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猫の街 Ⅵ
しおりを挟む――"猫の通り道"を右のルートから逃げていたリリアは、なんとか駅に辿り着き、クレイダーへ飛び込みました。
猫たちが飛びかかる前に客室の扉を閉め、間一髪で逃れます。
猫たちは「開けろー!」と扉の外でしばらく喚いていましたが、
「はっ。そういえばボスは?!」
「もう一人のニンゲンが攫ったはずニャ! 探せ!」
などと言って、列車から離れて行きました。
リリアはほっと胸を撫で下ろし、車内にある時計を見ます。
発車時刻まで、残り五分と迫っていました。
「クロルたち……大丈夫かな?」
そう呟きながら、窓から外を覗くと……ちょうど誰かが駅に駆けつけるのが見えました。
しかしそれは、クロルではなく――
「え、エリカさん?! なんでここに……?!」
リリアは鼓動を速めながらも、勇気を出して列車の外に出ました。
「エリカさん……ど、どうしたんですか?」
平静を装って声をかけると、エリカさんはリリアに駆け寄ります。
「リリアさん! よかった、間に合いましたね。これ、リリアさんかクロルさんのものではないですか?」
そう言って差し出したのは、銀色のカード――"パス"です。
リリアが触れると、虹色に輝きました。間違いなくリリアのものです。
「わ、私のだ……でも、なんで?」
「ポックルの部屋に落ちていたのです。一緒にお掃除してくださったのですね。ありがとうございました」
どうやら部屋の片付けをした時に落としてしまったようです。
リリアは「ありがとうございます」と言いながらも、心臓をバクバクと鳴らします。
エリカさんが追ってきたのは、私が落とし物をしたせいだった。
このままポックルと鉢合わせたら、作戦が失敗してしまう。
そんな緊張が、リリアの喉をカラカラに渇かしてゆきます。
「……あら? そういえば、クロルさんは? 先ほど、どこかへ走っていくのが見えたけれど……」
エリカさんに尋ねられ、リリアはますますドキッとします。
どうしよう、どうしよう……
返す言葉が見つからず、体をこわばらせていると――
「――リリア、お待たせ」
そこへ、クロルが現れました。
落ち着いた様子で、にこやかに近づいてきます。
リリアはハッと彼を見ますが、その近くにポックルの姿はありませんでした。
リリアが疑問に思っていると、クロルがエリカさんに尋ねます。
「あれ? エリカさん。どうしてここに?」
「リリアさんがパスをお忘れになったので、届けに来たのです」
「そうでしたか。わざわざすみません」
「いえ。それより、ポックルは一緒じゃないのですか?」
エリカさんの問いに、リリアはさらに緊張します。
どうしてポックルがいないのか、リリアにもわかりませんでした。
リリアが見守る中、クロルは「ああ」と微笑んで、
「ポックルならさっき別れました。街の猫たちにトラブルがあったみたいで、解決しに向かったんです。リリアにもよろしくって言ってたよ」
そう、穏やかに言いました。
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「それじゃあ、僕たちは行きます。エリカさん、本当にありがとうございました」
クロルはリリアと並んで、別れの挨拶をしました。
エリカさんが静かに微笑み返します。
「こちらこそ、ありがとうございました。この先の旅も、どうかお気をつけて。最後にひとつだけ……お尋ねしてもよろしいですか?」
あらたまったようなその問いに、クロルとリリアは「え?」と聞き返します。
エリカさんは、スカートのポケットから懐中時計のようなものを取り出し――
「――ポックルの発信機が、クロルさんの位置と重なっているのは……なぜでしょう?」
震える声で、尋ねました。
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