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⭐︎大人になった彼
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「そんな重要なこと、朝日くんの言葉一つじゃ決められないよ」
身を乗り出してすぐさま抗議したけれど、座っているだけなのにやけに絵になるモデル級のイケメンが、可愛く首を傾げている。
「どうして?」
「どうしてって、退職する気もないし、まだ転職するつもりなんてないもの」
その目には絶対の自信があるのだと言わんばかり。むしろ私が断っているほうが意味が分からないといった顔つきをしている。
そんなに堂々とされても、つい先日偶然再会した友人に自分の人生は預けられない。
私は混乱するこのやりとりに喉の渇きを覚え、またワインを一気に飲み干した。
「無理だよ」
「大丈夫。美詞の不利になるようなことは絶対にないから安心して」
「申し訳ないけど、わかりましたって即決できるような無責任な仕事をしているわけじゃないから」
「俺も、無責任に仕事を紹介してるわけじゃない」
突っぱねるように言ったつもりなのに、まったく動じないどころか薄っすら微笑んでさえいる。
どんなに押してもビクともしない壁のようで、ぐぬぬ……と言葉にならない声が出た。
昔はもっと素直で可愛げがあって天使みたいな男の子だったのに、いつのまにこんなに頑固な大人になったのだろう。
それとも突然何も言わず消えた友達に、過去の仕返しをしようとしてる?
折れる気配がなさそうな様子を見て、小さくため息を吐いた。
「転職するにしても、もう少し待ってくれないかな」
「……わかった。どのくらい待てばいい?」
エメラルドグリーンの綺麗な目を細め、ニコニコと不敵な笑みを浮かべて私の返答を待っている。
「せめて半年は……」
あと半年もすれば新学期に変わる。新任の先生が入ってくる可能性もあるし、そのタイミングで転職するのが最善の策だろう。だからそう提案したのに……
「一週間」
「い、一週間!? 無理だってば。それはさすがに受け入れられない。期間が短すぎるよ」
「わかった。じゃあ俺が直接美詞の職場と交渉する」
「えぇ!?」
待って、待って!
いくらなんでも強引すぎて、朝日くんの主張がどんどんエスカレートしてきているのを止められない。
どうしてそこまでして私を引き抜こうとするのか。直接私の仕事を見たこともないし、私の実力も知らないのに顔見知りだからって適当すぎないだろうか。
それにこれだけ急いで雇う理由に、何か裏があるようで怪しく思ってしまう。
「それならせめてどんな仕事をするのか教えて」
「それはまだ教えられないな」
彼はしたり顔をして、悠々とワインを傾けている。
「どうしてっ」
「断られたら困るから。このまま悠長に待ってても、美詞は何か理由をつけて断ろうとするだろ」
うっ……、時間を置いて断ろうと思ってたのに、見透かされていた。
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※挿絵など画像にはAiを使用しています。