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第2章 それぞれの向き合い方
シンの結婚式
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ルリアーナの護衛任務が終わって4か月が経ったころ、シンの結婚式がブリステ公国のとある教会で行われた。
当初マクウェル家の屋敷で行われる予定だった挙式は、予想外に人数が膨らんだ来賓のために教会へ会場を移すことになる。
限られた人だけのための2次会をこっそりと屋敷の庭で行うのだが、そちらがシンにとっては大事な会だった。
挙式に押しかけた来賓の目当てになっていたのは、男性2名。カイ・ハウザーとロキウィズ・ライトだ。
独身女性達にとってまさに優良物件の2人が新郎の親友であることは有名で、新婦のリリス・マクウェルに頭を下げに来る女性たちが後を絶たなかった。
「あんまり仲なんか良くなかったんだけど、頭を下げられてお祝いさせてって言われちゃ、気分は悪くないわね」
リリスがそう言って独身女性達を全て受け入れたため、身内ばかりの新郎の来賓に比べて新婦の来賓は気合の入った独身女性の集団になった。
会場にプラチナブロンドの髪を持つ美人、ロキが到着すると、何故か来賓から黄色い声が上がる。
(うーん……これ、なんか注目されてる気がするな…………)
青年実業家という立場のロキにとって、注目されることは珍しくなかった。が、この日の主人公は新郎新婦だ。来賓の態度に少し呆れてもいた。
ロキは会場を見回してカイの姿がまだ見えないと分かると、シンの家族らしい集団の席に行って挨拶を済ませて席につく。シンの妹は、初めて見るロキに視線が釘付けになっていた。
ロキは会場を見回す。特徴的な容姿を持つカイは、まだ到着していないようだ。
シンの家族らしい集団の席に行って挨拶を済ませて席に着く。シンの妹は、初めて見るロキに視線が釘付けになっていた。
(シンの妹、結構大人っぽい美人なんじゃないか。シン、可愛い子が好きだから勝手に可愛い系の妹がいるかと思ってたな……)
茶色いストレートの髪を腰上まで伸ばした長身美人の妹を見て、ロキは素直に驚いていた。農家の娘のはずだが、洗練された雰囲気がある。
ロキは席に着くと一息ついて教会のステンドグラスを眺めていた。つい4か月前には、シンとルリアーナの教会をまわっていたのだと、過ぎた日が遠い過去のように思える。
そんなことを考えながらぼーっとしていると、誰かの到着に会場がまた沸いた。
(カイ・ハウザーのおでましか)
ロキがそう思って教会の入口の方に視線をやると、長身の男が歩いている。
特徴的な黒髪の前髪を上げ、整った顔が強調されている。これで貴族階級でもあるのだから、やはり恵まれた男だなとロキは思った。
カイは急ぎ足でシンの家族に挨拶をすると、すぐにロキの隣に座る。会場の女性たちの視線は、その男性2人に注がれていた。
「久しぶりだな。思ったより元気そうじゃないか」
「勝手に人のイメージを決めつけるなよ。あと、なんとなく今日の主役が暫定で俺たちみたいだから、挙式が終わったら一目散に逃げるよ」
ロキは前を向いたまま、隣に座るカイに忠告する。
どうやら狙われているのは自分たちらしい、とロキはすぐに理解していた。
「珍しいな。独身女性が多い場所は好きなんじゃないのか?」
カイがそう言ってロキを揶揄うと「いや、それがさ……本当に興味がなくなっちゃってね。笑ってくれていいよ」とロキは苦しそうに笑って遠くを見た。
「まあ、たまにはそういうロキがいてもいいだろ」
カイは穏やかに言った。そんなやり取りができるカイの隣が、ロキにはやはり居心地が良い。
挙式が始まると、先程まで独身男性に夢中だった女性たちもシンとリリスの2人に注目し、感嘆の声を漏らしていた。
新郎は温かな瞳で新婦を見つめ、全てを許しているようだ。新婦はそんな新郎のことが好きでたまらないのだと、その場にいる者たちに伝わる。会場は、新しい夫婦の門出を祝う感動的な空気に包まれていた。
挙式では、特別な催し物があるわけではなかった。
新郎の言葉と新婦の言葉、そして夫婦の誓いが語られるだけの、シンプルな式だった。
それでも新郎新婦の姿に、涙を流す者もいた。
