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045 8月3日 悪口
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(バス停で頭を撫でられていたのを見たのは安原さんだったのね。それにしても、ひどい誤解だわ。しかも私が怜央を裏切った事になっているし)
怜央が誤解した内容そのままだ。私は個室にいる事を悟られない様に小さく溜め息をついた。
安原さんは怜央に話した様に友達に話している。
私は怜央と別れ話がこじれていると噂になっているから、皆どちらに原因があるのかと興味津々だ。そこへこの安原さんの話だ。これでは、別の人に乗り換えた私が悪者だ。
「才川くん、かわいそうだね」
憤りを隠せない友達が怜央の事をかわいそうだと言った。その言葉を受けて、安原さんは小さく呟いた。
「そうだよね。巽さんが別の男の人と付き合う様になったのなら、才川くんは凄くかわいそうだよね。いつもあんなに巽さんの事心配して大事にしていたのにね」
優しく親しげに話しかけてくれる安原さんだと思っていたのに、こんな風に私の事を言われたのではたまったものではない。
(大体何なのよ。怜央も安原さんも、私に聞かないで勝手に決めつけるってどういう事なの。直接本人に聞いてから判断して欲しいのに)
腹が立つのを通り越して呆れるしかなかった。
怜央に同情しているのか、安原さんとその友達──おそらく同じバレーボール部の友達なのだろう。二人は無言が続いた。
「……緑、思い切って才川くんに告白しなよ」
「えっ!」
安原さんは頭の上から発する様な声を上げていた。
私はひたすら息を止めてトイレの個室で動かない様に固まっていた。衣擦れの音がして、どうやら安原さんと肩を寄せ合った様子だ。
「大丈夫だって。巽さん確かに美人だけど、ひどいじゃん。才川くんも傷ついていると思う。だから、才川くんも今回の話を教えてくれた緑に感謝して良さに気がつくって」
「そんなの……才川くんが悲しんでいるところにつけ込むなんて。よくないし、狡いよ」
「つけ込んで当然じゃん。大丈夫大丈夫! 私からしたら巽さんなんかより緑の方がすんごく可愛いと思うし。全然良い子じゃん。自信持って告白しなよ」
「そんな。可愛いなんて」
「今度さ、バレーボール部皆でお盆の時に夏祭りに行く事になっているでしょ? その時にさ、告白しちゃいなよ」
「えっ! 告白って」
「よーし。そうと決まったら女子バレーボール部の皆で作戦を立てなきゃね~こうしちゃいられない。行くよ緑!」
「そんなぁ~待ってよ」
トイレには用を足す為に入ってきた訳ではなかった様だ。二人は単に人に話を聞かれない為に入ってきただけだった。
(に、しても大きな声だったわね)
私がこのトイレにいる事を知っていて入っていたのかと思うぐらいの内容だった。それは考え過ぎだと思う。安原さんの友達がぐいぐいと話を引っ張っていった。
安原さんは若干抵抗しながらも結局は乗っかっている様子だった。
『例えば、本当に告白をしたとして成功すればそれもありだし。振られてしまっても、友達に煽られたからだと言い訳すれば苦しさも半減よね』
黒くてモヤモヤした私が少しだけ顔を出す。
以前教室でたまたま会った時もそうだった。安原さんは、怜央に寄り添っている。そして怜央の味方でいると言う様な表現をする。
怜央がかわいそう。私が悪いやつ。そういう図式を狙っている様だ。自分からは攻めず、周りを巻き込みその様に仕向けていく。
一瞬、萌々香ちゃんの顔が浮かぶ。
(萌々香ちゃんも似た様なところあるよね。嫌みだけを私に言って、周りを固めて自分の存在を主張する感じ)
処世術なのかもしれないけれど、そういうのは好きじゃない。
「嫌な感じ……ま、知らんけど」
私はそう呟いてトイレの個室を出る。
散々怜央と一緒にいる事で幼い頃から妬み等には慣れているから、安原さんの発言もどうって事はない。こんなところだけ心が強くなったとは、自分に苦笑いだ。
