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第6章 新生活は、甘めに
ハウザー騎士団のレナ
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騎士団本部で、レナはずっとカイに付いていた。
部下の指導や訓練に立ち会うカイの隣で様子を見学し、団長室でカイの仕事を眺める。
忙しそうなカイに、レナは何度か仕事の相談を受けたり助言をしたりして「流石だな」と褒められた。
シンとサラに会った時、2人がとても驚いていたのは死んだはずのレナが生存していたことだけではない気がした。
カイが「ハウザー姓を名乗ればいい」と軽く言った時、レナはあらぬ期待してしまいそうになるのを必死に抑えていたからだ。
再会してから、カイの距離はずっと近い。
一緒に居る時に、身体のどこかが触れ合っていることが多くなった。
そして、カイが自分だけに見せる顔があるような気がして、レナはつい自惚れそうになる。
カイがその目を穏やかにするのは、レナと向き合っている時が多いような気がした。
そのまま穏やかなカイを見ていたくて、レナは願いながら寄り添うように行動した。
この想いを伝えたら、恐らく突き放されてしまうのだろうとレナの胸は痛む。
カイは、女性に対して苦手意識を持ち、好意を持たれること自体を嫌っていた。
これだけ毎日一緒に居て距離が近くなってしまうと、カイに嫌われてしまうのだけは、耐えられそうにない。
異性として特別な存在になれずとも、側にいることだけは許されたかった。
レナは、騎士団で働くカイを側で見て、やはりこの人は本物の『騎士団長様』なのだと感動した。
ずっと憧れて来たあの小説の主人公の、憧れの姿だ。ときめかないわけがない。
団員を紹介されるたびに肩を抱かれたら、頬が緩まないわけがない。
そんなレナの気も知らず、カイはレナに触れて特別扱いをした。
(再会してから、ずっと変だわ、カイも、私も)
伝えられない想いを抱えながら、レナは何度もカイの隣にいることを望んだ。
いつか、この関係が終わりになってしまうとしたらどんな時なのか、レナはそればかり考えるようになっている。
すっかり辺りが暗くなった頃、カイはそこで生活している泊りの団員たちに声を掛けて厩舎にクロノスを迎えに行く。
いつもはひとりで帰る道のりに、レナが同行するというだけでカイの足取りは軽かった。
「団長、随分楽しそうですね」
団員に揶揄われ、そんなにいつもと違うだろうかと考え直してみる。
(いや、確かに楽しんでいるかもしれないな)
それを意識した時に、レナも同じように楽しんでくれていたのだろうかと気になった。
レナは国を追われ、何もかもを無くしている。
異国に来て環境が変わったことで、レナが落ち込んだりしていないかが常にカイの気がかりになっていた。
「悪かったな。普段はそんなに楽しくなさそうか?」
カイが団員に言い返すと、「今日が特別楽しそうなだけですよ」と笑われた。
それで納得してしまうくらいには、カイも特別な時間を過ごしていた自覚がある。
中庭で待たせているレナのところに愛馬のクロノスを連れて急ぐと、団員3名に囲まれて談笑しているレナの姿があった。
「待たせたか?」
カイが声を掛けると、団員たちはニコニコしながらカイを見ている。
(あいつら、変なことは聞いていないだろうな……)
普通の若い男性であれば、それまで女気のなかった上司の連れが気になるのは当然だろう。
さしずめ、カイのいない隙を狙ってレナに事情を聞いていたに違いない。
「団長~! 本部を長い事空けていると思ったら、いつの間に結婚してたんですか~!」
部下の1名が放った勘違いに、カイとレナは度肝を抜かれた。
「何の情報が湾曲したらそうなった……」
カイは慌てながらも平静を装い、部下に静かに尋ねる。
「え? こちら、レナ・ハウザーさんですよね?」
「……………」
「………そうだな………」
親戚でもなければ兄妹でもない、仲睦まじく歩く2人の苗字が同じと来れば、大抵そんな想像くらい誰でもしてしまうだろう。(※ブリステ公国は選択制夫婦別姓だが)カイは改めて自分の姓を名乗らせることの影響を思い知り、レナは完全に困っていた。
(この場の切り抜け方の正解が……分からん)
カイは、握った手綱を額に当てながら悩んだ。愛馬のクロノスがそんな主人を心配そうに見ている。
「私、カイに助けられて……身寄りが無かったからハウザー姓を名乗って置いてもらっているだけよ? そうすれば、領民のみなさんに良くしてもらえるし」
レナが困りながら気を遣って言った言葉に反応し、団員の冷たい視線がカイに刺さる。
「うちに置いているんだから、別にいいんじゃないか? その位……」
カイは動揺していたので、それを隠すために堂々と言い切った。
全員の視線が痛い。レナまでそんな簡単な話じゃないでしょうとカイを睨んでいる。失敗した。
「……帰るぞ」
カイはもう誤魔化すことすらできないと諦め、帰路につくことにした。レナは不満そうな顔でカイに付いて行く。
