って瓶を傾けてきた。
「もし、ザックが私では満足してないとか分かったりしてさ」
早く果ててしまうザックがそんなはずはないだろうけれど。
「そんな訳ないだろ」
ザックが再び笑って、ポタリと、とろみのある液体を垂らした。
青い一滴の液体が、私の口の中に入る。
「んんっ。甘い。チョコレートの味がする……」
ザックが甘い香りがすると言っていたが、一滴だけでも鼻から抜ける香りがした。チョコレートの甘い香りだ。
「ちょこれと? 菓子の甘い香りだな……」
チョコレートが分からないザックが、どんどん小瓶を傾けて私の口元から青いとろみのある液体を垂らしていく。
「あ……」
全部私の口の中に入れるのかと思ったらそうではなかった。ザックは私の胸元に向かって一筋液体を垂らしていく。最後は胸の尖りに垂らした。
小瓶中の液体は大さじ一杯程度の量だった。
「じゃぁ、今度は俺が舐めるからな。ジッとしてろよ」
ザックはそう言うと、私の口の横に垂れた液体を肉厚な舌で舐め取っていく。熱い舌に私は体を再び震わせた。
「甘いなぁ。ああココショコの味だ。茶色い板状の菓子で、女に人気があるやつさ」
「ココショコ? そうなんだ……あっ」
液体が垂れたルートを下るザックの舌。
首筋と窪んでいる鎖骨の辺りを甘く囓って薄い唇を這わせる。そして、小瓶をベッドサイドのテーブルに置く。空になった小瓶がコロンとテーブルの上で倒れた。それに気を取られた時だった。
ザックが私の片方の乳房を手で掬った。
垂らされた薬でぬらぬらと胸の尖りが光っているのを目にしたザックは、指の腹で少し押さえ込んで弄りはじめる。
「あっ、んっ」
指の先に絡みつく薬の滑りで更に快感を強める。
堪らず背中を仰け反り体をザックに押しつけてしまう。更にザックの下半身に自分の下半身を押しつけて強請る。
「素直になれるかねぇ俺達」
ザックは私の体を押さえつける様にしてベッドに沈めると両胸を掬い上げ、薬が塗られた胸の尖りを優しく吸い口の中でゆっくりと舐めはじめる。
「そ、れ、あああっ」
体の中に再び熱が蓄積される。逃す事が出来ない熱。発散できればいいのに、それが出来ない。下腹部が熱くなるばかりで堪らない。膝を擦り合わせて我慢したくても、ザックの大きな体が間に入っているからそれも出来ない。
私はザックの腰を両足で強く挟み込む。
ザックは残りの垂れた液体を綺麗に舐め取ると、胸を弄りながら耳元で囁く。
「可愛いなぁナツミ。可愛い。その声がいつも聞きたいのに、我慢しているよな」
「だ、だってぇ。ああっ、恥ずかしくって」
声を上げる度に、たった一滴口に含んだ液体の香りが鼻から抜ける。甘いチョコレートの香り。
珍しくザックの言葉数が多い気がする。それに私もスルスルと答える。
きっと薬の効果が早々に現れて来たのだと思う。
きっとそう。
私は体をねじり、堪っていく快感を何とか逃そうとする。だけれどそれも無理だ。
しかも、耳元で囁くザックの吐息も甘い香りがして、肌の表面を溜め息で撫でられるだけで皮膚が粟立つ。
「凄くここ尖ってる。コリコリで……小さな尖りなのにもっと触れて欲しそうだ。ピンク色で可愛い……」
音を立てて首筋を吸い上げながらひたすら胸の尖りを弄る。
「ふっ、あああっ、んっ、ああ」
「前から思っていたんだけど、感じてる時のナツミの声って、凄く腰に来る」
ザックがズボン越しに張った前を私の足の付け根に擦りつける。
私は当然ショーツを穿いていないので花芯に触れてしまい、思わず悲鳴を上げる。
その瞬間ザックに再び片方の乳房を吸い上げられた。
「んっ、イイっ!」
私は喉を反らせて腰を揺らす。行き場のなかった熱の放出先が見つかった様に感じたからだ。胸を弄られ、囁かれ、体に溜まっていく快楽が膨らむ。そして弾ける先を探している。
ザックの金髪をかきむしる様に抱いて私は呟いた。
「凄く気持ちいい。でも、堪らない」
