元サレ妻バツイチのアラフォーが年下夫に溺愛されて困ってます

ねこ太郎

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第一章

新しい生活の始まり

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「いってらっしゃい、気をつけなさいよ」
晴れた日の朝9時、私は光輝を幼稚園バスに乗せた後、母が見送る中職場へと向かった。
4月に入って、だいぶ暖かくなった風を受け自転車を漕ぐ。
働き始めた自転車店には家から15分ほどで着く、途中のコンビニで珈琲を買い一服してから店に行くのが日課になっていた。
一服する、たった10分程の休憩は私のスイッチを切り替える時間だ。
外の空気に触れながら、今日の仕事目標を自分なりにたてる。
今日は晴れてて気分が良いし、パンク修理頑張ろう。
そう考えながら商店街を通り抜け店へと向かう。

「おはようございます!」
そう言いながら店に入り、まだ暗い店内の奥で準備をしている中森さんと他愛無い会話をする。
「今日は昨日から入ってる修理の台数があるから、忙しくなるよ、富山さん宜しくお願いね」
中森さんは事務と販売をメインで行なっていて、修理は出来ないので私が頼まれる。
「任せてくださいよ、今日も晴れてるからお客さん入りそうだし、なるべく早く仕上げられるよう頑張りますね」
私は任せて貰える仕事がある嬉しさを噛み締めつつ、開店作業を始めた。

自転車店の開店作業は意外と力仕事だ。
通常のレジの立ち上げから、外の軒下へ置く什器を店内から引っ張り出し、最前列に車体を40台ほど並べて置く。
自転車を2台纏めて動かすのは、簡単なようでコツがいる。
この作業も最初は全く上手くいかなかったが、2週間ほどで慣れて上手く運べるようになった。
今では、並べている車体の車輪を全て1列に揃えて等間隔に置けるようになった。
 次に掃除だ。
60畳ほどある店内を全て箒で掃く、もちろん車体の下まで全てだ。
 私は、この掃き掃除が好きだ。
朝の空気を吸いながら掃き掃除をすると、なんだか自分の心の汚れも落ちていくような気がするからだ。

そうして、開店作業が終わると私は前日から残っている車体の修理に取り掛かる。
この1ヶ月で、車体の点検、パンク修理、タイヤの交換が出来るようになった。
 店内のピット(修理などを行うスペース)は私の居場所となっていた。
 私は、この駐車場からガラス張りになっているピットスペースが好きだった。
 晴れの日も、雨の日もいつも違った顔を見せてくれる空を見ながらする修理は忙しさの中に心地よさをもたらしてくれる。

 前日から残っている修理車は6台だった。
そのうち4台はパンク修理と点検、2台がタイヤの交換だ。
私はパンク修理から取り掛かった。
 作業用の小さな椅子に座り、タイヤの表面を見る。
ガラス片が刺さっているのが見えた、パンクの原因を見つけ表面から取れるガラス片を取り除いたら、タイヤを外していく。
タイヤからチューブを取り出して水に通すと、気泡が浮いてきた。
チューブにマーカーをひき修理する。
タイヤは裂けていなければ再利用する。
私は、こんな修理車とのやり取りが楽しかった。

 1台、2台と修理を終えていくと、新たにお客さんがやってきた。
40代くらいの女性が、学校のステッカーの貼ってあるファミリー自転車を持ち込んで来た。

 「子供の自転車なんだけど、雑につかっているのかパンクしたみたいで…修理をお願いしたいんですけど」
そう言いながら私の前に車体を置く、私は修理の手を止めて置かれた自転車を見た。
 車体は、古くはないけれど随分と乗り倒してるような汚れ方をしていた。
男の子が乗っていたんだろうか?
それとも兄が使っていた物を弟にさげたのだろうか?
使い古されたような車体は、パンクというよりタイヤが削れ過ぎて破けていた。
 私は、その女性に車体の状況を伝えてタイヤの交換と一式点検をすることになった。
 女性と話すうちに、この車体は今大学生になった兄のお下がりであることがわかった。
自分の読みが当たったことで、私はまた嬉しくなった。


そうして、1日の仕事を終えて光輝のお迎えに向かう。
店から幼稚園までは自転車で25分ほど掛かる。
 迎えに着くと、光輝が保育室から駆け寄ってきた。
今日は先生に紙芝居をしてもらったとか、かけっこをしたとか嬉しそうに話してくれた。
その話を聞きながら、私は先生方に挨拶をし教室の荷物をまとめ、帰宅の準備をする。
4月とはいえ、まだ夕方は寒い。
私は、寒さを紛らわすように光輝と会話をしながら自転車を漕いだ。


 家に着くと母が悠貴を背負いながら夕飯を作っていた。
光輝は台所に目をやると
「今日は肉じゃが?幼稚園はカレーだったよ」
と、母に話しかける。
「カレーだったの?良かったねぇ、夜ご飯は肉じゃがとポテトサラダだよ」
母は振り返り、ポテトサラダを光輝に見せながら言った。
「ポテトサラダ大好き!」
光輝は飛び跳ねて喜んだ。
 私は母から悠貴を下ろすと、リビングへと連れていった。
 悠貴を床へ下ろすと、得意げな顔でテーブルの周りを歩き始めた。
私は機嫌良く歩く悠貴を横目に、光輝の幼稚園の荷物を片付けた。
光輝は台所でつまみ食いをさせてもらっているようで静かだ。

 利明に離婚を切り出した時は、こんなに平和に過ごせるとは思っていなかった。
もっと、仕事と子供たちの面倒で殺伐とした生活を送るものだと考えていたからだ。
もちろん、実家を頼っているから
他のシングルマザーの人たちと比べたら楽をさせてもらっている。
そんな事を考えながら風呂に入り、夕食を食べた。


 6月に入ると、私はだいぶ仕事に慣れてきた。
難しい修理はまだ出来ないものの、ある程度の作業は1人でやらせてもらえるようになっていた。
 そんな少し暖かく、雨も降るような季節の中、彼は大学生アルバイトとして店にやってきた。
 この時の私は、今後この彼が私に影響を与える存在になるとは思いもしていなかった。





 




 














































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