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3章
新月の日
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朝が来ると、何事もなかったかのようにローレンスと宿のレストランで朝食をとった。
「実は昨日、泥棒なのか強盗なのかが出たのです」
試しに話を切り出してみると、ローレンスは初めて聞いた話に驚いていた。
その後ろに立っている護衛は無反応だったけれど、内心焦ってくれたかしら。
「どこに出たのですか?!」
「わたくしたちの部屋のバルコニーよ。執事と侍女が対処してくれたの」
「随分と頼りになる執事と侍女の方なのですね」
私の隣に立っているシンシアが、恥ずかしそうにはにかんでいた。
ユリシーズの後ろに控える執事のバートレットは、無表情を貫きながら「とんでもございません」と謙遜している。
「姉上は大丈夫ですか?」
「ええ。それに、夫はとても強いのです」
ローレンスは「普段の様子から忘れていましたが、義兄上は戦争の英雄でしたね」と言うと、ユリシーズを見て尊敬のまなざしを送っている。
あなたの護衛が狙っているのが、そのユリシーズだとは思っていないのね。ついでに、どこの誰かは分からない暴漢もそこの護衛が手配したのだけれど。
「高級宿だから狙われたのでしょうか。義兄上の領は治安がいいと思ったのですが」
「私を狙って遠路はるばるやってきたのでしょう」
ユリシーズがにこにこと自分の領地の罪人ではないと仄めかすから、私は思わずローレンスの護衛を見たくなった。ちょっと我慢してからローレンスを見るついでに後ろの護衛たちにも視線を動かす。ポーカーフェイスは保てているらしい。
「遠路はるばる、ですか?」
「そうなのです。実はここ数日、暗殺者やらなにやらが屋敷に現れるようになりましてね」
「そんな! なぜ義兄上が狙われるのですか!?」
ねえねえ、本当に気づいてないの?? わざと言ってないわよね??
なぜ狙われるのですかって、あなたの父親のせいなのよ??
そこが分からないような鈍い人じゃないでしょう……?
「心配ですね……。今回、私の護衛が大勢ついてきておりますから、何名かを義兄上の護衛に付かせましょうか??」
ダメダメダメーーーー!!
それが一番だめなのよ!!
「お気遣いありがとうございます、ローレンス様。私は不死の死神伯、ユリシーズ・オルブライトです。どんな輩が現れようと私の目の前に立つものは……死、あるのみですよ」
ユリシーズが皿の上の厚切りベーコンをスッとナイフで切りながら、久しぶりに銀色の目で冷たく笑った。
隣で見ていると顔も所作も綺麗だなと思ってしまうけれど、正面から見られたローレンスとその後ろにいる護衛は血の気が引いている。
「ローレンス、あなたのことは信じているけれど、わたくしの夫を傷つける覚悟があるのなら命の危険を冒すのだと理解しなくちゃだめよ?」
「姉上、なぜそんな物騒なことを……」
「たとえ話でしょ。いやねえ、何を本気にしているの?」
当然でしょう? と笑うとローレンスが言葉を失っていた。
私は公爵家の弟を信用し過ぎたかもしれない。
ユリシーズのことを尊敬していようがいまいが、所詮は公爵家の囲いの中で育った王子様なのだ。
自分の善悪よりも、父親の道理で動くのは当然だと思った方が良い。
あなたの生きている環境は恵まれていながらも気の毒だと思うけれど、私にだって大切なものがある。
それを奪おうというのなら、それ相応の覚悟をしてくださらないと。
「実は昨日、泥棒なのか強盗なのかが出たのです」
試しに話を切り出してみると、ローレンスは初めて聞いた話に驚いていた。
その後ろに立っている護衛は無反応だったけれど、内心焦ってくれたかしら。
「どこに出たのですか?!」
「わたくしたちの部屋のバルコニーよ。執事と侍女が対処してくれたの」
「随分と頼りになる執事と侍女の方なのですね」
私の隣に立っているシンシアが、恥ずかしそうにはにかんでいた。
ユリシーズの後ろに控える執事のバートレットは、無表情を貫きながら「とんでもございません」と謙遜している。
「姉上は大丈夫ですか?」
「ええ。それに、夫はとても強いのです」
ローレンスは「普段の様子から忘れていましたが、義兄上は戦争の英雄でしたね」と言うと、ユリシーズを見て尊敬のまなざしを送っている。
あなたの護衛が狙っているのが、そのユリシーズだとは思っていないのね。ついでに、どこの誰かは分からない暴漢もそこの護衛が手配したのだけれど。
「高級宿だから狙われたのでしょうか。義兄上の領は治安がいいと思ったのですが」
「私を狙って遠路はるばるやってきたのでしょう」
ユリシーズがにこにこと自分の領地の罪人ではないと仄めかすから、私は思わずローレンスの護衛を見たくなった。ちょっと我慢してからローレンスを見るついでに後ろの護衛たちにも視線を動かす。ポーカーフェイスは保てているらしい。
「遠路はるばる、ですか?」
「そうなのです。実はここ数日、暗殺者やらなにやらが屋敷に現れるようになりましてね」
「そんな! なぜ義兄上が狙われるのですか!?」
ねえねえ、本当に気づいてないの?? わざと言ってないわよね??
なぜ狙われるのですかって、あなたの父親のせいなのよ??
そこが分からないような鈍い人じゃないでしょう……?
「心配ですね……。今回、私の護衛が大勢ついてきておりますから、何名かを義兄上の護衛に付かせましょうか??」
ダメダメダメーーーー!!
それが一番だめなのよ!!
「お気遣いありがとうございます、ローレンス様。私は不死の死神伯、ユリシーズ・オルブライトです。どんな輩が現れようと私の目の前に立つものは……死、あるのみですよ」
ユリシーズが皿の上の厚切りベーコンをスッとナイフで切りながら、久しぶりに銀色の目で冷たく笑った。
隣で見ていると顔も所作も綺麗だなと思ってしまうけれど、正面から見られたローレンスとその後ろにいる護衛は血の気が引いている。
「ローレンス、あなたのことは信じているけれど、わたくしの夫を傷つける覚悟があるのなら命の危険を冒すのだと理解しなくちゃだめよ?」
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「たとえ話でしょ。いやねえ、何を本気にしているの?」
当然でしょう? と笑うとローレンスが言葉を失っていた。
私は公爵家の弟を信用し過ぎたかもしれない。
ユリシーズのことを尊敬していようがいまいが、所詮は公爵家の囲いの中で育った王子様なのだ。
自分の善悪よりも、父親の道理で動くのは当然だと思った方が良い。
あなたの生きている環境は恵まれていながらも気の毒だと思うけれど、私にだって大切なものがある。
それを奪おうというのなら、それ相応の覚悟をしてくださらないと。
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