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⭐︎大人になった彼
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「みーちゃんはまだご飯食べてないよな」
「あ、……ううん。私は食べてきたから大丈夫だよ」
不自然にならないように、隣に座る朝日くんに向けてにっこりと笑顔を向けた。
支払いのことを考えて、少しでも節約したくて食べてきたふりをした。
こんなことで嘘をつくなんて情けないけれど、家に帰ってあり合わせのものを作って食べれば十分。今日は朝日くんに奢るために来たのだから、彼が満足してくれればそれでいい。
「じゃあ、俺は仕事終わりで腹減ってるから頼んでいいかな」
「はい、もちろん」
彼は右手を軽く上げ、入口ドアに控えていたウェイターを呼ぶと、「よろしく」と言って注文を済ませた。
なんだか凄く慣れたやりとり。
メニュー表など見なくても何があるのかすべて覚えていそうで、常連であるかのように身についた態度がより私の緊張感を高めた。
「あの、ところで朝日くん。早速なんだけどスーツのこと……」
「あぁ、あれは本当に大丈夫だから何もしなくていいよ」
言い終わる前に言葉を遮られ、少し肩を上げて首を振った朝日くん。まるで外国人のジェスチャーのような仕草をする。
「でもやっぱり弁償させてほしい」
「みーちゃんが心配しなくてもいいよ。同じようなもの幾つも持ってるから、一着くらいどうってことない」
「そういうわけにはいかないよ」
あの日と同じように、何度申し出ても断られてしまう。
朝日くんは気にするなと言うけれど、やっぱりそのままというわけにはいかない。
「その分、今日はみーちゃんが奢ってくれるんだろ?」
「それはそうだけど」
奢るとは言ったけれど、本当にそれでスーツ代と引き換えになる?
とてもありがたい申し出だけど、お茶や食事代だけで帳消しになるとは思えない。
朝日くんは長い脚を組んで、豪華なソファの肘掛けに肘をついた姿勢で口に手を当てている。
妖艶な笑みを浮かべて私を見るその仕草がやけに色っぽくて、小学生時代の朝日くんからは想像が出来ないほど、色気に溢れていることに戸惑う。
あの頃はお互いにふざけては屈託なく笑い合い、一番仲の良い楽しい男の子というイメージだったのに、今の成熟した色香漂う男性に変身していることに頭が追いつかない。
「何年ぶりだろうね、こうやってみーちゃんと会うの」
唐突に話題を変えられ困惑しながら考えた。小学校五年生から二十八歳のいま、計算をするととても長い。
「十七年ぶり……かな?」
「そんなに経つか」
「そうだね」
私はなぜか朝日くんを直視できず、恥ずかしくて窓の外を眺めながらコクンと頷いた。
朝日くんはゆったりした姿勢で私を直視している。その視線が窓越しに見えて居たたまれず黙ってしまった。
「みーちゃんが引っ越したあと辛かったな。俺にとってみーちゃんは特別だったから、別れの言葉も言えなくて精神的に参ってたのを今でも思い出すよ」
「あ……」
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※挿絵など画像にはAiを使用しています。