亡国の王女は世界を歌う ―アメイジング・ナイト2—

碧井夢夏

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第5章 追われるルリアーナ元王女

アウルとの別れ

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 朝食を済ませた2人は、レナが共同生活を送っていた集合住宅に向かっていた。結果的に朝帰りになってしまったことがどうしようもなく恥ずかしいレナに比べ、カイは特に何事もなかったかのような態度だ。

 意識しているのは自分だけなのだと、レナは頭が痛い。

「おはよう、みんな」

 レナは気まずそうに3人の元に帰った。隣にはカイがいる。部屋に着くと3人に腕を引かれてカイから離れたところに連れて行かれた。

「昨晩は、どうだったのよ」ミミがひそひそとレナに尋ねる。

「どうって……別に、話をしただけよ? 実はね、今日でみんなとはお別れになったの……」

 レナの言葉に、3人は納得しながらレナを抱きしめた。

「大好きよ、エレナ。また、会いましょうね」

 マーシャが泣きながら言った。レナはマーシャの頬に自分の頬を当てて頷いた。

「本当に綺麗な恋人がいてびっくり。幸せになってね」

 マリヤがそう言ってレナの頬をつつく。レナは「マリヤも」と言って笑った。

「最初から最後まで、驚かせてくれるわね」

 ミミがレナの肩を叩きながら言った。「そうかしら?」とレナはおどける。

 3人とレナが別れを惜しみながらくっついているのを、カイは穏やかに見つめていた。

「ちょっと、あなたの恋人、優しい目でこっち見てるわよ」

 ミミがコソコソとレナに言うと、「愛されてるわねえ」とマリヤがニヤニヤしている。

 レナは困りながら、カイに軽く手を振った。あんなに優しい目をしたカイは、レナも知らない。

 レナは荷物をまとめて最後の挨拶を済ませると、次はイサームに挨拶に行くと伝え3人と生活した共同住宅を後にした。

 部屋を出た時に、レナはやはり涙が抑えられなかった。カイはレナの頭を抱えて暫く何も言わずに肩をさすってくれている。いつの間に、この人はこんなに優しくなったのだと、レナはそのカイに甘えるようにイサームの部屋に向かう前、思い切り泣いた。


 イサームの住んでいる部屋は、アウルシスターズと共同生活を送った部屋の斜め向かいにある。

「おはよう、エレナ。とうとう、旅立つのか」

 イサームはそう言って、レナを抱きしめた。

「イサーム、私を見つけてくれて、ありがとう。居場所をくれて、ありがとう」

 レナは、またボロボロと大粒の涙を零して泣いた。

「悲恋の歌を歌うエレナは、この町の男性を沢山勇気づけて、魅了したね。これからは、そこの男性のためだけに歌い、幸せになりなさい」

 イサームがそう言ったので、レナは素直に頷けないものの涙は止まらない。

 暫くレナが泣いていると、「エレナ、退職金を用意するから、ちょっと待っていて」とイサームは部屋の奥に入っていった。

「そんな、イサーム、私……退職金なんて……」

 レナが泣きながら断ろうとしていると、隣から異様な圧が掛かる。レナがカイの顔を見上げると顔に「受け取っておけ、金は権利だ」と書かれていた。


 イサームの元を離れ、カイとレナはまた宿の方に戻って行く。これから2人は、カイの愛馬クロノスと共にブリステ公国に向かうのだ。

 通りを歩いていると、上からよく知る透き通った声が聞こえる。
 レナが見上げると、アウルシスターズの3人が集合住宅の窓から身体を乗り出し、こちらを見ていた。

「幸せになるのよ!!」

 手を振りながら、3人はレナに言った。

「みんなも、幸せでいてね!!」

 レナは大きな声を張り上げて手を振り返す。3人が見えなくなるまでレナは両手を振りつづけた。宿のあるところに向かって曲がり角を曲がると、レナは自分の姿が3人の前から消えた場所で、溢れる涙を止められなくなった。

「よく、頑張ったな」

 小さな声と共に優しくて大きな手が頭の上に置かれる。レナはその行為に甘えるように、カイにしがみついて泣いた。
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