114 / 229
第7章 争いの種はやがて全てを巻き込んで行く
経営者の決断
しおりを挟む
ロキはシンから届いた書簡を読みながら、何度か溜息をついた。ハウザー騎士団も、とうとう本格的にポテンシアの戦地へ入ることになったらしい。ロキに参加の義務はないが、参加する場合の条件や報酬が記されていた。
(あーあ。こんな報酬で命を張らされるんだもんなあ)
ロキは、報酬目当てで騎士団に籍を置いているわけではない。本業で生活には困っていないし、この手の仕事は請けないのが通常だった。
ただ、レナを戦地に連れて行くとなると護衛の面でも騎士団の一行と共に行動する方が都合は良いのだろう。その際に自分が行かないという選択肢は考えられないが、記載された条件で戦地に入るのは何となくプライドが許さない。
ロキはレナに伝えるべきか迷っていた。この事実を伝えたら、絶対に行きたいと言いだすはずだからだ。
カイに会いたいからなのか、全く恐れを持たずに危険な場所に行こうとするレナに、ロキはずっと頭を痛めてきた。
一方で、ロキはレナに事実を隠すのは、もっと違うのだろうと思う。自分を頼ってカイのところへ駆け付けたがった以上、それに応えるのもロキの役目なのだと理解している。
レナがいる毎日は、ロキにとって夢のようだった。もともと身分が違い過ぎると分かっていながら、叶わない想いを寄せていた相手だ。この日常を手放すことが、ロキはどうしても惜しい。
「カミラ」
「はい」
ロキは、秘書にこの先に控える自分のスケジュールを読み上げさせた。
「分かった。じゃあ、その予定を全て2週間後ろにずらしておいてくれる? 5日後、ハウザー騎士団の連中と一緒に彼女を連れて駐屯地に向かう。戦地に入るつもりもないし、長居なんて専らごめんだから、2週間で全てを終わらせる」
「ロキウィズ! レナさんのためにそこまでする必要があるんですか?」
「あるよ」
ハッキリと言い切った冷たい目のロキを見て、カミラは固まった。
「かしこまりました・・」
「うん、よろしく」
ロキは無駄のないやり取りを好む。カミラは、出過ぎた発言をしてしまった自分を責めた。
ロキの元を訪ねて来たレナという女性は、カイ・ハウザーの恋人らしい。カミラはそれを聞いたときに安堵したが、ロキがそんなレナに惹かれていることが分かると、ずっと納得できずに過ごしていた。
カミラは、ロキとカイの心を奪っているレナという女性が特別な美貌を備えているわけでも、何か不思議な魅力を持っているようにも思えない。素朴で幼く苦労すら知らなそうに見えるレナを目に入れると、カミラは嫉妬をしない日は無かった。
こんな女性に、ロキは必死になっているのだ。カイ・ハウザーの恋人だというのに。
カミラは会社の庭でベンチに座って何かを口ずさんでいるらしいレナを一瞥し、ロキのスケジュール調整に奔走する。ふと、耳を掠めた歌声が、懐かしい音を紡いでいることに気付いた。
カミラが、駆け出しの女優だった頃、何度も練習をした歌だ。
(あんなに、優しくて美しい音色だったかしら・・)
カミラの知っている曲が、全く別の響きを持って庭に生まれているようだった。カミラはふと昔を思い出す。次の瞬間には、もう戻りたい時代などないはずだと、その場からすぐに立ち去った。
(あーあ。こんな報酬で命を張らされるんだもんなあ)
ロキは、報酬目当てで騎士団に籍を置いているわけではない。本業で生活には困っていないし、この手の仕事は請けないのが通常だった。
ただ、レナを戦地に連れて行くとなると護衛の面でも騎士団の一行と共に行動する方が都合は良いのだろう。その際に自分が行かないという選択肢は考えられないが、記載された条件で戦地に入るのは何となくプライドが許さない。
ロキはレナに伝えるべきか迷っていた。この事実を伝えたら、絶対に行きたいと言いだすはずだからだ。
カイに会いたいからなのか、全く恐れを持たずに危険な場所に行こうとするレナに、ロキはずっと頭を痛めてきた。
一方で、ロキはレナに事実を隠すのは、もっと違うのだろうと思う。自分を頼ってカイのところへ駆け付けたがった以上、それに応えるのもロキの役目なのだと理解している。
レナがいる毎日は、ロキにとって夢のようだった。もともと身分が違い過ぎると分かっていながら、叶わない想いを寄せていた相手だ。この日常を手放すことが、ロキはどうしても惜しい。
「カミラ」
「はい」
ロキは、秘書にこの先に控える自分のスケジュールを読み上げさせた。
「分かった。じゃあ、その予定を全て2週間後ろにずらしておいてくれる? 5日後、ハウザー騎士団の連中と一緒に彼女を連れて駐屯地に向かう。戦地に入るつもりもないし、長居なんて専らごめんだから、2週間で全てを終わらせる」
「ロキウィズ! レナさんのためにそこまでする必要があるんですか?」
「あるよ」
ハッキリと言い切った冷たい目のロキを見て、カミラは固まった。
「かしこまりました・・」
「うん、よろしく」
ロキは無駄のないやり取りを好む。カミラは、出過ぎた発言をしてしまった自分を責めた。
ロキの元を訪ねて来たレナという女性は、カイ・ハウザーの恋人らしい。カミラはそれを聞いたときに安堵したが、ロキがそんなレナに惹かれていることが分かると、ずっと納得できずに過ごしていた。
カミラは、ロキとカイの心を奪っているレナという女性が特別な美貌を備えているわけでも、何か不思議な魅力を持っているようにも思えない。素朴で幼く苦労すら知らなそうに見えるレナを目に入れると、カミラは嫉妬をしない日は無かった。
こんな女性に、ロキは必死になっているのだ。カイ・ハウザーの恋人だというのに。
カミラは会社の庭でベンチに座って何かを口ずさんでいるらしいレナを一瞥し、ロキのスケジュール調整に奔走する。ふと、耳を掠めた歌声が、懐かしい音を紡いでいることに気付いた。
カミラが、駆け出しの女優だった頃、何度も練習をした歌だ。
(あんなに、優しくて美しい音色だったかしら・・)
カミラの知っている曲が、全く別の響きを持って庭に生まれているようだった。カミラはふと昔を思い出す。次の瞬間には、もう戻りたい時代などないはずだと、その場からすぐに立ち去った。
0
あなたにおすすめの小説
田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜
侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」
十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。
弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。
お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。
七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!
以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。
その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。
一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
5分前契約した没落令嬢は、辺境伯の花嫁暮らしを楽しむうちに大国の皇帝の妻になる
西野歌夏
恋愛
ロザーラ・アリーシャ・エヴルーは、美しい顔と妖艶な体を誇る没落令嬢であった。お家の窮状は深刻だ。そこに半年前に陛下から連絡があってー
私の本当の人生は大陸を横断して、辺境の伯爵家に嫁ぐところから始まる。ただ、その前に最初の契約について語らなければならない。没落令嬢のロザーラには、秘密があった。陛下との契約の背景には、秘密の契約が存在した。やがて、ロザーラは花嫁となりながらも、大国ジークベインリードハルトの皇帝選抜に巻き込まれ、陰謀と暗号にまみれた旅路を駆け抜けることになる。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる