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the 7th day 新しい任務
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「おはようございます、王女殿下。先程の問題は、フィルリ7世に平民の3名が取り囲む形でおきていました。平民はフィルリ7世の指示で裁判所へ身柄を引き渡しています」
カイがそう報告すると、侍女たちに髪を整えられながら話を聞いていたレナは、
「ありがとう、カイ。城内に立場の分からない者が簡単に入ってしまえたのは、こちらの仕組みの問題なので見直しをさせることにします。それより、何でフィルリ7世が取り囲まれることになったのか知りたいわ……」
と言って顔をしかめた。
「ちなみに、あの政治家は普段何をしている方なんですか?」
と、カイは興味本位で聞いてみる。
「ああ、代々税金の管理を任せているの。各地の税収なんかについても把握してもらっている、財務大臣ね」
レナの言葉に、カイは納得した。税金関係の政治家が平民に恨まれると言えば、税負担が重いこと以外、あまりなさそうだ。
「そうでしたか。以前、自分のことを妖術遣いの騎士と言った方だったので、情報に通じている方なのかと」
カイはそう言って、フィルリ7世から会議の際に糾弾されたことを思い出していた。妙な妖術とは、恐らく自分の使う気功術のことだろう。
「まあ、フィルリ7世は税金の使い道を監視する役目だから、稟議を上げたときにカイのことを調べたのだと思うけれど。あの程度のことに私が答えられなかったら王家としての資質がないとでも言いたかったのだと思うわ」
レナはそう言うと、化粧と髪を整えていた侍女たちを下がらせた。
「フィルリ7世は、信用して大丈夫よ、カイ」
レナは、カイが聞きたかったことは、そういうことなのだろうと思った。城内の確実な味方はこれから教えておいた方が良さそうだと悟る。
「なぜ、そう言い切れる?」
カイが2人きりになって敬語をやめた途端、さすがに団長の気迫だとレナは感心した。
「フィルリ7世は、王族とは遠縁だけど親戚なのよ」
レナの言葉に、カイは以前レナの話に出てきた遠縁の親戚のことを思い出した。
「政治に関心がないと言って、殿下のサポートを断ったとかいう親戚の話が前に出ていたが、それがフィルリ7世なのか?政治に関心がない割に、政治家になるなど不思議だな」
カイは以前に聞いたレナの話からして、王族の親戚は信用が置けない部類にしていた。子どもの王位継承者を放っておくような親戚が、信用できるとはとても思えない。
「そうね、前は説明を省きすぎていたわね。フィルリ7世は絶対王政に反対している立場で、政治学者の家系よ。国を治めるのは民意を反映して選ばれた者が適任だと、先祖代々論文を書いているような。だから王族の協力を全くしたがらないのは仕方がないの」
レナが説明すればするほど怪しい。王家を疎んでいるのであれば、謀反を起こしても不思議ではない。
「殿下がそこまで言うのであれば一旦引くが、俺は独自で少し警戒しておく。平民に囲まれる位の行動は取っている可能性があるのは事実だ」
カイはそう言ってその場を離れて席を外そうとした。
「ねぇ、ちょっと待って。実は追加でお願いしたいことがあるの」
レナは背を向けたカイに向かって言った。
「国内で起きていることを、探ってもらうことは出来ないかしら?報酬は、私の個人所有の宝飾品を売って支払うから」
その言葉にカイは、
「報酬ありきならな。ああ、うちの部下は高くつくぞ」
と嬉しそうに言った。
カイは自室に戻り、紅茶を飲みながらルリアーナ内にいる協力先から届いた報告書に目を通すと、部下の2人に、
「殿下から追加の仕事依頼だ。こちらの人員を増員して、調査業務が加わる」
と告げた。丁度トレーニング中だったシンとロキは、何も言わずに驚いて体勢を崩している。
「あと最低でも2名、出来れば3名以上必要だな」
そう言いながらカイは誰が適任か考えていた。
シンは、どんどん大きくなる依頼内容に少し不安を感じながら、
「調査って、俺たちが受けていい仕事なんですかね?」
と崩した体制を整えながら尋ねた。
「まあ、気になることは色々ありますね、昨日のお見合い相手とか、さっきの政治家とか」
ロキが勘を働かせると、
「そうだ」
とカイは答え、
「丁度怪しいと思っていたが、運良くレポートが届いて確信に変わっている。これを見ろ」
と、協力先からの報告書を2人に渡した。
2人は同時に書類を読み始めると、息を飲んで言葉を失う。
そこには、ルリアーナ国内で起こっている有力者の独自の動きについて書かれていた。
「これは、あくまでも俺の仮説だが、この国の有力者の何人かが王政を利用するのか、現在の制度を利用して何かを企んでいる流れだろう」
それを聞いて、シンは違和感を覚えて首を傾げていた。
「だけど団長……今迄の流れからしても、武力を持っているわけでもないルリアーナで争いが起きるとは思えませんが」
シンの言葉にカイは頷く。
「間違いなく同盟国以外で接触してきている他国があるだろうな。農業国が企むこととは何なのか、全く見えないが」
その言葉を聞いて、ロキはピンと来たようだ。
「宗教のこともありますし、一度、国内のことを調べてみる価値はありますね」
