<完結> βの俺が運命の番に適うわけがない

燈坂 もと

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< 本編 >

64.生まれ育ったお家でキミと(10)

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圭介さんのお兄さんとお姉さんが、自己紹介したい、と俺の元へ近づいて来てくれた。

「改めて……俺は、黒木 圭伍くろき けいごだ。よろしく。俺と莉子は、第二性はβだから……士郎くんに少しは寄り添えると思ってる。圭介や父さん、母さんにしんどくなったら、俺たちに相談してくれ。」

圭伍さんは、見た目はお義母さん、性格はお父さんという感じだ。
透明感のある、色素の薄い髪に、青い瞳。
華奢な感じではなく、体格はしっかりしてて、男らしい。
圭介さんと兄弟、と言われてもピンと来ない感じがする。
快活なお兄さんに向かって、圭介さんはまたもや手刀を繰り出した。痛そう。

「兄さん、士郎に距離が近すぎる。この距離感、は保って欲しい。……士郎?兄さんの言う事は気にしなくていい。俺は君の負担にならないように、頑張るつもりだ。」

えっ、やだ。って思わず気持ちが口から出て、圭介さんはしょんぼりしてしまった。
あっ、違うの、そうじゃなくて……!

「あの、あのね……?俺は、圭介さんに、頑張って一緒にいて欲しい訳じゃなくて。自然体で……いつもの圭介さんで俺といてほしいんだけど……だめ、かな?」
「……うっ!、そ、そうか……!……では。自然体で、いる。その上で、君の負担にならないようにしよう……士郎がかわいすぎる……しんどい……」
「……士郎くんが上手く躱してくれてるから済んでるけど……もう既に負担になってない?コレ」

そんな俺たちのやりとりを見て、くすくす笑っているお姉さんが、私もご挨拶したいな、と俺の前に来てくれた。

「ふふ。圭ちゃんがこんなにメロメロになるなんて……士郎くん、すごい。……黒木 莉子くろき りこ、です。兄さんとは3つ、圭ちゃんとは2つ年が離れてるよ。圭ちゃんは……他人に……ううん、他人だけじゃなくて家族にも、自分の事も。興味が持てない子だから……すごく心配してたんだ。士郎くんが、圭ちゃんの心を叩き起こしてくれて、ほんとに感謝してる。ありがと。」
「い、いえ!俺……俺の方こそ……!圭介さんが俺の事……その。めっちゃ……あ、愛、して……くれて……嬉しい、です。」

喋ってたら恥ずかしくなって来て、だんだん顔に熱が集中してきた……あっつ。
シャラシャラ音が近付いてきて、お義母さんが来たことに気付いて、振り返る。

「……士郎?……婚約届、署名した、からね?……ここ。ボクの名前と……圭史の名前、書いたよ。」
「あっ!ありがとう、ございます……!」
「うん。こちらこそ。これから、よろしく。……士郎、かわいいね。こっち、おいで?」

お義母さんに手招きされて、誘われる様な気分だ。
言われるがまま、お母さんの近くに移動すると、ギュ、と抱きしめられた。

「ちょ……っ!莉来……ッ」
「母さん……!また……!」
「圭史、圭介。この家に嫁ぐ士郎に、大事な話を今からするから。静かにしてて。」

お義母さんは、2人に注意した後、俺を見つめて口を開いた。

「……黒木家は、この国の4大財閥のひとつで。圭伍は勿論だけど、学生である莉子も……圭介も、仕事を任されて動いている。最終的には、3人の中でも圭介が1番仕事量が多くなる予定。だから……士郎にも、負担がかかると思う。士郎の仕事は、ボクがフォローしていく事になると思うから……一緒に、頑張ってほしい。……いきなり、こんなお願いして、ごめんね?でも、知っててほしかったから……ボクがついてるから……安心して、欲しい事」

優しく、穏やかな口調のお義母さんの言葉は……暖かくて。
胸がじんわりと、した。

「……心、強いです。俺、迷惑、たくさんかけちゃうかも知れないけど……よろしくお願いします。色々、教えてください」
「ふふ。うん。任せて。……あと、ね。士郎に渡したいものがある。コレ ──────── 」



********



顔合わせも一段落して。
お義父さんが、宝石商を家に呼んでくれた。
婚約専用の指輪が、婚約届提出には必要らしい。

婚約届と婚約専用の婚約指輪を担当窓口に提出し、お互いの遺伝子情報を指輪にインプットさせる。
インプットさせていない遺伝子情報が体内に交わると指輪が反応して、指を締め付け、最寄りの行政官庁に通報が届き、職員がすぐ出動して聞き取り調査がその場で始まるのだ。

婚約指輪は婚姻か離婚を届出して受理されないと外れない仕組みだ。
政府からの依頼で、どこかの生物学者の人と、有名な数学者の人が共同作業で数十年前に出来上がった代物。
こんな物まで発明してしまうなんて、人間の叡智ってすごい。

「士郎、どれがいい?……好きなの、選んで?」
「け、けど……!高いんじゃ……!値段……表記されてない……!」
「大丈夫。俺も仕事をしてて、資産はそこそこある。気にしないで選んで欲しい。士郎が選んだ指輪を……俺もつけたいから。……お願い。」

そう言われて、瞬間。
目に飛び込んできた指輪に、惹かれた。

「……圭介さん……これ、に、したい。」

シルバーのシンプルな細身の指輪。
真ん中に青と黒のラインが入っていて……まるで。

「……この指輪……圭介さんの瞳の色と同じ、だ。俺、これがいい。……いい、かな」
「……ッ!……本当に、君は……どこまで俺を好きにさせたら気が済むんだ……?……沼、だな。底が知れない……っ。……嬉しいよ。この指輪を選んでくれて……主人。これと同じタイプで、ラインが茶色のものはあるかな?」
「おお!お目が高い!ラインが茶色のものは今日、入荷したばかりでしてね。こちらに。」

出てきた指輪はいくつかあって。
俺が選んだ同じタイプの指輪で、真ん中が、茶色の色味のもの。それぞれに濃さが違った。
圭介さんは、薄めの茶色のラインの指輪を手に取った。

「……士郎の瞳と、同じ……この指輪が、いい。」
「っ!……嬉しい。圭介さん、ありがとう」


その後、遺伝子情報をインプットさせ、財閥専属部署の行政官庁がやって来て、婚約届と指輪の精査があり。

届出が、完了した。


圭介さんが俺の右手の薬指に、俺が圭介さんの右手の薬指に……お互いに指輪を嵌める。


「……士郎。これから、よろしく。」
「こちらこそ!……よろしく、お願い、します。」



俺は圭介さんの、婚約者になった。





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