極上御曹司の純愛〜幼馴染に再会したら身も心も囲い込まれました〜

吉生伊織

文字の大きさ
33 / 36
⭐︎トラウマの代償

7


 ロビーを歩くと、ホテルの従業員たちが朝日くんに向けて頭を下げている。

 彼は「ご苦労様」と声をかけながら通り過ぎたけれど、本当に朝日くんはこのホテルのオーナーだったんだ、とあらためて驚く。

 私たちは従業員を横目に肩を抱かれたまま通り過ぎていく。それがなんだかやましく感じて、私は肩を窄めて身を小さくした。

 エントランスを出ると、正面に停まっていたのは大きな黒塗りのセダンタイプの車。すでに運転手が乗っている。

 ドアマンが車のドアの前に立ち、私たちが乗り込むのを待っている。私は朝日くんに促され遠慮がちに後部座席に乗り込んだ。

 まるで王様みたいな扱い。
 とてもじゃないけど、私とは世界がかけ離れている。共に朝を過ごしたことで、身をもって知った。

「そうだ、朝日くん。食事代と宿泊費が払えてないの。だから請求書もらえるとありがたいんだけど」

 そもそも私が奢るという話だったのに、支払いを済ませるどころか、ホテルに泊まったうえ慌てて出てくる始末。

 彼にとってはたいした金額ではないかもしれないけど、不甲斐なく借りたままでいたくはない。

 隣に座る朝日くんに声をかけると、流し目をした妖艶な視線でこちらを見た。

「了解。それなら美詞のお給料から天引きさせてもらうよ」
「……ん? どういうこと?」

 聞いた手前はたと思い出し、引き抜きを提案されていることに気づいた。

「だからそれはっ」
「断ってもいいけど、断るならこのまま出発もできなくなるけどいいの?」
「あ、朝日くんのイジワル!」

 歯並びのいい白い歯を見せて、ハハッとまた笑って頬にキスをされた。

「それより美詞の住所教えてもらわないと、本当に出発もできないよ」
「あっ、すみません――」

 慌てて運転手さんに住所を伝え、大急ぎで走ってもらった。

 もうなにを言っても上手く丸め込まれそうで、家に着くまで口を噤むことにした。

 アパートの前に着くと、朝日くんは車から降りてズボンのポケットに手を突っ込み、渋い顔をして建物全体を眺めている。

「送ってくれてありがとう。じゃあ、また」

 こんな小さなアパートに住んでいると思われるのは恥ずかしいけれど、隠しようもないため堂々としながら足を進めると、呼び止められた。

「美詞。時間がないからこのまま仕事場まで送る。用意ができたらすぐ降りておいで」
「え、いいよ! そんなに何度も迷惑かけられないから」
「いいから。つべこべ言う暇はないから早く」

 自分のことなのに、朝日くんに主導権を握られてペースが乱れる。だけど電車で向かうより車の方が近道なだけに、朝日くんの申し出は正直ありがたい。

 ありがたいけれど、私の居場所をすべて把握されそうで、なんだか釈然としないのも事実。

 とはいえ今はとにかく時間がないのだ。私は急いでアパートの部屋に戻り服を着替え、軽く化粧を直してから再び出てきた。

感想 1

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

藤白ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

絶交した幼馴染と大学の合コンで再会した。

孤独な蛇
恋愛
中学生の浅野春樹は上級生と喧嘩騒動を起こしたことがあった。 その上、目つきが悪く地毛は茶髪のため不良少年のような扱いを受けて学校では孤立していた。 そんな中、幼馴染の深瀬志穂だけは春樹のことをいつも気遣ってくれていた。 同じ高校に行こうと声を掛けてくれる志穂の言葉に応えたい一心で受験勉強にも力を入れていた。 春樹にとって、学校で孤立していることは問題ではなかった。 昔から志穂が近くにいてくれるから……。 しかし、3年生なってから志穂の態度がよそよそしくなってきた。 登下校も別々になり、学校で話しかけてくることも無くなった。 志穂の心が自分から離れていってしまっている気がした春樹は焦っていた。 彼女と話がしたい。笑った顔が見たい。 志穂と一緒に帰ろうと、彼女が部活動を行っている体育館へ向かったのだが……。 そこで春樹が耳にしたのは、自分の悪口を言って部活の友達と楽しそうにしている志穂の声だった。 その瞬間、春樹の中で志穂に対する想いや信頼は……消滅した。

カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~

伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華 結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空 幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。 割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。 思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。 二人の結婚生活は一体どうなる?

皇太子の執着と義兄の献身

絵夢子
恋愛
【最終話公開】 過保護な義兄に守られて育ち社交界デビューを迎えた侯爵令嬢クリスタ。 皇太子妃候補として扱われていることに気づき、愕然とする。 義妹を本家の姫として崇め、守ってきた義兄ビルヘルムは 義務として皇太子に嫁ぎ、その操を捧げることを強いられる義妹に・・・・ 誠実で聡明な皇太子リオネルは高潔な淑女クリスタに執着し、徐々に壊れていく 第一章は全年齢OKな内容です。第二章から性的な表現を含みますのでご注意ください。 *主な登場人物* ・クリスタ  堅実な侯爵家の令嬢で謙虚で欲がない。 立ち振る舞いは美しく教養があるが社交界に憧れがなかったためダンスは練習を熱心にしておらず不得意。 恋愛事に疎い。シンプルで肌の露出の少ない服装を好む。 公の場では完璧な淑女ながら、無邪気な面があり、家族、特に義兄のビルヘルムや侍女のジェンには本音を見せ甘えたがり。 ・ビルヘルム 侯爵家の傍系男爵家から養子に入りクリスタの義兄となる。 男3人兄弟で育ち、本家の姫であるクリスタに護衛として付き従う。 何よりもクリスタを優先する。 ・皇太子リオネル 勤勉で寛大、誠実と評判の皇太子。 子供時代から知っているクリスタと久しぶりに再会してから、クリスタを妃に望み、独占欲から戦略的に囲い込む。 クリスタへの欲望が高まっていき、クリスタが懐いているビルヘルムに嫉妬する。ダンスの名手。 ・ウィストリア侯爵 クリスタの父で外務大臣。皇太子はじめ皇族一家の忠臣であり、まじめで信頼を集めている。クリスタのことを思っており、皇太子との結婚で愛娘が幸せになるものと信じている。養子のビルヘルムにも優しく息子として信頼し仕事の補佐をさせている。 ・ギルバート・バルモン子爵 クリスタの9歳年上の実兄。ウィストリア侯爵家の跡継ぎ。 外務大臣を務める父に代わり侯爵領を治めながら、皇都の父の補佐も務める。 父からすでにバルモン子爵の位を継承されている。クリスタをつい子ども扱いしてしまう。 伯爵家から嫁いだ妻との間に息子と娘がいる。 ※挿絵など画像にはAiを使用しています。