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第10章 新しい力
人生で関わり合いたくない男
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ロキの経営する飲食店に着くと、4人はレオナルドが訪れたというVIP用の個室に通されて詳しい話を聞くことになった。
「まず、その『リオ』の外見は?」
「細身で社長より少し背は低い印象ですね。黒に近い茶色の髪で、鋭い目をした方です」
「本人っぽいな」
ロキは従業員と話しながら、レオナルドが本当に自分と接触したがっているのだろうと確信した。
「その『リオ』は、『社長』と話したいと言ったんだな?」
「はい、最初は、ここの社長はロキと呼ばれている騎士かと尋ねられました」
「で?」
「その通りですと答えると、知人だから話がしたい、と」
「知人か……」
ロキはレオナルドと自分の関係を適切に説明できそうにない。
知人といえば知人なのかもしれないが、なんとなくお互いに好感度が高くない気がする。加えて、なるべく人生で関わり合いたくない人物だ。
「で、それを言われてなんて答えたの?」
「社長への伝言は承りますが、お返事はどうしましょうか? と申し上げました。すると、そのうち会えるから良いとおっしゃいまして……」
「……いちいち含みが多くて苛つくなあ」
ロキは従業員を下がらせて席に着いた。
4人はテーブル席でレオナルドとの接触をどうしたものかと話し合っている。
「こっちの行動が読まれているってことかな」
「こちらの動きを辿るためのルートを持っているのかもしれないな」
「じゃ、じっとしていれば向こうから現れてくれるんですかね?」
「暫く、ここにいればいいのかな?」
そんな話をしながら、狙いの分からないレオナルドに対して頭を抱えるばかりだった。
相手が暗殺専門の間諜というだけでも厄介で、現在いる国は戦時中だ。レオナルドはその中枢の情報を持っているに違いない。
「ねえ、カイ。気分転換に、街を歩かない?」
全員が静かになったところで、急にレナが口を開く。
こんな時にこそ、部屋で考えていても仕方がないかもしれない。
「そうだな……」
カイが席から立ち上がると、すかさず、
「俺も行く」
とロキが当然のように言った。
「……街を歩くというのは、みんなでワイワイすることじゃないぞ」
「ここで2人っきりになって浮かれられたら、あの間諜に刺されかねないと思ってさ」
「……」
レナは恥ずかしそうに俯いていた。すぐに態度に出てしまうらしい。
「それに、今のカイ・ハウザーは普段とは違う」
「それはそうだが……」
「ロキが行くなら俺も行きますよ」
結局、4人での外出が決定した。
ぞろぞろと個室を出て飲食店を後にする。ロキの本社のある街に比べたら人は少ないが、人通りは途切れない程度にある。
でこぼことした石畳の敷かれた道は、徒歩の足には優しくない。時折つまずきそうになりながら歩くレナを、カイが咄嗟に支えた。
「歩きづらそうだな」
「こういう道は、慣れていないのもあるわね」
レナが困ったように笑う。カイはなるべく急がせないように歩幅を狭めてゆっくりと歩いた。
「ご無事でなによりですね」
不意にレナの後ろで声がする。その場に緊張が走った。
カイ、シン、ロキの3人は素早く振り向き、その人物を捉える。
何事だろうとレナもゆっくり後ろを向いた。
「お久しぶりです。僕の妹ってことになってるんでしたっけ?」
そこには、目の奥が笑っていない笑顔を貼り付けた、あの男が立っていた。
「まず、その『リオ』の外見は?」
「細身で社長より少し背は低い印象ですね。黒に近い茶色の髪で、鋭い目をした方です」
「本人っぽいな」
ロキは従業員と話しながら、レオナルドが本当に自分と接触したがっているのだろうと確信した。
「その『リオ』は、『社長』と話したいと言ったんだな?」
「はい、最初は、ここの社長はロキと呼ばれている騎士かと尋ねられました」
「で?」
「その通りですと答えると、知人だから話がしたい、と」
「知人か……」
ロキはレオナルドと自分の関係を適切に説明できそうにない。
知人といえば知人なのかもしれないが、なんとなくお互いに好感度が高くない気がする。加えて、なるべく人生で関わり合いたくない人物だ。
「で、それを言われてなんて答えたの?」
「社長への伝言は承りますが、お返事はどうしましょうか? と申し上げました。すると、そのうち会えるから良いとおっしゃいまして……」
「……いちいち含みが多くて苛つくなあ」
ロキは従業員を下がらせて席に着いた。
4人はテーブル席でレオナルドとの接触をどうしたものかと話し合っている。
「こっちの行動が読まれているってことかな」
「こちらの動きを辿るためのルートを持っているのかもしれないな」
「じゃ、じっとしていれば向こうから現れてくれるんですかね?」
「暫く、ここにいればいいのかな?」
そんな話をしながら、狙いの分からないレオナルドに対して頭を抱えるばかりだった。
相手が暗殺専門の間諜というだけでも厄介で、現在いる国は戦時中だ。レオナルドはその中枢の情報を持っているに違いない。
「ねえ、カイ。気分転換に、街を歩かない?」
全員が静かになったところで、急にレナが口を開く。
こんな時にこそ、部屋で考えていても仕方がないかもしれない。
「そうだな……」
カイが席から立ち上がると、すかさず、
「俺も行く」
とロキが当然のように言った。
「……街を歩くというのは、みんなでワイワイすることじゃないぞ」
「ここで2人っきりになって浮かれられたら、あの間諜に刺されかねないと思ってさ」
「……」
レナは恥ずかしそうに俯いていた。すぐに態度に出てしまうらしい。
「それに、今のカイ・ハウザーは普段とは違う」
「それはそうだが……」
「ロキが行くなら俺も行きますよ」
結局、4人での外出が決定した。
ぞろぞろと個室を出て飲食店を後にする。ロキの本社のある街に比べたら人は少ないが、人通りは途切れない程度にある。
でこぼことした石畳の敷かれた道は、徒歩の足には優しくない。時折つまずきそうになりながら歩くレナを、カイが咄嗟に支えた。
「歩きづらそうだな」
「こういう道は、慣れていないのもあるわね」
レナが困ったように笑う。カイはなるべく急がせないように歩幅を狭めてゆっくりと歩いた。
「ご無事でなによりですね」
不意にレナの後ろで声がする。その場に緊張が走った。
カイ、シン、ロキの3人は素早く振り向き、その人物を捉える。
何事だろうとレナもゆっくり後ろを向いた。
「お久しぶりです。僕の妹ってことになってるんでしたっけ?」
そこには、目の奥が笑っていない笑顔を貼り付けた、あの男が立っていた。
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