34 / 46
兄弟か、恋人か⑦
しおりを挟む
「もちろん好きですよ、友達として」
そんな柊にやけにあっさりと、緋佐は身を引いた。
「俺の演技、どうでしたか? かき乱せました?」
「……ええ、とても」
どうやら友達として、柊の本心を引き出すのが目的だったらしい。
緋佐のおかげで、どうしようもなく悠衣の事が好きなのだと、柊は再度自覚してしまった。
加えて帰らないとなると、悠衣の心は緋佐に行ってしまったと考えるのも当然だろう。
だがベータだと思っていた緋佐が、実はオメガだというのなら話は別だ。
オメガの発情期はオメガには効かない。
この家を見る限り彼一人のようだし、彼は悠衣に看病を頼みたかったのだろう。
それならば、『暫く帰らない』と書かれていた悠衣の言葉も腑に落ちるというものだ。
「悠衣。もし、ですが……僕との関係を『兄弟』か『恋人』で選ばなければならないといったら、どうしますか?」
もし、という仮定の言葉で誤魔化した。
それは柊の、弱さから出た言葉か。
『兄弟』を選んで欲しいというのは理性で、本心では『恋人』を選んで欲しい。
そんな揺れる心などお構いなしに、悠衣は即答して見せた。
「恋人」
と。
「だって、僕らが普通の兄弟だった事ってなかったでしょ? 最近のが普通だというのなら、僕は『兄弟』なんていらない。出来るのなら、柊兄と『恋人』になりたい」
もう無理だってのは、分かってるけど。
柊には将来を誓った相手がいる、そう思っている悠衣は、しぼむ声でそう零した。
その答えを聞いて、柊は「分かりました」と悠衣に近寄る。
「ではこれは、恋人としてのキスです」
「え……」
戸惑う悠衣の唇を、瞬時に柊は奪った。
頬を引きつらせながら「見せつけてくれますね」という言葉に、「貴方にも、手は出させないためです」と返し、二人に背を向ける。
「今日はそれを聞きたかっただけなので。僕はそろそろお暇させていただきます。悠衣……次会った時、僕は貴方の兄ではありません。なので、『柊』と呼び捨てでも構いませんので。それでは」
背中を向けていても唖然としている悠衣の表情が目に浮かぶようで、意地の悪い笑みを見られていないことを良い事に柊は浮かべた。
『恋人』を選んでくれたことが、単純に嬉しかった。
それはキスしたい衝動を、抑えきれないくらいに。
「これから……忙しくなりそうですね」
突き放しても、悠衣は『恋人』としての道を選んでくれた。
それは覚悟がもう決まったという事。
元々は兄弟なのだ、実川家に入ったとしても何か言われることは否めないだろう。
けれどもそれを気にせず、二人の世界を作っていこうと柊も覚悟を固める。
その時ふと、柊の脳裏にある記憶が蘇った。
それは悠衣が生まれて、間もなかった頃。
ベビーベッドに寝かされた悠衣に恐る恐るといった感じで伸ばした指を、悠衣が掴んで、キャッキャッと笑って。
たまらず愛おしいという想いに満たされた。
それは時を得るうちに変質を遂げ、『愛』にまで育って。
「もう離しませんし、離れません」
兄弟ではなく、恋人として。
生涯を捧げると誓おう。
そう思いながら柊は、緋佐の家を出て行った。
そんな柊にやけにあっさりと、緋佐は身を引いた。
「俺の演技、どうでしたか? かき乱せました?」
「……ええ、とても」
どうやら友達として、柊の本心を引き出すのが目的だったらしい。
緋佐のおかげで、どうしようもなく悠衣の事が好きなのだと、柊は再度自覚してしまった。
加えて帰らないとなると、悠衣の心は緋佐に行ってしまったと考えるのも当然だろう。
だがベータだと思っていた緋佐が、実はオメガだというのなら話は別だ。
オメガの発情期はオメガには効かない。
この家を見る限り彼一人のようだし、彼は悠衣に看病を頼みたかったのだろう。
それならば、『暫く帰らない』と書かれていた悠衣の言葉も腑に落ちるというものだ。
「悠衣。もし、ですが……僕との関係を『兄弟』か『恋人』で選ばなければならないといったら、どうしますか?」
もし、という仮定の言葉で誤魔化した。
それは柊の、弱さから出た言葉か。
『兄弟』を選んで欲しいというのは理性で、本心では『恋人』を選んで欲しい。
そんな揺れる心などお構いなしに、悠衣は即答して見せた。
「恋人」
と。
「だって、僕らが普通の兄弟だった事ってなかったでしょ? 最近のが普通だというのなら、僕は『兄弟』なんていらない。出来るのなら、柊兄と『恋人』になりたい」
もう無理だってのは、分かってるけど。
柊には将来を誓った相手がいる、そう思っている悠衣は、しぼむ声でそう零した。
その答えを聞いて、柊は「分かりました」と悠衣に近寄る。
「ではこれは、恋人としてのキスです」
「え……」
戸惑う悠衣の唇を、瞬時に柊は奪った。
頬を引きつらせながら「見せつけてくれますね」という言葉に、「貴方にも、手は出させないためです」と返し、二人に背を向ける。
「今日はそれを聞きたかっただけなので。僕はそろそろお暇させていただきます。悠衣……次会った時、僕は貴方の兄ではありません。なので、『柊』と呼び捨てでも構いませんので。それでは」
背中を向けていても唖然としている悠衣の表情が目に浮かぶようで、意地の悪い笑みを見られていないことを良い事に柊は浮かべた。
『恋人』を選んでくれたことが、単純に嬉しかった。
それはキスしたい衝動を、抑えきれないくらいに。
「これから……忙しくなりそうですね」
突き放しても、悠衣は『恋人』としての道を選んでくれた。
それは覚悟がもう決まったという事。
元々は兄弟なのだ、実川家に入ったとしても何か言われることは否めないだろう。
けれどもそれを気にせず、二人の世界を作っていこうと柊も覚悟を固める。
その時ふと、柊の脳裏にある記憶が蘇った。
それは悠衣が生まれて、間もなかった頃。
ベビーベッドに寝かされた悠衣に恐る恐るといった感じで伸ばした指を、悠衣が掴んで、キャッキャッと笑って。
たまらず愛おしいという想いに満たされた。
それは時を得るうちに変質を遂げ、『愛』にまで育って。
「もう離しませんし、離れません」
兄弟ではなく、恋人として。
生涯を捧げると誓おう。
そう思いながら柊は、緋佐の家を出て行った。
0
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました
2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。
様々な形での応援ありがとうございます!
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。
これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。
無自覚両片想いの勇者×親友。
読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる