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第11章 歴史を変える
力が欲しい
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「やっぱり、食はルリアーナが一番だな」
食事から部屋に戻って来たカイがしみじみと言うと、レナは食事中のカイを思い出して思わず笑う。
ルリアーナで食べた料理の何があんなに奥深かったのかを考え始めて難しい顔をするカイに、レナは「冷める前に食べないと」と何度も食事を促したのだった。
「これからまた、ルリアーナで食事ができるわね?」
「それは楽しみだ」
2人は向かい合ってじっと見つめ合うと、引き寄せられるように口付けを交わす。
軽く触れ合っているうちに、レナの手がカイの背に回され、カイの手はレナの頭と背中を掴んだ。
唇同士の摩する音が立つ。レナは眩暈のような感覚に時折ふらつきながら、背中に回した手に力を込めて耐えた。
それまで塞がれていた口が解放されると、激しさを帯びた吐息が漏れる。
カイの唇が耳をなぞり、首筋を通ってデコルテに辿り着いた。
「くすぐったい……」
思わずカイの耳元で小さく呟くと、デコルテに軽く歯が立てられて小さな痛みが走る。
「だからって、嚙みつかないで……」
「……どうして欲しい?」
「――?」
どうして、というのはつまり、触れ方のことを尋ねられているのだろうか。
レナはこれ以上の行為を知らず、選択肢など持っていなかった。
先ほどの話を思い出すなら、カイはレナと深い仲になるつもりはないはずで、なぜそんなことを聞かれるのかと混乱してしまう。
「分からない、けど……」
「けど?」
「今日は、あなたと眠りたい」
レナが勇気を振り絞って言うと、カイは困ったように横を向いた。
「変なことを言ってしまったかしら?」
「いや、でも……」
「でも?」
「これまで以上に精神的な負担が大きいな」
レナは、精神的な負担とは? と小首を傾げたが、まさか、と心当たりに気付く。
夕食の前に、白状されたばかりだ。
(欲に負けたら、って……)
「あなたが苦しんでいるのに、嬉しいわ……」
「どういう趣味だ……」
カイは訝し気な表情を浮かべる。いつの間にレナがそんな気質になっていたのだと不安しかない。
「そんなに求められていたなんて、知らなかったもの」
ハッキリとレナに告げられると、カイは隠しても仕方がないのだと開き直る。レナを軽く持ち上げると、そのまま膝を抱えて担いだ。
ドサリとベッドの上に仰向けに放られると、レナの身体は羽毛らしき掛布の中に深く沈む。
その身体に覆いかぶさるようにカイはレナを抱きしめて顔を歪めた。
レナは身動きがとれない。
どうすることもできず、突然の展開に鼓動が早くなるばかりだ。
「やはり、駄目だな……」
レナの姿に目を落とし、「はー」と溜息をつく。
「……?」
「乾くだけで満たされない」
カイはレナから離れてベッドに転がり、仰向けになった顔を前腕で隠している。
レナはその顔が見たくて、カイの顔を覗き込もうと近づいた。
「苦しいな」
カイは白状するように呟く。
いつも肝心なところが手に入らない心地がする。
女王になどならないでくれ、と、口に出してはならない本音が身体のどこかで疼いた。
「苦しいの? どうしたら、楽になれる?」
レナは心配そうにカイを気遣っていた。
どうしたら、か、とカイは諦めるように笑うしかない。
「早く、レナの隣に立てるような力が欲しい――」
カイは相変わらず前腕で顔を隠しながら本音を漏らす。
レナは無言のまま、カイの隣にそっと身体を寄り添わせて横になっていた。
食事から部屋に戻って来たカイがしみじみと言うと、レナは食事中のカイを思い出して思わず笑う。
ルリアーナで食べた料理の何があんなに奥深かったのかを考え始めて難しい顔をするカイに、レナは「冷める前に食べないと」と何度も食事を促したのだった。
「これからまた、ルリアーナで食事ができるわね?」
「それは楽しみだ」
2人は向かい合ってじっと見つめ合うと、引き寄せられるように口付けを交わす。
軽く触れ合っているうちに、レナの手がカイの背に回され、カイの手はレナの頭と背中を掴んだ。
唇同士の摩する音が立つ。レナは眩暈のような感覚に時折ふらつきながら、背中に回した手に力を込めて耐えた。
それまで塞がれていた口が解放されると、激しさを帯びた吐息が漏れる。
カイの唇が耳をなぞり、首筋を通ってデコルテに辿り着いた。
「くすぐったい……」
思わずカイの耳元で小さく呟くと、デコルテに軽く歯が立てられて小さな痛みが走る。
「だからって、嚙みつかないで……」
「……どうして欲しい?」
「――?」
どうして、というのはつまり、触れ方のことを尋ねられているのだろうか。
レナはこれ以上の行為を知らず、選択肢など持っていなかった。
先ほどの話を思い出すなら、カイはレナと深い仲になるつもりはないはずで、なぜそんなことを聞かれるのかと混乱してしまう。
「分からない、けど……」
「けど?」
「今日は、あなたと眠りたい」
レナが勇気を振り絞って言うと、カイは困ったように横を向いた。
「変なことを言ってしまったかしら?」
「いや、でも……」
「でも?」
「これまで以上に精神的な負担が大きいな」
レナは、精神的な負担とは? と小首を傾げたが、まさか、と心当たりに気付く。
夕食の前に、白状されたばかりだ。
(欲に負けたら、って……)
「あなたが苦しんでいるのに、嬉しいわ……」
「どういう趣味だ……」
カイは訝し気な表情を浮かべる。いつの間にレナがそんな気質になっていたのだと不安しかない。
「そんなに求められていたなんて、知らなかったもの」
ハッキリとレナに告げられると、カイは隠しても仕方がないのだと開き直る。レナを軽く持ち上げると、そのまま膝を抱えて担いだ。
ドサリとベッドの上に仰向けに放られると、レナの身体は羽毛らしき掛布の中に深く沈む。
その身体に覆いかぶさるようにカイはレナを抱きしめて顔を歪めた。
レナは身動きがとれない。
どうすることもできず、突然の展開に鼓動が早くなるばかりだ。
「やはり、駄目だな……」
レナの姿に目を落とし、「はー」と溜息をつく。
「……?」
「乾くだけで満たされない」
カイはレナから離れてベッドに転がり、仰向けになった顔を前腕で隠している。
レナはその顔が見たくて、カイの顔を覗き込もうと近づいた。
「苦しいな」
カイは白状するように呟く。
いつも肝心なところが手に入らない心地がする。
女王になどならないでくれ、と、口に出してはならない本音が身体のどこかで疼いた。
「苦しいの? どうしたら、楽になれる?」
レナは心配そうにカイを気遣っていた。
どうしたら、か、とカイは諦めるように笑うしかない。
「早く、レナの隣に立てるような力が欲しい――」
カイは相変わらず前腕で顔を隠しながら本音を漏らす。
レナは無言のまま、カイの隣にそっと身体を寄り添わせて横になっていた。
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