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the 22nd day 収穫祭前日の町
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城下町は、翌日に控えた収穫祭の飾りつけで華やかに彩ろられていた。カボチャやニンジンが玄関に飾られ、パプリカのカーテンが揺れている。玉ねぎは精霊を遠ざけるという謂れがあるらしく、飾りつけには使われていなかった。
「可愛いわね、野菜の飾り」
サラは各所に飾られた野菜を見ながら、初めて目にする異国の収穫祭に目を輝かせている。
「農業国らしいお祭りですね」
シンはサラの言葉に頷きながら、城下町の活気に感心していた。
「本当は、王女殿下も馬車でパレードに参加する予定だったのか……」
ロキはそう言って賑やかな町の喧騒に、レナの姿を思い浮かべた。
3人は城下町の通りを全て歩き尽くすと、一度バールに入って休憩を取る。
「ねえ、パレードでは、教会が立ち寄りの場所を担っているような話だったけど、城下町には教会らしきものがないわね」
サラが単純な疑問を口にした。
「確かに、この町は教会無しでどうしてるんだろう」
シンがサラの言葉に納得すると、バールの席を立った。カウンターまで歩いていくと、バールの店主らしき人物に何やら尋ねている。
「シンって、ああいうところ本当にすごいと思わない?」
サラがシンを見ながらロキに話しかけると、
「あの人、ほんとに人たらしですよね。誰とでも仲良いし」
とロキはシンを眺めながらサラに言った。暫く観察していると、シンは話をしていた人物にお礼を言ってこちらに戻ってくる。
「分かったよ。この町のパレードについて」
笑顔で言うシンに、
「すごい」
とサラとロキは声を揃えて言った。
「教会の役目は、当番制なんだって。毎年、当番になったところが教会の役目を果たすらしい。宗教が2つあるから、それぞれの宗派の当番がいるんだけど、今年は正教会の当番がこの先の宿で、レジスタンスは2ブロック奥の民家だって。どちらにも、それぞれの宗派の修道士が来て教会さながらの祈りや歌を捧げるらしいぞ」
シンの得た情報に、後で当番の場所を見に行ってみようということになった。3人はカウンターの中にいる情報をくれた店主らしき男性に頭を下げてお礼の意思を見せる。男性はグラスを拭きながら、ニッコリと笑って3人を見ていた。
「ここが、正教会の当番になる宿か」
「他の家やお店に比べて、何かが違うってことでもなさそうですね」
宿の入口を観察しながら、3人は当番らしい目印や変わったところがないか探す。3人のよそ者がじろじろと宿をうかがっていたので、通行人につい声を掛けられた。
「こちらに、何か御用でもおありでしょうか?」
初老の男性が近寄ってきたので、サラは、
「ええ、明日の当番のお宅はこちらだったかしらと思いまして」
と慌てて答えた。
「お見かけしない方たちですが、この地域の方ですか?」
初老の男性に聞かれたので、シンが咄嗟に、
「いえ、城勤めなのでこちらにはあまり詳しくはないんです」
と答える。初老の男性は「ああ」と言って笑顔で3人を中に案内した。
「城勤めの方たちですか、今年は王女が登場するのかどうか、直前にもご連絡が無くて」
初老の男性はそう言って宿の玄関に3人を案内すると、
「そこまで広くはないのですが、こちらを休憩所として使っていただく予定です。もし王女様がお越しの場合は、こちらにご案内いただけると助かりますが」
と、宿の受付前のスペースを紹介した。恐らく机や椅子を片付けて広いスペースを作ったのだろう、20人程度が待機できる空間になっていた。
「なるほど、それでは、催し物もこちらで?」
シンは下見に来た城の使いになりきることを決め、初老の男性に尋ねる。
「そうですね。こちらに訪れた信者の方に、ここで祈りと歌をご披露いただこうと思っています。本当は、王女殿下に歌っていただけると、さぞ喜ばれることでしょうが……」
男性の言葉に、シンは詰まった。
「きっと、明日は素敵なパーティになるでしょうね」
サラはそう言って初老の男性に微笑みかける。ロキは少し下を向いて何かを考えているようだった。
「さっきのが正教会で、こっちがレジスタンスのルリアーナ信教か」
3人はレジスタンスの立ち寄り所になる民家の前に来た。
「立ち寄りと言っても、民家だと家の中までは入れないね」
サラはそう言って民家前の道をぐるっと見渡す。広い道なので人が集まっても問題なさそうだった。
先ほどの宿とは違い、住宅地で通行人もいない。話を聞ける人も特に見つからず、3人は来た道を戻ることにした。
「正教会の方は、王女信仰があるから殿下に来てほしそうだったけど……レジスタンスの方は、そういうわけではないだろうね」
「まあ、特権階級に疑問を持っている宗教ですからね」
サラの言葉にロキが答える。
「その2つの宗教は、分かり合えないのかな」
シンはそう言って、来た道を戻りながら野菜の飾りで賑やかな町の風景を眺める。
