193 / 221
the 30th day ただいま
しおりを挟む
ルリアーナ城は、久しぶりに温かい空気に包まれている。
呪いに倒れた王女が護衛の騎士と無事に戻り、城内で溢れていた王女を永遠に失うかもしれないという絶望が消えた。
異国から雇った護衛が王女の呪いを解いたと、カイはまたルリアーナ城で評価を上げていた。
「団長、殿下の呪いは、もう完全に無くなったんですね?」
自室でシンはカイに尋ねる。
「そうらしい。呪いが見えない以上、殿下の言葉を信じるしかないが……」
カイはそう言って自分の荷物の荷ほどきをしていた。
「で、団長は王女殿下をちゃんと支えられましたか?」
ロキはその部分ではカイ・ハウザーという男を信用していない。レナが、まだ心に傷を負っているのは間違いないのだろうと気にしていた。
「今回に関しては……自分でも不思議なんだが……それなりにちゃんと支えられた気がするな」
根拠など無かったが、カイは呪いに倒れたレナをずっと支え続け、ここまでの時間を共に過ごしてきた自負があった。精神的なケアなど、特に女性相手となるとカイは全く役に立たないのだが、どういうわけかレナはカイをずっと頼っていた。
「そうなんですか……意外です」
ロキは堂々と肯定したカイに驚いた。ここまで言い切れるということは、何か確信があってのことなのだろう。
「団長がちゃんと殿下を支えてくれたなら、安心ですね。それにしても、呪いからお姫様を救うとか、団長に伝説が増えて行く気がします」
シンはそう言って、目の前の上司はいつも規格外だなと笑う。
「呪いから人を救うのは、完全に専門外だな。雷にも打たれたし、空間の間とかいう異空間に行ったり、呪術師相手は勝手が違う」
カイはそう言うと、上着を脱いでベッドに身体を預け横になった。
「クロノスとの移動も、殿下を気遣いながらで妙に身体が凝った」
カイは疲れが出ている腕に、あんな姿勢をとっていたのだから仕方が無いかと移動中を思い出していた。
「あの2人乗りはないですよね。これぞ王女様と騎士様の理想みたいな雰囲気出して、妙にぴったりくっついてるし」
ロキは、納得が行かないとでも言いたそうに口を尖らせている。2人があまりに似合いすぎていることに、ここまで屈辱感を味わうのかと穏やかでなかった。
「無事に殿下の呪いを解く任務を果たしたのに、そんな変なことを言われている俺はなんなんだ?」
ベッドに身体を預けたカイが不満げに言う。
「分からないんですか? お似合いだって言いたいんですよ。それが悔しいだけです」
ロキはそう言うとカイの方をじっと見た。
「おかえり。やっぱりあんたには敵わないな、カイ・ハウザー」
ロキは久しぶりにカイを上司としてではなく、同じ実業家として見た。
ロキにとってカイの事業は無駄が多い。固定費が掛かりすぎて人件費も重すぎる。それでも、こうしてカイの活躍を目の当たりにすると、この男は世界に必要な人間なのだと思い知らされてしまうのだ。
「ああ、ただいま」
カイはそう言って天井を見たまま軽く笑った。
呪いに倒れた王女が護衛の騎士と無事に戻り、城内で溢れていた王女を永遠に失うかもしれないという絶望が消えた。
異国から雇った護衛が王女の呪いを解いたと、カイはまたルリアーナ城で評価を上げていた。
「団長、殿下の呪いは、もう完全に無くなったんですね?」
自室でシンはカイに尋ねる。
「そうらしい。呪いが見えない以上、殿下の言葉を信じるしかないが……」
カイはそう言って自分の荷物の荷ほどきをしていた。
「で、団長は王女殿下をちゃんと支えられましたか?」
ロキはその部分ではカイ・ハウザーという男を信用していない。レナが、まだ心に傷を負っているのは間違いないのだろうと気にしていた。
「今回に関しては……自分でも不思議なんだが……それなりにちゃんと支えられた気がするな」
根拠など無かったが、カイは呪いに倒れたレナをずっと支え続け、ここまでの時間を共に過ごしてきた自負があった。精神的なケアなど、特に女性相手となるとカイは全く役に立たないのだが、どういうわけかレナはカイをずっと頼っていた。
「そうなんですか……意外です」
ロキは堂々と肯定したカイに驚いた。ここまで言い切れるということは、何か確信があってのことなのだろう。
「団長がちゃんと殿下を支えてくれたなら、安心ですね。それにしても、呪いからお姫様を救うとか、団長に伝説が増えて行く気がします」
シンはそう言って、目の前の上司はいつも規格外だなと笑う。
「呪いから人を救うのは、完全に専門外だな。雷にも打たれたし、空間の間とかいう異空間に行ったり、呪術師相手は勝手が違う」
カイはそう言うと、上着を脱いでベッドに身体を預け横になった。
「クロノスとの移動も、殿下を気遣いながらで妙に身体が凝った」
カイは疲れが出ている腕に、あんな姿勢をとっていたのだから仕方が無いかと移動中を思い出していた。
「あの2人乗りはないですよね。これぞ王女様と騎士様の理想みたいな雰囲気出して、妙にぴったりくっついてるし」
ロキは、納得が行かないとでも言いたそうに口を尖らせている。2人があまりに似合いすぎていることに、ここまで屈辱感を味わうのかと穏やかでなかった。
「無事に殿下の呪いを解く任務を果たしたのに、そんな変なことを言われている俺はなんなんだ?」
ベッドに身体を預けたカイが不満げに言う。
「分からないんですか? お似合いだって言いたいんですよ。それが悔しいだけです」
ロキはそう言うとカイの方をじっと見た。
「おかえり。やっぱりあんたには敵わないな、カイ・ハウザー」
ロキは久しぶりにカイを上司としてではなく、同じ実業家として見た。
ロキにとってカイの事業は無駄が多い。固定費が掛かりすぎて人件費も重すぎる。それでも、こうしてカイの活躍を目の当たりにすると、この男は世界に必要な人間なのだと思い知らされてしまうのだ。
「ああ、ただいま」
カイはそう言って天井を見たまま軽く笑った。
0
あなたにおすすめの小説
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~
双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。
なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。
※小説家になろうでも掲載中。
※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。
【本編大改稿中】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!
七海美桜
恋愛
フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。
この作品は、小説家になろうにも掲載しています。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる