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139 新 オベントウ大作戦 その5
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コルトはソルが連れてきた商人だ。例の魔薬を携えて。
ソルもコルトもそれを「香辛料」と呼んだ。
香辛料は名の通りハーブの様なものだった。緑色の独特の香りがして、小さなスプーン一杯分の量が小分けされている。例の種の植物から採取した葉や実をそれぞれ乾燥させて砕いたものだ。
その薬は絶大な効果だった。開放的でセックスに用いると極端に感じる様になり、女も男も今まで以上に強い快感を得る。更に不安の解消、不眠などにも効果がある事が分かった。
しかし反動も大きい。長期間や大量に摂取すると体がおかしくなる。どうおかしくなるかと言えば様々なのだが。神経が高ぶりすぎ、痛覚がなくなる、幻覚を見せる、食欲がなくなる等々。あげると切りがない。
実は事前にジルから渡されていた種を魔力で急成長させて分析済みだった。
その為、ウツはコルトの目の前で、薬包内の香辛料と呼ばれる魔薬を魔法で分析してみせた。
「俺が作る媚薬とは根本的に違うな。これは強力なものだ。こんなものが自然界に存在していたとは驚きだな。しかしお前達の一回分とする量は少々多すぎやしないか。俺にはこの半分が適量だと思う。そうすればもっと儲かるだろう」
冷静に分析し淡々と伝えるとコルトは突然ニヤリと笑いウツの事を先生と呼びはじめた。
「先生は分かってるじゃないの。しかもそれを魔法で即座に分析してみせるとは。とてもヤブの町医者とは思えない能力だ」
「ヤブじゃないよ」
ウツの事をヤブだと言ったのはソルらしい。
(ソルめ。後で覚えていろよ)
「どうだい先生もこの儲け話に乗らないか?」
「そうだなぁ」
ウツはそう答えただけで返答をしていないのに、何故かコルトは了承と捉えていた。
ウツは香辛料──魔薬に興味があった。
誰も読む事が出来ない文字で書かれた古い文献を紐解くと、南の国が繁栄していた時、魔法の薬品として使用していたと書かれている事に気がついた。
(これ以上の古い文献や資料は北の国に行かないと。王立図書館ならありそうだし。まぁ、いいか本物が目の前にあるのだから。調べるには好都合。薬を長期間使用している人間も目の前にいる事だし)
そんな事をウツは考えていたのだが、薬に興味がある様子がコルトに十分伝わったのだ。その為ウツが儲け話に乗ったと思ったらしい。
そこからのコルトは早かった。翌日には別の男二人を連れて来た。
一人はバッチと呼ばれていた。用心棒代わりなのか軍人あがりの男だった。体格が確かジルの店に様子見で訪れた男と似ている。
(あの時の男がバッチか。この男もコルトと同じだな。薬を使っている)
そして、二人の統率者である男はダンクといった。歳はウツより少し下だったが、何より整った顔だった。服装もボロボロの外套以外は高級品、一流品だった。深紅のチュニックには黒と金の刺繍が施されており、植物の蔦の様な模様が描かれている。腰帯は金色で見事に編み上げられたものだった。
「羽振りがいいみたいだね。香辛料商人とはかなり儲かる様だね」
ダンクの服装を頭から爪先まで舐める様に見てウツは鼻で笑った。
旅をすればそれだけ金もかかるのに外套以外は全て高級品で揃えている。綺麗に切りそろえられた髪の毛、不精ひげもなく不衛生な様子はない。高級宿にでも泊まっている風体だ。
