亡国の王女は世界を歌う ―アメイジング・ナイト2—

碧井夢夏

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第2章 それぞれの向き合い方

2次会ですから

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 マクウェル家の屋敷にハウザー騎士団の3人が集まっていた。庭にあるシンが作ったベンチに座り、スパークリングの果実酒を飲んでいる。

「シン、ホントに結婚しちゃったんだね」

 ロキがそう言って心なしか残念そうな表情を浮かべていた。

「いや、自分でもなんか不思議だよ、既婚者になるとか」

 シンは独身2人を前に、急に家族ができた自分が信じられないといった風だ。

「まあ、相手はともかく、シンは結婚した方が何かといいかもしれないな」

 3人の中で一番結婚に縁遠そうなカイがしみじみと言ったので、「何でですか?」とシンは不思議そうにカイに尋ねた。

「余計なことに気が散らなくなるだろう」

 カイが当たり前のように言ったので、シンは何も言えなくなっている。ロキはその2人の様子を見て久しぶりに笑った。

「リリスもここに来るかと思ったけど、家の中で大人しくしてるわけ? 俺と会いたくないとか?」

 ロキが不思議そうにシンに聞く。

「いや、そのうち来るかもしれないけど……リリスも友達に呼び出されてるらしい」

 シンは疲れた様子でネクタイを外して椅子にもたれかかっていた。

「あの性格で友達とかいるんだな。嫌われそうだけど」

 ロキが当然のように言うと、「いや、ああいう気質の女同士で固まっていた印象があるな。近寄りたくなかった印象が強いが」とカイは過去のリリスを思い出して言った。カイはリリスと同級生だ。

「一応確認したいんですけど……俺のこと祝いに来てるんですよね?」

 シンは自分の妻に対する評価が相変わらず散々なことに、なぜこの2人が自分とこんなに親しいのだろうかと不思議だ。

「ああ、でもほら、2次会だから。男同士で本音を言い合うのが楽しいだろ?」

 ロキがそう言って嬉しそうに笑う。シンは、レナの逝去に落ち込んでいたに違いないロキが笑顔を見せたことにほっとしていた。

「それにしても、シンの妹さんは美人だったね」

 ロキが挙式の時に見たシンの妹を思い出して言う。今迄聞いていたシンの話や性格から、勝手に思い浮かべていた妹像と違っていた。

「え、よかったら貰ってやってくれよ。あいつロキのこと好きみたいだし」
 
 シンが何の気もなく言うと、「そういうこと言うなよ……」とロキの表情が途端に暗くなった。

「ああ、そうか……」

 シンはロキの気持ちに気付く。急にしんみりしたので、カイはそのシンの背中をはたいた。

「おい、祝われる気ないのか?」

 カイはあっという間に1杯目を飲み干しており、持参したルリアーナの果実酒をテーブルに置く。

「ルリアーナの任務中に、殿下に果実酒を飲んで欲しいと言われていたんだ。任務中には飲まなかったからな。途中で買ってきた」

 カイがそう言うと、ロキが悲痛な表情を浮かべる。

「言っておくがな。殿下は生きているぞ?」

 カイの一言で、その場の空気が一気に変わった。あまりに確信を持って言った様子に、シンとロキはポカンとしている。

「恐らく、ルイス王子が見たという王女殿下は、幽霊なんかじゃない。殿下が呪術で作りだした幻だ。ということは、その近くに本人がいた。考えてもみろ・・殿下が死んでいたら、ルイス殿下を選んでわざわざ会うか?」

 カイが当然のように言ったので、2人は考え込む。

「ほかの家族が全員殺されているのに、一人だけ生き残っていた王女なんだ。殿下のしぶとさを舐めない方がいい」

 カイはそう言うと、グラスに果実酒を3人分注いでそれぞれに配った。

「俺は、旧パースでできることをやる。来月、ルイス王子に謁見の予定が取れているから話をしてヒントを探ってみるが……。まあどこかの青年実業家は諦めているようだし、殿下は俺が保護するしかないな」

 カイはそう言いながらグラスに注いだ果実酒の色と香りを確かめて、一気にそれを飲んだ。

「諦めてなんかいないよ……。諦められたら楽だと何度も思ったけど、俺があの人を諦める時は、命が尽きる時なんだ」

 ロキはそう言うと配られた果実酒をひと口含んで口の中で味見をした。

「……なんだよ、こんなお酒もあったのか」

 ロキは悔しそうにそう言って、残りの果実酒をぐっと飲み干す。

「言っとくけど、みすみすカイ・ハウザーに譲るつもりはない。俺だって、部下を旧ルリアーナに入れてるんだ。せいぜい部外者として傍観してなよ」

 ロキがそう言ってカイに凄むと、「ようやくロキらしくなったな」とカイは嬉しそうに笑った。ロキもそのカイを見て笑みを浮かべる。

「だからさあ……俺の結婚は祝ってくれてるんですか?」

 シンは複雑な表情で2人を見ていた。
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