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the 7th day 見合い、のち戦略会議
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その日の見合い後の打ち合わせは、カイとレナだけでなくシンとロキも参加した。
「ルイス殿下は、見合い相手としても協力者としても通じていて問題ないだろうな」
カイがそう言うと、
「いや~、王族で美青年、嫌味なくらいイイ男でしたね」
とシンは思い出して赤面している。ロキは部屋の外にいてルイスの会話こそ聞いていなかったが、
「ポテンシアの王族って、評判悪くないですよね。まぁ、確かにちょっと手が早そうな雰囲気はしましたけど」
とストレートに感想を言った。
「プレイボーイな感じね」
レナは先ほどのルイスの態度を思い出しながら、少しムスッとしている。
「婚約すれば、さすがに女性関係の心配は無くなると思いますけど。何かあったんですか?」
と、ロキはレナの様子に驚いて言った。
「何かって、別に無いわよ。ちょっと相手のペースに飲まれてしまって悔しいだけ」
レナがそう言って口を尖らせているのを、シンが、
(可愛いなオイ)
と見惚れているのをカイは一瞥し、
「では、今回の相手も見合いは先に進めることに異論はないな。パースとポテンシアに1人ずつ、協力者兼婚約者候補が残っているのはいい傾向だ」
と言うと、応接室で待たせているポテンシアの護衛との打ち合わせに向かうことにした。
先程まで顔を合わせていたルイスの護衛2名が、少し砕けた雰囲気で部屋に残っていた。
「さて、早速だが、急遽こちらの改革に協力してもらえることになり、本当に感謝している。改めて、カイ・ハウザーだ。よろしく頼む」
カイが頭を下げて挨拶をすると、ポテンシアの護衛2人は顔を合わせ、
「やはり、あなたがハウザー団長」
「確信はなかったものの、なんとなくそんな気がしていました」
と口を開く。
「ブラッド・クラウスだ。ポテンシアの近衛兵で、第4王子付きの護衛をしている」
「レオナルド・サントーロです。普段は国王の間諜を務めています」
ブラッドは20代後半くらいの若者で、短髪の明るい茶色の髪、面長の顔に切り傷跡がいくつかある兵士らしい男だ。レオナルドは20代半ばくらいの、少し細身の若者だった。暗めの茶色の髪を刈り上げており、やわらかい表情の中にある鋭い目つきが印象的だ。
「実は、既に黒に近い貴族が1名いて、王女に危害を加えかけたため昨日私が城から追い出した経緯がある。恐らく王女信仰の教会を使って庶民への布教も行なっていると見ている。残念ながら爵位が公爵なんだが」
カイはそう言って昨日の見合い相手のプロフィールを渡す。
「公爵が反勢力とは、出だしからすごい情報ですね」
レオナルドは公爵の資料を見て、
「しかも、関所のある地域の領主で貿易担当大臣。これまでの経緯を考えると分かりやすいですね」
と言った。ブラッドは暫く黙って資料を読み込んでから、
「ハウザー殿との連携や、我々の動き方を決めておきたいところだが、ハッキリ申し上げてルリアーナの貴族自体に自警能力は全く無いので、外の介入がなければすぐに核心に入り込めるだろう。ただ……少し気になっているのが、その外からの介入というやつだ」
と、カイの方を窺いながら少し言いにくそうにした。
「分かっている、リブニケ王国あたりが絡んでいると、厄介なことになるな」
カイがブラッドの言いたいことを察して答えると、ブラッドは「ああ」と頷いた。
「リブニケとルリアーナの関係値などは、どうなのでしょうか?」
レオナルドが尋ねる。
「実は、俺もよく分からないでいる。先日リブニケの侯爵が王女殿下の見合いに来たが、あまりにも不遜でとてもじゃないが友好関係を築きたいという態度ではなかった。王女のことは個人的に気に入っていたのかもしれないが」
カイが答えると、ブラッドは少し咳ばらいをして、
「それは、レナ様といえばこのあたりの王侯貴族には非常に人気なので、当たり前では?」
とカイを睨みながら言った。
レオナルドはブラッドの方を少し見てから、
「まあ、側近のあなたには分からないでしょうけど、ハウザーさんのポジションになりたいと思っているのは僕たちだけじゃありませんからね」
と付け加えた。カイが目の前の2人をじっと見つめ、
「想像以上に面倒くさいんだな、お前ら」
としみじみと言うと、
「余裕かましてんじゃねーよ、自慢かよ」
「大体何なんですか、おたくは見た目採用なんですか?そういうやり方で入り込むんですか?」
とすごい剣幕でまくしたてられる。カイは、
「勘弁してくれ」
と2人の様子に辟易としていた。
カイがポテンシアの護衛と話していて、初めて分かったことがある。
ポテンシアやパースにとっても、どうやらルリアーナの第一王女というのは特別な存在らしい。自国で人気があることは調査報告により把握していたが、同盟国から人気があるとは想像もしていなかった。
ブラッドとレオナルドは王族付きの近衛兵ということもあり、仕事は信頼して任せることができそうだが、王女への態度が微妙に気になった。ポテンシア人は自分の部下にもいるが、どうも女性好きなところがあるらしいのだ。王女に手を出すことはないと思うが、あまり女性の護衛向きとは言えなかった。
カイはブラッドとレオナルドを送り出すときに、公爵の所業を軽く伝えた時の2人の顔が忘れられない。
(目を丸くした後、何やらどす黒い気を漂わせていたな……)