ダンクはウツの力の抜けた態度に微笑んでいた。嫌味と言って噛みつかない。柔軟な態度だった。
「何だ。先生は興味ないのか? 装飾品を売っているから興味があると思っていたのに」
「あんたまで俺を先生と呼ぶのか。まぁいいけどね。俺が興味あるのはその薬、いや違うなぁ香辛料だけさ」
そう言ってダンクの腰帯に入っているであろう薬包を指差しニヤリと笑って見せた。
ダンクはそんなウツの様子に目を丸めてから笑う。それから、ウツの肩をポンポンと叩いて近くに寄ってきた。
「先生らしい答えだね。だけど分かりやすくていい。答えはいつも単純なものだよな」
「……」
無言で頷くウツの顔は無表情だが、ダンクは嘘がない事を見抜いている。
(このダンクという男はよく人を観察しているな。単純な答え──か。俺が魔薬にとても興味がある事は嘘ではないからね)
ウツはダンクの様子を見て長い髪を揺らして店の奥に入る様に促した。
「お前達は販路を開きたいのだろう? ソルから聞いたよ。話を聞こうじゃないか。当然俺も儲けさせてもらうが何よりその香辛料を強化してみたいからな実験や研究をさせてもらう」
ウツの話を聞いてダンクは顎を引いてニヤリと笑う。整った顔だが人格がその表情に表れている。
目が三日月の様だと言えば三日月に失礼か? 等とウツは思う。
ダンクが歯を見せニタリと笑う。とても気味の悪い嫌な顔だ。
長年生きていればその人間の人生が顔に出るとはよく言ったものだ。ダンクの顔が素敵だと女が群がるなら、悪いがその女の目は節穴だ。
「販路はもちろん開きたい。それに先生の分析は凄いから研究してもらえるのはこちらも大歓迎さ。そんな事を提案してくれた人は今までいなかった。更に強化した香辛料の開発が出来るとは考えてもいなかった。素晴らしい!」
ダンクは両手を上げて軽く拍手をして奥の部屋に歩くウツに続く。
その後にコルトとバッチという男も続く。
「俺はこの町がとても気に入った。頭のいい青年に、頭のいい先生。そして女。最高さ!」
「俺もコルトに同意する。ファルの女は気に入った」
二人は下卑た笑いで答えていた。
「そりゃどうも。でも一筋縄ではいかないんだよ。ファルの裏町には軍人が、がっつり入り込んでいるからな」
ファルの町を褒められたのか馬鹿にされたのか分からないが、ウツはファルの町の現状を簡単に話す。
ザームという男が取り仕切っているとはいえ、ザックとノアという裏町出身の軍人も関わっているのは事実だ。何か裏町で悪さをすれば直ぐに軍に知られてしまい逮捕され投獄や罰せられる。
「──と言う事で、俺も媚薬を販売するのはおおっぴらに出来ないんだよね。だから装飾品を売りつつ町医者も兼務しつつ、って事なんだ。軍人や役人に目をつけられると面倒だからね」
まぁこれも嘘ではない。媚薬は役人や軍人の御用達でもあるのは秘密だが。
緊張感なく淡々と答えると、軍人という言葉にダンクが反応した。
「先生の言う通りだと思う。ファルの町でゆっくりと根を生やした商売をするならと思って、役人は既に押さえてある。実は今エックハルトという貴族の家で世話になっているのさ」
「エックハルトか……」
とうとう出た名前にウツは大して驚きもせず溜め息を一つついて見せた。
(出会って直ぐの俺にここまでの情報を話すとは。ダンクという男は相当焦っているのか?)
ウツは部屋の奥まで来るとゆっくりと振り向いてダンク達と向き合う。するとダンクの後ろに控えていたコルトとバッチが貧乏揺すりをはじめた。
(もしかして薬が切れるとこうなるのか?)
