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第三章
挙式場の宿泊施設 5
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この日は東御が目的を伝えて部屋を取っていた。
花森が嬉しそうに見えたのは、久しぶりに誘われたからだったのか。
「気を遣うところが違ったな」
「そうです。もっと私にぶつかってきて欲しいです」
「沙穂がちゃんと意思を伝えてくれることに甘えていた」
拗ねるように口を尖らせた花森の髪を撫で、東御は「すまなかった」と謝る。
「八雲さん、本当はしたくないのかなって、ずっと寂しかった……」
東御はうなずくと、引き寄せた花森の耳たぶを軽く咥えてこめかみまで刺激を与える。
たまらず声が漏れるのを確認すると、満足げに花森から離れた。
「水を持ってくるから、続きをしよう」
「もう一回ですか?」
「最初からそのつもりだった」
「きゃん」
「やけに嬉しそうじゃないか」
「もっともっと、私を八雲さんで満たして欲しいです」
うっとりとする表情を、東御は複雑な顔で見る。
「そんなねだり方、どこで覚えた? 妬けるぞ」
「付き合い始めたころ、八雲さんが言ったんですよう。『沙穂を知り尽くして俺が満たしてやるから』って」
「そうか。それを言ったときの俺は相当に必死で無我夢中だったんだろう。覚えていないとは不覚だ」
東御が耳元で音を立ててキスをする。花森の色艶のある声が小さく漏れた。
「少し待っていろ」
「はい」
そうして東御はバスローブを羽織り、ベッドから入口に向かう途中にある棚を開いて冷蔵庫からペットボトルの水を取りだす。
(くそ、明日は月曜だというのに、沙穂がかわいすぎる。さすがに婚約発表してすぐに一緒に会社を休むのはよくない。よくないがこれは……)
(八雲さん、私、今日はどうなってしまうんでしょう……うふふ、このまままただなんて……激しい愛を感じちゃいます……えへ、えへへへ)
「ほら、沙穂」
東御が冷たいペットボトルを投げる。
花森はキャッチしようと両手をかざしたが、見事に手の間をすり抜け、顔面にバチンと当たった。
「ぎゃ」
「……すまない」
「投げないでくださいよお」
「かわいい」
「かわいくないですー!」
東御は花森の横に歩いて来ると、ペットボトルがぶつかって濡れた額や鼻を親指で拭う。
「かわいい」
「……変わってますね」
「変わっていると思うか?」
「はい。でも、そのままでいてください」
「毎日、沙穂に溺れていたい」
「ああ、それいいです……えへへ……ずぶずぶに溺れて欲しいです……」
嬉しそうにはにかむ顔を見て、東御も自然と頬が緩んだ。
「欲望のままに求めたら、心がおざなりになりそうで嫌だったんだ。身体本位に抱きたくなかった」
「八雲さんの欲望なら、私の心は満たされますから平気です」
「沙穂……」
「はい」
「『好きだ』しか言葉が出てこない」
「では、ずっと好きを囁いていてください。私も応えますから」
「好きだ」
「ふふ、好きです」
倒れこむように広いシーツに飛び込むと、触れたところはひんやりと熱を奪われる。
「好きだという言葉以外に、うまくこの気持ちを伝えられたらと思う。愛ではあるが、もっと衝動的で激しい」
「そうですね。伝えたいことほど難しいです」
二人は横になってお互いを見つめた。
「一生かけて、沙穂への気持ちを伝えて行くことにしよう」
「はい。では、一日も休まないでくださいね」
東御はそこで目を見開く。
「そうか。つい先のことを考えてしまうが、これからは二人の生活なんだな」
「二人の生活、ですか?」
「毎日をとびきり幸せに過ごそう、ということだ」
花森は瞳をキラキラとさせながらうなずき、東御の首筋に額を寄せた。
「私が幸せにしてあげますから、たっぷりかわいがってくださいね?」
