極上御曹司の純愛〜幼馴染に再会したら身も心も囲い込まれました〜

吉生伊織

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⭐︎トラウマの代償

8


 彼は外に出たまま高級車にもたれて腕を組み、私を待っている。その佇まいがこの安いアパートとは対照的すぎて違和感しかない。

 通りを歩く通行人も朝日くんのオーラに圧倒されて、振り返っているのがわかる。もしも私が知り合いでなければ、王子様がいる……なんて胸をときめかせながら振り返っていたことだろう。

 だけどそれが強引な俺様に成長した知り合いだと知れば、見方もガラッと変わるのだから不思議だ。

「行くか」
「うん……」

 もう諦めて素直に車に乗り込んだ。
 どう足掻いたって彼の行動力の方が上回っている。抵抗したところでついて行った方が早いのは確実なのだから。


 それから車で走って三十分程であけぼの保育園へ着いた。
 間に合ってよかった――。

 電車に乗っていたら、乗り換えや満員電車でこんなにスムーズには着かなかっただろう。

 初めから感謝して送られていればよかったのだろうけど、このまま手のひらで転がされるのが納得いかなかったのだ。

「朝日くん、最後までありがとうね。あの、本当に請求書渡してね、お願いだよ」

 車外に出ていた朝日くんに向けて念押ししたけれど、片手を上げるだけで返事はない。

 不安になりながら門をくぐってからも、振り返ると朝日くんはしばらくこちらを眺めている。

 入っていくふりをしながら柱の影から彼を盗み見ていると、キョロキョロと全体を確認してから、ようやく車に乗り込み走り去っていった。

「……はぁぁ」

 車が見えなくなり、やっとひと息つくことができた。

 昔はただ一緒にいるだけで楽しくてワクワクしたのに、大人になって雰囲気も性格も変わった気がして、初対面のような気持ちで一日を過ごした。

 そのうえ転職の斡旋をされて、セックスまでしてしまった……。こんな関係よくないのに。

 これからどうなるんだろう、と頭を抱えたくなってくる。


 更衣室でジャージに着替え、エプロンをつけて保育室へ向かうと、子供たちは今日も元気に走り回っていた。

 日常の風景を前に、これから仕事だというのに気持ちが緩む。

 目の前にいる子供たちの笑顔を見ただけで、これだけ元気をもらえるのだから、やっぱりすぐに転職なんて考えられない。

「天河先生おはようございます」
「あ、本橋先生おはようございます」

 早速、早番の本橋先生に今日の予定と引き継ぎを伝達してもらい、業務につく。
 特に大きな案件はなかったため、今日も通常運転だ。

「ところで天河先生。どうされたんですか?」
「なにがですか?」
「タートルネックなんて珍しいじゃないですか」
「あ……」

 首にキスマークが付いているのを隠すため、急遽薄手の白いタートルネックのカットソーを着てきた。

 普段はジャージの下はただのクルーネックのシャツを着ているだけなので、珍しい格好ではある。

 本橋先生は物珍しそうに見ているけれど、わかりやすく目が笑っている。

「ちょっと風邪を引きそうだったので……、少し厚着してきたんです」

 苦しい言い訳なのは分かっているけど、朝帰りなんて口が裂けても言えない。

感想 1

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