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第6章 新生活は、甘めに
2人だけの道だから
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騎士団本部からの帰り道、クロノスの背でいつもより静かなレナにカイは何があったのか心配になった。
「今日は、慣れない場所に連れまわして悪かったな」
カイがレナを片腕で包み込むようにして言う。レナは大きく首を振った。
「楽しかったわ、すごく。シンとサラにも会えて嬉しかったし」
そう言うレナは、やはり元気がない。
「その割には……疲れているようだが」
カイはレナの様子を心配していた。レナは、自分の気持ちの落ち込みがそこまで外に出てしまっていることが情けなくなる。
「疲れたんじゃないわ。一人で勝手に浮かれて反省しているの」
「浮かれて反省している……?」
カイはレナの言っていることが良く分からない。帰り際になって急に元気がなくなったように見えた。
「私にとってカイはね、憧れの騎士団長様だったから……。今日一日、あなたの職場に行けて嬉しかったけど、私ってもう、あなたの雇用主でもなんでもないでしょ」
レナがそう言って、後ろにあるカイの顔を確認するように窺った。
「雇用主でなければいけなかったのか? そんなに主従関係が重要か?」
カイは前を向いてクロノスの手綱を操りながら、レナの落ち込んでいる理由を探っていた。
「主従関係がないから、もうあなたは私の護衛でも側近でも、なんでもないわ」
レナはその事実を口にした途端、急に泣きたくなって来た。
主従関係でカイを自分の側に置いていた時はそれで切なくなったのが、全く関係が無くなると一緒に居る意味もないのだと拠り所を失ってしまったように頼りない。
「そんなに俺がレナに仕えていないと不満か?」
「違うわ。私はもう、あなたにとって何者でもなくなってしまったことに、改めて気付いただけよ」
レナがそう言って落ち込んでいたのを、「主従関係なんかなくたって、一緒に居ることは出来る」とカイは耳元で囁くように言う。
「でも……理由が無いわ」
レナはそう言いながら、鼓動が早鐘のように大きくやかましく打つのを意識しないように努めた。
「レナには理由が必要か?」
カイに尋ねられ、更にレナの鼓動が早くなった。
「あのね……いつか私が、あなたの邪魔になって……一緒に居られなくなる日が来るかと思うと、つらくてたまらないの」
「邪魔になる、か。急にしおらしいな」
カイはそう言って笑った。
「だって、もう私には……あなたに払える報酬も、何もないわ」
レナはドキドキと鼓動がやかましく響くのを一生懸命誤魔化しながら、溢れてくる自分の言葉を止められなくなりそうになる。
「何もないと思っているなら、分かっていないな」
カイはそう言って笑った。
「毎日、レナにはたくさんの物をもらっているつもりだが」
そう付け加えられ身体に回された腕を引き寄せられると、レナは身体の全てが心臓にでもなってしまったように、鼓動の激しさが身体に響く。
「たくさんの物……って?」
期待してはダメだと思いながら、レナは自分を包むカイに小さな声で尋ねた。
「レナが家に来てから……毎日が急に色づいて、ちょっとしたことがたまらなく楽しい」
カイはそう言うと、両手でレナを抱きしめた。
手綱を操る手が無くなり、ぶらんと垂れた手綱がクロノスの首に掛かっている。
クロノスは主人の指示を無くしながらも、いつもの帰り道を進んでいた。
「ほ……んとに……?」
レナは息がつまった。苦しくて、自分を抱きしめるカイの腕を両手でぐっと握り、体重を背に預けた。
カイに惹かれる心を落ち着ける方法が分からない。
毎日顔を合わせ、話をして、触れ合う関係で、これ以上気持ちを隠すことなどできないのではないだろうか。
「自信を持て」
カイはそう言ってレナの髪に口付けを落とした。
抱きしめた手を緩められず、想いを伝えることもできず、それでもどうしようもなく愛おしい。
