<完結> βの俺が運命の番に適うわけがない

燈坂 もと

文字の大きさ
91 / 107
< 本編 >

91.保健室できみと

しおりを挟む




キツく、抱きしめられて。
咲耶の心臓の音が、大きく、早く、俺に響く。
それだけで、咲耶の言葉が嘘ではない、とハッキリわかった。

「……っ、さく、や」

このままじゃ、流されて、圭介さんを裏切ってしまいそうで……
力の入らない腕を必死に咲耶の胸元に移動させて弱々しくも抵抗する。

「……士郎、聞いて、くれ。……士郎が、半年前に家に泊めた男は……俺、だ」
「……え、」
「俺は……その時、色々あって、全国を旅していて……士郎には、偶々……ぶつかったんだ。でも、その出逢いが……俺が学院に、戻るきっかけをくれた。……俺は、君が慧明に入学する前から……君の事が、気になっていた……その時はそれが恋だって、気づいてなかった、けど。」

咲耶は俺の背中を片手で支えながら、もう片方の手を俺の頬に添えて、青みがかった黒色の瞳を揺らしながら……俺に真剣な表情を向けた。

咲耶から、目が……離せない。

「俺は……、士郎しか、いらない……、士郎と、番に……なりたい……俺は、君が……好きだ。」

咲耶から放たれた言葉は俺の心臓を、ノックした。
頸動脈が、激しく……脈を打って……息が、苦しい。

俺には、圭介さん、だけなのに。
既に彼を……裏切って、しまっている、気がして。


俺なんかが、婚約者で……ほんとにいいのだろうか。


──────── ガンッ!!!!!
ドアの方から激しく開く音が聞こえたけど、力が入らない俺は振り向くことが出来ない。
俺を支える咲耶の手の力が、強まった。

シャッ、と……俺たちのいるベッドのカーテンが開く音が聞こえて……飛び込んできたのは……

俺の、愛しい人の、声。

「……し、ろ……う……!……っ、全体的に、力が入っていない……?フェロモンに、当てられてる……!……鷲宮、士郎から……ゆっくり手を離せ……!」
「……意外、だな……俺を先にぶっ飛ばしにくるかと、思っていた」
「……ッ、これ以上、口を開いてくれるな……!フェロモンに当てられてるこの子に、なるべく、負担を掛けたくないだけだ……!本当なら、お前を殺してやりたいくらいだ……ッ、しかし、それよりも、早く……士郎を、解放してやりたい……!そして、お前は……士郎の……大事な友達、だ……今は傷付ける気は、ない。」
「……っ、」

咲耶は、俺の身体をゆっくりベッドに下ろすと、やっと俺から離れてくれて……俺を覗き込んだ圭介さんの目が優しくて。……張り詰めていたモノが一気に、解けた。

「……っ、け、すけ、さ……!ごめ、ごめん、なさい……!おれ、うらぎっ、ちゃ……!」

胸が裂けるように痛い。涙が溢れて、止まらなかった。

すると、彼は……俺を、優しく、包み込むように。
俺をゆっくりと抱きしめた。
苦しかった息が、和らいだ。

「……士郎、すまなかった……!もっと、早く……気付いていれば……、君がこんなに傷つく事も……なかったのに……!これは、裏切りでは、ない。完全な、事故だ。士郎は……何も……悪くない……!頼む、これからも……俺の傍に、いて、ほしい……!」

彼に抱きしめられて、じわじわと暖かさが降りてくる。
少しずつ、痺れがなくなってきて……俺は、自分の意思で、圭介さんに腕を……回した。

「……っ、……すごく、早く来てくれて……吃驚、した。指輪も、反応……しなかったし、助けて、なんて……叫ぶ事も、出来なかった、のに」
「……士郎のピンチくらい、すぐ気付く。君は、俺の ──────── 運命の番、だからな。」

俺はβだから、そんな事ありえないよ、と言いながら……嬉しくなって微笑んだ。
そんな俺を、彼が優しく抱き上げる。

俺はまだ、完全に力が入っていなくて……くたっとしてる状態で、彼に抱き寄せられた。
腕だけは、力を込めると上げれたので、彼の首元に腕を絡める。

大好きな、いつもの香り。
同じだと、思ったけど……咲耶とは少し違う匂いがして。

俺はずっと嗅いでいたくて、彼の首元に身を委ねた。


「……佐伯。今日は俺たちは、このまま早退する。俺が、士郎の身体の自由を取り戻す。もしかしたら、明日から、1週間……欠席になるかも知れん。その時は、生徒会の事、よろしく……頼む。教授も、すまない。」
「……大丈夫。こっちの事は、任せて。士郎を……よろしく頼む。」
「構わないよ。黒木くん、時任くん……ゆっくり、休んで。……黒木くん?カラー、これで……よかった、かな?」
「!すまない……!用意して、くれていたのか。助かる。ありがとう、ございます。」
「……ははっ。黒木くんの敬語は新鮮でいいね!……ちなみに、俺とお揃いにしたから。時任くんにそう、伝えておいて?」
「……?!な……?!、……んんっ。……承知した。士郎が覚醒したら、伝える。……行こう、士郎。」
「……ん、圭介さんと……行く……圭介さん……大好き……」
「……ッ、煽りの天才め……!」


何だかみんなの声が色々聞こえたけど、しっかり頭に入ってこなくて、唯一聞き取れた圭介さんの言葉にだけ反応した。

気持ちよくて…ふわふわして。

このままでいたい、と思った。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

αが離してくれない

雪兎
BL
運命の番じゃないのに、αの彼は僕を離さない――。 Ωとして生まれた僕は、発情期を抑える薬を使いながら、普通の生活を目指していた。 でもある日、隣の席の無口なαが、僕の香りに気づいてしまって……。 これは、番じゃないふたりの、近すぎる距離で始まる、運命から少しはずれた恋の話。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり
BL
好きでも嫌いでもない幼馴染みの鉄堅(てっけん)は、葉月(はづき)と結婚してツガイになりたいらしい。しかし、どうしても鉄堅のねばつくような想いを受け入れられない葉月は、しつこく求愛してくる鉄堅から逃げる事にした。オメガバース執着です。 ◆完結済みです。いつもながら読んで下さった皆様に感謝です。 ◆表紙絵を、花々緒さんが描いて下さいました(*^^*)。葉月を常に守りたい一途な鉄堅と、ひたすら逃げたい意地っぱりな葉月。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

処理中です...