カイは優秀な部下を誇らしく思いながら、
「一筋縄ではいかないだろうな。これは金額交渉の余地もある」
と笑みを浮かべた。それを見て、
「団長、やっぱり仕事と金の事を考えてる時が1番生き生きしてますね」
と、シンが残念そうに言った。
カイがそう報告すると、侍女たちに髪を整えられながら話を聞いていたレナは、
「ありがとう、カイ。城内に立場の分からない者が簡単に入ってしまえたのは、こちらの仕組みの問題なので見直しをさせることにします。それより、何でフィルリ7世が取り囲まれることになったのか知りたいわ……」
と言って顔をしかめた。
「ちなみに、あの政治家は普段何をしている方なんですか?」
と、カイは興味本位で聞いてみる。
「ああ、代々税金の管理を任せているの。各地の税収なんかについても把握してもらっている、財務大臣ね」
レナの言葉に、カイは納得した。税金関係の政治家が平民に恨まれると言えば、税負担が重いこと以外、あまりなさそうだ。
「そうでしたか。以前、自分のことを妖術遣いの騎士と言った方だったので、情報に通じている方なのかと」
カイはそう言って、フィルリ7世から会議の際に糾弾されたことを思い出していた。妙な妖術とは、恐らく自分の使う気功術のことだろう。
「まあ、フィルリ7世は税金の使い道を監視する役目だから、稟議を上げたときにカイのことを調べたのだと思うけれど。あの程度のことに私が答えられなかったら王家としての資質がないとでも言いたかったのだと思うわ」
レナはそう言うと、化粧と髪を整えていた侍女たちを下がらせた。
「フィルリ7世は、信用して大丈夫よ、カイ」
レナは、カイが聞きたかったことは、そういうことなのだろうと思った。城内の確実な味方はこれから教えておいた方が良さそうだと悟る。
「なぜ、そう言い切れる?」
カイが2人きりになって敬語をやめた途端、さすがに団長の気迫だとレナは感心した。
「フィルリ7世は、王族とは遠縁だけど親戚なのよ」
レナの言葉に、カイは以前レナの話に出てきた遠縁の親戚のことを思い出した。
「政治に関心がないと言って、殿下のサポートを断ったとかいう親戚の話が前に出ていたが、それがフィルリ7世なのか?政治に関心がない割に、政治家になるなど不思議だな」
カイは以前に聞いたレナの話からして、王族の親戚は信用が置けない部類にしていた。子どもの王位継承者を放っておくような親戚が、信用できるとはとても思えない。
「そうね、前は説明を省きすぎていたわね。フィルリ7世は絶対王政に反対している立場で、政治学者の家系よ。国を治めるのは民意を反映して選ばれた者が適任だと、先祖代々論文を書いているような。だから王族の協力を全くしたがらないのは仕方がないの」
レナが説明すればするほど怪しい。王家を疎んでいるのであれば、謀反を起こしても不思議ではない。
「殿下がそこまで言うのであれば一旦引くが、俺は独自で少し警戒しておく。平民に囲まれる位の行動は取っている可能性があるのは事実だ」
カイはそう言ってその場を離れて席を外そうとした。
「ねぇ、ちょっと待って。実は追加でお願いしたいことがあるの」
レナは背を向けたカイに向かって言った。
「国内で起きていることを、探ってもらうことは出来ないかしら?報酬は、私の個人所有の宝飾品を売って支払うから」
その言葉にカイは、
「報酬ありきならな。ああ、うちの部下は高くつくぞ」
と嬉しそうに言った。
カイは自室に戻り、紅茶を飲みながらルリアーナ内にいる協力先から届いた報告書に目を通すと、部下の2人に、
「殿下から追加の仕事依頼だ。こちらの人員を増員して、調査業務が加わる」
と告げた。丁度トレーニング中だったシンとロキは、何も言わずに驚いて体勢を崩している。
「あと最低でも2名、出来れば3名以上必要だな」
そう言いながらカイは誰が適任か考えていた。
シンは、どんどん大きくなる依頼内容に少し不安を感じながら、
「調査って、俺たちが受けていい仕事なんですかね?」
と崩した体制を整えながら尋ねた。
「まあ、気になることは色々ありますね、昨日のお見合い相手とか、さっきの政治家とか」
ロキが勘を働かせると、
「そうだ」
とカイは答え、
「丁度怪しいと思っていたが、運良くレポートが届いて確信に変わっている。これを見ろ」
と、協力先からの報告書を2人に渡した。
2人は同時に書類を読み始めると、息を飲んで言葉を失う。
そこには、ルリアーナ国内で起こっている有力者の独自の動きについて書かれていた。
「これは、あくまでも俺の仮説だが、この国の有力者の何人かが王政を利用するのか、現在の制度を利用して何かを企んでいる流れだろう」
それを聞いて、シンは違和感を覚えて首を傾げていた。
「だけど団長……今迄の流れからしても、武力を持っているわけでもないルリアーナで争いが起きるとは思えませんが」
シンの言葉にカイは頷く。
「間違いなく同盟国以外で接触してきている他国があるだろうな。農業国が企むこととは何なのか、全く見えないが」
その言葉を聞いて、ロキはピンと来たようだ。
「宗教のこともありますし、一度、国内のことを調べてみる価値はありますね」
カイは優秀な部下を誇らしく思いながら、
「一筋縄ではいかないだろうな。これは金額交渉の余地もある」
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