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第25話・謎の調査
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俺とティアがユキの仇を討つべく行動を始めてから、早くも1週間が過ぎた。
あれから俺達は色々な事を調べて回り、得られた情報を精査したのちに、とある場所へと向かっていた。
「あれがお屋敷か。流石に大きな……」
「そうだね……私達が居た孤児院いくつ分くらいの大きさなのかな?」
太陽が真上を少し過ぎた頃。俺達はユキの実家である、ホワイトスノー家をその視界に捉えていた。
どでかい柵門の更に奥に見える白塗りのお屋敷。そのお屋敷は本当に大きく、俺が今まで目にして来た建物の中では文句無しに断トツの大きさだ。
孤児院で育った俺には、こんなどでかいお屋敷での生活などまったく想像がつかない。
自分の居た世界とはまったく違う場所に赴く事に気後れする気持ちを感じながらも、俺はティアと一緒に大きな柵門がある方へと向かい、そこに居る槍を持った門番へと話し掛けた。
「すみません。ホワイトスノー家当主。ライゼリア・ホワイトスノーさんに面会に伺ったのですが」
「ライゼリア様にですか? 面会のお約束はしておられるでしょうか?」
「はい。先日モンスタースレイヤー協会を通して面会の書状を送らせてもらい、今日のお昼過ぎにならお会いできる――との回答をいただいているのですが」
「すみませんが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「はい。僕はエリオス・マイクシュタイナーと言います。そしてこちらは、モンスタースレイヤーのティアーユ・ドロップです」
「おおっ! あなたが史上最年少でモンスタースレイヤーの称号を得られたという、ダークネス・ティア様ですか! お噂は聞いております。すぐにライゼリア様へお知らせ致しますので、しばらくお待ち下さい」
門番の男性はちょっと嬉しそうにそう言うと、小さく門を開いて中へと入り、奥に見える白塗りのお屋敷へと向かって行った。
そしてしばらくして戻って来た門番の男性に案内されて敷地内へと入った俺達は、お屋敷の中で待っていた執事にライゼリアさんが待つ部屋へと案内された。
「わざわざご足労いただいてすみません。私がホワイトスノー家当主、ライゼリア・ホワイトスノーです。以後お見知り置きを」
執事に通された屋敷の一室。
そこへ入ると大きな机の椅子に座っていたライゼリアさんが立ち上がり、丁寧な挨拶をしてくれた。
美しい金髪に長身の整った顔立ち。ユキとは血の繋がりが無いとは言え、その気品の高さはユキに通じるものがある。
「は、初めまして! 僕はエリオス・マイクシュタイナー。こちらはティアーユ・ドロップです。今日はお忙しい中お時間をいただき、ありがとうございます」
「いえ。私もいただいた書状を見て是非とも協力をしたいと思いましたので、そんなにかしこまらないで下さい」
「ありがとうございます。それと、ユキさんの件は本当に何と言っていいか……」
「……兄が殺されて以降、ユキは両親の反対を押し切ってモンスタースレイヤーになる為の修行を始めました。当時は私も両親と一緒になって反対をしていましたが、厳しい修行を経て立派なモンスタースレイヤーになった事は、私の誇りでもあります……」
「そうでしたか。心中お察しします……」
「ありがとう。さあ、立ち話もなんですから、こちらにお座り下さい」
「はい。ありがとうございます」
そう言うとライゼリアさんは部屋の中心に置かれているソファを手で示し、そこへ座る様に促がしてきた。俺達はそんなライゼリアさんに従い、柔らかく沈み込むソファへと腰を下ろした。
「さて。書状には私に尋ねたい事がある――と書いてありましたが、何をお聞きしたいのでしょうか?」
「はい。実は今回のダークドラゴン出没についてなんですが、モンスタースレイヤー協会の調査報告書によると、ダークドラゴンが出現した現場のほとんどにライゼリアさんが出くわしていたとあったので、その時の事をお伺いしたいと思いまして」
「なるほど。そう言う事でしたか」
「ええ。協会と他の目撃者の話では、ダークドラゴンは突然街中に現れて、突然その姿を消した――とあったのですが、それは本当でしょうか?」
「ええ。間違いありません。私も何度かそれを目撃しましたので」
「そうですか……ではその時にですが、何か変わった事はありませんでしたか?」
「変わった事――ですか?」
「はい。例えばですが、何度かダークドラゴンを見かけた中でおかしく思う事があったとか」
そう尋ねるとライゼリアさんは眉間にシワを寄せ、その時の事を思い出しているかの様にして瞳を閉じた。
「…………そうですね……残念ですが、特に変わった事はなかったと思います」
「そうですか……ではその時に、怪しげな人物が居たりはしませんでしたか?」
「はい。怪しげな人物も特に居なかったと思います」
「なるほど」