ウツはコルトとバッチの尋常じゃない汗の掻き方などを観察する。
一つの仮説をウツは立てる。おそらく仲間二人が香辛料、魔薬のせいで壊れかけなのだ。
(この二人が使える内に動きたいと言う事か)
コルトとバッチの二人を観察するウツに気がついたダンクは、視線を後ろの二人に移した。
「コルト、バッチ。先にエックハルトの屋敷に戻っていていいぞ。先生とは俺が話す」
ダンクの声を聞くなりコルトは嬉しそうに手を叩いた。
「ホントか? はぁ~やったぜ。俺、今朝の分の香辛料が薄かったみたいでさぁ。じゃぁな~先生またな」
コルトは早々に手を振って出て行った。バッチも直ぐにコルトに続こうとしたが、踏みとどまりダンクに尋ねた。
「一人で問題ないか?」
「ああ、問題ないさ。子供じゃないんだ。バッチも戻れ」
「悪いな」
「気にするな」
そう言ってバッチの鍛えられた肩をポンポンと強く叩いて背中を押し出した。
バタバタと二人が店から出て行った足音を聞いた後、静かにウツはダンクに尋ねた。
「販路を急ぐ理由はコルトとバッチが原因か?」
するとダンクはやれやれと首を振りながら近くの丸椅子に座り込んだ。
「長期にわたって香辛料を使用している二人だが、最近量が増えてな。切らすと落ち着きがなくなって少し面倒なんだ。まぁ効果が持続している時はいい仕事をしてくれるからいいんだが。それも後少しだと思う」
どうやらウツの仮説が当たっている様だ。
「つまり二人が使い物にならなくなる前に事を急ぎたいと言うわけか?」
スパッと一言告げるとダンクは肩を上げて笑った。
「先生は頭がいいね。直ぐに答えにたどりつくのもいいねぇ。その通りさ。あの二人は用心棒としては申し分ないが幻覚を見る様になるとまずいからな」
そしてウツの瞳を見つめる。
その視線を受けながらウツは考える。
(ふぅん。それで仲間を鞍替えってわけか。そうやってお前は色々な町を渡り歩いてきたのだな)
ダンクの見つめる瞳に自分の姿が映っている。おそらくダンクは今度はウツを仲間に引き入れ様としている。
(確かに俺はろくでもない人間だよ。そんなところがダンクには分かるんだろうな)
ウツも近くの丸椅子に腰をかけて足を組んだ。
「で? 貴族のエックハルトは押さえたと聞いたが」
ウツがダンクに話を促す。
するとダンクは思い出した様に手を叩いて声を上げた。
「そうだった! 実は目障りと思う軍人が二人いるんだ」
「軍人? ああ……もしかしてザックとノアの事か?」
白を切るのもおかしい。ここまで話をしてザックとノアが関係ないとは言えない。だって彼奴ら二人は一番深く裏町に関わっている軍人だ。
ウツはスルリと答える。
するとダンクは大きく足を開いて前屈みになり、ボソボソと話しはじめる。ウツを下から睨み上げながら。
「そうあの二人さ。先生もよく知っていると思うけれども」
「裏町で知らない奴はいないよ」
「俺はどうしてもあの二人がこの商売には邪魔だと思っているんだ。だから少しの間、休んでいてもらおうと思っている」
「休んでいてもらう?」
「コルトとバッチと戦わせて少し傷を負ってもらうぐらいでいいんだが。その間に販路を拡大と」
「傷ねぇ」
あわよくば殺してしまうとしている事は丸わかりだ。先ほどのコルトとバッチの状況を見れば分かる。薬で幻覚を見るまでにもなった体はきっと痛みすら感じない。
(そんな男と戦ったらザックもノアも強いとは言え無傷ではいられないかもしれない。よくあんな状態にまでコルトとバッチを持っていったものだ。それともこのダンクという男はそれを狙っていてコルトとバッチを雇ったのだろうか。しかもナツミとマリンをどうにかしようとしているのだろうし)
ウツはダンクという男の所業に内心息を飲んだ。
「なぁ先生。協力してくれないか。あの二人を誘い出したいんだ。それには二人の女でつるのがいいと思うんだよな」
ダンクは笑いながら、ウツの目の前に白い薬包を取り出して握らせた。
