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11.元魔王が今世、人間に転生した理由 ⁂
しおりを挟む魔力酔い。
それは、魔力に触れた事のない赤子や幼児が、初めて魔力に触れた事によって引き起こされる症状だ。
放っておけば、熱に浮かされて夢の中を彷徨い、最悪死に至る事も少なくない。
魔力酔いを治す方法は、ふたつ。
ひとつは薬局で手に入る酔い醒ましを飲む事。
その方法が一番安全で、身体に負担も少ない。
もうひとつは……当たってしまった魔力と同種の魔力の持ち主に魔力を吸ってもらう。
吸う方法は、魔力の高い者が、魔力酔いを起こした者に吸引の陣を敷き、吸収する方法。
その陣を敷けなければ、直接接触するしか方法がない。
当時の俺であれば、陣を敷いて魔力を吸収できる術を持ち合わせていたが……魔咲 王海は、今日やっとココに転移できた……ただの日本人。魔法をまだ習得していない。
俺の属性を考えれば、吸収する事は可能だ。しかし、それをするには……身体接触、いわゆる口内からの吸引か、それが足りなければ陰部からの吸引が必要だ。
身体接触に関しては、今からリオに許しを請うとして……問題は、魔力吸引後の魔力注入の作業だ。
吸引すると、空洞がある状態になる。その箇所に、吸引した魔力量と同量の魔力を流す作業が必要なのだ。
そこへ魔力を流さず、放置をすると空いた空間に魔素が充満して精神を蝕んでしまう。
流す魔力は、魔力酔いを引き起こした属性と対になる魔力でないと浄化されない。
その量は、相当な量だろうなと不安に思う。
今の俺では、流し込む相当量が確実に少ない。
転移をした際に記憶を失うなど、魔力量がリオ以上にあった過去の俺では考えられない。
この子に早く逢いたくて。
必要最小限で、転移呪文を唱えてしまった事が今になって仇となるとは。
魔力酔いを起こした魔力と対の属性の魔力持ちで、魔力量を十二分に持ち合わせている人物。
そうなると、頼みたくないが……頼れるのは……ひとりしか、いない。
モルドレッド卿に、その者への伝達を依頼をし、了承を得た俺はリオの部屋へ、リオを横抱きにしたまま足を踏み入れる。
一度だけ来た事のあるこの部屋は、当時と何も変わっていなくて。
このベッドで交わったあの日が、昨日の事のようだ。
あの時も、リオは闇の魔力で魔力酔いを引き起こしていた。
まあ……そもそもが、俺が独占欲の塊だったが故に、俺がリオに存在しない筈の闇の魔力を流してしまった事が原因なのだが。
その時は、俺の中に闇と光の魔力が存在していたため、闇の魔力を少し抜いて、そこへ光の魔力を流したのだ。
その当時の俺の魔力量と魔術の能力は、リオをも凌いでいたため(まあ魔王だから当然なのだが)、闇の魔力をリオの体内に少し残す作業ですら朝飯前だった。
しかし……今の俺には、闇の魔力しか存在しない。
勇者と呼ばれていた人間に、マスターソードによって心臓を一突きされてしまったのだ。
その剣で心臓を射抜かれると魔法が発動して、復活はおろか、魂の輪廻は叶わない。
普段の俺なら、絶対に躱せる筈の聖女の魔法を浴びてしまったのが運の尽きだった。
あの時、リオが俺のところへ向かっているという事を魔力の動きで察知してしまって。
リオへの愛しさと興奮で、正気ではいられなかった所を、聖女に隙をつかれてしまったという間抜けなオチなのだ。
それ程、俺の中の全てがリオで埋め尽くされていたのだ。
史上最強と恐れられていた魔王が、ひとりの魔導士に現を抜かした結果がコレだ。
しかし、この事は決して、リオに言うつもりはない。
リオにはこれ以上、この事件の事で傷付いて欲しくないのだから。
俺が最期に見たリオは、絶望の淵にいて。
俺は……この子に、あんな顔をさせたかった訳じゃない。
