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第7章 争いの種はやがて全てを巻き込んで行く
久しぶりの別行動
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朝になり、レナが目を覚ますとカイは既に身支度を終えていた。
「早いのね……」
レナが眠そうな目をこすると、「着替える間、外に出ていた方がいいんだろ?」とカイは部屋を出て外から鍵を掛けた。
レナは、カイがまともに眠れなかったことなど露知らず、自分だけがいつも寝顔を見られていることに少し膨れ、着替えを始める。
(何もなかった……お風呂まで一緒に入ったのに……何もなかった……………)
着替えながら、事実を思い出す度に落ち込む。
レナは自分が恥ずかしいと言って大泣きをしていたことをすっかり棚に上げ、大人の男女として何も進展がないことに悲しくなっていた。
レナにはどれだけカイが堪えていたのかなど知る由もない。そして、なぜ何もなかったかなどと考えるだけの冷静さもなかった。
レナは急いで着替え、顔を洗い、化粧もせずに部屋の鍵を開けて扉を開いた。
すると、すぐそばにカイが立っている。その行動ひとつをとってもカイの心配性なところが出ているのに、レナには全く察せない。
「もう、支度は大丈夫よ」
「そうか。朝食を済ませたら早々に出発しよう」
2人は宿の食堂に足を運び、口数の少ない朝食の時間を過ごした。
「今日は、別行動なんでしょ?」
もうすっかり当たり前のようになった2人乗りの馬上で、レナはその日の予定を気にしている。
「そうだな……帰りも、もしかするとサラに頼んでレナを屋敷まで送り届けさせるかもしれない」
カイはそう言って、すぐ目の前にいるレナの頭を撫でた。
「大丈夫だ。必ず戻る」
レナは、カイの手が置かれている状態で、頭を振る。
「そういう約束は、嫌い。いつになるか分からないのは嫌よ」
レナが怒ったように言うので、「それは参ったな……この状況では時期が見えない」と、カイはなんとかなだめる作戦で行こうとした。
「カイがいない場所で、夜を越すのは嫌」
「寝つきが悪くなるからか」
「違うわ……寝る前も、目が覚めた時も、あなたに側にいて欲しいからよ」
「平気で言えるんだな」
まるでいつも一緒に夜を越しているようなことを、と言おうとして、カイは言葉を飲み込んだ。
「そうやって俺をダメにしたいのか? 駐屯地の設営中にすら女を連れていたら……俺は団長としても子爵としても、信用を失う」
「議会に私を連れて行ってくれたのに? 私の素性が知られているのに?」
「全く……そういうところだけは、鋭いんだな……」
カイは呆れながら感心し、まさか本気で付いてくるつもりか、と困り始める。
「確かに、私が行ったら邪魔になってしまうのも分かるから……今日は大人しく、カイの家に帰ることにするわ。でも、ずっと離れるのは嫌なの。また、1人になるのは……」
レナが辛そうな声を振り絞って言ったのを、カイはじっと聞いていた。
「レナを1人にするのは、俺だって本意じゃない」
カイはレナの耳元で囁くように言うと、そのまま唇をレナの耳に当てる。
「いつどこの誰に攫われるか分からんからな」
そう付け加えて、ロキやアロイスを思い出す。
よりにもよってあんな諦めの悪く腕っぷしも良い権力者にばかり狙われるとは、なんと都合が悪いのか。
ロキもアロイスも部下や経済力など手駒が多い。
「じゃあ、早く……早く迎えに来てね」
レナも振り返ってカイの服を引っ張ると、引き寄せた頬に唇を当てた。
息が混ざり合うくらいに近い距離で身体も触れ合っているのに、何となく唇を重ねるのはカイが望んでいないのだろうと、レナは遠慮をした。
(別に、その行為がなければ恋人らしくないというわけじゃないもの)
そう心の中で言い聞かせてカイの顔を覗き込む。
もう少ししたら離れるというのに、あまり寂しそうに見えないカイの様子に温度差を感じてしまう。
「留守中、サラに家に来させるか……。いや、アロイス相手となると誰を置いても防げんな……」
「陛下が、カイの家に来るなんてことあるかしら?」
「レナをわざわざルリアーナに観に行ったような王だぞ?」
「ポテンシアの状況もあるし、今はそんなに暇じゃないでしょ?」
「あの王の好色は筋金入りだからな……」
話をしながら、カイはレナをシンの住むリリスの家にでも預けた方がいいのかもしれないと思い始めていた。
シンとリリスにとってはいい迷惑に違いないが、レナを狙う者から隠す方法がそんなことくらいしか思いつかない。
「さっきからカイは、私が陛下に攫われることしか考えていないのね」
「いや……攫われることじゃない、攫われないようにすることを考えてるんだ」
「どっちでもいいけど……」
「よくないだろうが……」
2人の気持ちは微妙に噛み合わない。
カイはレナのことが心配で頭がいっぱいになっているというのに、レナは離れる寂しさを共有できない不満でいっぱいになっている。
互いを想っている行為でも、すれ違う時はすれ違うものだ。
「そろそろ着くぞ」