「先生さ。さっきノアとか言う男に薬の箱とか渡していたけれども変な事してないだろうなぁ?」
コルトがおにぎりとにらめっこをしているウツを見つめて尋ねた。
ウツはおにぎりを見つめながらここ数日前の事を思い出していた。しかし、コルトの声に戻されてハッとなった。
「してないよ。だってコルトも調べたでしょ? あれはノアにも伝えた様に定期的に届けている薬さ」
不格好なネロがにぎったというおにぎりを取り出しながらコルトに静かに言って聞かせる。するとコルトは口を尖らせて子供の様に体を左右に振る。
「ああ分かったけど……なんか目の前にアイツが来るとちょっと苛つくって言うか。クソ、ああ、早く殴りてぇ」
落ち着きがない。
殴りたいとはノアの事だろう。両手にはめていた指輪を撫でている。指輪の石が相手に当たって攻撃性が上がるのだろう。
(コルトは薬が切れてきたのか。もうこいつも心身共に限界だな)
ウツは溜め息をついて、コルトを見上げる。
「そう言えばコルト。あの方法は試したかい?」
「何だよあの方法って」
「香辛料をよく砕いて粉状にするんだ。本当に少しでいいんだ。耳かき一杯分を」
「はぁ? 耳かき一杯分なんて水に溶かして飲むにしても少なすぎるだろ? 冗談じゃないぞ。俺はずっと部屋で焚きしめる方法がいいんだ。香りをずっと嗅いでいられる」
「違うよ、お前のものにすり込むか、女のものにすり込むんだ」
「えっ?! そんなの初めて聞くぜ」
「そうなのか。この間バッチに言ったのにまだ試していなかったのか」
「それを早く言えよ! バッチの奴め。俺に内緒にしていたな。アイツの女だけが凄い事になると思っていた。俺も試さないとだ。じゃぁな先生また今度!」
「じゃなぁコルト。そうだ来週、ザック達は城の方で販売するって言っていたとダンクに伝えておいてくれよ」
「ああ分かったぜ。そうか。その時が狙い目だな!」
「そうだな……狙い目だ。丁度裏町になれてきて油断しているだろうよ」
コルトはウツの言葉を最後まで聞くと、ひらりとアクセサリーの並ぶ台を飛び越えて隠れ家にしているエックハルトの屋敷に向かって去って行った。
「……何しに来たんだかコルトは」
おそらくダンクに言われて俺の様子を見てくる様に言われたのだろう。
「俺が裏切らないか心配なのかな~」
突然信用してみたり、心配してみたりとダンクも忙しい。
新参者だしダンクが心配するのも無理はないが。ダンク自身も薬に犯されて判断力が鈍くなっているのかもしれない。
不安と安心を繰り返してどんどん自分も追いつめられていく。そこまで薬に取り込まれるなんて馬鹿な男だとしか言いようがない。
「俺も気をつけないとね」
ウツはそう言いながらネロが作ったおにぎりを囓った。するとほんのり塩味でほろほろと口の中でお米が解ける。
「ふぅん。塩漬けにしたバナーポテの葉は美味いねぇ。中身には色んな具材が入っているって言うけれども何が入っているのかな。モグ」
そう独り言を言いながら大きく囓るとガリッと奥歯で何かを噛んだ。
「!」
驚いて指をつっこんで取り出すと、石が入っていた。
(おいおいネロ~。お前はどこでこのおにぎりを握ったんだよっ! 石が入ってるぜ。って。ん? 石?)
よく見るとその石は魔法石だった。小さな魔法石には術式が施されていて、解読したら文章が取り出せる様になっている。
「全くネロときたら」
ウツは石を握りしめ残りのおにぎりを頬張りながら店の奥に入る。
(おにぎりには肉とか入っているって聞いたのに。真ん中に石って馬鹿じゃないのか。俺がこの石を飲み込んだらどうしてくれるんだ。伝達方法をもっと考えてほしいものだよ。こんな事をしてまでネロは何を俺に伝えに来たのかな)
そう思いながら薄暗い奥の部屋に向かう。
奥歯がかけそうになった魔法石を手に持ちウツは考える。
(そうだ、装飾用の魔法石をナツミに用意してやらないとな)
「まさかねぇ自分で高額な魔法石を買おうと言い出すなんてね」