うわごとみたいに呟く私にザックが問いかける。
「いつだったかさ、風呂場で気持ちいい触り方を尋ねたよな?」
「うん、んっ!」
確か胸の尖りを、こねる様に弄られたり弾かれる様に弄られたり、それだけで果ててしまいそうだったのに、急に止められて泣いたっけ。
「あの時ナツミは「駄目」ばっかり繰り返していたよな?」
ザックが、頭をかきむしる様に抱いていた私の腕を逃れ、再び顔を覗き込む。
鼻先が触れそうな程近くにザックの顔があり、濃いグリーンの瞳が揺れている。
小さく左右に首を振るとザックにもらったネックレスが音を立てた。
「駄目じゃないの。凄く気持ちよかったけど」
「けど?」
ザックが私の言葉の先を促す。
「私、おっぱい小さいのに。なのにすぐに気持ちよくなるって恥ずかしくって」
そこまで言って言葉を切る。それからザックの間近に迫った視線を逸らす。
魅力的なバストだったら何だか絵になるのに、小さいくせに感じやすいという事実が恥ずかしかった。
ザックがクスリと笑っていたのが分かった。
「そんな事を気にしていたのか。ハハハ、可愛いなぁ。でもナツミは勘違いしているぞ。胸なんてな、大小は関係なく感度がいいのが最高なんだぜ」
「え? あっ、あああ!」
再びザックが私の胸の尖りを弄りながら、今度は腰をわざと揺らす。ザックの怒張が下半身の膨れ上がった花芯を刺激する。
「あっ、ああっ、イイよぅ」
気持ちいい腰が揺れてザックに早くと強請る。しかしザックはズボンを穿いたまま腰を揺らすだけだ。
堪らない。次から次へと花芯の滑りをよくする蜜があふれているのが分かる。
お腹の奥で締め付けられる様な感触が切ない。だってザックが私の中には入っていないから。
「この胸の尖りを弄るとさ、切なそうな顔をするよな。泣きそうな、とろけるっていうの? その声も、イイ。それに強請るその腰を揺らすところも。あと──」
切なくてあんなに泣いたのに再び生理的な涙が堪っていく。目尻を擦りすぎて痛いのに。横目で囁くザックの顔を見上げて、ザックの話す言葉に耳を傾ける。
「俺を欲しがるナツミの瞳が最高だ」
そう言って口の端を上げた唇が目に入った途端私は声を上げた。
「ザック。ザックっ。キス、キスがイイ。キスしてよぉ」
声を隠したいからじゃない、ザックが喋る口元を見ていたら堪らずキスをして欲しくなった。
「強請られるって最高だな。俺もナツミの縋り付くキスが大好きだ」
ザックはそう言うと、優しく口を塞ぎ、腰を軽く揺さぶった。
私は体を硬直させてザックの舌を吸い上げながら一回目の絶頂に達した。
*ココショコ=チョコレートの様な板状のお菓子。溶かしても使える。
ザックが私の両肩を押さえて、鼻息も荒くキスを繰り返す。角度を変えてザックの舌が口内を撫でていく。去ろうとする舌を追いかけるのがすっかり癖になってしまった。
唇を合わせないキス。お互いの舌が絡まる音が聞こえる。時々ザックが溢れてくるだ液を吸い上げキスをする。
上顎を舐められるとゾクゾクして、下腹辺りがキュッとなる。両膝を擦り合わせて曲げていると、シャツが擦れる音が聞こえた。
ザックが私の下半身から引き抜く様にシャツを脱がしていた。
キスに夢中で全く気がつかなかった。シャツのボタンどころか、袖を通していた腕もあっという間に抜かれていた。
ショーツは先ほど眠っていた時に先に脱がされていたので、私は今体には何も纏っていない。相変わらずのザックの素早さに笑ってしまう。
「何で笑ってんだよ」
私がクスクス笑った事で、ふと我に返ったザックが溜め息交じりに不満を言う。体をぶつける様なキスが止まり、ザックが私の足の間に自分の体を入れる。
麻素材のズボンの前はきつく張っている。ズボンを脱がずに私の足の付け根にそれを擦りつける。
「だって……んっ」
足の付け根に擦りつけた熱い怒張を感じる。そんな少しの刺激に、私の体は震える。