笑って、泣いて、怒って。俺に色んな感情を教えてくれたこの子にはずっと笑っていてほしかった。
それでも。
俺としては『勇者のマスターソードで死んだ』のではなく、『愛する者の魔術で死んだ』事が嬉しくて。
最期まで、俺の心を掴んで離さないリオに恐ろしいほどの愛しさがこみ上げた。
リオに、どうしても。
もう一度……逢いたかった。
俺は消失する間際、最後の力を振り絞って、魂を錬成する陣を編んだ。
禁忌の呪文だ。
しかし、もう俺に残されたのは精神の一部。禁忌などとは言ってはいられない。
陣を編む時、光の属性が邪魔をした。
ふたつの属性があると魂の錬成の陣は、綺麗に編み切れない。
光の属性も俺の一部だ。だから光の属性だけ切り離して。
闇の属性と光の属性とを別々に編み込んだ。
俺の光の属性が今、どこでどんな状態かは分からない。
魔王の記憶は闇の属性にのみ引き継がせたのだから。
リオが20年前に起こした魔力暴走の起因は、間違いなく俺だろう。
俺が20年前に日本人として生まれた事が、リオの中にある闇の魔力の暴発に繋がっている。
リオの中にある闇の魔力は、俺のモノだからだ。
転生に必要な魔力量をリオから搾取した結果なのだろう。
俺の術も、まだまだ稚拙だったという事だ。
日本に生まれ、そして、200回目の満月の夜。
転移できるための魔力が備わったと身体に満ちた感覚に震えた。
俺は魂を錬成した際に転移できる呪文を魂に刻み込んでいたその言葉を、口から放ち、視界が微睡んだ。
ずっと、この時を……待っていた。
─────── やっと、君に逢える。
***
「リオ……?話が、ある。」
ぼぅっとする意識の中、オウミの声が優しく耳元で聞こえる。
僕……何が、どうなったんだっけ……?
「オウミ……?僕、何か、変……ふわふわ、して」
「今、魔力酔いを起こしてる。暴走した闇の魔力を今から吸引したい。しかし、俺の今の身体は吸引の陣の編み込みが出来ない。……だから、リオ。今から君の口唇と、陰部に触れる許可を、俺にくれないか。君の命に係わる……一刻を争うんだ、頼む。」
オウミの必死な表情に本当に危ないんだろうなと理解した僕は「応急処置、してくれるんだね、ありがとう。構わないよ。」と返事をした。
オウミはその僕の返事に安心したのか息を吐いて、上半身を纏っていた布を乱暴に脱いだ。
露わになった筋肉質な体躯に魔王を思い出してドキリとする。
こんな緊急事態なのに、僕ってばホントにどうかしてる。
僕の身体は既に布は纏っていない。吸引作業と注入作業は服を着てると行えないから、しょうがないのは百も承知だ。
そして、オウミはベッドに横になっている僕に跨って……優しく、耳元で囁いた。
「……この身体で吸引作業をしたことがないが、前の感覚ははっきり残っているから。確実に吸引できる筈だ。今から……気持ちいい事しかしないと誓おう。……俺に、身を委ねて。」
「……うん……、お願い、します……ん、ぁ。」
オウミの口唇が、僕の口唇に落とされたと同時に、舌が滑り込んできて。僕の口内をオウミの舌が絡めとる。
くちゅくちゅと淫らな音が部屋中に響いて、医療行為だとはわかりつつも、その音はいやらしさに拍車を掛けて。
僕の心臓の高鳴りが増した。
もっとくっつきたい、と蕩ける頭で、ゆっくりとオウミの首元に腕を回す。
オウミの手が、僕の後頭部と腰に回り、触れ合った肌に熱が帯びてゾクゾクする。
少しずつ、魔力が抜けていく感覚に闇の魔力が吸引されているのを感じた。
口内を優しく這う彼の舌は、100年前、僕が何度も味わったあの動きをしていて。
僕の気持ちいいと感じる場所を、この子は知っている。
異世界人の子。でも、この子はきっと……ボクが知っている、オウミだ。
有り得ない現実に、嬉しくて鼻がツンとした。