おかしくてウツは再び肩を揺らした。
宝石用の魔法石は本当に高額なんだよナツミ。世間知らずにも程がある。
ウエイトレス如きで金が貯まるのに何年かかるか分からないのに。
そして、大前提として何年もザックといる事を信じているからこそ出る言葉。
凄いねザック。お前の女を渡り歩いた酷い有様を知っていても、だぞ。
凄いのを捕まえてきたよ。
そしてピアスを俺に作ってもらおうとするところ。
見るからに怪しい店で、怪しい商売をしている事も知っているのに。
それなのにナツミはザックを信じているという事だけで俺もひっくるめて信じて。
「馬鹿な子だよね本当に。でもさぁ」
馬鹿だって思うけれど、自分で買うって言うの少し感動したよ俺。
薄暗い部屋の中で珍しく優しい気持ちになったウツは、テーブルの上におにぎりに入っていた魔法石を転がした。手をかざすとウツの魔力で魔法陣が現れて赤く光る。
そして空中に文字が浮かび上がる。
「ネロの伝達を見てみようかねぇ。って……『オベントウ大作戦』って何だよこの作戦名は」
酷くダサいネーミングセンスにウツは苦笑いをするしかなかった。
ソルもコルトもそれを「香辛料」と呼んだ。
香辛料は名の通りハーブの様なものだった。緑色の独特の香りがして、小さなスプーン一杯分の量が小分けされている。例の種の植物から採取した葉や実をそれぞれ乾燥させて砕いたものだ。
その薬は絶大な効果だった。開放的でセックスに用いると極端に感じる様になり、女も男も今まで以上に強い快感を得る。更に不安の解消、不眠などにも効果がある事が分かった。
しかし反動も大きい。長期間や大量に摂取すると体がおかしくなる。どうおかしくなるかと言えば様々なのだが。神経が高ぶりすぎ、痛覚がなくなる、幻覚を見せる、食欲がなくなる等々。あげると切りがない。
実は事前にジルから渡されていた種を魔力で急成長させて分析済みだった。
その為、ウツはコルトの目の前で、薬包内の香辛料と呼ばれる魔薬を魔法で分析してみせた。
「俺が作る媚薬とは根本的に違うな。これは強力なものだ。こんなものが自然界に存在していたとは驚きだな。しかしお前達の一回分とする量は少々多すぎやしないか。俺にはこの半分が適量だと思う。そうすればもっと儲かるだろう」
冷静に分析し淡々と伝えるとコルトは突然ニヤリと笑いウツの事を先生と呼びはじめた。
「先生は分かってるじゃないの。しかもそれを魔法で即座に分析してみせるとは。とてもヤブの町医者とは思えない能力だ」
「ヤブじゃないよ」
ウツの事をヤブだと言ったのはソルらしい。
(ソルめ。後で覚えていろよ)
「どうだい先生もこの儲け話に乗らないか?」
「そうだなぁ」
ウツはそう答えただけで返答をしていないのに、何故かコルトは了承と捉えていた。
ウツは香辛料──魔薬に興味があった。
誰も読む事が出来ない文字で書かれた古い文献を紐解くと、南の国が繁栄していた時、魔法の薬品として使用していたと書かれている事に気がついた。
(これ以上の古い文献や資料は北の国に行かないと。王立図書館ならありそうだし。まぁ、いいか本物が目の前にあるのだから。調べるには好都合。薬を長期間使用している人間も目の前にいる事だし)
そんな事をウツは考えていたのだが、薬に興味がある様子がコルトに十分伝わったのだ。その為ウツが儲け話に乗ったと思ったらしい。
そこからのコルトは早かった。翌日には別の男二人を連れて来た。
一人はバッチと呼ばれていた。用心棒代わりなのか軍人あがりの男だった。体格が確かジルの店に様子見で訪れた男と似ている。
(あの時の男がバッチか。この男もコルトと同じだな。薬を使っている)
そして、二人の統率者である男はダンクといった。歳はウツより少し下だったが、何より整った顔だった。服装もボロボロの外套以外は高級品、一流品だった。深紅のチュニックには黒と金の刺繍が施されており、植物の蔦の様な模様が描かれている。腰帯は金色で見事に編み上げられたものだった。