私の照れた顔を覗き込んだザックは溜め息をついた。
それから、私の首筋を舌でなぞり柔らかく舌で挟み込む様なキスをする。
くすぐったくて首を縮めようとするが、私の背中に強く腕を回したザックから逃れる事は出来ない。
「気がついたら裸になってるんだもん。ショーツなんて寝てる時に脱がされてるし」
「最初から穿いていなかったんじゃないか」
「そんな訳ない」
「穿いてなかったと思うけどなぁ」
「もう。嘘つき」
「嘘つきか?」
「うん」
耳の側で、顔の側で。ショーツを穿いていた穿いていないの会話を続けながら笑う。
最後には「嘘つき」と軽く不満を言ってみる。
どうでもいい話なのに。何だかくすぐったくてうれしい。
「ナツミもさぁ、たまに嘘つきだよな」
ザックがそう言いながら唇を、舌を使って私の体をゆっくりと下っていく。
「えぇ……そんな事ない」
私は突然の嘘つき呼ばわりにザックの金髪を指ですきながら、与えられる小さな快感に身を震わせる。
ザックはゆっくりと下った、胸の上で主張する小さな尖りを咥えて、優しく吸い上げ舌で舐める。
チュッと可愛い音を立て離れる。次に小さな膨らみを持ち上げると今度は頬張る様に咥えた。
「あっ、だ、駄目」
胸への愛撫はすぐに腰の辺りがムズムズしてくる。もう片方の胸も同じように掬い上げ親指と人さし指で尖りをつままれる。今度は痛くない程度にダイヤルを回す様な仕草で甘い快感を与えてくれる。
「駄目だってば。そこは、その……」
「ここか? 何で駄目なんだ」
チュッと音を立ててザックは口に含んだ尖りを離してくれた。
私の胸元で見上げる様にして話しかけるザック。普段私が見上げるばかりなのに、ザックの顔が意外に幼く見えた。
見慣れないザックの可愛い顔を見つめながら金髪を指ですく。
実は駄目ではない。
その様子にザックが、口の端を上げて笑う。再び乳房を口に含んでしまう。たっぷりのだ液と一緒に舌で先の尖りを弾かれる。
「あっ、んっ、ああっ」
私は堪らず腰を揺らしてしまう。
胸はきつく吸い上げられると痛いと感じるから苦手──だと思っていたけれど、実はそうではない。ささやかな私の胸は、実は感じやすくて乳首はすぐに尖りザックからの愛撫を待っている。
しかも少しでも触れられると、どんどんお腹や体全体に広がる様な甘い痺れに変わる。その痺れは突き抜ける様な感じではなく、体内に蓄積されていくのが分かる。
この甘い気持ちよさが恥ずかしくて、逃れられなくなるのが怖くて。私は──
「その、おっぱいは少し痛いかなって。んっ」
小さな嘘をついてしまう。
「……ふぅん」
視線を逸らし手の甲を囓って快感を逃そうとする私にザックが返事をする。
垂れ気味の瞳がスッと細くなって口の端を上げた。それから、下半身をピタリと合わせたまま私の顔の横に片手をつき体を反る様にして持ち上げた。
胸の愛撫からザックが離れてしまってホッと溜め息をついたが、急に快感から放り出されて寂しくもなった。
以前にも同じ様な事あったなぁ。お風呂場で二回目のエッチをした時だったかな。
私はボンヤリとザックを眺める。すると、ザックはサイドテーブルの引き出しを開けて青いガラスの小瓶を取り出す。
ザックの掌の中に収まる大きさの瓶。ランプの光を受けて、中に液体が入っているのが見える。
「それは?」
ボンヤリしながら尋ねると、ザックが小瓶をサイドテーブルの上に置く。差し込んである瓶の蓋を取り、瓶を持ち上げて香りを吸った。
「甘い匂い。これはな「素直になる薬」なんだと」
「え」
「先日ネロに渡された薬さ。何でも倉庫裏の俺達二人を観察して思いついたんだと」
「そ、倉庫裏」
私はサッと頬を赤らめて青くする。ネロさんに外でのエッチを観察されていた事を思い出したからだ。
覗かれていた事自体、恥ずかしすぎるのに、ネロさんに観察された上で薬を作られる私達って何?
