<完結>同僚に叶わない恋をしている俺が、完璧上司に堕とされる話

燈坂 もと

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番外編2.柴咲課長の場合(4)

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「おつかれ。偶然、だな?」
「……げ。……部長、と……課長……おつかれっす。」

あからさまに嫌そうな声を上げた立川は、どうやら野洲原への気持ちを自覚しているようだった。
距離が、恐ろしく……近い。
個室の、4人掛けの席。本来2人ならば対面で食事をしそうなものだが、横並びで。

横で話を聞いてほしい、と泣いた演技をかましたであろう立川を今日はしょうがないな、と優しい野洲原が許可を出し、横に座ったという流れだろう。

しかし……詰め過ぎだ。

掘りごたつなのもあるが、距離が近すぎるぞ立川。
俺たちがふたりを見た時、立川は野洲原の肩に頭を乗せ、それはそれは幸せそうな顔をしていた。
彼女に振られて、凹んでいる奴の顔では、決してない。

その現場を目撃した東雲の空気が瞬時に凍って、俺は息をのんだ。此奴の空気の凍り方は……肝が冷える。

「俺たちも、、もつ鍋食べよう、って昨日話しててな。最近評判の……ココ、昨日から予約していたんだ。トウジから連絡をもらった時は同じ店で吃驚したよ。でも予約していて、席も離れているだろうから、気を遣わせるのも悪いし、言ってなかったんだ。連絡、せずで……ごめんな?トウジ」
「そんな、こと」
「へえ……そ、う……なん、すか」

ペラペラとよく口の回る。面白過ぎるだろう。
予約は確かにした。したが……野洲原から報告を受けての会議室でだった。

「お世話になっております。その節は、ええ。またよろしくお願いいたします。次回は鷲宮コンツェルンの幹部の方と会食に利用させていただきます。……え?ああ、いえ、そちらのそういった雰囲気をお好みの幹部の方もいらっしゃるので。はい。よろしくお願いいたします。……ところで、今夜の予約に以前ご挨拶をさせていただいた野洲原 トウジ……もしくは、立川 隼という名前で予約は入っておりますか?ええ。……ああ、そうですか。よかったです。はい。そこに急遽2名追加でお願いしたいのですが。ええ。その2人には追加になったことを伏せていただきたい。はい。サプライズなんです。仲が良くてね。可愛い部下を吃驚させたくて」

と。大手企業との会食をこんな居酒屋で?という意味不明ででも東雲が言うなら、本当だろうと思わせる恐ろしい口振りで、するすると予約をバレないように変更したのだ。ああ恐ろしい。

「……野洲原と立川……ふたりだけで、食事しているのか?……へー。そう。ふたりだけで、こんな密室で……ね。」
「ぶ、部長……?!顔、何か怖……!な、何にもないから……!立川のヤケ酒に、付き合ってただけで……!」
「うん。そうだよな。知ってるよ、トウジ。今日もそういう風に聞いていた。別に、何も勘繰っては、いないぞ?……ああ、それから。今は……プライベートだから、名前で……呼んで?」
「……っ!……せ、征吾、さん。……俺……何も、心配、されるような事……して、ない」
、な。……今夜は一緒にご飯を食べれないと思ってたから、会えて嬉しい。折角だから、一緒、して……いい?」
「いや、ちょ、それは……!」
「実はな……予約してた席が、ダブルブッキングで……座れなくなってしまって。相席するのにここを通されたんだ。……柴咲、立川の方へ。トウジ……?……俺の横に……おいで?」
「……う、ん……、いく」


はい。俺の同期……完璧すぎる立ち回り。流石です。

そこからは、東雲の独壇場だった。
会話を上手く回し、今日本当はしたかった仕事の打ち合わせ(まあ明日でいいかと言っていたモノ)のその資料を持ち出して、打ち合わせをそこで終わらせ。
食事中も、可愛い恋人にスパダリ感をコレでもかというくらいに見せつけ、恋人に改めて心を奪われてポーッとしている野洲原を、東雲は颯爽と連れて帰ったのだった。

野洲原は帰ってから、お仕置きという名の甘い夜を東雲に浴びせられるだろう。今日の事がキッカケで、野洲原がまた一段と東雲に夢中になるのは火を見るより明らかだ。

俺の予想はやはり大当たりだった。
そこでの立川の出番は、まるでなかった。




「……柴咲課長……俺……初恋、なんすよ」
「知ってる。野洲原だろ?お前、気付くの遅すぎたな」

俺の同期と、目の前で不貞腐れながら本当のヤケ酒を煽っている俺が育てた後輩の同期が店を後にしてから、俺たちふたりは立川が入社してから初めて、ふたりきりで店をバーの個室に変更して飲み直している。

このバーは、いちげんさんお断りの店で俺が通い慣れた所で。本当なら誰にも教えたくない場所だが、俺の完璧すぎる同期に、初恋に気付いた瞬間にコテンパンに打ちのめされた後輩が可哀想すぎて放っておけず、連れてきてしまった。

