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<回想> 3月29日 上から目線
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しかし付き合うって言う事がピンとこない私と、忙しい怜央の間には何がある訳でもない。学校の登下校も一緒になったりならなかったりだ。
「今一番楽しい時期だし。そろそろって感じでしょ?」
萌々香ちゃんがにやりと笑った。
「そろそろ?」
何の事だろう? 全く分からなくて首を傾げる。
そんな私に萌々香ちゃんがあきれて溜め息をつくと意味ありげに再び笑った。
そしてゆっくりと私の耳元に唇を寄せて両手で声が漏れない様にする。
「エッチに決まっているじゃない」
「エッ……ち。えっ!」
私は萌々香ちゃんの言葉を反芻しかけて慌てて飲み込む。思わずトレイをカウンターの上に音を立てておいた。グラスがガチャンと音を立てた。
「危ない~! ふぅ。割れていないわね。明日香ちゃんおっちょこちょいなんだから~もー」
萌々香ちゃんが目を丸めてカウンターに置いたグラスを確認する。それから私を横目で見つめて口を尖らせた。
「ご、ごめん。だって、そ、そんなの、まだ全然ないからっ。そ、そういうのは……」
私は萌々香ちゃんの前で拳を作って小声で呟く。
(今日は男の子ばかりなのに。何でそんな話題を振るのよ)
私は顔を真っ赤にしていたと思う。耳も心なしか熱を感じるし。
「え~だって、三ヶ月経ったらさぁ普通は色々あるでしょ?」
萌々香ちゃんが私の慌てふためく姿に何だかあきれた様に声を上げた。両手を腰に当てて信じられなさそうに見つめる。
「えっ……そ、そうなの?」
何だかものすごく私が責められている様な気持ちになり、とても不安になる。
(そもそも、恋人と言うか彼女としてどうしたら良いのだろう。どんな風に振る舞えばいいのか分からない。それに怜央とは幼なじみなのもあるから元々家族同士含めて距離が近いし)
これ以上どうやって距離を詰めたら良いのか分からない。
「明日香ちゃんってホント運動馬鹿かなんだから。少しは怜央くんの事考えなよね」
「う、運動馬鹿って……脳筋って言われる事はあるけれども」
「同じでしょそれ。怜央くんも似ているところあるけれども。だってさ怜央くんすっかり青年って感じだし、色々我慢していると思うよ」
両腕を胸の前で萌々香ちゃんは組んでにやりと笑う。少し艶っぽい笑い方だった。
「がっ、我慢って」
私は思わず想像してしまった事がひどく下品だったので両手で口を覆ってしまった。
私だって彼氏がいる友達の話を聞いて色々な経験を先に済ましている事を聞いた事があるけれども。いざ自分に起こるのかと思うと全く想像出来ない。
言葉を失う私に萌々香ちゃんが一歩近づいて私の顔を見上げた。
「明日香ちゃん。怜央くんって両親共に会社経営でしょ。しっかりしている様に見えるけれども寂しがり屋だから大切にしてあげてよね?」
何故か萌々香ちゃんから怜央の事をお願いされ、私の頭にはてなマークが浮かぶ。萌々香ちゃんの大きな瞳が私を捕らえて放さない。何だか睨み付けられているとも言える。
「う、うん。分かってるよ?」
命令の様な気もする。でも反論出来ない。「何故萌々香ちゃんが言うの」とか「どうして? 萌々香ちゃんが怜央の事を心配するの?」等、聞く事が出来ない。
萌々香ちゃんの話はいつも絶対で反論する事が出来ない。反論したら倍返しで言い返されるとか、泣かれてしまうとか、そいう昔の癖が抜けない。
(そういえば幼なじみは萌々香ちゃんに誰も反論した事がないと思う。だってよく泣くしね。可愛いお姫様みたいな萌々香ちゃんの言う事は幼なじみの皆がいつも聞いていたしね)
更に萌々香ちゃんにしては低い声でぼそぼそと私に念を押す様に話す。
「怜央くんの事絶対に大切にして欲しいの。これは明日香ちゃんへお姉さんとしてのお願い」
いつから怜央のお姉さんになったのだろうか。そんな疑問がすっと浮かぶけれども、すぐに頭の中を横切って、なかった事にしようとしている私がいる。
「うん……分かってる」
私は一歩後ずさりをして頷いた。
(何だろう。凄く嫌な感じの萌々香ちゃんだ)
後ずさりした私を萌々香ちゃんが一歩追いかけてきた。
「そうしないと私……明日香ちゃんの事、怒るし、許さないからね」