許されるものならいつまでもレナを側に置きたいと、カイはもはや、それしか願えなかった。
「今日は、慣れない場所に連れまわして悪かったな」
カイがレナを片腕で包み込むようにして言う。レナは大きく首を振った。
「楽しかったわ、すごく。シンとサラにも会えて嬉しかったし」
そう言うレナは、やはり元気がない。
「その割には……疲れているようだが」
カイはレナの様子を心配していた。レナは、自分の気持ちの落ち込みがそこまで外に出てしまっていることが情けなくなる。
「疲れたんじゃないわ。一人で勝手に浮かれて反省しているの」
「浮かれて反省している……?」
カイはレナの言っていることが良く分からない。帰り際になって急に元気がなくなったように見えた。
「私にとってカイはね、憧れの騎士団長様だったから……。今日一日、あなたの職場に行けて嬉しかったけど、私ってもう、あなたの雇用主でもなんでもないでしょ」
レナがそう言って、後ろにあるカイの顔を確認するように窺った。
「雇用主でなければいけなかったのか? そんなに主従関係が重要か?」
カイは前を向いてクロノスの手綱を操りながら、レナの落ち込んでいる理由を探っていた。
「主従関係がないから、もうあなたは私の護衛でも側近でも、なんでもないわ」
レナはその事実を口にした途端、急に泣きたくなって来た。
主従関係でカイを自分の側に置いていた時はそれで切なくなったのが、全く関係が無くなると一緒に居る意味もないのだと拠り所を失ってしまったように頼りない。
「そんなに俺がレナに仕えていないと不満か?」
「違うわ。私はもう、あなたにとって何者でもなくなってしまったことに、改めて気付いただけよ」
レナがそう言って落ち込んでいたのを、「主従関係なんかなくたって、一緒に居ることは出来る」とカイは耳元で囁くように言う。
「でも……理由が無いわ」
レナはそう言いながら、鼓動が早鐘のように大きくやかましく打つのを意識しないように努めた。
「レナには理由が必要か?」
カイに尋ねられ、更にレナの鼓動が早くなった。
「あのね……いつか私が、あなたの邪魔になって……一緒に居られなくなる日が来るかと思うと、つらくてたまらないの」
「邪魔になる、か。急にしおらしいな」
カイはそう言って笑った。
「だって、もう私には……あなたに払える報酬も、何もないわ」
レナはドキドキと鼓動がやかましく響くのを一生懸命誤魔化しながら、溢れてくる自分の言葉を止められなくなりそうになる。
「何もないと思っているなら、分かっていないな」
カイはそう言って笑った。
「毎日、レナにはたくさんの物をもらっているつもりだが」
そう付け加えられ身体に回された腕を引き寄せられると、レナは身体の全てが心臓にでもなってしまったように、鼓動の激しさが身体に響く。
「たくさんの物……って?」
期待してはダメだと思いながら、レナは自分を包むカイに小さな声で尋ねた。
「レナが家に来てから……毎日が急に色づいて、ちょっとしたことがたまらなく楽しい」
カイはそう言うと、両手でレナを抱きしめた。
手綱を操る手が無くなり、ぶらんと垂れた手綱がクロノスの首に掛かっている。
クロノスは主人の指示を無くしながらも、いつもの帰り道を進んでいた。
「ほ……んとに……?」
レナは息がつまった。苦しくて、自分を抱きしめるカイの腕を両手でぐっと握り、体重を背に預けた。
カイに惹かれる心を落ち着ける方法が分からない。
毎日顔を合わせ、話をして、触れ合う関係で、これ以上気持ちを隠すことなどできないのではないだろうか。
「自信を持て」
カイはそう言ってレナの髪に口付けを落とした。
抱きしめた手を緩められず、想いを伝えることもできず、それでもどうしようもなく愛おしい。
許されるものならいつまでもレナを側に置きたいと、カイはもはや、それしか願えなかった。
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