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第7章 争いの種はやがて全てを巻き込んで行く

一緒に帰ろう

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 マクウェル家でレナがリリスの看護をしていると、誰かが訪ねて来たようで使用人達がバタバタと迎えに行っていた。

「レナ様! カイ・ハウザー様がいらっしゃっています!」

 使用人の声がしたのを、レナは驚いてリリスを見る。

「早く行ってあげて。カイも、きっと1秒でも早く会いたがってるわ」

 リリスに言われてレナは頷くと、部屋を飛び出して入口の扉まで走っていく。
 そこに見えた久しぶりのカイの姿を見て、そのままの勢いで思い切り抱きついた。

「遅くなってすまなかった」

 カイは走ってきたレナを受け止めると、適度な強さでその身体を抱きしめた。
 レナは言葉を発せず、ひたすらカイにしがみつくことしか出来ない。

「どうした? 怒っているのか?」
「……喜んでいるのよ」

 マクウェル家の全員がそれを温かい目で眺め、使用人達が何故か拍手をしている。

「おい、なんなんだこれは?」

 カイは見世物にされている気分で明らかに不機嫌になっていた。

「あのねえ、感謝しなさいよ。ここにいる全員、レナがいい子で祝福しているのよ」

 ベッドから起きてきたリリスがカイに言い切ったので、カイは何も言えなくなる。

「すごく、素敵な皆さんだったの」

 レナがにこりと笑うと、マクウェル家の全員と使用人たちがまた大きな拍手を送る。

「……そうか」

 カイはレナがそう言うなら仕方が無いかと穏やかに笑い、すぐにレナをきつく抱きしめた。



「カイ……手紙、嬉しかった……」

 クロノスの背に乗ったカイとの帰路で、レナはずっと言いたかったことを口にした。

「ああ……あれは気恥ずかしい気もしたんだが……。マルセルの薦めで、恋人への手紙にはしっかり気持ちを記した方が良いと言われたんだ」
「そうだったの。マルセルに感謝しなくちゃ。嬉しくて、何度も読んで……寝る前には、必ずカイの手紙の言葉を繰り返したら、眠れたの。単純かしら、私」

 レナはそう言って後ろに密着しているカイを見上げる。

「抱き枕代わりになったのなら、役に立ったな」

 カイはそう言ってレナの髪を撫でて目を細める。
 久しぶりのその顔にレナは胸が苦しくてカイのいる方とは逆側、つまりクロノスの頭側に倒れる。危うく落馬しかけた。

「だ、大丈夫か……? 久しぶりの騎乗で慣れなかったのか……?」
「ち、違うの、違うのよ……」

 カイが咄嗟に支えたため落馬には至らなかったが、レナは胸が何かで撃ち抜かれたように苦しい。
 自分の恋人相手にここまで動揺しているのは久しぶりに会ったせいなのだろうか、レナ自身にも分からなかった。

(カイが……こんなに素敵なのを忘れていたかもしれないわ……不意打ちの笑顔が……)

 そんなことを考えながらドキドキしていると、カイがレナの身体に腕を回す。

「クロノスは賢いが、落馬は高さもあって危険だ。気を付けろよ」
「そ、そうよね」

 レナは不自然に身体をこわばらせてカイの行動に緊張していた。
 これからまたカイの屋敷で一緒に暮らすのだとすれば、レナはこの調子でずっと動揺し続ける羽目になるのかもしれない。
 既に自分の胸の高鳴りに耐えられそうになかった。
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