「羽振りがいいみたいだね。香辛料商人とはかなり儲かる様だね」
ダンクの服装を頭から爪先まで舐める様に見てウツは鼻で笑った。
旅をすればそれだけ金もかかるのに外套以外は全て高級品で揃えている。綺麗に切りそろえられた髪の毛、不精ひげもなく不衛生な様子はない。高級宿にでも泊まっている風体だ。
ダンクはウツの力の抜けた態度に微笑んでいた。嫌味と言って噛みつかない。柔軟な態度だった。
「何だ。先生は興味ないのか? 装飾品を売っているから興味があると思っていたのに」
「あんたまで俺を先生と呼ぶのか。まぁいいけどね。俺が興味あるのはその薬、いや違うなぁ香辛料だけさ」
そう言ってダンクの腰帯に入っているであろう薬包を指差しニヤリと笑って見せた。
ダンクはそんなウツの様子に目を丸めてから笑う。それから、ウツの肩をポンポンと叩いて近くに寄ってきた。
「先生らしい答えだね。だけど分かりやすくていい。答えはいつも単純なものだよな」
「……」
無言で頷くウツの顔は無表情だが、ダンクは嘘がない事を見抜いている。
(このダンクという男はよく人を観察しているな。単純な答え──か。俺が魔薬にとても興味がある事は嘘ではないからね)
ウツはダンクの様子を見て長い髪を揺らして店の奥に入る様に促した。
「お前達は販路を開きたいのだろう? ソルから聞いたよ。話を聞こうじゃないか。当然俺も儲けさせてもらうが何よりその香辛料を強化してみたいからな実験や研究をさせてもらう」
ウツの話を聞いてダンクは顎を引いてニヤリと笑う。整った顔だが人格がその表情に表れている。
目が三日月の様だと言えば三日月に失礼か? 等とウツは思う。
ダンクが歯を見せニタリと笑う。とても気味の悪い嫌な顔だ。
長年生きていればその人間の人生が顔に出るとはよく言ったものだ。ダンクの顔が素敵だと女が群がるなら、悪いがその女の目は節穴だ。
「販路はもちろん開きたい。それに先生の分析は凄いから研究してもらえるのはこちらも大歓迎さ。そんな事を提案してくれた人は今までいなかった。更に強化した香辛料の開発が出来るとは考えてもいなかった。素晴らしい!」
ダンクは両手を上げて軽く拍手をして奥の部屋に歩くウツに続く。
その後にコルトとバッチという男も続く。
「俺はこの町がとても気に入った。頭のいい青年に、頭のいい先生。そして女。最高さ!」
「俺もコルトに同意する。ファルの女は気に入った」
二人は下卑た笑いで答えていた。
「そりゃどうも。でも一筋縄ではいかないんだよ。ファルの裏町には軍人が、がっつり入り込んでいるからな」
ファルの町を褒められたのか馬鹿にされたのか分からないが、ウツはファルの町の現状を簡単に話す。
ザームという男が取り仕切っているとはいえ、ザックとノアという裏町出身の軍人も関わっているのは事実だ。何か裏町で悪さをすれば直ぐに軍に知られてしまい逮捕され投獄や罰せられる。
「──と言う事で、俺も媚薬を販売するのはおおっぴらに出来ないんだよね。だから装飾品を売りつつ町医者も兼務しつつ、って事なんだ。軍人や役人に目をつけられると面倒だからね」
まぁこれも嘘ではない。媚薬は役人や軍人の御用達でもあるのは秘密だが。
緊張感なく淡々と答えると、軍人という言葉にダンクが反応した。
「先生の言う通りだと思う。ファルの町でゆっくりと根を生やした商売をするならと思って、役人は既に押さえてある。実は今エックハルトという貴族の家で世話になっているのさ」
「エックハルトか……」
とうとう出た名前にウツは大して驚きもせず溜め息を一つついて見せた。
(出会って直ぐの俺にここまでの情報を話すとは。ダンクという男は相当焦っているのか?)
ウツは部屋の奥まで来るとゆっくりと振り向いてダンク達と向き合う。するとダンクの後ろに控えていたコルトとバッチが貧乏揺すりをはじめた。
(もしかして薬が切れるとこうなるのか?)