(怜央に告白するならすれば良い。そして怜央が安原さんと付き合うなら、それはそれで私の上書きも完了するのに)
「他力本願は駄目だよね」
私は自嘲気味に呟いた。
怜央が誤解した内容そのままだ。私は個室にいる事を悟られない様に小さく溜め息をついた。
安原さんは怜央に話した様に友達に話している。
私は怜央と別れ話がこじれていると噂になっているから、皆どちらに原因があるのかと興味津々だ。そこへこの安原さんの話だ。これでは、別の人に乗り換えた私が悪者だ。
「才川くん、かわいそうだね」
憤りを隠せない友達が怜央の事をかわいそうだと言った。その言葉を受けて、安原さんは小さく呟いた。
「そうだよね。巽さんが別の男の人と付き合う様になったのなら、才川くんは凄くかわいそうだよね。いつもあんなに巽さんの事心配して大事にしていたのにね」
優しく親しげに話しかけてくれる安原さんだと思っていたのに、こんな風に私の事を言われたのではたまったものではない。
(大体何なのよ。怜央も安原さんも、私に聞かないで勝手に決めつけるってどういう事なの。直接本人に聞いてから判断して欲しいのに)
腹が立つのを通り越して呆れるしかなかった。
怜央に同情しているのか、安原さんとその友達──おそらく同じバレーボール部の友達なのだろう。二人は無言が続いた。
「……緑、思い切って才川くんに告白しなよ」
「えっ!」
安原さんは頭の上から発する様な声を上げていた。
私はひたすら息を止めてトイレの個室で動かない様に固まっていた。衣擦れの音がして、どうやら安原さんと肩を寄せ合った様子だ。
「大丈夫だって。巽さん確かに美人だけど、ひどいじゃん。才川くんも傷ついていると思う。だから、才川くんも今回の話を教えてくれた緑に感謝して良さに気がつくって」
「そんなの……才川くんが悲しんでいるところにつけ込むなんて。よくないし、狡いよ」
「つけ込んで当然じゃん。大丈夫大丈夫! 私からしたら巽さんなんかより緑の方がすんごく可愛いと思うし。全然良い子じゃん。自信持って告白しなよ」
「そんな。可愛いなんて」
「今度さ、バレーボール部皆でお盆の時に夏祭りに行く事になっているでしょ? その時にさ、告白しちゃいなよ」
「えっ! 告白って」
「よーし。そうと決まったら女子バレーボール部の皆で作戦を立てなきゃね~こうしちゃいられない。行くよ緑!」
「そんなぁ~待ってよ」
トイレには用を足す為に入ってきた訳ではなかった様だ。二人は単に人に話を聞かれない為に入ってきただけだった。
(に、しても大きな声だったわね)
私がこのトイレにいる事を知っていて入っていたのかと思うぐらいの内容だった。それは考え過ぎだと思う。安原さんの友達がぐいぐいと話を引っ張っていった。
安原さんは若干抵抗しながらも結局は乗っかっている様子だった。
『例えば、本当に告白をしたとして成功すればそれもありだし。振られてしまっても、友達に煽られたからだと言い訳すれば苦しさも半減よね』
黒くてモヤモヤした私が少しだけ顔を出す。
以前教室でたまたま会った時もそうだった。安原さんは、怜央に寄り添っている。そして怜央の味方でいると言う様な表現をする。
怜央がかわいそう。私が悪いやつ。そういう図式を狙っている様だ。自分からは攻めず、周りを巻き込みその様に仕向けていく。
一瞬、萌々香ちゃんの顔が浮かぶ。
(萌々香ちゃんも似た様なところあるよね。嫌みだけを私に言って、周りを固めて自分の存在を主張する感じ)
処世術なのかもしれないけれど、そういうのは好きじゃない。
「嫌な感じ……ま、知らんけど」
私はそう呟いてトイレの個室を出る。
散々怜央と一緒にいる事で幼い頃から妬み等には慣れているから、安原さんの発言もどうって事はない。こんなところだけ心が強くなったとは、自分に苦笑いだ。
(怜央に告白するならすれば良い。そして怜央が安原さんと付き合うなら、それはそれで私の上書きも完了するのに)
「他力本願は駄目だよね」
私は自嘲気味に呟いた。
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