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第12章 騎士はその地で
パレード
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無事に挙式が終わり、パレードの準備が始まる。
レナは自室でカイと共に挙式を軽く振り返りながら、化粧直しをされていた。
「とうとうパレードね。あなたが一般の人の前に出るなんて……」
「何を心配している……」
「あまりの美しさに、死人が出るわ……」
レナは本気で心配しているようだ。カイは呆れてレナの隣に立つ。鏡台の鏡ごしにレナを見つめた。
「女王陛下の方が、よほどだろう」
カイが当然のように言うが、レナは首を傾げている。サーヤに「真っ直ぐしてください」と注意されて首の位置を戻した。
「女王陛下の方が、綺麗だと……思うが」
語尾が弱くなっていくカイの言葉に、レナは「きゃあああ」と悲鳴を上げる。
サーヤはレナの髪を整えながら「挙式当日だからと耐えていましたが、これ以上私に当てつけないでください!」とまた乱れた髪を見て怒り出してしまった。
*
パレードは、軍隊を隊列に加えて城下町を練り歩く。
レナとカイはクロノスの上に乗っていた。
クロノスにはゴールドと青色の宝石を数種類埋め込んだ馬鎧が付けられている。歩く度に、シャラシャラと涼し気な音を鳴らしていた。
「クロノスは、これだけ人が多いパレードでも平気なのね」
「戦場の方がもっと殺気立っていて恐ろしいからな。馬は臆病な動物だが、クロノスにおいては臆病という言葉は当てはまらないかもしれない」
2人は馬上で話をしながら、手を振る国民に視線を配った。
レナは軽く手を振って応えているが、カイは基本的に無表情のままだ。何のサービスもしていないが、黄色い声援が上がった。
「あなたって人は……」
「いや、何を責められている……?」
レナが笑顔を崩さずにカイを責めたが、カイは特段何もしていない。
時々群衆の中で小競り合いやトラブルの類が起きているようで、カイの部下たちが素早く対応していた。
「今のところ、大きなトラブルは起きていないようだな」
「それは良かったわ。挙式の時にアロイス陛下が号泣した時はどうしようかと思ったけど」
「ルイス陛下が引いていたくらいだから、アロイスの酷さが周辺国に伝わっただけに終わったな」
カイは挙式中のアロイスを思い出した。きっとあれは悔し泣きの類だ。
アロイスは婚姻の承認をしておきながら、相当納得がいっていなかったらしい。
一国の王が他国の王室の挙式で堂々と悔し泣きをするとは、一体どういうことなのか。
「ルイス陛下は、普通だったな」
「……きっと今が幸せなのよ」
パレードが角を曲がった時、レナは2人の人物の姿を捉えた。
「イリア! ジャン!」
レナが馬上から声をかける。イリアは口に両手を当てて驚き、ジャンは顎が外れそうになっていた。
パレードはそのまま前に進んでいく。
「エレナ……いえ、ヘレナ陛下、おめでとうございます!」
ジャンの大きな声がレナの背後から聞こえる。
カイは隣で「あいつか、ジャン」と面白くなさそうな顔を一瞬浮かべた後、「いや、レナを無事に匿ってくれていたのだから、感謝しないといけないな」と言い直した。
「そうよ、私ひとりではきっと生き抜けなかったもの。命の恩人には違いないの」
「そうだな、ちゃんと祝ってくれていることだし、感謝しておこう」
2人はそう言って顔を見合わせる。
沿道のギャラリーから視線を集める中、そっと唇を重ねる。
多くの声援が、ひと際大きな歓声に変わっていた。
レナは自室でカイと共に挙式を軽く振り返りながら、化粧直しをされていた。
「とうとうパレードね。あなたが一般の人の前に出るなんて……」
「何を心配している……」
「あまりの美しさに、死人が出るわ……」
レナは本気で心配しているようだ。カイは呆れてレナの隣に立つ。鏡台の鏡ごしにレナを見つめた。
「女王陛下の方が、よほどだろう」
カイが当然のように言うが、レナは首を傾げている。サーヤに「真っ直ぐしてください」と注意されて首の位置を戻した。
「女王陛下の方が、綺麗だと……思うが」
語尾が弱くなっていくカイの言葉に、レナは「きゃあああ」と悲鳴を上げる。
サーヤはレナの髪を整えながら「挙式当日だからと耐えていましたが、これ以上私に当てつけないでください!」とまた乱れた髪を見て怒り出してしまった。
*
パレードは、軍隊を隊列に加えて城下町を練り歩く。
レナとカイはクロノスの上に乗っていた。
クロノスにはゴールドと青色の宝石を数種類埋め込んだ馬鎧が付けられている。歩く度に、シャラシャラと涼し気な音を鳴らしていた。
「クロノスは、これだけ人が多いパレードでも平気なのね」
「戦場の方がもっと殺気立っていて恐ろしいからな。馬は臆病な動物だが、クロノスにおいては臆病という言葉は当てはまらないかもしれない」
2人は馬上で話をしながら、手を振る国民に視線を配った。
レナは軽く手を振って応えているが、カイは基本的に無表情のままだ。何のサービスもしていないが、黄色い声援が上がった。
「あなたって人は……」
「いや、何を責められている……?」
レナが笑顔を崩さずにカイを責めたが、カイは特段何もしていない。
時々群衆の中で小競り合いやトラブルの類が起きているようで、カイの部下たちが素早く対応していた。
「今のところ、大きなトラブルは起きていないようだな」
「それは良かったわ。挙式の時にアロイス陛下が号泣した時はどうしようかと思ったけど」
「ルイス陛下が引いていたくらいだから、アロイスの酷さが周辺国に伝わっただけに終わったな」
カイは挙式中のアロイスを思い出した。きっとあれは悔し泣きの類だ。
アロイスは婚姻の承認をしておきながら、相当納得がいっていなかったらしい。
一国の王が他国の王室の挙式で堂々と悔し泣きをするとは、一体どういうことなのか。
「ルイス陛下は、普通だったな」
「……きっと今が幸せなのよ」
パレードが角を曲がった時、レナは2人の人物の姿を捉えた。
「イリア! ジャン!」
レナが馬上から声をかける。イリアは口に両手を当てて驚き、ジャンは顎が外れそうになっていた。
パレードはそのまま前に進んでいく。
「エレナ……いえ、ヘレナ陛下、おめでとうございます!」
ジャンの大きな声がレナの背後から聞こえる。
カイは隣で「あいつか、ジャン」と面白くなさそうな顔を一瞬浮かべた後、「いや、レナを無事に匿ってくれていたのだから、感謝しないといけないな」と言い直した。
「そうよ、私ひとりではきっと生き抜けなかったもの。命の恩人には違いないの」
「そうだな、ちゃんと祝ってくれていることだし、感謝しておこう」
2人はそう言って顔を見合わせる。
沿道のギャラリーから視線を集める中、そっと唇を重ねる。
多くの声援が、ひと際大きな歓声に変わっていた。
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