ウツはコルトとバッチの尋常じゃない汗の掻き方などを観察する。
一つの仮説をウツは立てる。おそらく仲間二人が香辛料、魔薬のせいで壊れかけなのだ。
(この二人が使える内に動きたいと言う事か)
コルトとバッチの二人を観察するウツに気がついたダンクは、視線を後ろの二人に移した。
「コルト、バッチ。先にエックハルトの屋敷に戻っていていいぞ。先生とは俺が話す」
ダンクの声を聞くなりコルトは嬉しそうに手を叩いた。
「ホントか? はぁ~やったぜ。俺、今朝の分の香辛料が薄かったみたいでさぁ。じゃぁな~先生またな」
コルトは早々に手を振って出て行った。バッチも直ぐにコルトに続こうとしたが、踏みとどまりダンクに尋ねた。
「一人で問題ないか?」
「ああ、問題ないさ。子供じゃないんだ。バッチも戻れ」
「悪いな」
「気にするな」
そう言ってバッチの鍛えられた肩をポンポンと強く叩いて背中を押し出した。
バタバタと二人が店から出て行った足音を聞いた後、静かにウツはダンクに尋ねた。
「販路を急ぐ理由はコルトとバッチが原因か?」
するとダンクはやれやれと首を振りながら近くの丸椅子に座り込んだ。
「長期にわたって香辛料を使用している二人だが、最近量が増えてな。切らすと落ち着きがなくなって少し面倒なんだ。まぁ効果が持続している時はいい仕事をしてくれるからいいんだが。それも後少しだと思う」
どうやらウツの仮説が当たっている様だ。
「つまり二人が使い物にならなくなる前に事を急ぎたいと言うわけか?」
スパッと一言告げるとダンクは肩を上げて笑った。
「先生は頭がいいね。直ぐに答えにたどりつくのもいいねぇ。その通りさ。あの二人は用心棒としては申し分ないが幻覚を見る様になるとまずいからな」
そしてウツの瞳を見つめる。
その視線を受けながらウツは考える。
(ふぅん。それで仲間を鞍替えってわけか。そうやってお前は色々な町を渡り歩いてきたのだな)
ダンクの見つめる瞳に自分の姿が映っている。おそらくダンクは今度はウツを仲間に引き入れ様としている。
(確かに俺はろくでもない人間だよ。そんなところがダンクには分かるんだろうな)
ウツも近くの丸椅子に腰をかけて足を組んだ。
「で? 貴族のエックハルトは押さえたと聞いたが」
ウツがダンクに話を促す。
するとダンクは思い出した様に手を叩いて声を上げた。
「そうだった! 実は目障りと思う軍人が二人いるんだ」
「軍人? ああ……もしかしてザックとノアの事か?」
白を切るのもおかしい。ここまで話をしてザックとノアが関係ないとは言えない。だって彼奴ら二人は一番深く裏町に関わっている軍人だ。
ウツはスルリと答える。
するとダンクは大きく足を開いて前屈みになり、ボソボソと話しはじめる。ウツを下から睨み上げながら。
「そうあの二人さ。先生もよく知っていると思うけれども」
「裏町で知らない奴はいないよ」
「俺はどうしてもあの二人がこの商売には邪魔だと思っているんだ。だから少しの間、休んでいてもらおうと思っている」
「休んでいてもらう?」
「コルトとバッチと戦わせて少し傷を負ってもらうぐらいでいいんだが。その間に販路を拡大と」
「傷ねぇ」
あわよくば殺してしまうとしている事は丸わかりだ。先ほどのコルトとバッチの状況を見れば分かる。薬で幻覚を見るまでにもなった体はきっと痛みすら感じない。
(そんな男と戦ったらザックもノアも強いとは言え無傷ではいられないかもしれない。よくあんな状態にまでコルトとバッチを持っていったものだ。それともこのダンクという男はそれを狙っていてコルトとバッチを雇ったのだろうか。しかもナツミとマリンをどうにかしようとしているのだろうし)
ウツはダンクという男の所業に内心息を飲んだ。
「なぁ先生。協力してくれないか。あの二人を誘い出したいんだ。それには二人の女でつるのがいいと思うんだよな」
ダンクは笑いながら、ウツの目の前に白い薬包を取り出して握らせた。
「先生さ。さっきノアとか言う男に薬の箱とか渡していたけれども変な事してないだろうなぁ?」
コルトがおにぎりとにらめっこをしているウツを見つめて尋ねた。
ウツはおにぎりを見つめながらここ数日前の事を思い出していた。しかし、コルトの声に戻されてハッとなった。
「してないよ。だってコルトも調べたでしょ? あれはノアにも伝えた様に定期的に届けている薬さ」
不格好なネロがにぎったというおにぎりを取り出しながらコルトに静かに言って聞かせる。するとコルトは口を尖らせて子供の様に体を左右に振る。
