あなたが俺の番ですか?

ミルクルミ

文字の大きさ
9 / 63

ドキドキ、宝さがしゲーム①

しおりを挟む
「なんだ琥陽、寝不足か? 飴ちゃん食うか?」
「い、いっさ~! ぐはっ、ちょっ、締まる、締まるって!」

 朝食を食べようと一階にある食堂へ向かうと、琥陽は一朔に飛びつこうとした。けれど後ろからシャツを掴まれて、行く手を阻まれる。

「側に恋人がいるのに、なに他の男に抱き着こうとしてるの?」

 笑っているのに瞳が冷たい颯珠に、琥陽はその場で踏みとどまった。

「ご、ごめんなさい」
「うん、いい子。琥陽はボクの側から離れちゃダメだから」

 物理的にがっしりと腕をホールドされ、一朔の元に行かせないようにされてしまった。
 いつものごとく一朔を睨む颯珠に、申し訳なさそうに立つ琥陽。それから居たたまれない様子でポケットから出した棒付きキャンディを見つめる一朔の様子に、クスクスと笑う声が後ろから聞こえてくる。

「またやってるの?」
「碧海」

 口に手を当て上品に笑うのは来栖くるす碧海あおい、寮で隣のクラスメイトだ。バースはオメガだがオメガにしては琥陽ほどではないものの高身長で、颯珠は琥陽の手を離すと碧海の元へ向かう。

「琥陽が悪いんだよ、目の前で浮気しようとしてたから」
「う、浮気じゃないって!」
「誰かに飛びつくのは浮気だよ」

 ジトッとした目で見ながら琥陽の方を見ると、一息ついてなぜか颯珠は両手を広げた。

「ほら」
「……なに?」
「仲直りだよ。抱き着くなら、ボクにしなよ」

 外と内の間のような表情をして、颯珠は琥陽を見上げてくる。
 でも、とかあの、とか戸惑っていても颯珠からの視線は緩められない。
 颯珠がアルファだと知ったのは今朝なのだ、当然まだ心の整理だってできていない。それにその気持ちが本物だと知って、むやみに触れるのを躊躇ってしまうのは仕方がないだろう。
 だがそんな琥陽の心の内などお構いなしの颯珠は、痺れを切らし自分から琥陽に抱き着いてきた。

「あとで覚えておいて」

 ぼそっと琥陽にだけ聞こえる声でそう言うと、すぐに離れた。






 朝食の場は割と騒々しい。
 昼食、夕食は誰とでも良いが、朝食はなるべくペア同士で、とされている寮での朝食は、琥陽たちは六人で食べる事が多い。
 琥陽と颯珠、それに一朔とそのペアである木崎きさき玲雄れお、碧海とペアである井草いぐさ洸希こうきだ。
 玲雄は一朔と会った瞬間一朔に一目ぼれしたらしく、好き好きアピールが激しいことで有名だ。なので一朔に抱き着いたままバイキング形式で取ってきた朝食を前に、一朔に抱き着きながらフォークでウィンナーをつついている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

処理中です...