「……エリオスさん。怪しげな人物は居なかったか――と言いましたが、今回の件に誰かが関与しているのですか?」
「あ、いえ。可能性の一つとして、考えられる事を一つ一つ確かめているだけですよ。別に今回の件に誰かが関与していると断言しているわけではありません」
「そうなのですか? 私から見ると、エリオスさんには何か核心めいたものがあってその質問をした様に思えるのですが?」
「……さすがはユキの義兄さん。鋭いですね。実はここだけの話ですが、僕は今回の件には人間の黒幕が居ると思っているんですよ」
俺はライゼリアのさんの質問に腰を上げ、テーブル越しの正面に居るライゼリアさんへ顔を近づけてヒソヒソ話をする様にそう言った。
「ほお? それはどうしてですか?」
「そう思う理由は色々とありますが、最大の理由はダークドラゴンのカラーモンスターらしからぬ行動です。ライゼリアさんもご存知のとおり、エオスにある街には三重の円状結界が張り巡らされています。だからカラーモンスターが街の中へと侵入するには、その結界を破って侵入するしか方法はありません。ですがそのダークドラゴンは、張り巡らされた結界を破る事なく街へと侵入しています。これはどう考えてもおかしいんです」
「単純にどこかの結界が知らない内に破られていたとか?」
「もちろんその線も考えてモンスタースレイヤー協会や、街の結界師達に結界が破られていなかったかを確かめました。ですが、結界が破られていた事実は確認できませんでした。そこで僕達は、何らかの方法でカラーモンスターを操っている者が居るのではないか――と推測を立てて情報収集をしているんです」
「なるほど。話はよく分かりましたが、今の私にはお役に立てる様な情報はありませんね」
「そうですか……分かりました。お忙しい中、お話をしていただいてありがとうございました。何か思い出した事などがあれば、些細な事でもいいのでお知らせ下さい」
「もちろんです」
「では、僕達はこれで失礼します」
「そうですか。何のお構いもせずにすみませんね」
ライゼリアさんはそう言うと、眉下まで伸びる前髪を右手でサッとかき上げた。
「ライゼリアさん。その額の傷はどうしたんですか?」
「……ああ。すみません、お見苦しいものをお見せしてしまいましたね。これは私が小さな頃、遊んでいる時に負った怪我なんですよ」
「そうだったんですね。小さな頃は怪我の事なんて考えずに危ない事をしたりしますからね」
「ははっ。そうなんですよ。私も小さな頃はやんちゃだったので」
「分かります。僕も小さな時はそうだったので。では、これで失礼します」
「はい。エリオスさん達とはその内にまたお会いする事になると思いますが、その時にはよろしくお願いしますね」
にこやかな笑顔で俺達を見送るライゼリアさんを背に、俺達はホワイトスノー家をあとにした。
あれから俺達は色々な事を調べて回り、得られた情報を精査したのちに、とある場所へと向かっていた。
「あれがお屋敷か。流石に大きな……」
「そうだね……私達が居た孤児院いくつ分くらいの大きさなのかな?」
太陽が真上を少し過ぎた頃。俺達はユキの実家である、ホワイトスノー家をその視界に捉えていた。
どでかい柵門の更に奥に見える白塗りのお屋敷。そのお屋敷は本当に大きく、俺が今まで目にして来た建物の中では文句無しに断トツの大きさだ。
孤児院で育った俺には、こんなどでかいお屋敷での生活などまったく想像がつかない。
自分の居た世界とはまったく違う場所に赴く事に気後れする気持ちを感じながらも、俺はティアと一緒に大きな柵門がある方へと向かい、そこに居る槍を持った門番へと話し掛けた。
「すみません。ホワイトスノー家当主。ライゼリア・ホワイトスノーさんに面会に伺ったのですが」
「ライゼリア様にですか? 面会のお約束はしておられるでしょうか?」
「はい。先日モンスタースレイヤー協会を通して面会の書状を送らせてもらい、今日のお昼過ぎにならお会いできる――との回答をいただいているのですが」
「すみませんが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「はい。僕はエリオス・マイクシュタイナーと言います。そしてこちらは、モンスタースレイヤーのティアーユ・ドロップです」
「おおっ! あなたが史上最年少でモンスタースレイヤーの称号を得られたという、ダークネス・ティア様ですか! お噂は聞いております。すぐにライゼリア様へお知らせ致しますので、しばらくお待ち下さい」
門番の男性はちょっと嬉しそうにそう言うと、小さく門を開いて中へと入り、奥に見える白塗りのお屋敷へと向かって行った。
そしてしばらくして戻って来た門番の男性に案内されて敷地内へと入った俺達は、お屋敷の中で待っていた執事にライゼリアさんが待つ部屋へと案内された。
「わざわざご足労いただいてすみません。私がホワイトスノー家当主、ライゼリア・ホワイトスノーです。以後お見知り置きを」
執事に通された屋敷の一室。
そこへ入ると大きな机の椅子に座っていたライゼリアさんが立ち上がり、丁寧な挨拶をしてくれた。