そう言ってにっこり笑うと、私が置いたグラスのトレイを持って皆が集まるフロアに一人歩いて行った。
「……」
私は妙な胸騒ぎがして胸の辺りのシャツをぎゅっと握りしめた。
「今一番楽しい時期だし。そろそろって感じでしょ?」
萌々香ちゃんがにやりと笑った。
「そろそろ?」
何の事だろう? 全く分からなくて首を傾げる。
そんな私に萌々香ちゃんがあきれて溜め息をつくと意味ありげに再び笑った。
そしてゆっくりと私の耳元に唇を寄せて両手で声が漏れない様にする。
「エッチに決まっているじゃない」
「エッ……ち。えっ!」
私は萌々香ちゃんの言葉を反芻しかけて慌てて飲み込む。思わずトレイをカウンターの上に音を立てておいた。グラスがガチャンと音を立てた。
「危ない~! ふぅ。割れていないわね。明日香ちゃんおっちょこちょいなんだから~もー」
萌々香ちゃんが目を丸めてカウンターに置いたグラスを確認する。それから私を横目で見つめて口を尖らせた。
「ご、ごめん。だって、そ、そんなの、まだ全然ないからっ。そ、そういうのは……」
私は萌々香ちゃんの前で拳を作って小声で呟く。
(今日は男の子ばかりなのに。何でそんな話題を振るのよ)
私は顔を真っ赤にしていたと思う。耳も心なしか熱を感じるし。
「え~だって、三ヶ月経ったらさぁ普通は色々あるでしょ?」
萌々香ちゃんが私の慌てふためく姿に何だかあきれた様に声を上げた。両手を腰に当てて信じられなさそうに見つめる。
「えっ……そ、そうなの?」
何だかものすごく私が責められている様な気持ちになり、とても不安になる。
(そもそも、恋人と言うか彼女としてどうしたら良いのだろう。どんな風に振る舞えばいいのか分からない。それに怜央とは幼なじみなのもあるから元々家族同士含めて距離が近いし)
これ以上どうやって距離を詰めたら良いのか分からない。
「明日香ちゃんってホント運動馬鹿かなんだから。少しは怜央くんの事考えなよね」
「う、運動馬鹿って……脳筋って言われる事はあるけれども」
「同じでしょそれ。怜央くんも似ているところあるけれども。だってさ怜央くんすっかり青年って感じだし、色々我慢していると思うよ」
両腕を胸の前で萌々香ちゃんは組んでにやりと笑う。少し艶っぽい笑い方だった。
「がっ、我慢って」
私は思わず想像してしまった事がひどく下品だったので両手で口を覆ってしまった。
私だって彼氏がいる友達の話を聞いて色々な経験を先に済ましている事を聞いた事があるけれども。いざ自分に起こるのかと思うと全く想像出来ない。
言葉を失う私に萌々香ちゃんが一歩近づいて私の顔を見上げた。
「明日香ちゃん。怜央くんって両親共に会社経営でしょ。しっかりしている様に見えるけれども寂しがり屋だから大切にしてあげてよね?」
何故か萌々香ちゃんから怜央の事をお願いされ、私の頭にはてなマークが浮かぶ。萌々香ちゃんの大きな瞳が私を捕らえて放さない。何だか睨み付けられているとも言える。
「う、うん。分かってるよ?」
命令の様な気もする。でも反論出来ない。「何故萌々香ちゃんが言うの」とか「どうして? 萌々香ちゃんが怜央の事を心配するの?」等、聞く事が出来ない。
萌々香ちゃんの話はいつも絶対で反論する事が出来ない。反論したら倍返しで言い返されるとか、泣かれてしまうとか、そいう昔の癖が抜けない。
(そういえば幼なじみは萌々香ちゃんに誰も反論した事がないと思う。だってよく泣くしね。可愛いお姫様みたいな萌々香ちゃんの言う事は幼なじみの皆がいつも聞いていたしね)
更に萌々香ちゃんにしては低い声でぼそぼそと私に念を押す様に話す。
「怜央くんの事絶対に大切にして欲しいの。これは明日香ちゃんへお姉さんとしてのお願い」
いつから怜央のお姉さんになったのだろうか。そんな疑問がすっと浮かぶけれども、すぐに頭の中を横切って、なかった事にしようとしている私がいる。
「うん……分かってる」
私は一歩後ずさりをして頷いた。
(何だろう。凄く嫌な感じの萌々香ちゃんだ)
後ずさりした私を萌々香ちゃんが一歩追いかけてきた。
「そうしないと私……明日香ちゃんの事、怒るし、許さないからね」
そう言ってにっこり笑うと、私が置いたグラスのトレイを持って皆が集まるフロアに一人歩いて行った。
「……」
私は妙な胸騒ぎがして胸の辺りのシャツをぎゅっと握りしめた。
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