アメイジング・ナイト ―王女と騎士の35日―

the 28th day 女騎士復活

　カイはその日に届いた朝刊の題字に顔をしかめると、コーヒーを飲みながら机に向かって内容を読み始めた。

　暫くすると、部屋の扉がノックされたので返事をする。扉の向こうで「サラです」と声がしたため、カイは慌てて扉を開けた。
　そこにはすっかりいつもの様子のサラが、満面の笑みを見せて立っている。

「もう大丈夫なのか？　怪我が思ったより軽症だったようで良かったが……」
　カイは心配しながらサラに声を掛けて部屋に通す。

　もともとカイのために用意された部屋は椅子がひとつしかない。カイの座っていた机の椅子をサラに譲り、カイは立ったままサラに調子を尋ねた。

　サラの怪我はもうほとんど完治しており、身体の調子もすっかり良くなっていた。当初は動けない程の怪我を負わされていたと思ったが、実際は打撲程度の怪我を複数負っていただけだったらしい。サラはしっかり自分の被害を抑えた戦い方をしていた。

「ところで、団長……今、シンとロキは食堂？」
　サラが部屋に居ない様子の2人のことを尋ねたので、
「ああ、朝食が済んだら戻って来るだろ」
　とカイは答える。

「パースが……ポテンシアに攻められているらしいわね」
　サラはカイの置いた新聞を見ながら言った。サラはつい先日まで滞在していた。そのままパースにいたら、今頃どうなっていたのだろうかとぞっとする。

「ああ、ポテンシア国王は領地を広げることに、まだこだわっているらしいな」
　カイはため息をつく。このままでは、故郷のブリステ公国も他人事ではない上に、現在滞在しているルリアーナにも何らかの影響が出るに違いない。

　その時、部屋の扉が開いた。
「あれ？」
「サラさん、もう復活ですか？」
　朝食から戻ったシンとロキが、嬉しそうにサラを見る。

「そうよ、いつまでも寝てらんないからね！」
　サラは2人に声を掛けられ、嬉しそうに腕に力こぶを作って力強さをアピールし、
「うわあ、神々しいほど逞しい」
「つい昨日まで療養していたとは思えない」
　と声を掛けられていた。

　レナの護衛を終えて暗くなっていた2人の表情が、明らかに変わった。カイはほっと胸をなでおろす。

「ようやく、4人体制に戻れたな。サラが無事で、本当に良かった」
　カイがそう言って3人に声を掛けると、
「残り少ない時間だけど、またよろしくね」
　とサラは張りのある声で言った。

「サラさんは、横になってたらサラさんじゃないですね」
「やっぱりその迫力がサラさんって感じです」
　シンとロキがしみじみ言うと、
「それ、褒められてるのか貶されてるのか分からないけど、まあいいわ」
　とサラはご機嫌に言った。