「だって……!同性に……しかも、仲良い奴に、まさか、恋愛的な意味合いで好き、なんて感情が湧くなんて……想像出来なかったんすもん……!」

可哀想に。立川自体は見目もいいし、本来なら野洲原は立川を好きだったから、タイミングが噛み合えば上手く行っていた筈だ。
ボタンの掛け違えに気付かないまま進んでしまっていたのが此奴の敗因だろう。

そして……相手が、悪すぎた。東雲には、誰も勝てない。

俺がエルダーとして、入社時から育てていた後輩は、とても綺麗な顔をしている。
正直に言うと、俺の好みの顔立ちだ。
慰めてやりたいが……立川はずっとノンケだった子だ。

俺が手を出しても問題ないのであれば……慰めてやりたいと、思えるくらいにはこの子に情がある。

あ、因みに俺の性対象は男だ。
生まれながらのこの顔立ちのせいで、東雲程ではないが、女性に対して嫌な記憶しかなく、女性には一切俺の息子は反応しない。
ネコもタチも経験済みだから、どちらにもイケる。
目の前の凹んで、可愛さが爆発しているこの後輩を、このまま慰めにかかっても問題ないのであれば……ホテルに連れて行きたいが、さて。

「……立川。……お前、野洲原が初恋と言っていたが……女とは何度かセックスしてるよな?……男とは、したこと、ないのか?」
「……な、んすか、急に……!恥ずいっすよ課長……聞こえたら……!」
「聞こえないよ。離れの個室で、人避けしているから気にするな。……で?男で勃つの?勃たないの?」
「わ、かん、ないっす……男とヤった事、ないし……でも、ヤスでしか、俺……イったこと……ないから……」
「……?女としか、ヤってないだろう……?何で、野洲原の名前が出てくるんだ?」
「……彼女とは……勃っても、全然イけなくて。最後イきたい時は……、ヤス、の顔……思い浮かべてた、から」
「お前……そんな事してて、自分の気持ちに今日気付いたのか……?阿呆だな……」
「っ。言われなくても……!そんなの、俺が、1番……自覚、してます……」

しおしおしている後輩が無性に可愛い。
好みの顔ってのもあるが……教育係としての情が多分に多大だ。
俺は面と向かって座っていた席から立川の横へ移動する。
俺の行動に立川はキョトンとしていた。まあ、そうだろうな。これから俺がしようとしている事なんて、此奴は想像出来ないだろう。

なんせ、初恋を拗らせまくっていたのだから。

「……立川、キス、していいか?」
「………………はい?……え。柴咲課長……なんですって?」
「キス、だよ。刺激があれば、失恋の傷も多少は癒えると思ってな。うーん。まあ。そうだな。……確認するより、してみるか。俺が……一度、立川と触れ合ってみたかったんだ。気持ち悪かったら、抵抗して……失礼、するよ。」
「……へ、何、言って…………ん……っ?!」

立川の口唇に、俺の口唇を落とした。
何度も何度も、角度を変えて立川の好みのキスを探る。
最初は混乱して少し嫌がっていた立川も、何度かキスを繰り返す内に気持ちが良くなってきたのか、すんなり俺に身を委ねてくれた。
抵抗したら辞めるとか、正直嘘八百だ。俺のキスを嫌がる奴なんて今までいない。俺は、勝算のないことはしない質だ。

ちゅぱちゅぱ、個室に俺たちの口唇が重なる卑猥な水音が響く。久し振りの他人との接触にくらくらした。
立川の綺麗な顔が俺との接触でいやらしく歪む様に気持ちが昂る。気持ちいい。最高すぎる。

「……っ、は、……立、川……キス、上手いじゃないか……」
「っ、課長、こそ……、……キス……気持ち、いい、っす。……俺……課長と、……もうちょっと、したい、かも」
「……ふふ。俺も。……舌、入れたい。口……開けて……?」

俺のお願いに素直に聞いてくれた立川の口が少し開いて、赤い舌が見えて。そこに吸い寄せられる様に舌を伸ばして絡め取った。
立川が俺の首に腕を回して。俺も片手で立川の後頭部を固定して、もう片方は立川の背中に腕を回す。
密着が堪らなく快感を煽った。

「……ん、ぁ……ん、……きもち、ぃ、……やば……ぁ……ッ、」
「……ぁ……ん、立川……、……っ。」
「……かちょ、……ん、」

くちゅくちゅ、お互いに舌を絡めて、唾液の行き来を楽しむ。立川の反応を確認するために、立川の中心部に手をやると、少し硬くなってきているのを感じた。
俺が触れた瞬間、嫌がらずキスの具合に激しさが増して、口角が上がる。

これくらい反応するって事は……多分、イけるな。

「……っ、……は、……立川……?ホテル、行こうか……慰めて、やるよ」
「……お、れ……ケツ……死にます、かね」
「……ははっ。いや、俺が下になろう。……存分に……気持ち良くしてやる。……おいで」

この一晩で……立川が野洲原を全部忘れるのは難しいと思う。でも、此奴が前を向いていける様、多少の取っ掛かりになれば。

その為だけに、俺の身体を利用すればいい。

単に、最近俺が忙しくて、他人との身体の接触がなかったから……俺の欲望を捌かすためでもあったのだが。


この、後輩との一夜だけのつもりの接触が……俺の未来も変えてしまう事になるとは。

この時の俺には、予期できなかった。


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