生まれた時から、運命の君へ

ミルクルミ

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柊の葛藤④

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「兄弟では番えません、それは変わらぬ事実です」

 そうはっきりと口にした柊を見て、海は呆れたように息を吐いた。

「後悔しても、知らないですよ?」

 謎めいたその言葉を残し、近くにいたクラスメイトの元へと海は去った。






「……っ」

 そして柊は、さっそく後悔、というより苦しめられていた。

「おい、聞いたか? 三組の篠宮が、発情期始まったって話」
「篠宮って、あの? 篠宮先生の弟?」
「ああ、そうだ。滅茶苦茶可愛いって噂の!」
「でも先生が溺愛してるって話じゃん、大丈夫なの?」
「兄とはいえ兄弟、番探しにまで流石に口には出せないだろ」
「まあ、それもそうか」

 学校中、そんな噂で満ちていた。
 悠衣は元々噂が立っていた。
 高等部でありながら発情期がまだの、いつもボーっとしているもののとても可愛らしく、時々見せる笑顔に撃ち抜かれた者多数、もし発情期が始まっていたのなら――狙っていた。
 そんなアルファの声が上がるほど、悠衣は多くの人から注目を集めていたのだ。
 それは少数のアルファの声だろうと思い気にも留めていなかったが、こんなにも、学校中の噂になるほど、そして恋人のいないアルファからこぞって狙われるほど、注目を集めていたなんて。
 海は、それを知っていたのだろう。
 側にいる悠衣にだけ夢中になっていた柊とは違い、彼は冷静に分析していた。
 そして、こんな事態が広がっている事を示唆してくれた。
 それに気付かずに、柊は――こうして今、激しい感情の濁流を抑えるのに必死だった。

「大変ですね、篠宮先生」

 呆然とした面持ちで自分の職員室の席に座っていた柊に向かって、荒木が声を掛ける。
 心配そうに眉根を潜める彼には申し訳なかったが、柊の心の中は、声を掛けてくれた人はアルファであり、もしかしたらこの人も悠衣の事を密かに狙っているのかもしれない、という思いで満ちていた。

「俺もオメガの弟がいるんですが、発情期が来て番探しを始めた時、寂しく感じたものです。『お兄ちゃん』とついてきた様子が思い起こされて、懐かしさで胸が一杯になって。先生はずっと篠宮を守ってきたわけですから、俺よりもお辛いでしょう」

 気遣う台詞に、何とか「そうですね」と返した。

「もうすぐホームルームが始まりますね。では、行ってきます」

 どこか心ここに在らずな柊の様子に荒木も気づき、苦笑いをしながら去っていく。
 それを苦笑しながらも、柊は見送った。
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