感情的になられても困るが、レナの安全のために業務を全うしてくれそうな2人だ。
公爵の周りを任せることができたため、自分の手配した応援要員はそれ以外のところに割くことができる。なかなか初動としては順調だ、とカイは満足していた。
「ルイス殿下は、見合い相手としても協力者としても通じていて問題ないだろうな」
カイがそう言うと、
「いや~、王族で美青年、嫌味なくらいイイ男でしたね」
とシンは思い出して赤面している。ロキは部屋の外にいてルイスの会話こそ聞いていなかったが、
「ポテンシアの王族って、評判悪くないですよね。まぁ、確かにちょっと手が早そうな雰囲気はしましたけど」
とストレートに感想を言った。
「プレイボーイな感じね」
レナは先ほどのルイスの態度を思い出しながら、少しムスッとしている。
「婚約すれば、さすがに女性関係の心配は無くなると思いますけど。何かあったんですか?」
と、ロキはレナの様子に驚いて言った。
「何かって、別に無いわよ。ちょっと相手のペースに飲まれてしまって悔しいだけ」
レナがそう言って口を尖らせているのを、シンが、
(可愛いなオイ)
と見惚れているのをカイは一瞥し、
「では、今回の相手も見合いは先に進めることに異論はないな。パースとポテンシアに1人ずつ、協力者兼婚約者候補が残っているのはいい傾向だ」
と言うと、応接室で待たせているポテンシアの護衛との打ち合わせに向かうことにした。
先程まで顔を合わせていたルイスの護衛2名が、少し砕けた雰囲気で部屋に残っていた。
「さて、早速だが、急遽こちらの改革に協力してもらえることになり、本当に感謝している。改めて、カイ・ハウザーだ。よろしく頼む」
カイが頭を下げて挨拶をすると、ポテンシアの護衛2人は顔を合わせ、
「やはり、あなたがハウザー団長」
「確信はなかったものの、なんとなくそんな気がしていました」
と口を開く。
「ブラッド・クラウスだ。ポテンシアの近衛兵で、第4王子付きの護衛をしている」
「レオナルド・サントーロです。普段は国王の間諜を務めています」
ブラッドは20代後半くらいの若者で、短髪の明るい茶色の髪、面長の顔に切り傷跡がいくつかある兵士らしい男だ。レオナルドは20代半ばくらいの、少し細身の若者だった。暗めの茶色の髪を刈り上げており、やわらかい表情の中にある鋭い目つきが印象的だ。
「実は、既に黒に近い貴族が1名いて、王女に危害を加えかけたため昨日私が城から追い出した経緯がある。恐らく王女信仰の教会を使って庶民への布教も行なっていると見ている。残念ながら爵位が公爵なんだが」
カイはそう言って昨日の見合い相手のプロフィールを渡す。
「公爵が反勢力とは、出だしからすごい情報ですね」
レオナルドは公爵の資料を見て、
「しかも、関所のある地域の領主で貿易担当大臣。これまでの経緯を考えると分かりやすいですね」
と言った。ブラッドは暫く黙って資料を読み込んでから、
「ハウザー殿との連携や、我々の動き方を決めておきたいところだが、ハッキリ申し上げてルリアーナの貴族自体に自警能力は全く無いので、外の介入がなければすぐに核心に入り込めるだろう。ただ……少し気になっているのが、その外からの介入というやつだ」
と、カイの方を窺いながら少し言いにくそうにした。
「分かっている、リブニケ王国あたりが絡んでいると、厄介なことになるな」
カイがブラッドの言いたいことを察して答えると、ブラッドは「ああ」と頷いた。
「リブニケとルリアーナの関係値などは、どうなのでしょうか?」
レオナルドが尋ねる。
「実は、俺もよく分からないでいる。先日リブニケの侯爵が王女殿下の見合いに来たが、あまりにも不遜でとてもじゃないが友好関係を築きたいという態度ではなかった。王女のことは個人的に気に入っていたのかもしれないが」
カイが答えると、ブラッドは少し咳ばらいをして、
「それは、レナ様といえばこのあたりの王侯貴族には非常に人気なので、当たり前では?」
とカイを睨みながら言った。
レオナルドはブラッドの方を少し見てから、
「まあ、側近のあなたには分からないでしょうけど、ハウザーさんのポジションになりたいと思っているのは僕たちだけじゃありませんからね」
と付け加えた。カイが目の前の2人をじっと見つめ、
「想像以上に面倒くさいんだな、お前ら」
としみじみと言うと、
「余裕かましてんじゃねーよ、自慢かよ」
「大体何なんですか、おたくは見た目採用なんですか?そういうやり方で入り込むんですか?」
とすごい剣幕でまくしたてられる。カイは、
「勘弁してくれ」
と2人の様子に辟易としていた。
カイがポテンシアの護衛と話していて、初めて分かったことがある。
ポテンシアやパースにとっても、どうやらルリアーナの第一王女というのは特別な存在らしい。自国で人気があることは調査報告により把握していたが、同盟国から人気があるとは想像もしていなかった。
ブラッドとレオナルドは王族付きの近衛兵ということもあり、仕事は信頼して任せることができそうだが、王女への態度が微妙に気になった。ポテンシア人は自分の部下にもいるが、どうも女性好きなところがあるらしいのだ。王女に手を出すことはないと思うが、あまり女性の護衛向きとは言えなかった。
カイはブラッドとレオナルドを送り出すときに、公爵の所業を軽く伝えた時の2人の顔が忘れられない。
(目を丸くした後、何やらどす黒い気を漂わせていたな……)
感情的になられても困るが、レナの安全のために業務を全うしてくれそうな2人だ。
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