「そんなものいらないと思ったが、早速役に立ちそうだ」
ザックがそう言うと私の顎をつかんだ。ザックの顔が間近に迫り、小瓶を傾けられる。
「えっ。役に立つって何? ネロさんが作った薬なんて大丈夫なの? それに、素直になるってどういう事なの?」
私は矢継ぎ早にザックに問いかける。
以前祭りで裏町に行った時、立ち寄ったウツさんの店について思い出した。外見はアクセサリーを売っているのに、訪れた男性に媚薬を売っていた。
もしかして、それは媚薬なのでは?!
私は慌てて目を見開く。確かザックは媚薬は嫌いだと言っていたはずなのに。
「い、嫌だよ。怖いよ、ザック。そんな媚薬なんて!」
私は顎をつかまれた手を必死に握りしめて、離してもらう様に藻掻く。迫ってくるザックの顔と傾けられた小瓶を交互に見つめて止めてと訴える。
だが、ザックに上に乗られているのでビクともしない。
「これは「素直になる薬」だ。俺は媚薬だなんてひと言も言ってない。もちろんネロだってそんな事言っていなかった」
「そんな「素直になる薬」って一体何よ。それに、ネロさんの薬なんて信用できないっ」
「ナツミなぁ、ネロはファルの軍の中で最上級の魔法使い、医療魔法の使い手だぞ」
「だけど変態なんだよ」
間髪入れず失礼な本音を返す。
「変態だけど、腕は一流だぜ」
「一流の変態なんて信用できないっ」
「一流の変態じゃない、変態だが一流だって……あれ? 俺は何を言っているんだ?」
ザックが「腕」という言葉を飛ばしたものだから、訳が分からなくなり眉を寄せた。
そんな事より!
傾いている小瓶の口からとろみのある青い液体が見えた。駄目だ、垂れてくる!
