生まれた時から、運命の君へ

ミルクルミ

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辛い気持ち③

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「あ」

 それを見つけたのは、偶然だった。
 迷い込んだともいえる入り込んだ先にいた、ベンチに座る男と、膝に頭を預けている男。
 コツリとコンクリートと靴の擦れる音に、男も気づいたのだろう。
 柔らかそうな髪を撫でている手を止めずに、顔を上げた。

「何か用?」

 堂々といちゃついておいて、見つかっても逆に邪魔そうな目で見られてオロオロと楽は視線を彷徨わせた。
 そんな楽は、膝を預けている男の姿にハッとなる。

「悠衣、さん……」

 こちらに背中を向けているが、その後ろ姿はここ最近で覚えた悠衣そのものであった。
 そのことに驚き漏れた声が、男にも拾われたらしい。
 元々鋭かった瞳が、もっと鋭くなった。

「その容姿……もしかして、こいつの兄の恋人って人?」
「……そうです、けど」

 未だ、楽は柊の恋人であると名乗るのに気後れしていた。
 偽物の関係を堂々と言えるほど楽は強くない、気後れから俯いた楽を、男は注意深く見つめていた。

「あんたは、こいつの味方? 敵?」
「……どういう……」
「知ってるんだろ? こいつとこいつの兄が、運命だって」
「え……」

 それは、初めて聞くことだった。
 運命なんて、都市伝説だと思っていた。
 身近にいないのが普通、ただの好き合っている同士だと思っていた人らが、まさか『運命』だったなんて思うはずがない。

「知らなかったのか……あんたは、運命の二人を引き剥がそうとしているんだ」

 ガツンと、頭を鈍器で殴られたような衝撃が楽を襲った。
 自身もオメガであるため、一度は憧れる『運命』という存在。
 あまりしていない会話でも感じる、互いを想う強い気持ちはここからだったのかと、楽は腑に落ちた気がした。
 と同時に、柊が離れようとした理由は……『兄弟』だから、だろうか。
 いや、『運命』と『兄弟』が重なってしまったが故なのかもしれない。
 兄弟では番えない、それは世間一般的な常識だ。
 運命であることは、すなわち番える事を意味している。
 それは、血が繋がっていないという事。
 家族でいた者が実は一人だけ血の繋がりがないという事実。
 それが簡単に露見して、浴びる可能性のある噂の声から悠衣を守りたかったのかもしれない。

「もう一度聞く。あんたはこいつの味方か、それとも敵か」
「……味方、だよ」
「こいつの兄の事は諦めきれるのか?」
「運命を切り裂くだなんて、そんな事……できるはずがない」
「そうか」

 苦笑を零す楽を見て漸く安心したのか、男は眼光を緩めた。
 そして彼の鞄から取り出されたものを受け取り、連絡先を交換して。
 最後まで悠衣は起きなかったけれど、男に追い払われるようにして楽は帰った。
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