「収穫祭なんだから、基本的には豊穣を祝うお祭りなんだろ? 争いとは無縁なはずじゃないか……」
シンの言葉に、サラとロキは無言だった。城を目指して歩くうちに、辺りはすっかり暗くなってきていた。
「可愛いわね、野菜の飾り」
サラは各所に飾られた野菜を見ながら、初めて目にする異国の収穫祭に目を輝かせている。
「農業国らしいお祭りですね」
シンはサラの言葉に頷きながら、城下町の活気に感心していた。
「本当は、王女殿下も馬車でパレードに参加する予定だったのか……」
ロキはそう言って賑やかな町の喧騒に、レナの姿を思い浮かべた。
3人は城下町の通りを全て歩き尽くすと、一度バールに入って休憩を取る。
「ねえ、パレードでは、教会が立ち寄りの場所を担っているような話だったけど、城下町には教会らしきものがないわね」
サラが単純な疑問を口にした。
「確かに、この町は教会無しでどうしてるんだろう」
シンがサラの言葉に納得すると、バールの席を立った。カウンターまで歩いていくと、バールの店主らしき人物に何やら尋ねている。
「シンって、ああいうところ本当にすごいと思わない?」
サラがシンを見ながらロキに話しかけると、
「あの人、ほんとに人たらしですよね。誰とでも仲良いし」
とロキはシンを眺めながらサラに言った。暫く観察していると、シンは話をしていた人物にお礼を言ってこちらに戻ってくる。
「分かったよ。この町のパレードについて」
笑顔で言うシンに、
「すごい」
とサラとロキは声を揃えて言った。
「教会の役目は、当番制なんだって。毎年、当番になったところが教会の役目を果たすらしい。宗教が2つあるから、それぞれの宗派の当番がいるんだけど、今年は正教会の当番がこの先の宿で、レジスタンスは2ブロック奥の民家だって。どちらにも、それぞれの宗派の修道士が来て教会さながらの祈りや歌を捧げるらしいぞ」
シンの得た情報に、後で当番の場所を見に行ってみようということになった。3人はカウンターの中にいる情報をくれた店主らしき男性に頭を下げてお礼の意思を見せる。男性はグラスを拭きながら、ニッコリと笑って3人を見ていた。
「ここが、正教会の当番になる宿か」
「他の家やお店に比べて、何かが違うってことでもなさそうですね」
宿の入口を観察しながら、3人は当番らしい目印や変わったところがないか探す。3人のよそ者がじろじろと宿をうかがっていたので、通行人につい声を掛けられた。
「こちらに、何か御用でもおありでしょうか?」
初老の男性が近寄ってきたので、サラは、
「ええ、明日の当番のお宅はこちらだったかしらと思いまして」
と慌てて答えた。
「お見かけしない方たちですが、この地域の方ですか?」
初老の男性に聞かれたので、シンが咄嗟に、
「いえ、城勤めなのでこちらにはあまり詳しくはないんです」
と答える。初老の男性は「ああ」と言って笑顔で3人を中に案内した。
「城勤めの方たちですか、今年は王女が登場するのかどうか、直前にもご連絡が無くて」
初老の男性はそう言って宿の玄関に3人を案内すると、
「そこまで広くはないのですが、こちらを休憩所として使っていただく予定です。もし王女様がお越しの場合は、こちらにご案内いただけると助かりますが」
と、宿の受付前のスペースを紹介した。恐らく机や椅子を片付けて広いスペースを作ったのだろう、20人程度が待機できる空間になっていた。
「なるほど、それでは、催し物もこちらで?」
シンは下見に来た城の使いになりきることを決め、初老の男性に尋ねる。
「そうですね。こちらに訪れた信者の方に、ここで祈りと歌をご披露いただこうと思っています。本当は、王女殿下に歌っていただけると、さぞ喜ばれることでしょうが……」
男性の言葉に、シンは詰まった。
「きっと、明日は素敵なパーティになるでしょうね」
サラはそう言って初老の男性に微笑みかける。ロキは少し下を向いて何かを考えているようだった。
「さっきのが正教会で、こっちがレジスタンスのルリアーナ信教か」
3人はレジスタンスの立ち寄り所になる民家の前に来た。
「立ち寄りと言っても、民家だと家の中までは入れないね」
サラはそう言って民家前の道をぐるっと見渡す。広い道なので人が集まっても問題なさそうだった。
先ほどの宿とは違い、住宅地で通行人もいない。話を聞ける人も特に見つからず、3人は来た道を戻ることにした。
「正教会の方は、王女信仰があるから殿下に来てほしそうだったけど……レジスタンスの方は、そういうわけではないだろうね」
「まあ、特権階級に疑問を持っている宗教ですからね」
サラの言葉にロキが答える。
「その2つの宗教は、分かり合えないのかな」
シンはそう言って、来た道を戻りながら野菜の飾りで賑やかな町の風景を眺める。
「収穫祭なんだから、基本的には豊穣を祝うお祭りなんだろ? 争いとは無縁なはずじゃないか……」
シンの言葉に、サラとロキは無言だった。城を目指して歩くうちに、辺りはすっかり暗くなってきていた。
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