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第2章 それぞれの向き合い方
カイ・ハウザーとブライアン・バンクス
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旧パースの富豪、ブライアン・バンクスはポテンシア国王に領地を取り上げられた。その領地を、今は第二王子のユリウス・ポテンシアが統治している。
幸いブライアンは領地による収入よりも事業による収益が多かったため、領地を取り上げられてからも生活に大きな支障は出ていない。
それがユリウスにとっては気に入らないのか、新しい自分の領地で領民を苦しめることばかり思いついては実行している。
ブライアンは、カイ・ハウザーを雇ってからユリウスの悪行を抑えようと画策してきたが、とうとうカイの方が我慢の限界だったらしい。
「もう、直接ユリウス殿下のところに行ってきた方が良い頃合いではないですか……?」
カイは、毎日近衛兵を追いかけたり威圧したりすることが何の解決にもなっていないことを分かっていた。
「いや、それは……。ありがたいが……」
ブライアンは悩まし気だ。身体の割に育った腹部を、円を描くように撫でながら暫く唸っている。
ユリウスの好き勝手を許すつもりはなかったが、あえて直接対決をするつもりもない。ポテンシアの王族を刺激して国王が出てくると、手の打ちようがないからだ。
「正直、あんまり揉め事を起こしたくは無いんだ」
ブライアンがそう言って情けないなと力なく笑う。
「では、揉め事が起きないように、ユリウス殿下の様子だけ探ってこようと思います。できれば、旧ルリアーナにいるルイス殿下のところを訪ねたいと思っていたのですが……」
カイがそう言うと、ブライアンはカイの口から出た第四王子の名前に驚いた。
「ルイス殿下と面識があるのか? そういえば、君が仕えていたルリアーナの王女と婚約していたんだったか……」
ブライアンにとって、ルイス・ポテンシアはポテンシアの王族の中で唯一の希望だった。
他の王子に統治された領地は荒れていく一方なのに対し、ルイスの領地ではそういった話が聞こえてこない。
「ルイス殿下は、信用のおける方です。恐らく、旧ルリアーナは、あの方のお陰で混乱が起きずに済んでいるのではないかと思うのですが」
カイはそう言いながら、レナの下でやり取りをしたルイスを思い出していた。レナという婚約者を失ったルイスが果たしてどうなっているのか、気になっているところもある。
「そうか……。ルイス殿下と話がしたいというのなら、私の名前でルイス殿下に書簡を手配しても良い。私の代わりにカイ・ハウザーを謁見させるとでも伝えておこう」
ブライアンはそう言うと、慌てて準備をした。
それを見てカイは胸をなでおろす。素行の悪い兵士を追いかけまわすような毎日に、うんざりし始めていたのだ。
「ありがとうございます。恐らくルイス殿下も、ユリウスへの対策には手を焼いているはずです。何か協力できることが無いか、前向きな話ができれば良いのですが」
カイは、1ヶ月後に控えたシンの挙式に参加するため、一度ブリステ公国に戻ることになっていた。
代わりに団員を3名応援に寄越す予定だが、それまでに何か出来ることを探っておきたい。現在のいたちごっこのような毎日を変えるために、どうするべきか考えを巡らせていた。
幸いブライアンは領地による収入よりも事業による収益が多かったため、領地を取り上げられてからも生活に大きな支障は出ていない。
それがユリウスにとっては気に入らないのか、新しい自分の領地で領民を苦しめることばかり思いついては実行している。
ブライアンは、カイ・ハウザーを雇ってからユリウスの悪行を抑えようと画策してきたが、とうとうカイの方が我慢の限界だったらしい。
「もう、直接ユリウス殿下のところに行ってきた方が良い頃合いではないですか……?」
カイは、毎日近衛兵を追いかけたり威圧したりすることが何の解決にもなっていないことを分かっていた。
「いや、それは……。ありがたいが……」
ブライアンは悩まし気だ。身体の割に育った腹部を、円を描くように撫でながら暫く唸っている。
ユリウスの好き勝手を許すつもりはなかったが、あえて直接対決をするつもりもない。ポテンシアの王族を刺激して国王が出てくると、手の打ちようがないからだ。
「正直、あんまり揉め事を起こしたくは無いんだ」
ブライアンがそう言って情けないなと力なく笑う。
「では、揉め事が起きないように、ユリウス殿下の様子だけ探ってこようと思います。できれば、旧ルリアーナにいるルイス殿下のところを訪ねたいと思っていたのですが……」
カイがそう言うと、ブライアンはカイの口から出た第四王子の名前に驚いた。
「ルイス殿下と面識があるのか? そういえば、君が仕えていたルリアーナの王女と婚約していたんだったか……」
ブライアンにとって、ルイス・ポテンシアはポテンシアの王族の中で唯一の希望だった。
他の王子に統治された領地は荒れていく一方なのに対し、ルイスの領地ではそういった話が聞こえてこない。
「ルイス殿下は、信用のおける方です。恐らく、旧ルリアーナは、あの方のお陰で混乱が起きずに済んでいるのではないかと思うのですが」
カイはそう言いながら、レナの下でやり取りをしたルイスを思い出していた。レナという婚約者を失ったルイスが果たしてどうなっているのか、気になっているところもある。
「そうか……。ルイス殿下と話がしたいというのなら、私の名前でルイス殿下に書簡を手配しても良い。私の代わりにカイ・ハウザーを謁見させるとでも伝えておこう」
ブライアンはそう言うと、慌てて準備をした。
それを見てカイは胸をなでおろす。素行の悪い兵士を追いかけまわすような毎日に、うんざりし始めていたのだ。
「ありがとうございます。恐らくルイス殿下も、ユリウスへの対策には手を焼いているはずです。何か協力できることが無いか、前向きな話ができれば良いのですが」
カイは、1ヶ月後に控えたシンの挙式に参加するため、一度ブリステ公国に戻ることになっていた。
代わりに団員を3名応援に寄越す予定だが、それまでに何か出来ることを探っておきたい。現在のいたちごっこのような毎日を変えるために、どうするべきか考えを巡らせていた。
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