59 / 229
第5章 追われるルリアーナ元王女
新しい旅立ち
しおりを挟む
レナは、久しぶりに会ったクロノスに喜び、身体に触れながら嬉しそうにしている。カイは、そんなレナに目を細めた。
「そんなにクロノスを気に入ってくれているとは、ありがたいな」
カイの髪によく似た毛質の黒い馬は、性格もどこかカイに似ていた。人を選び、主人に忠実で、優秀だ。クロノスもレナを気に入っているように見える。
「ブリステには、本当に入国できるの?」
クロノスに触れながら、レナが心配そうな顔を向ける。身分証明も持たず身元がほぼ無いレナは、ブリステ公国への入国条件を満たしていない。レナは何度も入国の条件を確認していたので、カイが入国をさせてやると言い切れた理由も分からなかった。
「目の前にいるのは、誰だ?」
「金の亡者の、カイ・ハウザー団長よ」
「…………やり直せ」
カイのダメ出しを受けてレナはうーんと考え込む。そこまで金の亡者のイメージが濃いのかと、カイは複雑な気持ちになった。
「どんな仕事も完璧にこなす、カイ・ハウザー?」
「……まあいいか、それで」
カイが特に感心もせずに及第点を出したので、「……そう、むしろやり直させて」とレナはムキになった。
その様子を見てカイは笑いだす。相変わらず気が強いんだなと、妙に懐かしさを覚える。
「ここにいるのは、異国での出稼ぎ経験が豊富な騎士団の団長だ。入国や出国のコツというやつは、心得ている」
カイがそう言ったのを、「そういうのを求めていたのね……」とレナが悔しそうに頬を膨らませたので、カイはまた声を上げて笑う。
「当たり前だろ、俺を褒めろなんて言ってない」
「お生憎様、褒めようと思ったら金の亡者なんて言わないわ!」
2人はそんなやり取りをしながら、過ぎた日の時間を取り戻すような懐かしさに浸った。
「行くぞ、レナ」
カイはクロノスの背にひらりと乗り、レナに手を差し伸べる。レナはその手を取ると、カイに引き上げられてクロノスの背に乗った。いつかの日のように、レナの背中にカイがいる。
包まれるようにして馬に乗るのは、やはり恥ずかしかった。初めてこうして2人乗りをした時も、レナは恥ずかしくて戸惑ったのだ。
(なんだか昨日から、ずっと距離が近いわ)
レナは、以前雇ったカイとの再会に、まだ自分は慣れていないのだろうと思う。
それでなければ、なぜあのカイ・ハウザーにこんなに常に心を乱されるのか。理由が思い浮かばない。
これほどまで美しい男性を見たのが久しぶりだからだろうと、必死に自分に言い聞かせていた。
そして、レナに対して向けられるカイの視線がどうも優しく見えることについては、なるべく深く考えないことにした。
「そんなにクロノスを気に入ってくれているとは、ありがたいな」
カイの髪によく似た毛質の黒い馬は、性格もどこかカイに似ていた。人を選び、主人に忠実で、優秀だ。クロノスもレナを気に入っているように見える。
「ブリステには、本当に入国できるの?」
クロノスに触れながら、レナが心配そうな顔を向ける。身分証明も持たず身元がほぼ無いレナは、ブリステ公国への入国条件を満たしていない。レナは何度も入国の条件を確認していたので、カイが入国をさせてやると言い切れた理由も分からなかった。
「目の前にいるのは、誰だ?」
「金の亡者の、カイ・ハウザー団長よ」
「…………やり直せ」
カイのダメ出しを受けてレナはうーんと考え込む。そこまで金の亡者のイメージが濃いのかと、カイは複雑な気持ちになった。
「どんな仕事も完璧にこなす、カイ・ハウザー?」
「……まあいいか、それで」
カイが特に感心もせずに及第点を出したので、「……そう、むしろやり直させて」とレナはムキになった。
その様子を見てカイは笑いだす。相変わらず気が強いんだなと、妙に懐かしさを覚える。
「ここにいるのは、異国での出稼ぎ経験が豊富な騎士団の団長だ。入国や出国のコツというやつは、心得ている」
カイがそう言ったのを、「そういうのを求めていたのね……」とレナが悔しそうに頬を膨らませたので、カイはまた声を上げて笑う。
「当たり前だろ、俺を褒めろなんて言ってない」
「お生憎様、褒めようと思ったら金の亡者なんて言わないわ!」
2人はそんなやり取りをしながら、過ぎた日の時間を取り戻すような懐かしさに浸った。
「行くぞ、レナ」
カイはクロノスの背にひらりと乗り、レナに手を差し伸べる。レナはその手を取ると、カイに引き上げられてクロノスの背に乗った。いつかの日のように、レナの背中にカイがいる。
包まれるようにして馬に乗るのは、やはり恥ずかしかった。初めてこうして2人乗りをした時も、レナは恥ずかしくて戸惑ったのだ。
(なんだか昨日から、ずっと距離が近いわ)
レナは、以前雇ったカイとの再会に、まだ自分は慣れていないのだろうと思う。
それでなければ、なぜあのカイ・ハウザーにこんなに常に心を乱されるのか。理由が思い浮かばない。
これほどまで美しい男性を見たのが久しぶりだからだろうと、必死に自分に言い聞かせていた。
そして、レナに対して向けられるカイの視線がどうも優しく見えることについては、なるべく深く考えないことにした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
63
1 / 2
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる