生まれた時から、運命の君へ

ミルクルミ

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兄弟か、恋人か①

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――悠衣が昨日、帰って来なかった。

 きっと、電話を掛けてきたあの名倉緋佐という男と一緒に居るのだろう。
 悠衣から直接届いたメールにはただ一言、『暫く帰りません』とだけ書かれていて。

「はぁ」

 そんな事を思う資格などないというのに、行き先のない感情がため息となって柊の口から漏れた。






「ただいま」
「おかえりなさい」

 柊らの両親は、仲睦まじい方だ。
 ラブラブとまではいかないが、互いの言いたい事を読み取り、先立って行動する良き夫婦である。
 なので当然連絡をやり合っており、事前に柊の事は知らされていたのだろう。

「久しぶりだな、柊」

 柊の姿を見ても戸惑いもせずに、父はただ笑って再会を祝した。






「父さん。話があるんですが、よろしいですか?」
「何だ?」

 楽を見ても会釈だけで何も聞かなかった父。
 ほんわかしたまま入った食事が終わり、その雰囲気を柊はぶち破った。

「僕はこの実川楽と結婚を考えています。その許可を頂きたいのです」

 はっきりとそう宣言した柊を、見開いた目で父は見つめた。
 どうやら、結婚の件までは母は伝えていなかったらしい。
 そう感じた柊は、さらに言葉を重ねる。

「既に向こうの方には挨拶を済ませてあります。後は父さんと母さんの許しを頂くだけです」

 ひゅっと喉がなる音と共に、母の表情が悲しみに染まる。
 それはきっと、悠衣の感情を悟っていたからだろう。
 悠衣は分かりやすい。
 何も感じていないときは無表情でボウッとしているのだが、嬉しい事や悲しい事があった時、ちゃんと表情として表へ出る。
 だから柊がいなくなった時の悠衣の表情、悲しみ方の尋常さから、感じ取っていたのだろう。
 悠衣が柊を、想っている事を。
 それは父も同様なのか、テーブルの向かいで組んだ手に顎を乗せた。

「それは、悠衣に伝えてあるのか?」
「直接は、伝えていません」
「お前は、それで良いのか?」
「はい」

 父の表情が険しくなった。
 柊の本音を探るような鋭い眼光、それをしっかりと受け止めて柊もじっと父を見る。
 暫しの静寂、緊張感の高まる室内。
 やがて口火を切ったのは、父の方だった。

「嘘だな」

 ふっと笑った父により、この場が一気に弛緩する。
 それを否定も肯定もせず、ただ柊は父の次の言葉を待った。

「例え仕事で出ている事が多いとは言っても、家族だ。お前の嘘を付くときの癖くらい把握している」
「そうね。柊は昔から、嘘を付くとき一回は耳がぴくりと動くのよね」

 母までそんな事を言い、居心地悪そうに柊は自身の耳を触った。

「……癖は、中々直せません」
「直す必要なんてないわ。分かりやすいもの」

 先程まで絶望の淵にいるような表情をしていた母は、柊の言葉が嘘だと分かると裏を返したように明るくなった。
 何やら三人で意思疎通しているような雰囲気に、何が起こっているのか分からなくて挙動不審になっている楽を、柊はぽんぽんっと軽く叩く。
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