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041 8月1日 壊したその先にあるもの
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私は最後の大会で全てを出し尽くしてもやはり二位に終わった。その瞬間右膝も限界でメダル授与式が終わったらすぐに病院に行く事になった。
雨が降りそうな空が印象的だった。まるで私の心を表している様で辛くて苦しくて。怜央は私の大会に来ようとしていたけれども、どうしても来られない理由も知っていた。バレーボール部の打ち上げが元々予定に入っていて、主役の怜央が抜けられないのも知っていた。大会を見に来て欲しい何て思った事はなかった。だけれど、心も体もボロボロになった私は、どうしても怜央の声が聞きたくて電話をかけた。一人こっそりと競技場の人が誰もいない端で。
五コール目だった。出たのは怜央ではなかった。とても騒がしい音が聞こえていた。打ち上げなのだから怜央の部活仲間が大きな声で笑い合っているのが聞こえる。そんな中、電話に出たのは──
◇◆◇
(誰が電話に出たとか、そういうのはもう良いの)
私は当時の苦い思いを振り切る様に首を振る。
(ほら。六秒の魔法が解けてしまうから)
私はじっと怜央の顔を見つめる。
「怜央は着信履歴に私の電話はなかったって。知らないって言い張ったよね」
私のぽつりと呟いた声に怜央が小さく応える。
「ああ」
怜央が私の顔をじっと見つめて瞳を細める。
「私、本当に怜央に電話をかけたんだよ」
なのに怜央は着信はなかったって言い張り、スマホの着信履歴を見せてくれた。確かに着信はなかった。
だけれど。
(怜央だって気づいているはずだ。着信履歴が消せる事ぐらい)
「……」
怜央は言い張る私の顔を見てどう答えて良いのか分からなくなっている様だった。きっと私がこんなに言い張るのに何か理由があると気がついたのだろう。
フォン……とクラクションが鳴って、一台のバスが到着した。アルバイト先に行くバスだ。私はバスのドアが開いたので怜央の側から離れる。怜央はその様子を見つめながら何か言葉を探そうとしていた。
バスの扉に手をかけて、振り向き怜央に向かって私は微笑んだ。
「私の事を信じて欲しかったよ」
「明日香、待っ」
怜央が「待ってくれ」と言葉を続けようとした時、私は震える声を抑えながらはっきりと伝えた。
「怜央、私はバッグなんて別に持って欲しくない」
「明日香?」
「自分の持ち物は自分で持つよ。そういうのはさ……萌々香ちゃんがして欲しい事だよね」
「!」
そう言い切ると丁度バスのドアが閉まった。
瞬間、怜央の切れ長の瞳が見開いたのがバスのドア越しに見えた。
怜央はバス停に立ち尽くして、バスが通り過ぎるのを見つめている。
私もそんな怜央をじっと見つめて小さく見えなくなってから両手で顔を覆った。
(こうやって一つ一つ怜央に伝えて、静かに怒って喧嘩して。私は一体どうしたいのだろう)
椅子に座り背もたれに深くもたれかける。再び自問自答する。いつか夕陽を見ながら決意した事を思い出す。
それでも──全部壊してしまいたい。
(そうよ。壊してしまいたいのよ)
そう思い出した時、不意に七緖くんのチョコレートケーキを食べる顔を思い出す。目の色を変えて美味しそうに食べる顔。琥珀色の瞳が細く弧を描く。それから七緖くんの大きくて節々がはっきりした手。優しく撫でてくれる温かい手。
(七緖くん。六秒数えて頑張ったよ私。少しだけ言いたい事が、冷静に喧嘩が出来たと思う。まだまだ言いたい事はあるんだけどね)
「会いたいな」
私は無性に七緖くんに会いたくて仕方なかった。
雨が降りそうな空が印象的だった。まるで私の心を表している様で辛くて苦しくて。怜央は私の大会に来ようとしていたけれども、どうしても来られない理由も知っていた。バレーボール部の打ち上げが元々予定に入っていて、主役の怜央が抜けられないのも知っていた。大会を見に来て欲しい何て思った事はなかった。だけれど、心も体もボロボロになった私は、どうしても怜央の声が聞きたくて電話をかけた。一人こっそりと競技場の人が誰もいない端で。
五コール目だった。出たのは怜央ではなかった。とても騒がしい音が聞こえていた。打ち上げなのだから怜央の部活仲間が大きな声で笑い合っているのが聞こえる。そんな中、電話に出たのは──
◇◆◇
(誰が電話に出たとか、そういうのはもう良いの)
私は当時の苦い思いを振り切る様に首を振る。
(ほら。六秒の魔法が解けてしまうから)
私はじっと怜央の顔を見つめる。
「怜央は着信履歴に私の電話はなかったって。知らないって言い張ったよね」
私のぽつりと呟いた声に怜央が小さく応える。
「ああ」
怜央が私の顔をじっと見つめて瞳を細める。
「私、本当に怜央に電話をかけたんだよ」
なのに怜央は着信はなかったって言い張り、スマホの着信履歴を見せてくれた。確かに着信はなかった。
だけれど。
(怜央だって気づいているはずだ。着信履歴が消せる事ぐらい)
「……」
怜央は言い張る私の顔を見てどう答えて良いのか分からなくなっている様だった。きっと私がこんなに言い張るのに何か理由があると気がついたのだろう。
フォン……とクラクションが鳴って、一台のバスが到着した。アルバイト先に行くバスだ。私はバスのドアが開いたので怜央の側から離れる。怜央はその様子を見つめながら何か言葉を探そうとしていた。
バスの扉に手をかけて、振り向き怜央に向かって私は微笑んだ。
「私の事を信じて欲しかったよ」
「明日香、待っ」
怜央が「待ってくれ」と言葉を続けようとした時、私は震える声を抑えながらはっきりと伝えた。
「怜央、私はバッグなんて別に持って欲しくない」
「明日香?」
「自分の持ち物は自分で持つよ。そういうのはさ……萌々香ちゃんがして欲しい事だよね」
「!」
そう言い切ると丁度バスのドアが閉まった。
瞬間、怜央の切れ長の瞳が見開いたのがバスのドア越しに見えた。
怜央はバス停に立ち尽くして、バスが通り過ぎるのを見つめている。
私もそんな怜央をじっと見つめて小さく見えなくなってから両手で顔を覆った。
(こうやって一つ一つ怜央に伝えて、静かに怒って喧嘩して。私は一体どうしたいのだろう)
椅子に座り背もたれに深くもたれかける。再び自問自答する。いつか夕陽を見ながら決意した事を思い出す。
それでも──全部壊してしまいたい。
(そうよ。壊してしまいたいのよ)
そう思い出した時、不意に七緖くんのチョコレートケーキを食べる顔を思い出す。目の色を変えて美味しそうに食べる顔。琥珀色の瞳が細く弧を描く。それから七緖くんの大きくて節々がはっきりした手。優しく撫でてくれる温かい手。
(七緖くん。六秒数えて頑張ったよ私。少しだけ言いたい事が、冷静に喧嘩が出来たと思う。まだまだ言いたい事はあるんだけどね)
「会いたいな」
私は無性に七緖くんに会いたくて仕方なかった。
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