美しい金髪に長身の整った顔立ち。ユキとは血の繋がりが無いとは言え、その気品の高さはユキに通じるものがある。
「は、初めまして! 僕はエリオス・マイクシュタイナー。こちらはティアーユ・ドロップです。今日はお忙しい中お時間をいただき、ありがとうございます」
「いえ。私もいただいた書状を見て是非とも協力をしたいと思いましたので、そんなにかしこまらないで下さい」
「ありがとうございます。それと、ユキさんの件は本当に何と言っていいか……」
「……兄が殺されて以降、ユキは両親の反対を押し切ってモンスタースレイヤーになる為の修行を始めました。当時は私も両親と一緒になって反対をしていましたが、厳しい修行を経て立派なモンスタースレイヤーになった事は、私の誇りでもあります……」
「そうでしたか。心中お察しします……」
「ありがとう。さあ、立ち話もなんですから、こちらにお座り下さい」
「はい。ありがとうございます」
そう言うとライゼリアさんは部屋の中心に置かれているソファを手で示し、そこへ座る様に促がしてきた。俺達はそんなライゼリアさんに従い、柔らかく沈み込むソファへと腰を下ろした。
「さて。書状には私に尋ねたい事がある――と書いてありましたが、何をお聞きしたいのでしょうか?」
「はい。実は今回のダークドラゴン出没についてなんですが、モンスタースレイヤー協会の調査報告書によると、ダークドラゴンが出現した現場のほとんどにライゼリアさんが出くわしていたとあったので、その時の事をお伺いしたいと思いまして」
「なるほど。そう言う事でしたか」
「ええ。協会と他の目撃者の話では、ダークドラゴンは突然街中に現れて、突然その姿を消した――とあったのですが、それは本当でしょうか?」
「ええ。間違いありません。私も何度かそれを目撃しましたので」
「そうですか……ではその時にですが、何か変わった事はありませんでしたか?」
「変わった事――ですか?」
「はい。例えばですが、何度かダークドラゴンを見かけた中でおかしく思う事があったとか」
そう尋ねるとライゼリアさんは眉間にシワを寄せ、その時の事を思い出しているかの様にして瞳を閉じた。
「…………そうですね……残念ですが、特に変わった事はなかったと思います」
「そうですか……ではその時に、怪しげな人物が居たりはしませんでしたか?」
「はい。怪しげな人物も特に居なかったと思います」
「なるほど」
「……エリオスさん。怪しげな人物は居なかったか――と言いましたが、今回の件に誰かが関与しているのですか?」
「あ、いえ。可能性の一つとして、考えられる事を一つ一つ確かめているだけですよ。別に今回の件に誰かが関与していると断言しているわけではありません」
「そうなのですか? 私から見ると、エリオスさんには何か核心めいたものがあってその質問をした様に思えるのですが?」
「……さすがはユキの義兄さん。鋭いですね。実はここだけの話ですが、僕は今回の件には人間の黒幕が居ると思っているんですよ」
俺はライゼリアのさんの質問に腰を上げ、テーブル越しの正面に居るライゼリアさんへ顔を近づけてヒソヒソ話をする様にそう言った。
「ほお? それはどうしてですか?」
「そう思う理由は色々とありますが、最大の理由はダークドラゴンのカラーモンスターらしからぬ行動です。ライゼリアさんもご存知のとおり、エオスにある街には三重の円状結界が張り巡らされています。だからカラーモンスターが街の中へと侵入するには、その結界を破って侵入するしか方法はありません。ですがそのダークドラゴンは、張り巡らされた結界を破る事なく街へと侵入しています。これはどう考えてもおかしいんです」
「単純にどこかの結界が知らない内に破られていたとか?」
「もちろんその線も考えてモンスタースレイヤー協会や、街の結界師達に結界が破られていなかったかを確かめました。ですが、結界が破られていた事実は確認できませんでした。そこで僕達は、何らかの方法でカラーモンスターを操っている者が居るのではないか――と推測を立てて情報収集をしているんです」
「なるほど。話はよく分かりましたが、今の私にはお役に立てる様な情報はありませんね」
「そうですか……分かりました。お忙しい中、お話をしていただいてありがとうございました。何か思い出した事などがあれば、些細な事でもいいのでお知らせ下さい」
「もちろんです」
「では、僕達はこれで失礼します」
「そうですか。何のお構いもせずにすみませんね」
ライゼリアさんはそう言うと、眉下まで伸びる前髪を右手でサッとかき上げた。
「ライゼリアさん。その額の傷はどうしたんですか?」
「……ああ。すみません、お見苦しいものをお見せしてしまいましたね。これは私が小さな頃、遊んでいる時に負った怪我なんですよ」
「そうだったんですね。小さな頃は怪我の事なんて考えずに危ない事をしたりしますからね」
「ははっ。そうなんですよ。私も小さな頃はやんちゃだったので」
「分かります。僕も小さな時はそうだったので。では、これで失礼します」
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