<完結> βの俺が運命の番に適うわけがない

燈坂 もと

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< 本編 >

9.寮の部屋でキミと(4)

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折角結んだネクタイを外され、ついでにシャツのボタンを外され。
露わになった俺の首元に顔を埋めて、すんすん、と匂いを嗅ぐ。
これ、毎朝されるんだけど一体なんなんだろう。
これも病気の進行が緩やかになる要因のひとつなのだろうか。
皮膚に直接、先輩の息があたって擽ったくて、少し身を捩る。

「……よし。佐伯の匂いはしないな。」
「えぇ?するわけないでしょう。先輩、何だか変ですよ。」

擽ったかったのと相まって何だか面白くなってしまってふふふ、と笑っていると俺の首元に顔を埋めていた先輩が、じ、と俺の顔を覗き込んだ。

「士郎……お前の様な人間に、俺は、初めて出逢った。」
「へ……?そう、なん、ですか……?」
「不思議だ……お前といると……落ち着く。」

そう言って俺の腰と背中に回していた手に、ぐっと力が込められる。
生徒会長になるくらい能力の高いαでも、治らない病気と闘ってる。
しんどいこともきっと沢山あるんだろう。

俺は健康だけは自慢出来る。
子供の頃から病気をした事がないっていうので、地元じゃ有名人だ。
そんな俺の元気を抱きしめられる事で、この人に分けれるなら。
そう思えるくらいには黒木先輩の存在が、総兄まではいかなくても、大きくなってはいる。

「俺、役に立てる事少ないだろうし、何も出来ないですけど、手伝える事あったら力になるんで、無理だけはしないでください」
「っ、そうだな……お前がいたら、俺は、今以上に、頑張れる気がする……」

そう言ってまた首元に顔を埋めて俺の事を抱きしめる。
αも治療できない病気があって大変だな、と俺の両腕を先輩の背中に回した瞬間、先輩がビクッとなった。

「しろ、う」
「ひゃ!先輩、そんなとこで喋んないで下さいよ、っふふ、擽ったい」

あまりに擽ったくて、先輩の顔に肌を擦り合わせてしまった。
しまった、失礼だったかな、と不安に思って先輩を見れる範囲で見てみたけど先輩は怒ってる雰囲気もなく俺をじっと見たまま、首元に口を当ててる。

「ん、喋っちゃ、ダメ、か?」
「くふふ、ダメですよ……っ、ストップ、ふふ、です、」
「……もっと、もっとだ。もっと、士郎の、笑ってる声が、聞きたい。」
「ふふふ、先輩、ダメですって……くふふ」

何か、動物と戯れてるみたいな感覚になってきたな。
黒木先輩がどういう人かは、まだ、いまいち掴めてない。
けど、気に入られてる事は何となく、わかる。
俺でこんなに甘えるんだから総兄にはもっと凄いんだろう。

先輩の黒くて、でも少し茶色味がかった少し芯の強い髪が喋るたびに動いて俺の肌を刺激する。
くふくふ笑っている俺を見て嬉しそうに戯れてくる先輩は本当に人懐っこいな、と思う。

この人こんな病弱で、こんなに甘えん坊なのに、この学院の生徒会長なんて本当にできるんだろうか……と戯れてくる先輩の相手をしながら心配になった。

総兄、上手くフォローしてあげれるといいけど……、

ん?総兄……?
総兄って何で今いないんだっけ……?
そういや、入学式の事項の事で呼び出されたって……
入学式……?
あ、うわ!入学式の集合時間、もうすぐじゃ……!?

今日の集合時刻は、各クラスに9時丁度に集まる様指示が出ている。
今現在、時計の針は8時40分を差していた。
俺は慌てて戯れてる先輩に静止を促す。

「黒木先輩……時間、ヤバい気がするんです、けど……」
「まだ大丈夫だ。もう少し、このままがいい。」

先輩の病気の緩和も大事だけど、俺の入学式も大事……!
どうしたら離してくれるかな、と唸っているとドアがバタン!と開く音がした。

「黒木……っ!いるんだろ?!流石に今日のは……!」

俺と先輩の体勢を見て勢いの良かった総兄が、ピタっと止まった。

「えっと、士郎……これは、俺はお邪魔虫かな?」
「えぇ?どういうこと?」

いや、この状況みたら、誰がどう見ても……とか総兄が訳わかんないこと言って固まってるから、すかさず否定しておく。
頭がピンク畑な総兄に、しっかりと注意をせねば。
これは、あくまでも人助けなのだ。

「先輩の病気が緩和するっていうから、体を貸してるだけ。先輩の事、勘違いしないであげて?」
「なるほど。黒木、士郎に他意はないらしいぞ。士郎の時間がヤバい。離れてやってくれ。」

そう言うと、俺と黒木先輩をいつもの如くベリッと剥がした。
総兄、パッと見細いのに力は相変わらず凄い。
やっぱりαなんだなぁと感心する。

俺の姿を見て、はあ、とため息つきながら「優里香さんに頼まれた大事な息子さんを2年間ちゃんと守れるか不安すぎる……この大量のマーキング……すごいな」と意味わかんない台詞を言いながら総兄はせっせと身なりを整えてくれた。
母さんの名前が何でここででてくるんだろ?
マーキング???意味わからん。

集合時間まで、あと10分というところで、2人に行ってきます!といい部屋を出た。
上級生は、新入生が集合する1時間後の集合らしい。

そういや……総兄、さっき、黒木先輩に怒ってたな?
何があったんだろ……。


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