「ああ分かったけど……なんか目の前にアイツが来るとちょっと苛つくって言うか。クソ、ああ、早く殴りてぇ」
落ち着きがない。
殴りたいとはノアの事だろう。両手にはめていた指輪を撫でている。指輪の石が相手に当たって攻撃性が上がるのだろう。
(コルトは薬が切れてきたのか。もうこいつも心身共に限界だな)
ウツは溜め息をついて、コルトを見上げる。
「そう言えばコルト。あの方法は試したかい?」
「何だよあの方法って」
「香辛料をよく砕いて粉状にするんだ。本当に少しでいいんだ。耳かき一杯分を」
「はぁ? 耳かき一杯分なんて水に溶かして飲むにしても少なすぎるだろ? 冗談じゃないぞ。俺はずっと部屋で焚きしめる方法がいいんだ。香りをずっと嗅いでいられる」
「違うよ、お前のものにすり込むか、女のものにすり込むんだ」
「えっ?! そんなの初めて聞くぜ」
「そうなのか。この間バッチに言ったのにまだ試していなかったのか」
「それを早く言えよ! バッチの奴め。俺に内緒にしていたな。アイツの女だけが凄い事になると思っていた。俺も試さないとだ。じゃぁな先生また今度!」
「じゃなぁコルト。そうだ来週、ザック達は城の方で販売するって言っていたとダンクに伝えておいてくれよ」
「ああ分かったぜ。そうか。その時が狙い目だな!」
「そうだな……狙い目だ。丁度裏町になれてきて油断しているだろうよ」
コルトはウツの言葉を最後まで聞くと、ひらりとアクセサリーの並ぶ台を飛び越えて隠れ家にしているエックハルトの屋敷に向かって去って行った。
「……何しに来たんだかコルトは」
おそらくダンクに言われて俺の様子を見てくる様に言われたのだろう。
「俺が裏切らないか心配なのかな~」
突然信用してみたり、心配してみたりとダンクも忙しい。
新参者だしダンクが心配するのも無理はないが。ダンク自身も薬に犯されて判断力が鈍くなっているのかもしれない。
不安と安心を繰り返してどんどん自分も追いつめられていく。そこまで薬に取り込まれるなんて馬鹿な男だとしか言いようがない。
「俺も気をつけないとね」
ウツはそう言いながらネロが作ったおにぎりを囓った。するとほんのり塩味でほろほろと口の中でお米が解ける。
「ふぅん。塩漬けにしたバナーポテの葉は美味いねぇ。中身には色んな具材が入っているって言うけれども何が入っているのかな。モグ」
そう独り言を言いながら大きく囓るとガリッと奥歯で何かを噛んだ。
「!」
驚いて指をつっこんで取り出すと、石が入っていた。
(おいおいネロ~。お前はどこでこのおにぎりを握ったんだよっ! 石が入ってるぜ。って。ん? 石?)
よく見るとその石は魔法石だった。小さな魔法石には術式が施されていて、解読したら文章が取り出せる様になっている。
「全くネロときたら」
ウツは石を握りしめ残りのおにぎりを頬張りながら店の奥に入る。
(おにぎりには肉とか入っているって聞いたのに。真ん中に石って馬鹿じゃないのか。俺がこの石を飲み込んだらどうしてくれるんだ。伝達方法をもっと考えてほしいものだよ。こんな事をしてまでネロは何を俺に伝えに来たのかな)
そう思いながら薄暗い奥の部屋に向かう。
奥歯がかけそうになった魔法石を手に持ちウツは考える。
(そうだ、装飾用の魔法石をナツミに用意してやらないとな)
「まさかねぇ自分で高額な魔法石を買おうと言い出すなんてね」
おかしくてウツは再び肩を揺らした。
宝石用の魔法石は本当に高額なんだよナツミ。世間知らずにも程がある。
ウエイトレス如きで金が貯まるのに何年かかるか分からないのに。
そして、大前提として何年もザックといる事を信じているからこそ出る言葉。
凄いねザック。お前の女を渡り歩いた酷い有様を知っていても、だぞ。
凄いのを捕まえてきたよ。
そしてピアスを俺に作ってもらおうとするところ。
見るからに怪しい店で、怪しい商売をしている事も知っているのに。
それなのにナツミはザックを信じているという事だけで俺もひっくるめて信じて。
「馬鹿な子だよね本当に。でもさぁ」
馬鹿だって思うけれど、自分で買うって言うの少し感動したよ俺。
薄暗い部屋の中で珍しく優しい気持ちになったウツは、テーブルの上におにぎりに入っていた魔法石を転がした。手をかざすとウツの魔力で魔法陣が現れて赤く光る。
そして空中に文字が浮かび上がる。
「ネロの伝達を見てみようかねぇ。って……『オベントウ大作戦』って何だよこの作戦名は」
酷くダサいネーミングセンスにウツは苦笑いをするしかなかった。
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