挙式が終わり、特別な雰囲気から覚めた来賓たちは、次はいよいよ自分の番だと目当ての男性を探す。
しかし、そこには例の2人の姿はなかった。
当初マクウェル家の屋敷で行われる予定だった挙式は、予想外に人数が膨らんだ来賓のために教会へ会場を移すことになる。
限られた人だけのための2次会をこっそりと屋敷の庭で行うのだが、そちらがシンにとっては大事な会だった。
挙式に押しかけた来賓の目当てになっていたのは、男性2名。カイ・ハウザーとロキウィズ・ライトだ。
独身女性達にとってまさに優良物件の2人が新郎の親友であることは有名で、新婦のリリス・マクウェルに頭を下げに来る女性たちが後を絶たなかった。
「あんまり仲なんか良くなかったんだけど、頭を下げられてお祝いさせてって言われちゃ、気分は悪くないわね」
リリスがそう言って独身女性達を全て受け入れたため、身内ばかりの新郎の来賓に比べて新婦の来賓は気合の入った独身女性の集団になった。
会場にプラチナブロンドの髪を持つ美人、ロキが到着すると、何故か来賓から黄色い声が上がる。
(うーん……これ、なんか注目されてる気がするな…………)
青年実業家という立場のロキにとって、注目されることは珍しくなかった。が、この日の主人公は新郎新婦だ。来賓の態度に少し呆れてもいた。
ロキは会場を見回してカイの姿がまだ見えないと分かると、シンの家族らしい集団の席に行って挨拶を済ませて席につく。シンの妹は、初めて見るロキに視線が釘付けになっていた。
ロキは会場を見回す。特徴的な容姿を持つカイは、まだ到着していないようだ。
シンの家族らしい集団の席に行って挨拶を済ませて席に着く。シンの妹は、初めて見るロキに視線が釘付けになっていた。
(シンの妹、結構大人っぽい美人なんじゃないか。シン、可愛い子が好きだから勝手に可愛い系の妹がいるかと思ってたな……)
茶色いストレートの髪を腰上まで伸ばした長身美人の妹を見て、ロキは素直に驚いていた。農家の娘のはずだが、洗練された雰囲気がある。
ロキは席に着くと一息ついて教会のステンドグラスを眺めていた。つい4か月前には、シンとルリアーナの教会をまわっていたのだと、過ぎた日が遠い過去のように思える。
そんなことを考えながらぼーっとしていると、誰かの到着に会場がまた沸いた。
(カイ・ハウザーのおでましか)
ロキがそう思って教会の入口の方に視線をやると、長身の男が歩いている。
特徴的な黒髪の前髪を上げ、整った顔が強調されている。これで貴族階級でもあるのだから、やはり恵まれた男だなとロキは思った。
カイは急ぎ足でシンの家族に挨拶をすると、すぐにロキの隣に座る。会場の女性たちの視線は、その男性2人に注がれていた。
「久しぶりだな。思ったより元気そうじゃないか」
「勝手に人のイメージを決めつけるなよ。あと、なんとなく今日の主役が暫定で俺たちみたいだから、挙式が終わったら一目散に逃げるよ」
ロキは前を向いたまま、隣に座るカイに忠告する。
どうやら狙われているのは自分たちらしい、とロキはすぐに理解していた。
「珍しいな。独身女性が多い場所は好きなんじゃないのか?」
カイがそう言ってロキを揶揄うと「いや、それがさ……本当に興味がなくなっちゃってね。笑ってくれていいよ」とロキは苦しそうに笑って遠くを見た。
「まあ、たまにはそういうロキがいてもいいだろ」
カイは穏やかに言った。そんなやり取りができるカイの隣が、ロキにはやはり居心地が良い。
挙式が始まると、先程まで独身男性に夢中だった女性たちもシンとリリスの2人に注目し、感嘆の声を漏らしていた。
新郎は温かな瞳で新婦を見つめ、全てを許しているようだ。新婦はそんな新郎のことが好きでたまらないのだと、その場にいる者たちに伝わる。会場は、新しい夫婦の門出を祝う感動的な空気に包まれていた。
挙式では、特別な催し物があるわけではなかった。
新郎の言葉と新婦の言葉、そして夫婦の誓いが語られるだけの、シンプルな式だった。
それでも新郎新婦の姿に、涙を流す者もいた。
挙式が終わり、特別な雰囲気から覚めた来賓たちは、次はいよいよ自分の番だと目当ての男性を探す。
しかし、そこには例の2人の姿はなかった。
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