「沙穂が音を上げるまでかわいがりたいが、引いてくれるなよ」
「望むところです」
花森が嬉しそうに見えたのは、久しぶりに誘われたからだったのか。
「気を遣うところが違ったな」
「そうです。もっと私にぶつかってきて欲しいです」
「沙穂がちゃんと意思を伝えてくれることに甘えていた」
拗ねるように口を尖らせた花森の髪を撫で、東御は「すまなかった」と謝る。
「八雲さん、本当はしたくないのかなって、ずっと寂しかった……」
東御はうなずくと、引き寄せた花森の耳たぶを軽く咥えてこめかみまで刺激を与える。
たまらず声が漏れるのを確認すると、満足げに花森から離れた。
「水を持ってくるから、続きをしよう」
「もう一回ですか?」
「最初からそのつもりだった」
「きゃん」
「やけに嬉しそうじゃないか」
「もっともっと、私を八雲さんで満たして欲しいです」
うっとりとする表情を、東御は複雑な顔で見る。
「そんなねだり方、どこで覚えた? 妬けるぞ」
「付き合い始めたころ、八雲さんが言ったんですよう。『沙穂を知り尽くして俺が満たしてやるから』って」
「そうか。それを言ったときの俺は相当に必死で無我夢中だったんだろう。覚えていないとは不覚だ」
東御が耳元で音を立ててキスをする。花森の色艶のある声が小さく漏れた。
「少し待っていろ」
「はい」
そうして東御はバスローブを羽織り、ベッドから入口に向かう途中にある棚を開いて冷蔵庫からペットボトルの水を取りだす。
(くそ、明日は月曜だというのに、沙穂がかわいすぎる。さすがに婚約発表してすぐに一緒に会社を休むのはよくない。よくないがこれは……)
(八雲さん、私、今日はどうなってしまうんでしょう……うふふ、このまままただなんて……激しい愛を感じちゃいます……えへ、えへへへ)
「ほら、沙穂」
東御が冷たいペットボトルを投げる。
花森はキャッチしようと両手をかざしたが、見事に手の間をすり抜け、顔面にバチンと当たった。
「ぎゃ」
「……すまない」
「投げないでくださいよお」
「かわいい」
「かわいくないですー!」
東御は花森の横に歩いて来ると、ペットボトルがぶつかって濡れた額や鼻を親指で拭う。
「かわいい」
「……変わってますね」
「変わっていると思うか?」
「はい。でも、そのままでいてください」
「毎日、沙穂に溺れていたい」
「ああ、それいいです……えへへ……ずぶずぶに溺れて欲しいです……」
嬉しそうにはにかむ顔を見て、東御も自然と頬が緩んだ。
「欲望のままに求めたら、心がおざなりになりそうで嫌だったんだ。身体本位に抱きたくなかった」
「八雲さんの欲望なら、私の心は満たされますから平気です」
「沙穂……」
「はい」
「『好きだ』しか言葉が出てこない」
「では、ずっと好きを囁いていてください。私も応えますから」
「好きだ」
「ふふ、好きです」
倒れこむように広いシーツに飛び込むと、触れたところはひんやりと熱を奪われる。
「好きだという言葉以外に、うまくこの気持ちを伝えられたらと思う。愛ではあるが、もっと衝動的で激しい」
「そうですね。伝えたいことほど難しいです」
二人は横になってお互いを見つめた。
「一生かけて、沙穂への気持ちを伝えて行くことにしよう」
「はい。では、一日も休まないでくださいね」
東御はそこで目を見開く。
「そうか。つい先のことを考えてしまうが、これからは二人の生活なんだな」
「二人の生活、ですか?」
「毎日をとびきり幸せに過ごそう、ということだ」
花森は瞳をキラキラとさせながらうなずき、東御の首筋に額を寄せた。
「私が幸せにしてあげますから、たっぷりかわいがってくださいね?」
「沙穂が音を上げるまでかわいがりたいが、引いてくれるなよ」
「望むところです」
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