騎士団本部の城壁が見えてきた。
レナは何かを言うことは無かったが、明らかに不満そうな様子を隠すこともしなかった。
「早いのね……」
レナが眠そうな目をこすると、「着替える間、外に出ていた方がいいんだろ?」とカイは部屋を出て外から鍵を掛けた。
レナは、カイがまともに眠れなかったことなど露知らず、自分だけがいつも寝顔を見られていることに少し膨れ、着替えを始める。
(何もなかった……お風呂まで一緒に入ったのに……何もなかった……………)
着替えながら、事実を思い出す度に落ち込む。
レナは自分が恥ずかしいと言って大泣きをしていたことをすっかり棚に上げ、大人の男女として何も進展がないことに悲しくなっていた。
レナにはどれだけカイが堪えていたのかなど知る由もない。そして、なぜ何もなかったかなどと考えるだけの冷静さもなかった。
レナは急いで着替え、顔を洗い、化粧もせずに部屋の鍵を開けて扉を開いた。
すると、すぐそばにカイが立っている。その行動ひとつをとってもカイの心配性なところが出ているのに、レナには全く察せない。
「もう、支度は大丈夫よ」
「そうか。朝食を済ませたら早々に出発しよう」
2人は宿の食堂に足を運び、口数の少ない朝食の時間を過ごした。
「今日は、別行動なんでしょ?」
もうすっかり当たり前のようになった2人乗りの馬上で、レナはその日の予定を気にしている。
「そうだな……帰りも、もしかするとサラに頼んでレナを屋敷まで送り届けさせるかもしれない」
カイはそう言って、すぐ目の前にいるレナの頭を撫でた。
「大丈夫だ。必ず戻る」
レナは、カイの手が置かれている状態で、頭を振る。
「そういう約束は、嫌い。いつになるか分からないのは嫌よ」
レナが怒ったように言うので、「それは参ったな……この状況では時期が見えない」と、カイはなんとかなだめる作戦で行こうとした。
「カイがいない場所で、夜を越すのは嫌」
「寝つきが悪くなるからか」
「違うわ……寝る前も、目が覚めた時も、あなたに側にいて欲しいからよ」
「平気で言えるんだな」
まるでいつも一緒に夜を越しているようなことを、と言おうとして、カイは言葉を飲み込んだ。
「そうやって俺をダメにしたいのか? 駐屯地の設営中にすら女を連れていたら……俺は団長としても子爵としても、信用を失う」
「議会に私を連れて行ってくれたのに? 私の素性が知られているのに?」
「全く……そういうところだけは、鋭いんだな……」
カイは呆れながら感心し、まさか本気で付いてくるつもりか、と困り始める。
「確かに、私が行ったら邪魔になってしまうのも分かるから……今日は大人しく、カイの家に帰ることにするわ。でも、ずっと離れるのは嫌なの。また、1人になるのは……」
レナが辛そうな声を振り絞って言ったのを、カイはじっと聞いていた。
「レナを1人にするのは、俺だって本意じゃない」
カイはレナの耳元で囁くように言うと、そのまま唇をレナの耳に当てる。
「いつどこの誰に攫われるか分からんからな」
そう付け加えて、ロキやアロイスを思い出す。
よりにもよってあんな諦めの悪く腕っぷしも良い権力者にばかり狙われるとは、なんと都合が悪いのか。
ロキもアロイスも部下や経済力など手駒が多い。
「じゃあ、早く……早く迎えに来てね」
レナも振り返ってカイの服を引っ張ると、引き寄せた頬に唇を当てた。
息が混ざり合うくらいに近い距離で身体も触れ合っているのに、何となく唇を重ねるのはカイが望んでいないのだろうと、レナは遠慮をした。
(別に、その行為がなければ恋人らしくないというわけじゃないもの)
そう心の中で言い聞かせてカイの顔を覗き込む。
もう少ししたら離れるというのに、あまり寂しそうに見えないカイの様子に温度差を感じてしまう。
「留守中、サラに家に来させるか……。いや、アロイス相手となると誰を置いても防げんな……」
「陛下が、カイの家に来るなんてことあるかしら?」
「レナをわざわざルリアーナに観に行ったような王だぞ?」
「ポテンシアの状況もあるし、今はそんなに暇じゃないでしょ?」
「あの王の好色は筋金入りだからな……」
話をしながら、カイはレナをシンの住むリリスの家にでも預けた方がいいのかもしれないと思い始めていた。
シンとリリスにとってはいい迷惑に違いないが、レナを狙う者から隠す方法がそんなことくらいしか思いつかない。
「さっきからカイは、私が陛下に攫われることしか考えていないのね」
「いや……攫われることじゃない、攫われないようにすることを考えてるんだ」
「どっちでもいいけど……」
「よくないだろうが……」
2人の気持ちは微妙に噛み合わない。
カイはレナのことが心配で頭がいっぱいになっているというのに、レナは離れる寂しさを共有できない不満でいっぱいになっている。
互いを想っている行為でも、すれ違う時はすれ違うものだ。
「そろそろ着くぞ」
騎士団本部の城壁が見えてきた。
レナは何かを言うことは無かったが、明らかに不満そうな様子を隠すこともしなかった。
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