(私がカイにとって特別だなんて、思うだけ無駄だわ)
レナはそう思うと苦しくなる。
いつかカイに自分以外の誰かの存在ができる日がくるのだろと思うと、その想像だけで悲しくなった。
部下の指導や訓練に立ち会うカイの隣で様子を見学し、団長室でカイの仕事を眺める。
忙しそうなカイに、レナは何度か仕事の相談を受けたり助言をしたりして「流石だな」と褒められた。
シンとサラに会った時、2人がとても驚いていたのは死んだはずのレナが生存していたことだけではない気がした。
カイが「ハウザー姓を名乗ればいい」と軽く言った時、レナはあらぬ期待してしまいそうになるのを必死に抑えていたからだ。
再会してから、カイの距離はずっと近い。
一緒に居る時に、身体のどこかが触れ合っていることが多くなった。
そして、カイが自分だけに見せる顔があるような気がして、レナはつい自惚れそうになる。
カイがその目を穏やかにするのは、レナと向き合っている時が多いような気がした。
そのまま穏やかなカイを見ていたくて、レナは願いながら寄り添うように行動した。
この想いを伝えたら、恐らく突き放されてしまうのだろうとレナの胸は痛む。
カイは、女性に対して苦手意識を持ち、好意を持たれること自体を嫌っていた。
これだけ毎日一緒に居て距離が近くなってしまうと、カイに嫌われてしまうのだけは、耐えられそうにない。
異性として特別な存在になれずとも、側にいることだけは許されたかった。
レナは、騎士団で働くカイを側で見て、やはりこの人は本物の『騎士団長様』なのだと感動した。
ずっと憧れて来たあの小説の主人公の、憧れの姿だ。ときめかないわけがない。
団員を紹介されるたびに肩を抱かれたら、頬が緩まないわけがない。
そんなレナの気も知らず、カイはレナに触れて特別扱いをした。
(再会してから、ずっと変だわ、カイも、私も)
伝えられない想いを抱えながら、レナは何度もカイの隣にいることを望んだ。
いつか、この関係が終わりになってしまうとしたらどんな時なのか、レナはそればかり考えるようになっている。
すっかり辺りが暗くなった頃、カイはそこで生活している泊りの団員たちに声を掛けて厩舎にクロノスを迎えに行く。
いつもはひとりで帰る道のりに、レナが同行するというだけでカイの足取りは軽かった。
「団長、随分楽しそうですね」
団員に揶揄われ、そんなにいつもと違うだろうかと考え直してみる。
(いや、確かに楽しんでいるかもしれないな)
それを意識した時に、レナも同じように楽しんでくれていたのだろうかと気になった。
レナは国を追われ、何もかもを無くしている。
異国に来て環境が変わったことで、レナが落ち込んだりしていないかが常にカイの気がかりになっていた。
「悪かったな。普段はそんなに楽しくなさそうか?」
カイが団員に言い返すと、「今日が特別楽しそうなだけですよ」と笑われた。
それで納得してしまうくらいには、カイも特別な時間を過ごしていた自覚がある。
中庭で待たせているレナのところに愛馬のクロノスを連れて急ぐと、団員3名に囲まれて談笑しているレナの姿があった。
「待たせたか?」
カイが声を掛けると、団員たちはニコニコしながらカイを見ている。
(あいつら、変なことは聞いていないだろうな……)
普通の若い男性であれば、それまで女気のなかった上司の連れが気になるのは当然だろう。
さしずめ、カイのいない隙を狙ってレナに事情を聞いていたに違いない。
「団長~! 本部を長い事空けていると思ったら、いつの間に結婚してたんですか~!」
部下の1名が放った勘違いに、カイとレナは度肝を抜かれた。
「何の情報が湾曲したらそうなった……」
カイは慌てながらも平静を装い、部下に静かに尋ねる。
「え? こちら、レナ・ハウザーさんですよね?」
「……………」
「………そうだな………」
親戚でもなければ兄妹でもない、仲睦まじく歩く2人の苗字が同じと来れば、大抵そんな想像くらい誰でもしてしまうだろう。(※ブリステ公国は選択制夫婦別姓だが)カイは改めて自分の姓を名乗らせることの影響を思い知り、レナは完全に困っていた。
(この場の切り抜け方の正解が……分からん)
カイは、握った手綱を額に当てながら悩んだ。愛馬のクロノスがそんな主人を心配そうに見ている。
「私、カイに助けられて……身寄りが無かったからハウザー姓を名乗って置いてもらっているだけよ? そうすれば、領民のみなさんに良くしてもらえるし」
レナが困りながら気を遣って言った言葉に反応し、団員の冷たい視線がカイに刺さる。
「うちに置いているんだから、別にいいんじゃないか? その位……」
カイは動揺していたので、それを隠すために堂々と言い切った。
全員の視線が痛い。レナまでそんな簡単な話じゃないでしょうとカイを睨んでいる。失敗した。
「……帰るぞ」
カイはもう誤魔化すことすらできないと諦め、帰路につくことにした。レナは不満そうな顔でカイに付いて行く。
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