私は堪らず固く目を閉じて、何が何でも液体を飲むまいと口を固く閉じた。
真っ暗になった視界でザックが呟く。
「それになナツミ、この薬は俺が飲む事を薦められたものだ」
「え」
ザックの台詞に驚いて私は目を大きく見開いた。ザックが目を開けた私に軽く笑って溜め息をついた。
「ひねくれているのは俺なんだってさ」
軽く困った様に笑ったザックがいた。
「そ、そうなんだ……」
「でも、今のナツミを見ていたらさ。同じ様な気がするんだ俺と」
ザックが優しく笑って私の顎をつかんでいた手を緩めた。
……ほんとは痛いのではなくて気持ちがいいってバレている。
それもそのはず。私の体を優しくかわいがるのはザックなのだから。
百戦錬磨の彼の前で反応すればどんな状況か丸わかりなはずだ。
私はゴクンと唾を飲み込んだ。
「なぁ。素直になって抱き合ってみないか? 俺の本音も、ナツミの本音も。さらけ出したら、俺達もっと……さ」
最後の言葉は照れくさいのかごにょごにょ濁したザックだった。
私は傾けられた小瓶をジッと見つめながら体の力を抜いた。
「もし、本当に素直になってさ。ザックのエッチが気持ちよくなかったら」
そんなはずはないのに何故か意地悪な言葉が口に出てしまう。
「それは悲惨だな」
ザックが笑って瓶を傾けてきた。
「もし、ザックが私では満足してないとか分かったりしてさ」
早く果ててしまうザックがそんなはずはないだろうけれど。
「そんな訳ないだろ」
ザックが再び笑って、ポタリと、とろみのある液体を垂らした。
青い一滴の液体が、私の口の中に入る。
「んんっ。甘い。チョコレートの味がする……」
ザックが甘い香りがすると言っていたが、一滴だけでも鼻から抜ける香りがした。チョコレートの甘い香りだ。
「ちょこれと? 菓子の甘い香りだな……」
チョコレートが分からないザックが、どんどん小瓶を傾けて私の口元から青いとろみのある液体を垂らしていく。
「あ……」
全部私の口の中に入れるのかと思ったらそうではなかった。ザックは私の胸元に向かって一筋液体を垂らしていく。最後は胸の尖りに垂らした。
小瓶中の液体は大さじ一杯程度の量だった。
「じゃぁ、今度は俺が舐めるからな。ジッとしてろよ」
ザックはそう言うと、私の口の横に垂れた液体を肉厚な舌で舐め取っていく。熱い舌に私は体を再び震わせた。
「甘いなぁ。ああココショコの味だ。茶色い板状の菓子で、女に人気があるやつさ」
「ココショコ? そうなんだ……あっ」
液体が垂れたルートを下るザックの舌。
首筋と窪んでいる鎖骨の辺りを甘く囓って薄い唇を這わせる。そして、小瓶をベッドサイドのテーブルに置く。空になった小瓶がコロンとテーブルの上で倒れた。それに気を取られた時だった。
ザックが私の片方の乳房を手で掬った。
垂らされた薬でぬらぬらと胸の尖りが光っているのを目にしたザックは、指の腹で少し押さえ込んで弄りはじめる。
「あっ、んっ」
指の先に絡みつく薬の滑りで更に快感を強める。
堪らず背中を仰け反り体をザックに押しつけてしまう。更にザックの下半身に自分の下半身を押しつけて強請る。
「素直になれるかねぇ俺達」
ザックは私の体を押さえつける様にしてベッドに沈めると両胸を掬い上げ、薬が塗られた胸の尖りを優しく吸い口の中でゆっくりと舐めはじめる。
「そ、れ、あああっ」
体の中に再び熱が蓄積される。逃す事が出来ない熱。発散できればいいのに、それが出来ない。下腹部が熱くなるばかりで堪らない。膝を擦り合わせて我慢したくても、ザックの大きな体が間に入っているからそれも出来ない。
私はザックの腰を両足で強く挟み込む。
ザックは残りの垂れた液体を綺麗に舐め取ると、胸を弄りながら耳元で囁く。
「可愛いなぁナツミ。可愛い。その声がいつも聞きたいのに、我慢しているよな」
「だ、だってぇ。ああっ、恥ずかしくって」
声を上げる度に、たった一滴口に含んだ液体の香りが鼻から抜ける。甘いチョコレートの香り。