マスターソードの威力は誰にも覆せないモノだ。
その剣は間違いなく、彼の心臓に刺さっていた。
でも、今、目の前に……魔王がいて。
100年前と変わらない口付けを僕にしてくれている。
信じられない現実に、僕の瞳から涙が伝った。
「……ん、……リオ……?何故、泣いている……?嫌、だったか……?」
「……っ。ちがう……その、逆……嬉しくて、……っ。……逢いたかった……オウミ……ん!」
「……俺もだ……リオ……ん、ずっと、逢いたかった……!」
何度も何度も口付けを交わして。
涙が止まらない僕の目元を優しく彼の指が拭う。
きっと、僕に少しだけ戻った闇の魔力は、持ち主が現れたから。そこに帰りたくて僕に反発した。
魔力は持ち主と共にあるべきものだから。
そして、反発した魔力を、オウミは僕を抱き抱える事で無意識に、僕の中にある闇の魔力を、陣を編むことなく吸収した。
それは、魔王時代の闇の魔力だったから。
キスして分かった。今のオウミの闇の魔力は、魔王の頃と種類が違うように感じる。
だから、僕は初めての色の魔力に当てられて、魔力酔いを起こしたのだ。
今の色のオウミの魔力の陣を編むのは、相当至難の業だろう。
僕でも読み解けない、複雑なモノに感じる。
口付けを交わし続けてどれくらいが経っただろうか。
これ以上を続けられてしまうと、相手が愛しい人の生まれ変わりだと気付いてしまった僕としては、もっと淫らな行為を望んでしまいそうで。
アヤメの手前、これ以上は流石にマズいと思い、口を開いた。
「……ん、ぁ。……オウミ……?も、だい、じょうぶ。これ、以上は、もう」
「……リオ?我慢をしても碌なことがないのは、お前も知っているだろう?何に遠慮をしているか知らないが、何も遠慮する事はない。まだ、目がとろんとしている。魔力が抜けきっていない。……キスだけだと、上手く吸引出来ないのか……?こっち。……100年振りに、舐めさせて。」
「─────── ッあっ!」
僕のむっちりと膨らんだ中心部をオウミの口が根元まで咥えて、熱い舌が口内で竿をなぞりながらねっとりと這う。
100年前と変わらない愛撫に、背筋がゾクゾクした。
その後、上下に激しくピストンされて、気持ち良さが先に集約する。
竿を這った舌は頂点に到着して、先っぽを上下に弾きながら、彼の右手は僕の竿を激しく扱いた。
そして、左手は、僕の胸の尖りを弾く。
「あ、っ!オ、ゥミ……ッ!乳首、今、関係、ない……っ!んっ、だめ、や、きもちぃ……っ!」
「……いいから。俺にされるがまま、気持ちよくなれ。……100年振りなんだぞ?……俺の手で善がるお前を、今すぐ、見たい。」
「───── ッ!」
そう言われて、興奮が増した。
彼の手と口で早く達したくて、腰が勝手に揺れる。
もう、オウミと気持ちよくなる事しか、考えられなかった。
「……っあ!いく、いくいく、……きちゃ、あ……っ、───── ィ、くぅ……っ!……んッ!」
白濁した蜜が、オウミの口内を汚す。
ドクドクと出続けるソレを、彼は一滴残さず飲み込んで。
久し振りの吐精に、僕は魔力酔いとは別のふわふわした感覚を感じていた。
と、暗い部屋にぼわ、と金色の光が現れた。
魔法陣が現れ、上から下へ陣が移動する。
「……リオに了承を得ぬまま。緊急だったから、大公殿に光の魔力を持つ彼へ招集をお願いをした。……さすが、早いな。もう少しリオを楽しむ時間が欲しかったが……そうも言ってられない事態だから、しょうがないか。」
オウミの言葉に、耳を疑う。まさか、そんな。
有り得ない人物の登場に、ぼやぼやした頭のせいで余計整理が出来なくて混乱していた。
そこに現れたのは、光の魔力を持つ
レオニス国王陛下、その人だった。
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