<完結> βの俺が運命の番に適うわけがない

燈坂 もと

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< 本編 >

18.四阿でキミと(4)

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真っ赤な顔を隠すかの様に、俺の肩口に顔を埋める。
名前、呼んだのミスったかなあ……。
体調大丈夫だろうか。

「黒木先輩?」
「士郎……呼び方が、戻っている」
「あっ、名前呼び大丈夫なんだ……!圭介先輩?」
「……っ。……なんだ……?」
「体調大丈夫ですか?保健室行きます?」
「……大丈夫だ。いや、大丈夫じゃ、ない……が、このままが、いい……」

どっち???とクエスチョンマークが頭に飛んでる俺の頬を先輩は両手で包む。
じっ、と俺の顔を覗き込む。

わ。先輩の瞳、って、少し青みがかった黒なんだな。
すご、めっちゃ、綺麗。

「…………士郎は、何者だ……?」
「へ?俺は何の変哲もない……ただのβ、です、よ」
「普通の人間な、ワケ、ないだろう」
「ええと……」
「……いや、違うな……お前と、出逢ってから……俺が、変なのか……?」

俺のおでこに、先輩のおでこが ゆっくりと重なる。
凄く近い距離に先輩の息遣いを感じて、恥ずかしいような、擽ったいような、変な感覚。

 ────── 何だか、心臓が、いたい。

あれ、俺、どうしたん、だろ。

咄嗟に、先輩と後輩の距離感として、この距離は合っているのか不安になった。
何だか…、まるで……
恋人、と、過ごしてる、ような…………

「…………士郎……、どうした……?」
「へ」
「顔が真っ赤、だ……、……っ。」
「けい、すけ、せんぱ」


このままだ、と、
おれ、せんぱい、と

キス

しちゃ、うん、じゃ


「黒木!!!!こんなとこにいた!!!」

総兄が大きな声と共に圭介先輩を、ベリッ、と俺から剥がした。
助かったよう、な、残念、だった、ような……、?!
え、何……?どういうことだ、俺……???

「………………佐伯、何の用だ」
「打合せ!式典と生徒会の打合せに遅刻だよ!携帯、結構鳴らしたのに無視するなよ……」

時計を見たら12時10分……咲耶と別れてから、そんなに時間経ってたんだ……?
5分くらいしか経ってないかと……思ってた……えええ。

「佐伯、少し、時間をくれ」
「結構押してて、時間ヤバいけど」
「……打合せは、予定の時間に確実に終わらせると、約束する。頼む。コレを今しておかないと、俺は絶対に後悔する。」

そう言いながら、先輩はスマホを揺らした。

「……了解。すぐ終わらせろよ。」
「すまない、助かる」

そう言って、すぐ、俺の方を向いた。
えっ、俺と、何をするつもり……なんだ……?!

「…………士郎」
「へあっ!は、はい!な、なんですか?!」
「…………、連絡先を、教えてもらって、いいだろうか」
「へっ!?」
「……ダメ、だろうか」
「い、いえ!ダメとか、じゃなくて……!そんな事だと、思わなくて……!ど、どうぞ」

慌てて、スマホの画面を出す。
俺のスマホに先輩がスマホを翳した。
ティロン♪と音が鳴り、無事、俺のデータが転送されたようだ。
後悔、とか言うから……。
もっと大変な事、されるかと、思った。

……例えば、キス、とか……、

 ────── って何考えてんの、俺……っ?!

まさかの自分の発想にビックリして、慌てて頭の上にある(であろう)スケベな思想をパタパタ消した。
俺がひとりであわあわしてる間に、俺の携帯に通知音が鳴った。

「……士郎、ありがとう。俺の連絡先も今、転送したから……登録、よろしく頼む。」
「……登録、しました。ありがとう、ございます」

よし。と満足そうに笑った先輩は、俺の耳元にそっとやってきて、総兄に聞こえないようにか、小さな声を落とした。

「……夜、連絡する。……できれば、毎日、声を聞けると、嬉しい。」
「へっ?!」

また、後で。と言って、靴を翻す。
先輩と総兄の姿が見えなくなるまで、俺は、先輩の声と吐息が残った左耳をずっと押さえていた。

心臓が、バクバク、音を立ててる。

「…………距離感……バグってる、よね」

俺が、俺じゃないみたいで。
ふわふわ、ふわふわ、変な感じだ。
先輩の低く響く声のせいか、まだ左耳が、じわじわする。

この変な感覚は、初めての事ばっかりでビックリしたから、だと思うことにした。
先輩も、自分の難病を緩和してくれる人間が初めて現れて、どうしたらいいか分からないだけだろう。


だって、俺は、Ωじゃない。ただの、βだ。

俺は彼の 運命の番 では、ないのだから。

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