珍しくザックの言葉数が多い気がする。それに私もスルスルと答える。
きっと薬の効果が早々に現れて来たのだと思う。
きっとそう。
私は体をねじり、堪っていく快感を何とか逃そうとする。だけれどそれも無理だ。
しかも、耳元で囁くザックの吐息も甘い香りがして、肌の表面を溜め息で撫でられるだけで皮膚が粟立つ。
「凄くここ尖ってる。コリコリで……小さな尖りなのにもっと触れて欲しそうだ。ピンク色で可愛い……」
音を立てて首筋を吸い上げながらひたすら胸の尖りを弄る。
「ふっ、あああっ、んっ、ああ」
「前から思っていたんだけど、感じてる時のナツミの声って、凄く腰に来る」
ザックがズボン越しに張った前を私の足の付け根に擦りつける。
私は当然ショーツを穿いていないので花芯に触れてしまい、思わず悲鳴を上げる。
その瞬間ザックに再び片方の乳房を吸い上げられた。
「んっ、イイっ!」
私は喉を反らせて腰を揺らす。行き場のなかった熱の放出先が見つかった様に感じたからだ。胸を弄られ、囁かれ、体に溜まっていく快楽が膨らむ。そして弾ける先を探している。
ザックの金髪をかきむしる様に抱いて私は呟いた。
「凄く気持ちいい。でも、堪らない」
うわごとみたいに呟く私にザックが問いかける。
「いつだったかさ、風呂場で気持ちいい触り方を尋ねたよな?」
「うん、んっ!」
確か胸の尖りを、こねる様に弄られたり弾かれる様に弄られたり、それだけで果ててしまいそうだったのに、急に止められて泣いたっけ。
「あの時ナツミは「駄目」ばっかり繰り返していたよな?」
ザックが、頭をかきむしる様に抱いていた私の腕を逃れ、再び顔を覗き込む。
鼻先が触れそうな程近くにザックの顔があり、濃いグリーンの瞳が揺れている。
小さく左右に首を振るとザックにもらったネックレスが音を立てた。
「駄目じゃないの。凄く気持ちよかったけど」
「けど?」
ザックが私の言葉の先を促す。
「私、おっぱい小さいのに。なのにすぐに気持ちよくなるって恥ずかしくって」
そこまで言って言葉を切る。それからザックの間近に迫った視線を逸らす。
魅力的なバストだったら何だか絵になるのに、小さいくせに感じやすいという事実が恥ずかしかった。
ザックがクスリと笑っていたのが分かった。
「そんな事を気にしていたのか。ハハハ、可愛いなぁ。でもナツミは勘違いしているぞ。胸なんてな、大小は関係なく感度がいいのが最高なんだぜ」
「え? あっ、あああ!」
再びザックが私の胸の尖りを弄りながら、今度は腰をわざと揺らす。ザックの怒張が下半身の膨れ上がった花芯を刺激する。
「あっ、ああっ、イイよぅ」
気持ちいい腰が揺れてザックに早くと強請る。しかしザックはズボンを穿いたまま腰を揺らすだけだ。
堪らない。次から次へと花芯の滑りをよくする蜜があふれているのが分かる。
お腹の奥で締め付けられる様な感触が切ない。だってザックが私の中には入っていないから。
「この胸の尖りを弄るとさ、切なそうな顔をするよな。泣きそうな、とろけるっていうの? その声も、イイ。それに強請るその腰を揺らすところも。あと──」
切なくてあんなに泣いたのに再び生理的な涙が堪っていく。目尻を擦りすぎて痛いのに。横目で囁くザックの顔を見上げて、ザックの話す言葉に耳を傾ける。
「俺を欲しがるナツミの瞳が最高だ」
そう言って口の端を上げた唇が目に入った途端私は声を上げた。
「ザック。ザックっ。キス、キスがイイ。キスしてよぉ」
声を隠したいからじゃない、ザックが喋る口元を見ていたら堪らずキスをして欲しくなった。
「強請られるって最高だな。俺もナツミの縋り付くキスが大好きだ」
ザックはそう言うと、優しく口を塞ぎ、腰を軽く揺さぶった。
私は体を硬直させてザックの舌を吸い上げながら一回目の絶頂に達した。
*ココショコ=チョコレートの様な板状のお菓子。溶かしても使える。
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