生まれた時から、運命の君へ

ミルクルミ

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あれから①

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「好きです、付き合ってください!」
「ごめんね。僕、忘れられない人がいるから」
「それでも……お試しでも良いんです、どうか……!」
「その人の事が大好きで、生涯愛し続ける自信があるから。ごめんね」

 悠衣がはっきりとそう言うと漸く悠衣の前に立った男は諦めたのか、がくりと肩を落とし去っていった。
 それを見送り、その男が見えなくなったところで悠衣もこの場を移動しようと、男が去った方向に背中を向ける。
 すると悠衣の前に先ほどとは違う男が現れて、コーラを差し出した。

「お疲れさん」
緋佐ひさ! 見てたの?」
「ああ、通りかかったからな。相変わらず、モテモテだな」
「……嬉しくないよ」

 大学で悠衣と同じ文学部である名倉緋佐が、苦笑しながら自分のコーラを傾ける。
 その横で同じくコーラを飲みながら、悠衣は眉間に皴を寄せた。
 何を考えているのか読んだ緋佐は、悠衣の背中を思い切り叩く。

「大丈夫、いつか帰ってくるって言って出て行ったんだろ? そのいつかがまだ来ていない、それだけの話だよ」
「でも……もう、五年が経った。その間、僕はずっと待ってるよ。いつまでも待ち続ける自信はある。けど……そのいつかが来ないんじゃないか、もう僕は柊兄に会えないんじゃないかって、怖くてたまらないんだ」

 眉根を寄せながら、悠衣は緋佐にそう零した。
 そう。
 あれからもう、五年の月日が流れていた。
 悠衣は高校を卒業し、大学生になった。
 けれどその五年の間、柊は影も形も掴めやしなかった。
 悠衣も何もしなかったわけではない。
 学校側に問い詰めてみたり、柊の知り合いに当たってみたり。
 やれることはすべてやった、それでも柊は見つからなかった。
 そんな中でいたらもはやもう、柊に会うのは生涯無理なのではないか、という諦念の感情も生まれてくるというものだ。
 だから最近は、ただ待っていた。
 がむしゃらに探して見つからなかった時の心の衝撃は大きい。情報を探りはするが、悠衣は『少しの間家を出る』という柊の言葉を信じてただ待っていた。
 あの家に再び、柊が足を踏み入れるその時を。

「そんな悠衣に、朗報だ」

 唇を噛みしめていた悠衣に、緋佐はにやりと笑って見せた。
 あまり見ないその表情に訝し気になるが、緋佐から次の言葉を聞いた瞬間、悠衣は走り出した。
 元々目立つ容姿、そんな彼が全速力で走っている様子に注目を浴びたが、今の悠衣はその視線が全く気にならなかった。

『お前の同級生、玖珂海からの伝言だ。柊先生らしき人物を駅で発見したらしい。もしかしたら……帰って来たのかもしれない、だとさ』






「柊兄!」

 悠衣は、走ってその勢いのまま玄関のドアを開けた。
 五年前、柊は事前に両親に連絡を入れていたらしく、上京した父についていっていた母が柊が出て行った数日後、帰ってきていた。
 それ以来家にいる母、けれど今日はパートに出かけているはずなのに、家の電気がついていた。
 悠衣の中で期待が高まる、もしかしたら……帰って、きているかもしれないと。
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